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2014年06月06日



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米国オレゴン州のヒトデは「絶滅の方向」へ。そして、その出来事から考える、神や神のようなものが自然の中に創造したものたちの色や形の意味



「これは前例のない出来事です。私たちはこれまで、このような大規模で壊滅的な消耗性疾患の拡大を見たことがありません。」
− ブルース・メンゲ教授(オレゴン州立大学総合生物学科)


oregon-seastar-top.gif

▲ 2014年6月4日の米国オレゴン州立大学ニュースリリースより。






 


アメリカ西海岸のヒトデの大量死は重大局面に

数日前に、

海で何が起きているのか : 5月から始まった全世界での数百万匹規模の海洋生物の大量死の理由は誰にも説明できない
 2014年06月02日

という記事を書いて以来、その翌日、またその翌日というように、連続して、大学の研究機関から「海の崩壊」に関しての研究発表が続いています。

上の記事の翌日には、米国コロンビア大学の地球研究所から「海が急速に酸性化している」という研究発表のリリースがありました。

そのことは、

「地球の海が急速に酸性化している」という論文を6度目の大量絶滅の中にいるかもしれない今の時代に読む
 2014年06月03日

という記事に書きましたが、その中のコロンビア大学の論文には下のような記述がありました。


ワシントン州とオレゴン州、そして、カリフォルニア沖で、小さな浮遊性の巻き貝やプテロポッド(クリオネのような生き物)の半分以上が、極度に殻が溶解する症状を示していることを突き止めた。

また、海洋の酸性化は、ワシントン州とオレゴン州で 2005年から起きている広範囲でのカキの大量死と関係していると考えられている。




そして、昨日は、そのオレゴン州にあるオレゴン州立大学から、冒頭に貼りましたように、「オレゴン州では地域に一部の種類のヒトデが全滅されると予測される」というショッキングなニュース・リリースがありました。この2週間ほどで急速に事態が悪化したのだそうです。

このアメリカ西海岸のヒトデの「消滅」は、消耗性疾患というようにつけられていますけれど、要するに、

自切して溶けて消えていく

という、見た目もその状況も悲劇的なものです。

アメリカの海岸でのヒトデのことを最初に記事にしたのは、昨年 11月でした。

米国の海に広がる衝撃的な光景 : まるで絶滅に向かおうとしているような「ヒトデたちの自殺」
 2013年11月07日

というもので、この時には「溶ける」という概念は報道にはまだ登場していませんでした。

自切」(じせつ)という生物用語がありますが、これは簡単に書くと、

節足動物やトカゲなどに見られる、足や尾を自ら切り捨てる行動


ということになりまして、自らの体の器官を切り捨てる理由については、一般論としては、たとえば、「トカゲのしっぽ切り」で知られるように、本来は、生き物が自分自身を守るために、重要ではない自分の器官を自ら切り落とす機能を言います。

tokage-01.gif
トカゲのしっぽより。


しかし、アメリカのヒトデの場合は、そのような一般的な意味での自切ではなく、「自殺のための自切」という駄洒落にもできないような悲惨な行為をおこなっていたのです。

hitode-02.jpg

▲ 上の記事に載せたカリフォルニア州のロングマリン海洋研究所員のブログより。

この写真が添えられていたブログの文章は次のようなものでした。


研究室にいるすべてのマヒトデが死ぬまで、すなわち、最後のマヒトデが自分自身の体をバラバラにしていくまで、私は丸3日間、そこにいた。そしてこの写真が、今朝、私の飼育する生き物に起きた光景だった。

ヒトデの本体はまだ残っているのだが、彼らは気まぐれに自切していくので、私は切断された触手を検査しながら、さらに時間を過ごした。彼らは、自分が死んでいることを知らない。

私は、この、もともと美しく複雑な「海の星」の切断された腕を解剖スコープの下のボウルに入れて写真を撮った。この数週間で海で起きている様々なことは、もしかすると、何か本当に悪いことの始まりなのかもしれないとも思う。




この研究員の人が、上の時期、つまり、 2013年 9月 13日に書いた、

もしかすると、何か本当に悪いことの始まりなのかもしれない。


という予感は不幸にして的中したのでした。

それが冒頭にある「オレゴン州での全滅」であり、原因がわからずに、爆発的な拡大を続けているということは、これは次第に「アメリカ西海岸全域での(ある種の)ヒトデの全滅」という方向性に進む可能性はかなりあると思われます。

そして、今回のオレゴン州のヒトデの全滅は、この時のカリフォルニアの海洋研究所の研究員が見続けていた「自切」ではなく、もっと悲惨な状態、つまり、「溶けていく」というものでした。


この「ヒトデが溶けて消えていく」ということに関しては、昨年12月の記事、

「星が消えて海が壊れる」:アメリカ周辺のヒトデの大量死の状態は「分解して溶けて消えていく」という未知の奇妙なものだった
 2013年12月05日

の頃から明らかになってきたことでした。

そして、直接的に報道されるきっかけとなったのは 20年間のダイバー歴をもつローラ・ジェームス( Laura James )さんというシアトル在住の女性ダイバーが、「1年間のシアトルの海底の変化」を追っていた際に、

「ヒトデたちがドロドロに溶けていく光景」

を目撃し、長期間にわたり、シアトル沿岸の様子を米国の動画サイト Vimeo にアップし、それが各メディアで一斉に報じられたのでした。

vimeo-02.gif

▲ 2013年11月26日の米国 KUOW より。動画はこちらにあります。


この状態に陥ったヒトデが最終的にどのようになっていくかということに関しては、下の写真をご覧になれば、おわかりになるかもしれません。

seastar-death-03.gif


溶けて海底に落ちたヒトデは上の写真のように粘質の「物質」となり、海の底や岩に付着します。
その白い粘体がシアトルの海底中に広がっているのです。

上の記事では、オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルドの「奇妙な病気がヒトデを粘体の物質にしてしまっている」というタイトルの記事を翻訳してご紹介したのですが、記事の中で、米国コーネル大学の生態学者のドリュー・ハーヴェル( Drew Harvell )教授は、以下のように語っていました。


