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2014年10月31日



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人類は本当に「ヴァン・アレン帯を通過して月に行ったことがあるのだろうか?」という疑問を各地で噴出させている NASA の次世代宇宙船オリオンのミッション



新型宇宙船オリオンのミッションの説明から湧き出る疑念

今年の 12月に NASA は、オリオンという有人宇宙ミッション用の宇宙船のテスト発射をおこないます。テスト飛行は「無人」でおこなわれます。

下のような形のものです。

orion.jpg
SORAE






 


このことについては、すでに日本でも報道されています。

アポロ似の次世代宇宙船「オリオン」公開 NASA、12月に初飛行
産経ニュース 2014.09.12

12月に初の無人飛行に挑む米航空宇宙局(NASA)の次世代宇宙船「オリオン」の試験機が11日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターで報道関係者に公開された。

オリオンは2020年代以降に火星や小惑星への有人飛行実現を目指しNASAが開発中の4人乗り宇宙船。12月4日に予定する試験飛行では飛行士を乗せずにデルタ4ロケットで打ち上げ、地球を2周し太平洋に帰還する計画。

NASA は 10月初旬に、このオリオンについての説明動画を YouTube にアップしました。

しかし、これを見ているうちに、私もそうなんですが、多くの人が、

「?」

と思うような説明がクライマックス的に取り上げられていることに気づきます。

それは、下のような説明と共に語られる部分です。

van-allens-1.gif


ヴァン・アレン帯とありますが、NASA のこのビデオに登場する人は、「ヴァン・アレン帯がいかに危険なエリアで、そこを2度(行く時に通過して、戻ってくる時も通過するという意味)も通過することが今回の飛行の中でどれだけ重大なことか」ということを熱弁します。

この NASA のビデオは YouTube の、

Orion: Trial By Fire

にあり、3分ほどのものですが、その中からその「ヴァン・アレン帯についての説明」の部分をピックアップします。字幕をつけたかったのですが、時間的に余裕がなく、英語のままですが、内容は上記しましたように、

「放射線の多い危険なヴァン・アレン帯を通過することがいかに重大か」

ということについて語っているもので、音楽も含めての「盛り上がり方」をご覧頂きたいと思いました。音楽もオリジナルのままで手は一切加えていません。




この NASA の方がかなり熱く「ヴァン・アレン帯の通過ミッション」を語っているということがおわかりかと思います。

この熱弁ぶりを見ますと、今回の無人テスト飛行の重要なミッションのひとつに、「危険なヴァン・アレン帯による宇宙船の機器へのダメージの度合いを確かめる」というものがあると考えても不自然ではない気がします。

それはそれでいいのですが……何となく違和感を感じていました。

そして、その違和感は、このビデオのコメント欄のトップにあるコメント(つまり、最も評価の高いコメント)を書いた人の持つ違和感と同じものでした。

comment-nasa.gif

このビデオを見た後、私は、これまで月へのすべての有人飛行が果たして本当にあったのだろうか、と本気で疑ってしまった。

ここにあるようなテクノロジーが、1950年代や 1960年代にあったとは私にはどうしても信じられない。そして、1969年の月面着陸時の時にも。

この NASA のビデオは、宇宙船にヴァン・アレン帯を通過させて地球に戻ってくることが非常に重大で深刻なミッションであることを語っているが、1960年代にこのような高度な技術やコンピュータが存在していたわけがない。

「なるほど……」と私もちょっと同調しそうになりました。

しかし、この意見に完全に同調してしまいますと、

「これまでヴァン・アレン帯をこえて宇宙に行った人類はいない」

という類の話を肯定してしてしまうようなことになってしまい、つまり「月にさえ誰も行っていない」というような、極端な陰謀論者扱いをされかねませんので、まあ、一応は「そう思わざるを得ない部分もないではないというように思わないでもないという部分も少しある」という程度にしておきたいです(ああ、まどろっこしい)。

個々の説明をしておきますと、ヴァン・アレン帯というのは、 Wikipedia から抜粋しますと、

ヴァン・アレン帯とは地球の磁場にとらえられた、陽子、電子からなる放射線帯。

です。

Van_Allen.jpg
・オリジナル図版はWikipedia


さらに Wikipedia には「ヴァン・アレン帯と宇宙飛行」という項目があり、

過去には、宇宙船でヴァン・アレン帯を通過すると人体に悪影響があり、危険だとされていたが、今では通過時間がわずかであり、宇宙船、宇宙服による遮蔽や防護が可能なことから、ほとんど問題はないと言われている。

とあります。

ここにあるように、すでに現在の宇宙科学技術では、

> ほとんど問題はないと言われている。

というにも関わらず、上の NASA のビデオでは、

ヴァン・アレン帯を通過させて地球に戻ってくることは非常に重大なミッションである。

というように見てとれるのです。

要するに感じたことというのは、すでに過去に確立して、今ではなんともないテクノロジーならこんなに力説しないのでは? という単純な疑問なのです。

そして、もうひとつの気になる理由としては、アポロ計画陰謀論でも、この「ヴァン・アレン帯」について論争のネタとなっていたことがあるということもあります。



ヴァン・アレン帯「通過不可能」論は本当に過去の仮説なのか

「アポロ計画陰謀論」については今ではそのことを知らない人の方が少ないと思いますが、アポロ計画陰謀論 - Wikipedia の中に数多く羅列されている「捏造派の主張」と「それに対する反論」のリストの一覧の中に以下があります。

捏造派の主張

月へ往復する際、ヴァン・アレン帯(1958年発見)と呼ばれる放射線帯を通過する必要があるが、1960年代の技術でそれを防げたのか。

それに対する反論

ヴァン・アレン帯の成分は陽子と電子である。かつては確かに放射線が宇宙飛行士へ障害を及ぼすのではないかと思われた時期があったが、その通過時間が短いことや、宇宙船および宇宙服でほとんどが遮断できるため、大きな問題とはならない。

ということで、現在では、この「ヴァン・アレン帯通過不可能論」は 1960年代に立てられた仮説であり、実際には人体にも機器にも影響はないというのが現在の説の主流となっています。

そんな 50年も前に確立していた技術に関して、2014年の現在、 「何と、オリオンはヴァン・アレン帯を2度も通過して地球に帰還するのです」と、さきほどのように力説している。


