(訳者注) 今回は、ノルウェーのウトヤ島という場所で起きた乱射事件について、これは日本でも詳しく報道されるでしょうが、さきほどの英国 BBC の報道で、位置関係など比較的詳しく乗っていたので、ご紹介します。
また、アルジャジーラでは事件直後の現場の写真を掲載しています。
YouTube にあります。

その前に、私は子どもの頃から乱射事件に興味を持ち続けていますが、その理由のひとつに「
致死命中率」というものがあります。このことについて書いておきます。
戦闘での致死命中率は 0.1パーセントにも満たない30年以上前だと思いますが、中学生か高校生の時に、山本七平さんの「
私の中の日本軍」という本を読んだことがあり、その中に「致死命中率」という数値が出て来ます。これを読んで以来、いわゆる「乱射事件」というものが起きると、致死命中率を計算するクセがあります。
「致死命中率」というのは、
戦闘行為の中で、銃で人を狙って撃って、「どのくらい殺せるか」という率をあらわしたものなのですが、このことに関して「私の中の日本軍」に詳しく書かれていました。記憶だけですが、そのくだりが好きで何度も読んだので、多分それほど数値に大きな差はないと思います。
今回のノルウェーの「乱射」と呼ばれているものは(
これを乱射という言葉で現していいのかどうか私にはわかりません)、まだ全貌がわからないながらも、「とんでもない致死命中率」を記録しているという気配があります。
今回のノルウェーでの乱射では、現時点(7月23日午後4時)の時点で最も新しい
読売新聞の記事によれば、
・700人のうち、80人以上を射殺した
と読めます。
怪我をさせたのではなく、「射殺した」とありますので、死亡したのが80人以上だと思われます。
さて、一般の戦闘での致死命中率。
私たちは、特に戦後の私たちは戦争に従事した経験のある人があまりおらず、また、日本では戦闘訓練を受けたことのある人も少ないので、なんとなく
「銃を撃てば人をどんどん殺せる」というようなイメージがありますが、「戦闘の中での致死命中率」というものは、実はかなり低いもので、
第二次大戦の資料では、0.1〜0.03パーセントの間という数字があります。
当時の場合は、どこの国の軍隊でも大体共通の数値です。
この数値に誤差があっても、「
数百発から数千発の弾丸を撃って1人死ぬ」という感じで、実際には戦場ではほとんどの弾が「人を殺傷させることなく」撃ち続けられています。
異常に高かったテルアビブ空港乱射事件の致死命中率上記の山本七平さんの「私の中の日本軍」の中で、どうしてそんな「致死命中率」などという言葉が出てきたのかたというと、それを書いている時に、ちょうど日本赤軍による
1972年のイスラエルのテルアビブ空港乱射事件が起きた時で、その際の実行犯は、奥平剛士、安田安之、岡本公三の日本人3人でした。
「日本人がイスラエルで乱射事件を起こした」というショッキングな出来事で、当時まだ小学生だった私でも、ニュースの記憶があります。この乱射は、
Wikipedia によると、
3人は、スーツケースから取り出したチェコスロバキア製のVz 58自動小銃を旅客ターミナル内の乗降客や空港内の警備隊に向けて無差別乱射し、さらに、ターミナル外で駐機していたエル・アル航空の旅客機に向けて手榴弾を2発投げつけた。この無差別乱射により、乗降客を中心に26人が殺害され、73人が重軽傷を負った。
とあります。
事件後の現場検証で、3人が撃った「すべての銃弾の数」が確定されています。
その数は、合計約 400発(ネットで見ると、435発ということのようです)。
そして、死亡者が 26名。
これは、
約 6パーセントから 7パーセントだという驚異的な高い致死命中率を示しています。
20発以下の弾で1人射殺している。
このニュースを見た元日本軍の砲兵隊長だった山本七兵さんが「非常に不思議」に思った気持ちが書かれてあります。それは、「戦争での実戦では7パーセントの致死命中率など絶対にありえない」からです。
「実戦」と「これらの乱射テロ」の違いは、
・無防備であること