「現在起きていることが極めて極端な出来事だということは科学者全員が考えていると思いますが、さらに重要なことは、これらの出来事が『変化の前哨であるにすぎないかもしれない』ということなのです」



そして、ハーヴェル教授は、


「最も恐ろしいことは、原因が何なのかまったく見当がつかないことです」



とも言っています。

今もなお原因がわからないままに、オレゴン州のヒトデたちは「溶けて消えて」いこうとしています。





ヒトデがこの世に存在する意味

ちょっと話がずれますけれど、ヒトデというのは、少なくとも積極的に食用にするものでも、何か人間の生活に盛んに使われるというものではないですけれど、海の生き物として、とてもメジャーな印象があると思います。

生態系の観点からいえば、ヒトデは食物連鎖上で重要な意味を持っているだろうことはあるのでしょうけれど、それ以上に、「印象が強い」というのは、やはり「形」だと思います。

星の形。

英語で「海の星( sea star )」と呼ばれ、種類によっては死ぬほど美しい。

hitode.jpg

drugata-v-men より。


唐突な展開に思われるかもしれないですが、シュタイナーは、神秘学の訓練のひとつとして、美しい花や植物を「はっきり認識できるまで」魂を込めて観察し、あるいは、その植物の「種」を目の前に置き、その種が、成長していき、美しい話を咲かせるまでの具体的なイメージを抱くというようなことを記しています。

これはつまり、「自分の想像力の中で美しい花の咲く植物を作り上げる」という「自然(あるいは、生命)と人工物」の違いを自分の内面に刻んでいくことによって、生物に含まれている「目にみえない何か」を感じていく・・・というような修行(?)をおこなうそうです。

そのような「目に見えない何か」の中から自然の外界世界に出現する色や形に対しての想像力を養っていく。

自己の内面と外面の結びつきを強化し、「自分はすべての生命の一部である」と認識していく・・・というあたりが重要なことらしいのですが、それにしても・・・・・いったい私が何を言いたいのだかよくわからないかもしれないですがつまり、自然学や生態学から離れて見てみれば、美しい花や、美しい色や形のヒトデなども、(事実関係は別として)「私たち人間を楽しませてくれるためにある」という側面があって存在しているのではないかと思うことは昔からあるということなのです。

これらは自然科学的には当然のように否定される概念ですけれど、あくまで、信仰や神秘学の観点からの話として見れば、「神は人間に必要なものはすべて造った(そして必要のないものは一切造らなかった)」という概念と似たような話です。

このように「神」というような言葉も入ってきますと、16世紀のデンマークの天文学者であるティコ・ブラーエという人などは、「星」について、下のように言っています。スヴァンテ・アレニウスの『宇宙の始まり』という著作に掲載されているものです。


星の影響を否定する者は、神の全知と摂理と、そして最も明白な経験を否認する者である。神がこの燦然たる星々に飾られた驚嘆すべき天界の精巧な仕掛けを全く何の役にも立てる目的もなしに造ったと考えるのは実に不条理なことである。



Tycho-Brahe.jpg

▲ ティコ・ブラーエ( 1546年 - 1601年)。


このティコ・ブラーエという人は、Wikipedia によりますと、

膨大な天体観測記録を残し、ケプラーの法則を生む基礎を作った。


という科学者なんですが、その彼さえも、「神がこの美しい星たちの精巧なシステムを何の目的もなしに造ったと考えるのは不条理だ」と言っていたようです。

さらには、もっと極端なことを言っていた人もいます。

18世紀のスウェーデンの科学者であり神秘主義思想家のエマヌエル・スヴェーデンボリなどは、著作『宇宙間の諸地球』の中で、


「すべての地球にとっては、人間が目的物であって、それぞれの地球はそのために存在する」



というようなことを記していたり。

要するに、月も太陽も火星も、そして地球自体も、

> 人間のために存在する(あるいは人間のために創造された)

と言っているのです。

ということは、そこに存在する自然、生物、鉱物など、つまり、花もヒトデも、

> 人間のために存在する(あるいは人間のために創造された)

ものかもしれません。くどいようですが、これは自然科学の面から考える話ではなく、宗教的、神秘学的な視点から見た話です。


いずれにしても、

きれいなヒトデが全滅していく

という出来事は、単なる自然科学的な側面以上に個人的には考えるところの多い出来事でした。

話が脱線しましたが、オレゴン州立大学のニュースリリースの概要を記しておきます。




Sea star disease epidemic surges in Oregon, local extinctions expected
米国オレゴン州立大学 ニュースリリース 2014.06.04

オレゴン州のヒトデの疾病の爆発的拡大に関して地域的には全滅が予想される


seastar-oregon-us.JPG


このほんの2週間ほどの間に、オレゴン州沿岸のヒトデの消耗性疾患は、歴史的な範囲に拡大しており、ヒトデの種類の中には、全滅するものもあると予測されるという事態となっている。

消耗性疾患の発生を監視してきたオレゴン州立大学の研究者によると、オレゴン州沿岸では、局所的に一部の種類のヒトデが絶滅するかもしれないという。

この消耗性疾患は、アメリカ西海岸で広く知られていたが、今回のオレゴン州のように、急速に広範囲に拡大するのは異常としか言えないと研究者たちは語る。

推定では、現在、地域的に最高で 60パーセントのヒトデが消耗性疾患で死んだと考えられるが、じきに 100パーセントが死に絶える海域が出るだろうと予測されている。

オレゴン州立大学総合生物学科のブルース・メンゲ( Bruce Menge )教授は以下のように言う。

「これは前例のない出来事です。私たちはこれまで、このような大規模で壊滅的な消耗性疾患の拡大を見たことがありません。原因もまったくわからないのです。そして、これにより、どのような深刻なダメージがあるのか、あるいは、今後もこんな状態が持続していくのか、それもわからないのです」。

決定的な原因はまだ同定されていない。

細菌やウイルスなどの病原体などの可能性も含め、研究者たちはこの問題に取り組み続けている。



  

2014年06月05日



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▲ 2014年5月19日の米国のクリスチャン・サイエンス・モニターより。






 