今回のオリオンは「無人テスト飛行」ですので、NASA のビデオでそのテクノロジーを喧伝しているのは、人間への影響ではなく、「機材への影響」だと思われます。

ヴァン・アレン帯の成分は陽子と電子だそうですが、これらはいわゆる「放射線」のわけですが、それらは生物への影響はともかく、機器にどんな影響を与えるのかというと、放射線 - Wikipedia によりますと、

放射線は生物だけでなくコンピューターにとっても有害であり、コンピューターは放射線を浴びることによってソフトウェアがエラーを起こしたり、半導体としての機能が失われたりする。人工衛星は宇宙空間で被爆することを前提として高い放射線耐性のあるシステムで作られている。

ということですが、ヴァン・アレン帯は二重構造(時に三重構造)となっていて、その構造をもう少し詳しく書きますと、下のようになるようです。

van-iss.gif


二重構造のうちの内側の帯(上で赤く示された部分)は赤道上高度 2,000〜 5,000キロメートルに位置して、外側の帯は 10,000〜 20,000キロメートルに位置する帯(上でグレーで示された部分)となります。

長期滞在クルーが搭乗している ISS (国際宇宙ステーション)は、地球から 350〜 400 キロメートルの高度を軌道周回しているので、ヴァン・アレン帯よりはるかに低い場所を飛行しているため、ヴァン・アレン帯の影響は受けないようです(それでも搭乗員たちは相当量の放射線を浴びています)。

NASA のオリオンは、「放射線の海」ともいえそうなヴァン・アレン帯の中を突っ切っていくわけですが、しかし、今から 46年前にはアポロ8号が3人の宇宙飛行士を乗せて、つまり有人飛行で、「人類初めての月周回飛行」をおこなって地球に帰還しています。

アポロ8号が撮影した「月面から見た地球」

NASA-Apollo8-Dec24-Earthrise.jpg


月へ行くには、ヴァン・アレン帯を突き抜けていくしかないわけですが、アポロ8号 - Wikipedia によりますと、

アポロ8号の乗組員たちは、ヴァン・アレン帯を通過した初めての人類となった。

科学者たちはヴァン・アレン帯を宇宙船が最高速で急速に通過すると、胸部撮影のレントゲン写真で浴びるのと同程度の 1ミリグレイ程度のX線を被曝するのではないかと予想していた (人間が1年間で浴びる放射線は、平均で2から3ミリグレイ)。計画終了までに彼らが浴びた放射線量は、平均して1.6ミリグレイであった。

と、放射線を浴びつつも、機体にも人体にも致命的なダメージはなかったようです。

そのように、50年近くも前に「大した問題はなかった」ことが確認されているヴァン・アレン帯通過のミッションを、それから随分と科学技術も進んだ今となって、その重要性を力説している。

それが不思議だな、と思ったのです。

人類が月に行ったかどうかということに関しては、アポロ 15号の撮影した月面の光景と、日本の月周回衛星「かぐや」が撮影した月面の写真の同じ場所での地形の一致が確認されていることなどから、すべてのアポロかどうかはともかくとして、「月に行った」ということは間違いない……と私は思っているのですが……。

アポロ15号が月面着陸した場所から撮影した写真(1971年7月)

apollo15a-landing23.jpg


月周回衛星「かぐや」が撮影した月面(2008年7月)

kaguya-selene2.jpg
Univers Today


このように、確認が取れてはいるのですが……しかし。



宇宙探検は夢やロマン以上にはならない?

先日の記事の、

人類は宇宙へは行けないし、異星人たちも地球には来られないことを悟る中、人々から「神の存在が消えていっている」ことも知る
 2014年10月29日

で書きましたが、ヴァン・アレン帯よりはるかに低い高度で宇宙活動をしている国際宇宙ステーションの搭乗員たちでさえ、JAXA によりますと、

> 乗務員の1日の被ばく線量は地球上での約6ヶ月分に相当する。

わけで、ヴァン・アレン帯を無事に通過したとしても、その先に拡がるのは、国際宇宙ステーションが受けているよりはるかに強力な宇宙放射線が飛び交う宇宙空間です。

宇宙船の中にいるだけでも、相当な放射線を浴びることは避けようがないと思われます。

まして、「月面に降り立ち、調査をおこなう」というのは、そんな中を、つまり、ほとんどストレートにも近い宇宙放射線の中を宇宙服だけで船外活動を行う……ということが、どれだけ人体にダメージを与えることなのか。

今回のことを調べていた時に、そこに書かれてあることが正しいのかどうかはわからないですが、ゼンマイ仕掛けの祈祷師という記事に下のような記述がありました。

太陽風は秒速350km〜700km、で、密度は1立方センチあたり数個から数十個の電子陽子でできています。

つまり、ベータ線感知のガイガーカウンターを、月面や地球の磁気圏外に置くと、CPM(1分間のカウント数)は、数億から数百億になります。

そして、単なる放射性物質由来の電子よりも、高エネルギーを持つ太陽から排出された電子なわけで(中略)

毎時、毎分かどうかさえ、もう関係ない数値です。
そんな環境下をクリアできる装備など、昔はもちろん、今でさえありません。

そんな太陽風(フレア)が頻繁に吹き荒れる太陽活動の極大期に、アポロはぺらぺらのアルミの舟でヴァンアレン帯を抜け、磁気圏外であるために太陽風はもちろん、その放射線にさらされつづけた月面の地面の上で、ゴルフボールをスライスさせて喜んでいたわけです。

よくはわからないですけれど、月の表面は「人間が即死するレベルの放射線が飛び交う場所」という意見もあるようです。

しかし、確かに冷静に考えれば、月面の放射線量を想像してみますと、

「月面で船外活動しなさい」

というのは、普通に考えれば、

「宇宙放射線で死になさい」

と言っているのと等しいものなのかもしれないなあ……と思いつつも、それでも、アポロはちゃんと月に行って戻ってきている。


うーん……。このあたりが考えの限界ですね。


あるいはこう考えて自分を落ち着かせる。

「これはきっと夢やロマンの世界なんだ」

そして、

「現実的に考えていけない世界なんだ」

と。

いずれにしましても、先日の記事「人類は宇宙へは行けないし…」では、火星までの放射線量によって人間は火星まで到達することも難しいという最近の研究結果について書いたりしました。