・無抵抗であることが多いこと
・突然であることが多く、心身共に準備していない
ということがあります。
戦闘ではない場合に致死命中率が驚異的に高く跳ねあがる理由はこれでなのですが、それにしても、今回のノルウェーの事件の
・700人のうち、80人以上を射殺した
というのは「どういうことが起きていたのか」ということを不思議に思います。
というのも、ニュースを読むと、
被害者たちは「逃げている」からです。
普通、このような単独での銃による大量殺戮というのは、考えられるのは、「並べて不動の状態などにしてから射殺する」という方法くらいしか思い浮かばないのです。
たとえば、 2007年に米国のバージニア工科大学で、韓国人学生による銃乱射事件があって、この時は米国乱射事件史上最悪の 33名の死者を出していますが、この時も、私は犯人の
チョ・スンヒの驚異的な致死命中率に驚いたものでした。
何しろチョ・スンヒの武器は「拳銃二丁」。
事件をニュースで見た時、流される報道は「拳銃」だという。
「そんなバカな」と私は思いました。
そんな致死命中率を銃の素人が達成できるわけがない!と。たとえば、米国の乱射事件史上で最も有名なもののひとつが、1966年の「テキサスタワー乱射事件」で、この犯人チャールズ・ホイットマンは海兵隊で射撃の訓練を積んだ一種のプロでした。
しかし、チョ・スンヒの致死命中率はそれをはるかに越えていた。
▲ 映画「フルメタルジャケット」(1987年)でも、教官が「奴は海兵隊で訓練を積んだからこそ、あの距離で多数射殺できたのだ。海兵隊はすごい」と言うシーンがあります。これを達成できるのが、上に挙げた、
・無防備であること
・無抵抗であることが多いこと
・突然であることが多く、心身共に準備していない
であるように思います。
チョ・スンヒ事件は、その経緯( Wikipedia による)が、
9時20分〜30分、容疑者が学生寮より800メートル離れた講義棟の教室に乗り込み、まずは教授を射殺。次に教室の鍵を閉めて学生を外に出さないようにした上で銃を乱射。
この短時間の間に多数が射殺されている。
10分間くらいで数十人が撃たれている。
これは実は、犯人はチョ・スンヒひとりだったので、誰かが抵抗して押さえつければ、これほどの被害にならなかった可能性もあります。アメリカ人の学生は韓国人のチョ・スンヒより体格の大きな男性も多かったはずですし。
しかし、実際には無抵抗で、射殺されていっている。
ノルウェーの今回の乱射では、武器自体が違うようで、報道では「拳銃、自動小銃、ショットガン」となっています。しかし、それでも狙撃者が一人なら、同時にその3つの銃を使えるわけでもないし、どうにも単独犯とすると、壮絶な致死数に思います。
海外や日本で乱射事件に巻き込まれたら私は子どもの頃から「致死命中率」を計算していたせいか、いつも「ここで乱射されたらこうする」とか、「この場合はこうする」と考えることが多いです。
そのことを細かく書くと何のブログだかわからなくなるので書かないですが、「銃に対抗する」手段はないですが、乱射事件そのものに対応する方法は多少はあると思います。
仮に、乱射に巻き込まれた場合は、ケースバイケースで何ともいえないですが、「相手の視線から外れる」ことが第一条件だとはいえ、今回やチョ・スンヒの時のように、「
殺すために相手が追ってくる場合」は、別の対応となるように思います。この場合、犯人がひとりなら、「基本的には、同時にはひとり程度(一方向)しか撃てない」ということを覚えておいてもいいかと思います。
乱射事件はどこでも起こり得ます。
もちろん日本でも。
ノルウェーのように平和な国で起きたことがひとつの象徴ではないでしょうか。
そして、チョ・スンヒ事件の時同様、「やられる側の無意味な無抵抗」が事態もいくつか悪化させることもあるということは覚えていてもいいように思います。なお、乱射事件では最後に「犯人が自殺する」ことがとても多いです。
それでは、BBC の報道より。
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