水の惑星「地球」のほとんどは海の水

先日、

海で何が起きているのか : 5月から始まった全世界での数百万匹規模の海洋生物の大量死の理由は誰にも説明できない
 2014年06月02日

という記事で、世界規模での海や川などでの海洋生物の大量死が続いているかもしれないということについて書きました。

前回は、その数が多いこともあり、羅列しただけで終わってしまったのですが、今回は前回羅列した記事から、印象的なものについて個別にピックアップしてみたいと思います。

多分、アメリカの大量死ばかりになってしまいそうなのですが、他の国の大量死報道は、報道自体の記事が曖昧なものが多く、状況や、あるいは、数値も今ひとつ確証できない面もありますので、結局そのあたりが比較的、正確に記事に示されているアメリカの記事をご紹介することになると思います。


ところで、地球というのが、

・陸の比率 約 29パーセント
・海の比率 約 71パーセント


という水の惑星だということは何となく知っているのですけれど、さらに、「地球の水全体の割合」というものは下のようなことになるそうです。

earth-water.gif

▲ 喜多方市水道課「地球上の水」より。


地球にある水のうち、97パーセント以上が海の水ということで、地球とは実に「海の惑星」であることにも気づきます。





極端な天候も「海」が要因を作っている部分がとても多いのです

先月の5月あたりから、日本を含めた東アジアでは、非常に極端な気候に見舞われ続けています。

韓国の猛暑 5月31日

teg-100.gif

朝鮮日報より。


大邱(テグ)は韓国の首都ソウルより東南にある町ですが、上の通り。
記事の写真は、熱で曲がってしまった線路です。


中国の猛暑 5月29日

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iask より。


中国の暑さは、先日の

「気温 40度の5月」の光景が気になりつつ、聖書とクインビー博士と森田正馬博士の言葉から考える「この世」と「神の子である人間という概念」
 2014年05月31日

で、北京の気温が「 42度」に達したことを書きましたが、上の記事の見出しは、ついに「 500年」という数も出ています。ただ、この中国のほうの記事の「 500年」という数字は、500年ぶりという意味ではなく、


中国科学院の研究では、気候変動は 500年の変動サイクルを持っていて、地球温暖化は過去一世紀に及んで続いていたことが示されている。現在はその変動サイクルの 500年の最後に位置していると同研究は述べる。



と書かれてあります。

日本は、すでに各地で梅雨入りしていますけれど、ほんの少し前まで、観測史上1位の記録が続出する猛暑が、日本や中国や韓国で続いていました。6月 1日には、岐阜県で「36度」を超えていたことが、報道されています。

何よりもスゴイと思ったのは、下の「北海道」のニュースです。

hokkaido-2014.gif

▲ 2014年6月2日の tenki.jp より。


さらには、6月 3日の次のニュースのタイトル。

美幌で気温37・2度 北海道内、観測史上最速の猛暑日
 北海道新聞 2014.06.03

そして、この日の全国の気温のランキングをご覧下さい。

気象庁発表 - 全国観測値ランキング(6月3日) 14時00分

hokkaido-2014-06-03.gif


これを見て、私は思わず「あのなあ・・・」と呟きました。

30年前までとはいえ、20年近く北海道で過ごしましたけれど、北海道の夏というのは8月の真夏のほんの一時だけ、「 30度以上になる日が何日かあるかどうか」といったあたりが普通の北海道の夏というものなのです。

しかも、今はまだ夏じゃないというのに。

これを異常気象と言わずして何といったらいいのか。

また、下の気温分布は、その 6月 3日の 14:00 の全国の気温分布です。

kyushuu-2014-06-03.gif


そして、今日 6月 5日には、


高知 6月雨量を超える大雨が一日で
ウェザーマップ 2014.06.05

5日午前、動きの遅い低気圧の影響で、太平洋側では局地的に激しい雨が降っている。高知県では降り始めからの雨量が500ミリを超えた所があり、6月の月降水量を大きく上回る記録的な大雨となった。



なお、中国でも5月下旬から南部で連日の豪雨により、激しい洪水が発生している州があります。

中国南部で繰り返す豪雨と洪水。数日前に洪水被害が出た貴州省でふたたび洪水により20万人が被災
 来たるべき地球のかたち 2014年06月05日

などに現在の中国の洪水について記していますので、ご参考下されば幸いです。

いずれにしても、世界の気候に影響を与えることで有名なエルニーニョ(南方振動)や、 NAO (北大西洋振動)なども「海と大気の相互作用」で発生するとされていて、やはり地球の表面の主は海なのだと実感します(地球の内部の主はわからないです)。

いずれにしても、今日( 6月 5日)あたりからは豪雨で荒れた天候になるところが多そうですので、重々お気をつけ下さい。過去の経験則を何もかも吹き飛ばすような天候の状態がいつ現れるかわからないのが「今」という時代だと思っています。

おばあちゃんの知恵袋が効かない地球となりつつあるようです。

長い前置きとなってしまいましたが、先日の記事、「海で何が起きているのか」の中から印象的な記事の概要を追記としてご紹介しておきます。





アメリカの「凶暴なアジア鯉」が死んだ理由

前回の記事でご紹介した、

50万匹のコイがケンタッキー州のカンバーランド川で腹を上にして浮いているのが発見

という報道ですが、この「 50万匹」という巨大な単位はやはり気になります。

asian-carps.gif

▲ 2014年5月18日の Columbus Dispatch より。


見出しに「アジアン・カープ( Asian carp )」とあり、直訳すると、「アジアの鯉」ということなのですが、単にアジアの鯉という意味ではなく、下のようなものを言うようです。


アジアンカープ

米国に人為的に移入された複数のコイ科の魚の、米国における総称。アジアンカープは外来種として移入先の生態系を撹乱しているほか、水面から高く飛び跳ねてボートの乗客などが怪我をする事例が多発していることも問題視されている。