けれども、アポロ計画から 50年ほど経った 2014年の現在もなお、「月よりも近い場所での無人飛行テスト」がおこなわれているという事実は、宇宙に対しての夢やロマンは想像以上に小さなものなのかもしれないです。


ところで、上に記したアポロ8号についての Wikipeida には以下のような不思議な記述があります。

作家のアーサー・C・クラークは著書「2001年宇宙の旅」の2000年版の序文の中で、アポロ8号の飛行士たちが彼に対し「自分たちはずっと巨大なモノリスの発見を無線で伝えようとしていたのだが、理性のほうがまさったのだ」と語ったと述べている。

何が真実で何が真実でないのやら、いろいろとわからないですが、次元やら空間やらが違った世界で起きていることなのかもしれないと観念してみたり。



  

2014年10月30日



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pope-god-top5.gif

▲ 2014年10月29日の米国 CTV News より。






 




「神は万能でも創造主でもない」と演説で語ったフランシスコ法王

タイムリーというか、昨日、

人類は宇宙へは行けないし、異星人たちも地球には来られないことを悟る中、人々から「神の存在が消えていっている」ことも知る
 2014年10月29日

という記事を書かせていたただきまして、そこに、

> 「この世から神という概念を消したいと考えている存在」

という文を書いたのですが、上の記事を書いた後、海外で一斉に冒頭のフランシスコ法王の演説についてのニュースが流れました。

10月 27日、フランシスコ法王は公式な演説で、その内容を簡単に書けば、

「神による天地創造はなかった」と述べた

のでした。

下の写真は、YouTube にアップされた ODN ニュースの映像からです。

pope-speech.jpg
ODN

ニュースで映っている部分では、法王は以下のように述べています。

世界は、何か他に起源を持つようなカオス(混沌)の中から始まったのではありません。しかし、愛から作られた至高の原則を直接的に派生させます。

現在では世界の始まりとされているビッグバン理論は、神の創造的な介入と矛盾するものではありません。逆に創造論はビッグバンを必要としているのです。

自然の進化論は、神による創造の概念の逆にあるものではありません。なぜなら、進化論には「生物の創造」が必要とされるからです。

この 11月 27日の演説原稿の全文がバチカンのウェブサイトにイタリア語で掲載されているのですが、そこには以下のような下りがあり、それが冒頭の記事の「神は魔法の杖を…」というタイトルにつながっているようです。

f-pope.jpg私たちが聖書の創世記の記述を読む時には、神が魔術師であったかのような錯覚や妄想に陥る危険があります。それはまるで、神が魔法の杖ですべてのものを造り出したかのような妄想です。

しかし、それは正しくありません。

創造は、何千年、何千年といったように何世紀にもわたって続いて、現在に至っているのです。

なぜなら、神は創造者でもないし魔法使いでもありませんが、すべての存在に生命を与えた創造主だからです。

とあります。

最後の「なぜなら神は創造者でもないし…」からの下りの文章は、訳が何だか日本語が妙な感じとなっているのですが、これ以上どうもわからないです。

原文のイタリア語で、

proprio perché Dio non è un demiurgo o un mago, ma il Creatore che dà l’essere a tutti gli enti.

となっていて、英語にすると、

because God is not a creator or a wizard, but the Creator who gives being to all entities.

となります。

「a creator ではないけど the Creator ではある」の部分がうまく日本語にできませんでした。

いずれにしても、全般としては「神がすべてをお造りになったのではない」というニュアンスのものであり、これは西欧社会では驚くべき法王の発言としてとらえられた部分もあったようで、しかし、一方では VOR の報道にある、

この法王の声明は、天地創造の偽科学的コンセプトに終止符を打ち、この世と人類は唯一の創造主によって作られたという理論を終わらせるもの

だとしているメディアも多いようです。

どちらにしても、

「この世と人類は唯一の創造主によって作られたという理論を終わらせるもの」

というのは、事実上、聖書の記述と「神による天地創造」を否定するということになり、そういう意味では、ついに現れた「創造主としての神」の最大の敵は、何ということか、その象徴であるバチカンのボスだったということになったようです。

ここにきて、過去記事でもたまにご紹介していました「バチカンの受難の流れ」というものが顕著になってきている気がします。



「最後の法王」ベネディクト16世辞任後のバチカンの受難

昨年書きました、

最後の法王と呼ばれ続けたベネディクト16世(1): 聖マラキの予言とコナン・ドイルの未来感の時間軸
 2013年02月13日

では、1148年に死去したアイルランドのマラキという聖職者が記したと言われる「聖マラキの預言」、正式には「全ての教皇に関する大司教聖マラキの預言」という書のことを取りあげました。

この預言書は、1143年に即位した 165代ローマ教皇ケレスティヌス2世以降の 112人の歴代教皇についての預言書となっているのですが、この預言書では、最後の法王は前代のベネディクト16世となっているのでした。とはいえ、 Wikipedia によりますと、この聖マラキの預言書は、

実際には1590年に作成された偽書と見なすのがほぼ定説となっている。

とありまして、「ニセの書」とされているわけですが、その「ニセの書」の内容の「最後の教皇」に関するくだりは以下の通りです。

「全ての教皇に関する大司教聖マラキの預言」より 111番目の教皇

111.オリーブの栄光 - ベネディクト16世(2005 - 2013年)

ローマ聖教会への極限の迫害の中で着座するだろう。
ローマ人ペトロ 、彼は様々な苦難の中で羊たちを司牧するだろう。そして、7つの丘の町は崩壊し、恐るべき審判が人々に下る。終わり。


Prophetia.gif
・聖マラキの預言の一部


そんな最後の法王とされたベネディクト16世は 2013年 2月 11日に自らの意志で退位を発表します。この「自らの意志」での退位というのは大変に珍しく、1294年のケレスティヌス5世という法王以来だそうで、実に 719年ぶりの「自由意志による辞任」でした。

ベネディクト16世はラテン語で辞任の宣言を行いましたが、その出だしは次のようなものでした。

多くの急激な変化を伴い、信仰生活にとって深刻な意味をもつ問題に揺るがされている現代世界にあって、聖ペトロの船を統治し、福音を告げ知らせるには、肉体と精神の力がともに必要です。この力が最近の数か月に衰え、わたしにゆだねられた奉仕職を適切に果たすことができないと自覚するまでになりました。