ということで、アメリカにとっては外来種ということのようです。上にある「水面から高く飛び跳ねてボートの乗客などが怪我をする事例」というのは、意味がよくわからなかったのですが、調べると、下のような写真が次々と出てきました。

carp.jpg

irjci.blogspot より。


何だかスゴイ光景ですが、しかし、こんなに元気なアジアン・カープが、50万匹が一斉に死亡。原因については、上の記事のタイトルに「ウイルス」と書かれてありますが、記事には、以下のようにあり、実際には死因はわかっていないようです。


これらの原因について、ケンタッキー当局はまったく決定することができないでいる。この大量死は、たった1日か2日の間に発生した。疑われているウイルスは外来種のハクレンに感染することが知られているが、米国で自然に棲息する魚類には感染しない。

現在のところ、今回の大量死に対してのいかなる公式声明もケンタッキー州魚類野生生物局の調査関係者たちからは出されていない。




ウイルスだとしても、「謎のウイルス」ということなのかもしれないですが、50万匹もの数のほぼ同種の魚が「1日か2日の間に一気に死亡した」ということになりそうです。




カリフォルニア沖での大量の海洋生物の死

これは、前回の記事では、

5月中旬、カリフォルニア魚類野生動物管理局の局員が、アンチョビ、アカエイ、タコなど、何十万という魚が南カリフォルニア海岸沖で死んでいるのを発見。

としたニュースで、今回の記事の冒頭にその報道を貼りました。

ここにも「いったい何が起きているのか」というような単語が見えますが、このカリフォルニアの大量死では、

・アンチョビ
・アカエイ
・タコ


など種類も生態も違いそうな生物の大量死が発見されたのだそう。

全部で 35000匹程度死んでいたのではないかと地元の天然資源漁業省は語っているそうですが、沖合でのものですので、正確にはわからないようです。

これも正確な原因はわかっていません。「カリフォルニアの熱波による水中の酸素不足」が有力視されているそうですが、それなら他の魚類も死んでしまっていても不思議ではない気もします。

いずれにしても、この後のものも含めて、「明確に大量死の原因がわかった」というものは極めて少ないです。中国での魚の大量死では、工場の排水など、いわゆる公害が原因であることがほぼ確定できるものも多いですが、その他の多くは、「よくわからない」というものがほとんどです。


また、カリフォルニアでは、アザラシや若いアシカたちが記録破りの数で死にかけているということも報じられています。

Young seals, sea lions starving in record numbers
 SFGate 2014.05.03

上の記事を抜粋して翻訳しますと、下のような感じのようです。


モントレー獣医科学センターの局長は以下のように言う。

「私たちが今ここで見ている動物たちは、基本的に飢えて死ぬ間際にあるのです。しかし、原因がまったくわからない。ミステリーとしか言いようがない。私たちは、この現象が今後も普通に続いていくことだけはないと信じたい」

4月30日の時点で、429頭のアシカ、アザラシ、オットセイが獣医科学センターに運び込まれた。これは、1988年に記録された1年間の記録を、すでに4月で上回っているということになる。




というようなことになっているのだそうですが、原因として考えられているのは、

・藻の発生による赤潮

・ムール貝、アンチョビ、イワシやニシンなど、アシカなどのエサとなる海洋生物に神経毒のドウモイ酸が蓄積されているという可能性


などだそう。

ドウモイ酸というのは Wikipedia によれば、


天然由来のアミノ酸の一種で記憶喪失性貝毒の原因物質。神経毒であり、短期記憶の喪失や、脳障害を引き起こし、死に至る場合もある。



とのことですけれど・・・仮にこれが原因だとした場合は、ムール貝、イワシやニシンなんかは人間もよく食べるものですけど、うーむ。

しかし、それらの要因も考えられるというだけで、この原因も特定はされていません。





ミシシッピのウミガメの大量死

ミシシッピ州の海岸では、「数十匹の死んだウミガメが海岸に打ち上げら続けている」という出来事が起きています。

sea-turtle.gif

▲ 2014年4月29日の米国 WSMV より。


打ち上げられたウミガメの数は、上の記事がリリースされた 4月 29日までほぼ 40体。そして、この「ほんの数日」のあいだにも 10匹の死んだウミガメが打ち上げられているそうですので、その後も続いている可能性も強いかもしれません。

正確な原因はわからないようですが、上の記事に出てくる「国際海洋鉱物学会( IMMS )」の環境学者であるアンディ・コールマン博士( Andy Coleman, Ph.D. )が挙げた「可能性」は下のようなものでした。

・2010年のメキシコ湾のディープウォーター・ホライズン原油流出事故の影響

・海水温の極度の低下

・海水温の低下のための水中の食べ物の不足


などです。

また、ミシシッピ州では、死亡したイルカも数十頭打ち上げられているそうで、何らかの海の異変が起きていることは間違いがないようです。

メキシコ湾の原油流出事故との関係は微妙ですが、事故後に、メキシコ湾で魚の大量死が常態化した時期があったのは事実です(参考記事:メキシコ湾に漂着し続ける大量のイルカの赤ちゃん)。


また、過去記事の、

鳥と魚の大量死をめぐる報道より(3) 世界に拡大する大量死と磁場変動説。そしてコレキシットの幻影
 2011年01月06日

の中で、ロシア天然資源環境省の言葉を引用したプレスTV の報道をご紹介したことがありました。


Oil spill threatens 'total destruction'
Press TV 2010.05.28

原油流出は「完全な破壊」をもたらす

ロシア天然資源環境省は、BP社の原油流出が北米大陸の東半分のすべてを 「完全な破壊」 に導くだろうと述べた。

不吉なこのレポートは、メキシコ湾で起きている BP の原油流出とガス漏れから生じる差し迫った災害を警告している。欧州の連合タイムズは、「人類史の中で最悪の環境大災害と呼ぶにふさわしい」と報じた。

ロシアの科学者たちは、BP社がメキシコ湾での原油の流出の規模を隠すために、何百万ガロンもの化学石油分散薬の「コレキシット9500 ( Corexit 9500 ) 」を海洋に注入していると確信している。

専門家によると、 コレキシット9500は、原油そのものより4倍以上有毒な溶剤だという。この 2.61ppm のレベルの毒性を持つ溶剤が、メキシコ湾の暖水と混ざることによって、その分子が「相転移」すると科学者たちは考えている。