そして、719年ぶりの「自由意志によるローマ教皇職の辞任」を宣言します。

ベネディクト16世の辞任の2日後の 2013年 2月 13日、バチカンの聖ピエトロ大聖堂の屋根には何度も何度も雷が落ちました

2012-02-13-thunder-78.jpg
YouTube


それでも、「 111人目(第 265代)のローマ教皇で終わり」とした聖マラキの預言は外れ、「聖マラキの預言には存在しない」112人目(第 266代)のローマ法王が無事に誕生します。

それがフランシスコ法王です。

その後、フランシスコ法王就任後の 2014年 1月 27日には、法王が子どもたちと共に聖ピエトロ大聖堂から放った平和を象徴する白いカラスが、直後にカラスに襲われて食べられてしまうという出来事が起きました。

dove-attack-05.jpg
▲ 2014年1月29日の記事「悪魔 vs キリスト教の戦いが世界中でエスカレートしている」より。


また、フランシスコ法王とは関係ないですが、2014年 1月 25日には、第 264代ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の「血」が盗難されるという出来事が起こります。

sague-3.gif
La Stampa


その他にも、様々なバチカンの受難的な出来事があったわけですが、今回、「バチカンのトップがカトリックの神の創造を否定する」という、誰の受難だかわからないですが、とにかく「受難は最終段階に入った」のかもしれません。

ところで、「宗教と進化論」とか、あるいは「神と天地創造」というようなことはどのような関係になっているのかということを少し書いておきたいと思います。




この世や生命はどのように生まれ、そして何が「進化」したのか

ビッグバンに関しては、過去に何度も記事にしていまして、最近は「ビッグバン疲れ」というような感じもありますが、ビッグバンに関しての「最大の矛盾」は、計算だとか証拠の問題の以前として、ビッグバンを理論的に発展させたことに貢献した科学者の言葉そのものにあらわれています。

過去記事の、

煙と消えゆくビッグバン理論。そして名誉・賞・資金の獲得への過当競争の中で「科学の意味」を見失いつつある科学界
 2014年06月22日

に書きました、初期宇宙のインフレーション理論を提唱したアメリカのアラン・グースという宇宙物理学者がいます。この人はビッグバン理論の発展に寄与した人なんですが、自著の『なぜビッグバンは起こったのか』に書いた下の1ラインが疑問のすべてを物語っていると思います。

「宇宙の創造が量子過程で記述できれば、一つの深い謎が残る。何が物理法則を決定したのか」

ここで彼が書きたかったと思われることは、ビッグバンという宇宙創造が物理的にあらわされるとすると、

「ビッグバン以前に物理法則が存在していた」

ということになるわけで、そこが「何が物理法則を決定したのか」という言葉となっているわけです。

もしこの宇宙がデタラメな始まりだったとすると、これだけ秩序のある物理法則を持つ「この世」というものができるわけがない。その「最初からあった秩序」は誰が、あるいは何が決めたのか

これは生物についても同じです。

地球の生物のあまりにも高度で複雑で奇蹟的な構造は、なぜ存在するのか。

ロシアのアレクサンドル・オパーリンという科学者が、1920年代から「原始地球の無機物が偶然結びつき有機物を発生させた」という説を打ち出し、それは次第に、

地球の生命は「偶然(デタラメ)」に発生した

という自然発生説が科学界に定着していき、この自然発生説が長く科学界を巣食っていました。

しかし、「そのようなことは、ほぼ無理」ということに関しても、過去記事などでかなり執拗に記してきた歴史がありますが、過去記事の、

エピローグへと近づく「生命の地球起源説 vs 宇宙起源説」: ロシアでふたたび始まった地球上で生命を作る試み
 2012年10月14日

の中に「その不可能性」について、フレッド・ホイル博士の著作『生命はどこからきたか』からの抜粋で記しています。

『生命はどこからきたか』 第14章 より

30 個の不変なアミノ酸を持ち、100 個の結合部分からなる短いポリペプチド鎖でさえも、20 の 30 乗、約 10 の 39 乗回にもなる試みが行われて初めて機能を持つ酵素となる。

300 個の不変部分を持ち、1000 個の結合部分からなる酵素の場合は、要求される試みの回数は 20 の 3000 乗で与えられ、それは 1 の後に0が 390 個も並ぶ数である。

さらに、われわれはただ一種類の酵素だけを取り扱うのではなく、最もシンプルな有機体でさえ 2000 種類、われわれのような複雑な生物では約 10 万もの酵素と関係しているという点でも超天文学的数である。

書いてあること自体は私にはよくわからないのですが、要するに生命のバーツの

「酵素ひとつ」が偶然に作られる確率は「 1 の後に 0 が 390 個も並ぶ数の確率

ということで、すなわち、下のような確率です。

1-390.gif


そして、最も単純な生物でも、上の確率での酵素の 2000 種類以上の組み合わせを持ち、人間だと、その組み合わせは 10 万種類などとなっているわけで、さらに重要なのは、

上の確率の組み合わせに「ひとつでも」間違いがあると、機能する酵素ができない

のです。

ここから考えても、「偶然に生命が組み立てられる」という確率は、「天文学的」という言葉をはるかに超えたものとなり、地球の歴史といわれる 30億年だとか 40億年だとかで起こりうるものではないんです。

あるいは 3000兆年とか、5000京年とかの年月が経っても同じで、それでも確率的を満たすためにはまったく足りないのです。

ちなみに、酵素というのは、たとえば下のような構造で、その結合が「ひとつでも」違えば、それはもうその酵素ではないです。これは、消化酵素のα-キモトリプシンというものの構造だそう。

chymotrypsin.gif


現在では多くの科学者はすでに、自然発生説のような、つまり「無機物から有機物が偶然作られる」という理論を信じてはいないのが現実だと思います。

その代表的な意見は、例えば下のロシア科学アカデミー科学者の言葉などからうかがえます。過去記事の翻訳からです。

ロシア科学アカデミーの正会員で、生物物理学者であるヴァレンティン・サプノフ博士は、「おそらく非生命的な物質に生命を与えることはできないだろう」との見方を示し、以下のように語っている。