この転移は、液体をガス状に変える作用があり、ガス化した後には雲に吸収される場合がある。そこから、地上に「毒性を持つ雨」が放たれ、あらゆる生き物たちの生態系を滅ぼす「想像もつかないような環境の破滅的災害」を引き起こすかもしれない、とレポートにはある。




この「相転移」という現象により、「毒性を持つ雨が現在実際に降っているのかどうか」はわからないですが、そのような可能性に関して、ロシアの科学者たちは 2010年に発表していました。


いずれにしましても、本当に思うのは、

海が死ねば私たちも死ぬ

ということなのかもしれないとは思います。

感覚的な話ではなく、現実的な話として。



  

2014年06月03日



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今朝、いろいろとニュースを見ていましたら、昨日の記事、

海で何が起きているのか : 5月から始まった全世界での数百万匹規模の海洋生物の大量死の理由は誰にも説明できない
 2014年06月02日

と関連しているというわけではないですが、海の話題として、「海が急速に酸性化している」という米国コロンビア大学の地球研究所 ( The Earth Institute, Columbia University ) の記事がありました。

ocean-acidification.gif

▲ 2014年6月2日のコロンビア大学ニュース・アーカイヴ Modern Ocean Acidification Is Outpacing Ancient Upheaval, Study Suggests より。






 


読むと、原因については確定した結論が出ているわけではないようなのですが、海の水が早いスピードで酸性化してきているのは確かなようです。

この「海の酸性化」は、この論文によると、約 5600万年前にも起きていたことが確認されているそうなのですが、その 5600万年前には、海の酸性化によって、

ある種の生物は絶滅



ある種の生物は進化(登場)

したとあります。

実際に、現在、海が酸性化しているのだとしたら、また同じようなことが海で起きているということなのかもしれないですが、上の論文には最近の海の状態として、以下のようなことも起きていることも知りました。


アメリカ海洋大気庁( NOAA )の海洋学者の最近の研究では、ワシントン州とオレゴン州、そして、カリフォルニア沖で、小さな浮遊性の巻き貝やプテロポッド(クリオネのような生き物)の半分以上が、極度に殻が溶解する症状を示していることを突き止めた。

また、海洋の酸性化は、ワシントン州とオレゴン州で 2005年から起きている広範囲でのカキの大量死と関係していると考えられている。珊瑚礁への悪影響も懸念されている。




とのこと。

海の水が酸性化すると、貝の殻って溶けちゃうんですね。

調べてみると、 Yahoo ! 知恵袋に、「自由研究で、酢に溶けるものと溶けないものの実験をしました」という中学生の人の投稿を見つけまして、そこには、


貝がら・アルミ・卵を酢の中に入れました。
結果は、貝がらはすごく柔らかくなってもろくなりました。
卵は、殻が溶け、黄身はガチガチになりました。




とのことで、「その理由を教えてほしい」というものでしたが、答えとしては、


貝殻や卵殻は、タンパク質の網目に炭酸カルシウムが沈着してできたもので、これらは酢の成分の酢酸と反応して、二酸化炭素を発生して酢酸カルシウムとなり溶けてしまう



ということだそうです。

つまり、「酢の中では貝は生存し得ない」と(他の生物も酢の中で生きるのは難しいだろ)。

まあ、それはともかく、その生物の外皮などの組成の成分によっては「海の酸性化によって溶けやすくなる」ということはあるようです。

そういうのを考えると、過去記事の、

「星が消えて海が壊れる」:アメリカ周辺のヒトデの大量死の状態は「分解して溶けて消えていく」という未知の奇妙なものだった
 2013年12月05日

での、「アメリカの西海岸でヒトデが溶けている」ことを思い出します。

seastar-death-02.jpg

▲ 上の記事より。


これも主として、アメリカの西海岸で起きていて、上の論文にある「巻き貝が溶けていく」という現象が確認された場所あたりと同じような海域です。ヒトデの体の組成はわからないですし、これが海の酸性化に原因があるかどうかはわからないですが、何だかやっぱり海は「壊れてきている」のかもしれないと思ったりもします。

最近は海の生き物の話題が多いですしね。

ダイオウイカとか、メガマウスとかいう深海の巨大なサメとかリュウグウノツカイとか、いろいろとありますけれど、とにかく、ふだん見られないものが出て来たり、あるいは逆にふだんいる魚が見られなくなったり。

原因はどれもわからないままですけれど、いろいろと総合して考えてみると、思っているより海の異変というものは進行しているものなのかもしれないです。

関係のない話ですが、ここ数日、海外の報道では下のような「地球が6度目の大量絶滅に瀕している」という記事をよく目にします。

sixth-extinction-top.gif

▲ 2014年5月31日の HAARETZ より。


地球の大量絶滅というのは、地球の誕生以来、幾度となく起きていますが、その中でも地球全体の生物のほとんどが絶滅してしまったような、非常に規模の大きな絶滅が「過去5回」あるとされていて、そのようなわけで次に大量絶滅が起きれば6回目となりますので、上の記事のように「6回目の」という言葉がつくというようなことのようで・・・。

と書いたところで、今、私は「地球の誕生以来」という言葉を使ったことに気づき、この表現自体についてちょっと注釈しておきます。




惑星としての地球の歴史の真実

最近の宇宙での発見や新しい論文などを見ていますと、ますます「現代宇宙モデル」というものの基盤が脆くなってきている感じが強く、少し前は、ドイツのハイデルベルク大学の理論物理学者が「宇宙は膨張していない」という論文を発表したことがあったりしました。

universe-not-expanding.gif

ネイチャーより。


そんな感じで、最近では、

宇宙はビッグバンで生まれて以来、膨張してきた


というこれまでの宇宙モデルに対して、多くの懐疑が噴出し続けています。

ちなみに、現在主流のこのビッグバン宇宙論に対して、最も強固にそれを否定し続けたのが、このブログでは、パンスペルミア説でご紹介することの多いフレッド・ホイル博士たちであり彼らが提唱していた「定常宇宙論」というものでした。

hoyle-cabbridge.jpg

▲ 宇宙論の講義をしているフレッド・ホイル博士。1968年、英国ケンブリッジ大学。


Wikipedia からご紹介します。


定常宇宙論

定常宇宙論とは、1948年にフレッド・ホイル、トーマス・ゴールド、ヘルマン・ボンディらによって提唱された宇宙論のモデルであり、(宇宙は膨張しているが)無からの物質の創生により、宇宙空間に分布する銀河の数は常に一定に保たれ、宇宙の基本的な構造は時間によって変化することはない、とするものである。



この中の「宇宙は膨張しているが」自体も、場合によっては、今後否定されるかもしれません。

ところで、上の定常宇宙論の説明で下の部分に違和感を感じる部分があります。
それは、

無からの物質の創生


という表現です。

「無からの物質の創生」というのは表現自体がまるでオカルトのような感じで、過去記事、

大出血のような太陽フレアと真っ赤な富士山上空を眺めながら「物質は永遠」という法則を子ども科学本で知った日
 2012年09月03日

の中で、『物質不滅の法則』(現在は、質量保存の法則)というものを、子ども科学本で知った時のことを書いていますが、この物質不滅の法則というものは、紀元前4世紀のアリストテレスとデモクリトスの論争での言葉を引用しますと、


「ものは消えてなくならない。ものが変化して、なくなったように見えても、実は別のものがそのかわりにできている」


という法則であり、「科学の基本的な原則」だと思われます。

そして、Wikipedia の質量保存の法則には、

宇宙全体の質量とエネルギーの総和はゼロである。


という記述があります。

これの意味するところはごく普通に考えて、


「宇宙は常に同じ物質群が形を変えて輪廻を繰り返している」


というのが物質としての宇宙の正体だと私は思っています。

無から何かが生まれたり、あるいは、存在するものが完全に消滅したり、といったことは、宇宙の根本においては起こりえないことのようです。

そういう意味では、上のほうに書きました「地球の誕生」という言い方にも違和感を感じるのですが、大量絶滅の話を書く上でそのあたりから始めてはややこしい話となりますので(もう、ややこしくなってるって)、一般的な大量絶滅の話として、「地球の誕生以来」という表現をさせてもらっています。


人間はその性質として、「始まりを探したい」という傾向が強いもののようです。

上の過去記事でも、私は下のように書いています。


なんでも「最初」を探ろうとする。
このあたりは進化論も同じだと思います。
起源を探す。

しかし、実際には「起源」はあらゆる存在には「存在しない」ことなのだと最近は思います。この世に存在するのは「状態」だけだと思います。

宇宙は成長もしないし、終わりもしない。
何しろ始まりがないのですから終わらない。
「始まりがない」ことの証拠は終わりがないから。

輪廻を繰り返すだけ。




何だか、話がとんでもなく脱線しましたが、「大量絶滅」の話を書いていて、逸れてきてしまったのでした。




6度目の大量絶滅

さて、その大量絶滅の中で、規模が非常に大きな絶滅が「過去5回」ありました。
その5回の規模が大きかった大量絶滅は以下の通りです。


・オルドビス紀末 約4億4400万年前 すべての生物種の85%が絶滅
・デボン紀末   約3億7400万年前 すべての生物種の82%が絶滅
・ペルム紀末   約2億5100万年前 すべての生物種の90〜95%が絶滅
・三畳紀末    約1億9960万年前 すべての生物種の76%が絶滅
・白亜期末    約6550万年前  すべての生物種の70%が絶滅



現在は、上のような大量絶滅の最中にある、というのが最初のほうに貼った記事の内容ですが、しかし、「現在、6度目の大量絶滅が起きているか、その渦中にある」という意見や学説は以前からあったもので、 大量絶滅 - Wikipedia にも、


1998年のアメリカ自然史博物館による調査によると、70%の生物学者は、現在、大量絶滅が起こっていると見ている。



とあり、また、


ハーバード大学のE. O. ウィルソンは、人類が引き起こしている生物圏の破壊によって、これから100年間の間に、地球上の半分の種が絶滅するのではないかと予想している。



というようなことも書かれていますけれど、このような、いつでも出される「人類が引き起こしている生物圏の破壊」とか、そういうような単語ですけど、全生物の 90パーセント以上が絶滅した 2億 5100万年前などを見ますと、「真の意味での絶滅」は、「人類が引き起こしている生物圏の破壊」などという生ぬるい構造で起きるものではないと考えます。

それは、「完全なる地球とその生命の変化」と「刷新」が「何かによって」おこなわれるというようなことだと思います。


それが証拠に、上の5回の大量絶滅では、その後の地球で、「さらに進化した生命たちが登場」しているわけですので、これらの出来事は、

絶滅

というネガティブなキーワードよりは、

進化のための刷新

というニュアンスが強いと私には思われます。


冒頭のほうにご紹介した、「6回目の大量絶滅」に関しての最近の報道は、米国デューク大学の生物学者であるスチュアート・ピム( Stuart Pimm )博士が発表した論文の中で、

「絶滅のスピードが増している」

ということを調査研究したものです。現在の大量絶滅は、過去の大量絶滅の時の「 1000倍の速さ」で進んでいるというようなことがわかったというようなものです。


だということは、過去の例を見れば、もし今本当に絶滅の渦中にあるのならば、


  より進化した生命の登場が近づいている



と考えた方が、まあ、ポジティブなのではないでしょうか。

この「大量絶滅」が近づいているかもしれない、あるいは今その渦中にあるということなどは昨日の海洋生物の大量死の記事などもそのニュアンスを感じられるひとつのようにも思います。

そして、海が「完全な異常」となれば、地上の生物も実は生きていくことはできないはずです。
海の影響は常に地球全体に及んでいます。



  

2014年06月02日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。





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▲ 2014年6月1日のロシアのプラウダ Emergency: Our planet is dying より。






 