「まず、私たちはいまだに生命とは何かということを定義づけていない。生命のあるものとないもの。この違いに対しての明確な定義を持っておらず、生命のあるものから生命のないものへの急変がどのように起こるかについても、いまだに理解していない」

「理論的な理解が不足している状態で、無機物から有機物を作り出すというような実験を行っても、いかなる結果も出ないと思われる」

「偶然の調和や、ランダムな選択によって遺伝子やDNAのような構造をつくりだすのは、事実上不可能だとしか言いようがない」

サプノフ氏は、現在、多くの科学者たちは、生命は宇宙から地球に到来したという説を支持していると述べる。


あらゆる面から見て、

・ビッグバン
・生命の自然発生説


は、どちらも無理な話であると考えざるを得ないのです。

そして、皮肉なことに「科学が進歩すればするほど」そこには「創造論的な存在」が最先端科学の前に立ちはだかるのです。

いわゆる進化論というものに関しても今回のフランシスコ法王は、それを認めたわけですが、しかし、最近のカトリックでは(ベネディクト16世以外は)進化論を認めていた傾向があります。




進化論とキリスト教

創造論と科学を融合させるために生まれた「インテリジェント・デザイン運動」というものがあります。これは、

知性ある何か」によって生命や宇宙の精妙なシステムが設計されたとする説

と説明されますが、インテリジェント・デザイン - Wikipedia には、以下のようにあります。

カトリック教会を始めとする宗教界ではインテリジェント・デザインは受け入れられていない。一般に誤解されがちだが、カトリックでは進化論は否定されておらず、むしろ、ヨハネ・パウロ2世が進化論をおおむね認める発言を残している。

ということになっています。

カトリックが進化論を容認してきた理由は、進化論があろうがなかろうが「最初の生命は神が造った」とすれば矛盾が生じないからとされていますが、フランシスコ法王は「ビッグバンまで認めた」ことになり、創造主である神の出番を消し去ろうとしているようにさえ見えます。

まあ、いろいろと書きましたけれど、悪意なく考えれば、フランシスコ法王は、あまり生体科学や生命の構造に詳しくないかもしれないわけで、つまり、

「現法王は生命に奇蹟を感じていない」

という感じがします。

人間を含めた生物の構造のあまりにも複雑で高度な作りを知れば知るほど、科学者や医学者はそこに「奇蹟」を見出すことが多くなるように思います。

私もこの何年か、 In Deep を書いている中で「生命の奇跡的な構造」を少しずつ知るにつれて、「生命の起源」というものについて考えることがありました。

しかし、宗教を持たず、何らかの特定の神を信奉しているわけではない私には、オカルトやスピリチュアル方面の見識よりも、それらを明確に否定するような科学者の言葉の中に、むしろ真実に近い何かを感じます。

たとえば、神経症の治療法である「森田療法」の創始者である森田正馬さんは、1922年(大正11年)に発行された『神経質の本態と療法』の中で以下のように書いています。

森田正馬『神経質の本態と療法』より

自然科学から見れば、神は民族心理の過渡的産物である、とかいうように、神という実体の存在はない。神、仏、真如とかいうものは、宇宙の真理、すなわち「自然の法則」であって、法そのものにほかならない。

真の宗教は、自己の欲望を充たそうとする対象ではない。神を信じるのは、病を治す手段でもなければ、安心立命を得る目的としてもいけない。神仏に帰命頂来するということは、自然の法則に帰依、服従するということである。

私も心底の意味で、「自然の法則に帰依、服従することができればいいだろうな」と思うこともありますが、ただそんな風に思うだけでなされるわけではないことも理解しています。

そして、なんとなく多くの人が、特定の宗教のものではない「ひとりひとりの神」という概念を考えることが多くなっているような感じの、最近のご時世の中で突然発表された

「神は万能ではないし、神がこの世を創ったのではない」

という主旨の法王の発言。

ま……何はともあれ、「この世から神という概念を消したい存在」のひとつが、もしかするとバチカンなのかもしれないと思った次第です。

しかし、私は今後も進化論とビッグバンの否定だけは続けるつもりです。

ジッチャンの名にかけて(ジッチャンはテキヤの親分でしたが)。



  

2014年10月29日



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人々から消えていく「神」の存在

最近、イギリスのメディアで下の記事を見つけました。

god-alien-top.gif

▲ 2014年10月27日の英国ザ・ヘラルド More people believe in aliens than God より。






 



後述しますが、英政府通信本部( GCHQ )のあるイギリスという国の調査として、わりと興味深いものでしたので、先に翻訳してご紹介します。




More people believe in aliens than God
Herald 2014.10.27

より多くの人々が神よりもエイリアンの存在を信じている

より多くのイギリス人が神よりもエイリアン(宇宙人)の存在を信じていることが、最近の研究で明らかになった。

調査は、成人 1,500 人と、子ども 500 人を対象として行われた。

研究の詳細な内訳は成人と子どもでそれぞれ下のような結果となり、エイリアンを信じている成人は全体の半数以上( 51 %)となったのに対して、神を信じている成人は全体の4分の1( 25 %)に過ぎなかった。


英国の成人が信じる超自然的な存在トップ5

1位 幽霊( 55 %)
2位 エイリアン( 51 %)
3位 UFO( 42 %)
4位 天使( 27 %)
5位 神( 25 %)



英国の子どもが信じる超自然的な存在トップ5

1位 エイリアン( 64 %)
2位 幽霊( 64 %)
3位 UFO( 50 %)
4位 神( 33 %)
5位 天使( 27 %)



この研究は、子どもだけではなく、大人たちが実際に幽霊やエイリアンを高い比率で信じていることを示し、また、神や天使よりも UFO の存在を信じている大人の方が多いことを示す。

さらにこの調査では、5人に1人のイギリス人が超自然的現象( supernatural ) を経験したことがあり、 10人に1人は、それまでの生活の中で、自分の家に幽霊が住んでいることを体験していると述べたことも明らかとなっている。

子どもでは、3分の2近く( 64 %)がエイリアンと幽霊の存在を信じ、半数( 50 %)が UFO を信じていた。

この調査結果について、ロンドンの調査会社のナターシャ・クランプ( Natascha Crump )ゼネラル・マネージャーは以下のように述べている。

「今回の調査で、超自然的な存在を信じているのは子どもだけではなく、大人でもその傾向が強いことが明確にあらわされました。私たちは科学の時代に生きて、私たちは科学でほとんどの答えを得ることができますが、それでも依然として、私たちは、私たちの理解を超える存在への信仰を持っていることが示されています」

興味深いのは、子どもたちの 26 %は、エイリアンは地球で人間に扮して生活していると考えていることで、20人に 1人の子どもたちは、彼らが実際にエイリアンと会ったことがあると答えている。

そのような中には「自分の母親は実は地球外生命体だと思っている」と答えた子どもたちも多い。

また、子どもたちのエイリアン像には一種の判で押したような先入観(ステレオタイプ)が見てとれ、たとえば、子どもたちの 43 %は「エイリアンは緑色である可能性が高い」と考えている。

クランプさんは、なぜこのような先入観があるのかは調査では明らかになっていないと述べた。





という内容でした。

「もはやこの世に神の立場なし」

といったレベルになっているわけですが、大人の方の、

1位 幽霊( 55 %)
2位 エイリアン( 51 %)
3位 UFO( 42 %)
4位 天使( 27 %)
5位 神( 25 %)


は、一歩間違うと、神の存在がランク外となってしまうところでもあります。

幽霊についてはよくわからないですが、エイリアンについて、記事に「なぜこのような先入観があるのか明らかではない」とありますが、そりゃあ、子どもの頃からエイリアンやミステリー関係のテレビや映画やコミックなどを見続けていれば、後述しますが、映画『未知との遭遇』以降の三十数年、メディアに出てくるのはそのタイプのエイリアンばかりで、そんなメディアを見て育つのですから、そこから自然とステレオタイプは生じてくるものだと思います。

現在、「エイリアン像」を作り出しているのは主にアメリカのハリウッドなわけですが、世界で初めての「宇宙人」が出てくるSF映画は、1902年にフランスで作られた『月世界旅行』という無声映画でした。 この映画は今は YouTube で見られます。

この『月世界旅行』には月の住人である異星人も出てきますが、現在のステレオタイプのエイリアンとは違った姿で、人間やトカゲのようなものたちでした。

Trip-Moon.gif

▲ オリジナルのモノクロではわかりにくいですので、後に彩色された『月世界旅行』より。左のほうが月の住人。真ん中が王様的な存在らしく、後ろに立っているのは兵士の模様。右のほうの人々は月の住人に捕らえられた地球人です。格好は貴族の服です。


少しずつエイリアンの姿がステレオタイプ化していくのは、映画製作の主流が次第にアメリカとなっていく 1930年代頃からだと思いますが、それでも、まだまだ「いろいろな姿」でした。

私は若いころ、ずいぶんと映画を見ていまして、その中でも、B級と呼んではB級映画に失礼だと思えるほどひどいデキの「Z級」とも呼ばれていた 1950年代に乱作されたアメリカの数多のSF映画を、ビデオや、今のテレビ東京の昼や深夜枠で放映されていた映画などでずいぶんと見ました。

その 1950年代頃でもまだエイリアンはステレオタイプ化してはいなく、バラエティに富んでいたものでした(あるいは単に手抜きなんですが)。

ロボット・モンスター(1953年/米国)

Robot-Monster.jpg

▲ 地球にやって来て、人々を襲い、男性は殺して女性はさらう凶悪エイリアン(笑)。サーカス用か何かのクマの着ぐるみを着て、当時の潜水用のヘルメットを被っただけです。



金星人地球を征服(1956年/米国)

it_conquered_the_world.jpg

▲ アメリカ軍も撃破する凶悪エイリアン(笑)。このエイリアンはその後、「金星ガニ」と呼ばれ、長く愛されているキャラクターとなっています。しかし、愛されてはいても、金星ガニはエイリアンのステレオタイプにはなれませんでした。




エイリアンのイメージ定着化はいつ頃始まったか

そして、最終的に、現在に続くエイリアンのステレオタイプ化が始まったと考えられるのは、1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』のラストに出てくる、人類を超越した存在である「スターチャイルド」であり、

starchild.jpg
・2001年宇宙の旅のスターチャイルド

そして、1977年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』のエイリアンによって、そのイメージは決定されたと思われます。

Close_Encounters_of_the_Third_Kind_Aliens.jpg
・未知との遭遇のエイリアン。他にも背の高いエイリアンなども登場します。


その後、「異星人」のタイプは、たとえば、グレイというような名称のものも含めて、そのイメージが上のようなパターンとして定着していき、そして、その「形」が映画やメディアで繰り返されて使われ続けることによって、多くの人たちの頭の中に刷り込まれていったと考えられます。

上の英国の記事で「大人でも超自然現象を信じている人が多い」というように書いていますが、上の映画はそれぞれ今から 30 年から 40 年以上も前の映画ですので、刷り込み期間が長い分むしろ大人のほうがそれらを信じるのは当然なのかもしれません。


さて、しかし、映画の話をしたいのではないのです。


私は今回のイギリスの記事を読みまして、過去のふたつの記事、

ミスター・スノーデンが示唆する米英政府機関の「 UFO での大衆マインドコントロール作戦」
 2014年03月19日

イギリス政府の機密作戦の結果が教えてくれる「私たちのいる現実の世界」
 2014年02月28日

を思い出しました。

どちらも、観察衛星や電子機器を用いて情報収集などを担当するイギリスの諜報機関である英政府通信本部( GCHQ ) が行っていることについて書いたものです。

上の記事のうち、「イギリス政府の機密作戦の結果が教えてくれる……」のほうでは、イギリスのウェスタン・モーニング・ニュースの記事を翻訳していますが、英政府通信本部がプレゼンテーションで使った UFO 文書がエドワード・スノーデンさんによって暴露されたことについて書いています。

記事では UFO 専門家のナイジェル・ワトソンという人の談話などが記されています。

暴露された文書の何枚かの UFO 写真を見た後、ワトソンさんは「これらはニセモノ(作りもの)の写真であることがすでにわかっているものです」として、記事は、

そして、ワトソン氏は、これらはイギリス政府機関のインターネットにおける大衆に対してのマインドコントロールの試みのひとつだと確信しているという。

氏は以下のように述べる。

「政府機関はいまだに人々の UFO 信仰の力と大きさを認識しています。そして、彼らは人々の信念を悪用するためにインターネットを使うことには問題はないと考えているようです」。