私たちの星は死にかけている、という記事を読み

ロシアのプラウダを見ていましたら、上のようなタイトルの記事がありまして「何ごと?」と思いましたら、「魚の大量死が世界規模で起きている」ことについてでした。

昨年は(あるいは一昨年も)、魚の大量死は多かったですが、今年も起きているそうで、上の記事の後半はこのようなものでした。



緊急:私たちの星は死にかけている

魚が世界中で前例のない数で死んでいる。米国カリフォルニア州では5月に6トン以上の魚が突然水上に浮かび上がり、警報が出された。当局によると、酸素不足が原因であるという。また、やはり5月、米国では50万匹のコイが、ケンタッキー州のカンバーランド川で死んでいるのが発見された。

海や川で、コイから、アンチョビ、タコにアカエイ、カメ、イルカなど、ほぼすべての海洋生物が死亡して海や川や湖の上を覆い尽くし、水上はまるで「死のマント」のようだ。

ミネソタ州では、35,000匹の魚が死んだ。当局による理由は「酸素不足」 。ニュージャージー州のベルマーでは数千匹の魚の大量死。 当局の説明では「酸素不足」 。カリフォルニア州マニフィーでも数千匹の魚の大量死が起きた。バーモント州のフェルズポイントでは、突然、湖に何百万匹の魚が死んで浮くという驚異的な出来事も起きている。

他の国では、メキシコ湾で、死んで打ち上げられるカメやイルカの数が記録的となっており、シンガポールでは 160トンの魚の死骸が浮いた。

中国ではフヘ川で、40キロメートルに渡り、魚の死体が浮かび上がった。
ギリシャのコモティニでは、10トンの魚の大量死が見つかった。

他にも、この2ヶ月ほどの間に、アルメニア、インド、カナダ、オーストラリア、北イングランド、イギリス、コロンビア、コスタリカ、ブルガリア、ホンジュラス、アルゼンチン、デンマーク、ブラジル、パナマ、イラン、アイルランド、スリランカなどで魚の大量死が発生している。

いったい何が起きているのか?




こういう記事だったのですけれど、わりと、このブログは昔から海洋生物の大量死を記事にすることが多かったのですが、上のは、ほとんど全然知りませんでした。

それにしても、たった2ヶ月程度の間に上のような国で、そんな大規模な魚や海洋生物の大量死が起きるとは、ちょっと信じがたい。

「ほんまかいな」

とは思いましたが、本当かどうかは調べるしかないですので、調べてみることにしました。





そして、世界的なレベルの魚の大量死は起きていた

ちなみに、昨年 2013年に、

異常事態 : 2013年 7月 18日から全世界で突如はじまった、かつてない広範囲での魚の大量死
 2013年08月13日

という記事を書いたことがあり、この時も、7月中旬からの短い期間に魚の大量死が、アジア、アメリカ、ヨーロッパを問わず、十数カ国で「突如として」起きたというようなことがありました。

魚の大量死が起きる理由は様々ですが、一般によくある藻の大発生などによる酸素不足などでの大量死の場合だと、夏に多いのですが、冒頭のプラウダには、「5月から世界規模で大量死が起きている」とあり、それが本当なら、ちょっと前例のないことかもしれません。

そして、調べているうちに End Of The American Dreamアメリカン・ドリームの終焉)というブログの 5月 20日の記事に、最近の魚の大量死のリストがすべて載せられていたことを発見したのでした。

すべて、報道記事のリンクも掲載されています。
ものすごい量です。

これを探し出したブログの作者の執念に感服いたします。

そのリストを翻訳してすべて載せます。
いくつか 2013年の出来事もありますが、基本的には「 2014年」の出来事です。

魚の大量死は世界中で起きているのですが、アメリカが発生箇所としてはダントツに多いですので、最初に「アメリカ」の大量死を取り上げて、その後に「その他の国」とします。

カッコの「報道」の文字の後にあるリンクがニュースソースです。

ものすごい数ですので、読むだけでもお疲れになると思いますので、覚悟されてください。



2014年5月20日までに世界で報道された海洋生物の大量死

Mass Fish Deaths: Millions Have Been Found Dead All Over The World In The Past Month
(魚の大量死:過去数ヶ月で世界中で何百万という魚の大量死が起きている)
End Of The American Dream 2014.05.20


アメリカ

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▲ 下に出てくる中のカリフォルニアで現在起きている若いアザラシが大量に死にかけているという報道。SFGate より。





・4月に、50万匹のコイが、ケンタッキー州のカンバーランド川で、腹を上にして浮いているのが発見された。(報道:Columbus Dispatch


・5月中旬、カリフォルニア魚類野生動物管理局の局員が、アンチョビ、アカエイ、タコなど、何十万という魚が南カリフォルニア海岸沖で死んでいるのを発見。(報道:クリスチャン・サイエンス・モニター


・ミネソタ州で酸素の欠乏により 35,000 匹の魚が死んだ。(報道:クリスチャン・サイエンス・モニター


・ニュージャージー州ベルマーに近いシャーク川で最近、数千匹の魚が死亡。(報道:Weathe


・カリフォルニア州メニフィー湖で、数週間前、数千匹の魚が死亡。現在、当局が原因を調査中。(報道:CBS


・メキシコ湾では、イルカとウミガメが記録破りの数で死んでいる。(報道:Infowars


・メリーランド州で4月、7,000匹のニシンが死んだ。当局はいまだに原因を解明できていない。(報道:CBS


・バーモント州チャプレーン湖で魚の大量死。(報道:VERMONT'S INDEPENDENT VOICE


・カリフォルニア北部の海岸沿いで、アザラシや若いアシカが記録破りの数で死につつある。(報道:SFGate


・ニューヨーク州パルトニーヴィレのヨット港で、5月17日、大量の魚が死んで打ち上げられた。(報道:Times of Wayne County


・ミネソタ州シカゴ郡で 12トンの魚が大量死。(報道:Chisago County Press


・ミシシッピ州南部で、4月下旬、数十匹のウミガメが相次いで死んで打ち上げられた。(報道:WSMV Channel 4







その他の国

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▲ 下のリストのうち、中国・湖北省のフヘ川という川で 2013年9月に起きた前代未聞のレベルの魚の大量死の報道。アメリカの ABC News より。