としています。

ちなみに、この作戦を担当しているのは英政府通信機関内の「合同脅威研究情報班」( JTRIG )という部署で、彼らは「新しいオンライン世代のための秘密工作訓練」と題された、インターネット上でいかに「誤った情報を流布させるか」というオペレーションを行っています。

これはスノーデン氏の告発によって明らかになったものです。

そして、そのようなアメリカやイギリスの努力のお陰なのかどうなのかはわからないですけれど、冒頭の記事にあるような、

英国の成人が信じる超自然的な存在トップ5

1位 幽霊( 55 %)
2位 エイリアン( 51 %)
3位 UFO( 42 %)
4位 天使( 27 %)
5位 神( 25 %)


というようになったわけで、今の時代というのは、かなり多くの人びとが、

「神や天使を捨てて、エイリアンや UFO に信仰を求めている時代」

となっているということになります。

同じ調査を日本でおこなった場合はどのようになるのでしょうかね。
日本だとツチノコが1位かも(それはない)。


まあしかし……それにしても……。


たとえば、大昔は、どこの国や地域でも空を見上げた人々は、そこに神の存在を考えたと思われます。

しかし、今、空から神は消えつつあり、空を眺めて思うのはエイリアンと UFO という時代となっています。

そして、このように「この世から神という概念を消したいと考えている存在」というものは確かにあると私は思っています。

それが具体的にどのようなものなのかは想像もできないですが、このことに関しては、もう少し考えて、いずれは書いてみたいです。


ところで、最近、

「人類が火星に行くのは不可能だ」

という説が、アメリカのマサチューセッツ工科大学( MIT )の研究チームや、ニューハンプシャー大学の研究者たちにより相次いで発表されています。

そして、それらのうちのひとつは「もしかすると人類は基本的には宇宙へは行けない」ということを示唆するものかもしれないのです。



人類は月より遠くの宇宙へは行けない

マサチューセッツ工科大学の研究については、新華社 日本語版の記事「米国の最新研究、人類は火星で68日間しか生きられない」と予想」などにあり、こちらは、「火星に到着後」の問題を書いていて、食糧や空気などのことについてを解析したものです。

それによると様々な条件により、火星到着後 68 日後には移住した人々は死亡するとしたものですが、こちらに関しては、上のリンクの記事は日本語記事ですので、詳しくお知りになりたい場合はそちらをお読み下さい。

それよりも、ニューハンプシャー大学の研究者たちによって発表された研究。

これは、

「そもそも火星にまで到着することができない」

という可能性を発表したものでした。

mars-mission-radiation.gif

▲ 2014年10月22日の英国デイリーメールより。


これは、ニューハンプシャー大学のネイサン・シュワドロン( Nathan Schwadron )という科学者が、火星への有人飛行をおこなった場合、現在の太陽活動の減少によって宇宙飛行士たちは壊滅的な放射線量を浴びることになり、火星への有人飛行は事実上不可能だ、という研究結果を導き出したというものです。

非常に長い記事ですので、内容の要点だけ箇条書きで記しますと、




・現在、太陽活動が減少している。太陽活動が減少している時は、宇宙放射線量が増えることが知られている。

・今後さらに太陽活動は減少すると見られ、その場合での放射線の推定値から計算すると、30歳の男性を想定した場合、約 320 日間で放射線量が生命に危険が及ぶレベルに達する計算となる。

・この計算からだと、火星に到着する前に身体が破壊される可能性がきわめて高い。





というものです。

その火星なんですが、太陽系での位置関係としては下のようになっています。

solar-system-2014.gif
私たちの太陽系


こういう図で見ると、「火星などすぐ隣」というように見えるのですが、それでも「行くのは無理」だというのが、あくまでも今回のシミュレーションですが、そのような結論となるということです。

宇宙放射線については、JAXA の放射線被ばく管理というページに以下のように説明があります。

宇宙には、宇宙放射線と呼ばれる放射線があります。

宇宙放射線は、地球の大気と磁場に遮られて、地上にはほとんど届きません。しかし、宇宙では、宇宙放射線が宇宙飛行士に与える影響が問題になってきます。

しかし、ふと、「それだと、長い期間、宇宙空間にいる国際宇宙ステーションの搭乗員は大丈夫なんだろうか」ということを思うわけですが、 JAXA によると、

ISSが周回している高度400km前後の上空では、非常にエネルギーの高い粒子が降り注いでいます。宇宙船の船壁や遮へい材によって、ある程度は遮ることができますが、宇宙滞在中の宇宙飛行士は、宇宙放射線による被ばくをすべて避けることはできません。

とあり、やはり影響はあるようです。

国際宇宙ステーションに滞在中の乗務員の1日の被ばく線量は、地球上での約6ヶ月分にも相当するのだそうで、乗務員たちはかなりの放射線を浴びているようです。

しかし、それでも乗務員たちが命に関わるような致命的な状態にならないのは、国際宇宙ステーションも実際には地球の磁場に守られている場所」にあるからです。

下の図で、国際宇宙ステーションはそれほど遠い宇宙空間ではなく、地球に近い磁場の中の宇宙空間にあることがわかります。

iss-2.jpg
JAXA


火星というか、火星以外でも、宇宙空間を進んで他の惑星に行く場合は、地球の磁場の保護が完全にない空間を進むわけで、上の「乗務員の1日の被ばく線量が地球上での約6ヶ月分に相当する」どころではない放射線を浴びることになります。

ニューハンプシャー大学の科学者たちは、このことから「火星に行くのは事実上不可能」としたということのようです。

この不可能性を解消するためには、

1. 宇宙船の速度を上げる
2. 放射線に負けない材質の壁を持つ宇宙船を作る
3. 放射線に負けない強い体を作る(苦笑)


くらいしかないわけですが、現時点では3つとも不可能だと思われます。

さて、こうなってくると、「人類は、宇宙的にはほんの隣に見える火星にさえ行けない」ということになり、宇宙に対しての夢は非常に小さくなります

もっと言えば、

人類は磁場で守られている地球近隣の宇宙空間以外には行くことができない

ということにもなります。

もちろん上の3つのどれかが実現するような遠い未来には、あるいは遠くへの宇宙旅行も可能になるのかもしれないですが、現時点では難しいことです。


・・・さて。


実はこの、

「人類が遠い宇宙へは行けないかもしれない」

ということはもうひとつの可能性を示唆します。

それは、

「他の惑星の人間も地球には来られないかもしれない」

ということです。

どうしてそう考えられるのか?