・2月、シンガポールの養魚業場において、160 トンの魚が突然大量死するという出来事が発生。(報道:Channel News Asia


・2013年 9月、中国湖北省のフヘ川が約 40キロにわたり、死んだ魚で覆われた。(報道:ABC News


・2013年 9月、ギリシャのコモティニ( Komotini )の近くの湖で、10 トン近くの死んだ魚が浮いているのが発見された。(報道:ABC News

(以下はすべて今年 2014年)

・5月、アルメニアのアラガトトゥン川( Aragatsotn )で、魚の大量死。(報道:hetq


・5月、インド、レワルスターの湿地帯で汚染により魚の大量死が発生。(報道:Times of India


・5月14日、カナダ、ハミルトンの海岸に数千匹の死んだ魚が打ち上げられる。(報道:The Spec


・5月13日、オーストラリア、タスマニア島の海岸沿いに、数万匹の死んだ魚が打ち上げられる。(報道:examiner


・5月12日、イギリス、クランビア( Cumbria )のエデン川で魚の大量死。原因は「謎」とされる。(報道:Sevenoaks Chronicle


・5月、コロンビアコスタリカの様々な海岸で、何千匹もの死んだフグとカメが打ち上げられる。(コロンビアの報道:crhoy )(コスタリカの報道:crhoy


・5月11日、イギリス、ソースボロー( Southborough )の池で何百もの魚が死んで発見される。(報道:Courier


・5月、インドのシッキムで、泉の汚染により数千匹の魚が死亡。(報道:Voice of Sikkim


・5月9日、ブルガリアのルナ・ヤナ川( Luna Yana River )で、魚の大量死が発生し、住民たちの間にパニックが起きる。(報道:Trud


・5月、インド、マンガロア湖で数千匹の魚が大量死。(報道:The Hindu


・5月7日、中国福建省の泉州市の複数の貯水地で魚の大量死が発生。(報道:news.xmnn


・5月7日、ホンジュラスのロータン( Roatan )の海岸で数千匹の魚の大量死。(報道:La Prensa


・5月5日、アルゼンチンのサン・アントニオ・オエステ( San Antonio Oeste )の海岸に数百匹の死んだ魚が打ち上げられる。(報道:Noticiasnet


・5月5日、デンマークのアルミンディゲンにある複数の湖で魚の大量死。(報道:tvs


・5月、中国福建省の川で魚の大量死。(報道:sohu


・5月3日、カナダ、オンタリオの湖の岸に沿って、1000匹以上の死んだ魚が打ち上げられる。(報道:Barrie Examiner


・5月2日、ブラジル、ピアウイ( Piaui )のダムで4万匹の魚が突然死亡。(報道:globo


・4月30日、中国浙江省の川で大量の死亡した魚が浮き上がる。(報道:epmap


・4月下旬、イタリアのバリ( Bari )で、ウミガメなど様々な海洋生物が死亡して打ち上げられる現象が続いている。(報道:Gea Press


・4月28日、ブラジル、モギ川( Mogi River )で魚の大量死。(報道:globo


・4月25日、中国四川省の貯水地で大量の魚が死亡。(報道:finance.chinanews


・4月24日、パナマのラ・コレッラ( La Chorrera)の川沿いに大量の死亡した魚が打ち上げられる。(報道:telemetro


・4月23日、イラン、テヘランにあるダムで「 200 万匹」の魚が死んで浮いていることが発見される。(報道:Trend.Az


・4月23日、中国黒竜江省の Mundanjiang 湖で、数千匹の魚の大量死。(報道:oeofo


北アイルランド、タイロン郡( Tyrone )のウーナ・リバー( Oona River )で、約 1000匹の魚が大量死。(報道:BBC


・4月21日、インド、パンチャンガ( Panchganga )にある川沿いに大量の死んだ魚が打ち上げられる。(報道:Times of India


・4月19日、スリランカのトンダマナル・ラグーンで「数百万匹」の魚が死んで浮いていることが発見される。(報道:Asian Tribune




この数は、もはや昨年の比ではないです。

しかも、4月の下旬からこのようなことが起きているというのは、この先を考えると、なかなか壮絶な想像力に駆られます。

なお、アメリカがダントツに多いのは、実際に魚の大量死が多いことも事実でしょうが、報道されることが多いからだと思われます。あまり報道されない場所では、さらに起きている可能性があります。





結局何が起きている?

ちなみに、アメリカに関しては、上の他に、過去記事の、

米国の海に広がる衝撃的な光景 : まるで絶滅に向かおうとしているような「ヒトデたちの自殺」
 2013年11月07日

などで取り上げた、消耗性疾患というものによって、ヒトデが「自己消滅するように」北米大陸の周辺から姿を消えようとしているという事態も起きています。

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▲ 過去記事「星が消えて海が壊れる:アメリカ周辺のヒトデの大量死の状態は「分解して溶けて消えていく」という未知の奇妙なものだった」より。


そして、イルカの大量死。

これに関しては、いろいろな過去記事がありますが、

霧の中で手探りに進む 2014年の人類の横にいるペルーで死ぬイルカ、アメリカで死ぬイルカ、そして、ソチで死ぬイルカ
 2014年02月03日

など何度か取り上げていますアメリカ東部と南米でのイルカの大量死の問題もありました。

下のグラフを見ても、2013年のアメリカのイルカの死亡数が普通ではなかったことがおわかりかと思います。

2013年 1月 1日から 11月 24日までのイルカのアメリカ東海岸のイルカの座礁数

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なお、アメリカ海洋大気庁( NOAA )の最新のデータを見ますと、現在はこのアメリカ東海岸のイルカの大量死については、改善してきているように見えます。平年並みの死亡数に収まってきたようです。

こちらがその最新のグラフです。

2014年 1月 1日から 5月 18日までのイルカのアメリカ東海岸のイルカの座礁数

dolphin-2014-05-18.gif

アメリカ海洋大気庁ウェブサイトより。


それにしても、今回のリストをまとめていて、冒頭のプラウダの記事の最後の一文、

「いったい何が起きているのか?」

と思わざるを得ない部分はあります。

通常の自然の状態の中で、これだけ頻繁に魚の大量死が起きるには時期が早すぎる上に、規模も地域的にも膨大すぎます。