私たちは宇宙のきょうだいとは多分会えない

それは、先日の記事、

「彗星は強烈な悪臭を放っている」ことが観測されたことから改めて思う「宇宙塵も彗星の母体も生き物」で、さらに言えば宇宙はすべてが生き物かもしれないという感動
 2014年10月27日

という記事でも書きましたが、私がパンスペルミア説(地球の生命は宇宙からやって来た)とする説の信奉者だからです。

このパンスペルミア説は、

「宇宙が生命をばらまいている」

と言い換えてもいいのですが、だとすると、「生命(あるいは生命のパーツなど)を配布する場所が同じならば、すべての宇宙で環境によって同じような生命が存在している」と考えるのが妥当です。

つまり、すべての宇宙の生き物がきょうだいだとした場合、その生物が(物質的に)どんな特徴を持っているかという可能性を考えるには「地球の生物を見てみればいい」のだと思います。

たとえば、人間や哺乳類などの大型動物は、

・気温が極端に高い、あるいは低い場所
・酸素のない場所
・放射線量が異常に多い場所

などでは生きられなく、これは結局、植物も含めた多くの生命に言えるのですが、居住可能な空間というのは、適度な温度、水や酸素などがあり、気圧も放射線量も生命維持が可能な場所ということになります。

何百度も温度のある場所や強い放射線が降り注ぐ中では、極限環境微生物と呼ばれるような一部の微生物以外は、多くの生き物は生存することができません。

そして、パンスペルミア説が正しければ、宇宙のすべての生物はこの掟から逃れられないと私は考えています。

そこから考えますと、

地球の人間ができないことは、他の惑星の人間もできない。

と思わざるを得ないのです。

つまり、他の惑星の人間も、強い放射線の中を旅してくることは難しいと思うのです。

過去記事の「人類は孤独ではない:見つかり出した数多くの地球型惑星」などにありますように、現在、地球と同じような環境かもしれないと考えられている惑星は数多く存在します。

しかし、それらは最も近いようなものでも、10光年以上の距離があります。

この「光速でも 10年かかる」ということは非常に大事なことです。

仮に(現在の科学では)この世の限界の速度である「光速」で進むような宇宙船を持っている異星人がいたとしても、「 10年も宇宙放射線を浴び続けて生存できるような人間タイプの生物」がこの宇宙に存在しているとは思えません。

つまり、地球に来られる「人間タイプ」を想定することが難しいのです。

何だか夢のない話に聞こえるかもしれないですが、普通に考えるとそのようになってしまいます。

しかし、同時に、パンスペルミア説を思う時には、

「生命を配布している者の存在」

を考えざるを得ません。

私は特定の宗教を持ちませんけれど、そこに「神」というような概念が生じても違和感はないです。

パンスペルミア説の最大の研究者だったフレッド・ホイル博士は晩年の著作『生命(DNA)は宇宙を流れる』の締めくくりにこのように書いています。

生命(DNA)は宇宙を流れる』(1998年)より

われわれが到達した結論、すなわち宇宙に知性があることをロジカルに要請することは、世界の主だった宗教の教義と整合性がある。世界中のさまざまな文化の中で、「創造主」は独自のすがた形をとる。エホバ、ブラフマー、アラー、天の父、神……宗教の数だけ呼び名もある。

けれども、その根底に横たわる概念は、どれも一緒だ。それは、宇宙は ー 特に生命の世界は ー 想像もつかないほど強力な人間型の知性を持つ「存在」によって創造されたということだ。

天体物理学の発展に寄与した稀代の大科学者だったホイル博士が行き着いた先にあったものは、具体的な正体を確認することもできない「存在」でした。

それを神と呼ぼうと他の名称で呼ぼうと、あるいは、名前などつけなくとも、それはどちらでも構わないのですけれど、今の世の中は冒頭の英国の報道のように、生命の創造主なのかもしれない「存在」を軽視する人々がどんどんと増えているということになりそうです。



  

2014年10月27日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。





comet-smell-top.gif

▲ 2014年10月14日の米国ニュー・サイエンティストより。






 


彗星の香り…それは「強烈な悪臭」だった

今年夏に書きました、

アイスランドの火山の状況のその後と、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
 2014年08月29日

という記事で、「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」というものを取り上げたことがあります。

欧州宇宙機関( ESA )の観測衛星ロゼッタが「 10年 5ヵ月の旅」を経て 8月 6日に、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の軌道に入ったという報道をご紹介したものでした。ロゼッタは、今年の 11月にはこの彗星に着陸する予定です。

そのチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星ですが、大きさは、最大部分で約3キロメートルある彗星で、下の写真のような形をしています。

67p.jpg


現在、観測衛星ロゼッタは、この彗星の観測と分析をおこなっているわけですが、最近、ロゼッタが、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の「匂い」のデータを送信してきました。

そして、その匂いが「きわめて悪臭」だということがわかったのですね。

後で再びふれますが、これは、過去記事の、

宇宙空間に「強烈な匂い」が漂っていることを知った日: 「それは焼けたステーキと金属の匂い」と語る NASA の宇宙飛行士たち
 2012年07月24日

などとも関係しそうな話でもあると共に、この観測結果は、彗星が単なる無機的な氷の塊ではないことを意味します。

ロゼッタには、成分の分析のための「機械の鼻」がついていて、それによって緻密に成分を分析するのですが、送られてきたデータの主な成分は、

・硫化水素
・アンモニア
・シアン化水素
・ホルムアルデヒド
・メタノール
・二酸化硫黄


などで、つまり、この彗星は硫黄やらアンモニア臭やらが混合した「ものすごい悪臭」を発していることがわかったのです。

先に、冒頭のニュー・サイエンティストの記事の翻訳を載せておきます。

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Comet stinks of rotten eggs and cat wee, finds Rosetta
NewScientist 2014.10.24

彗星は、腐った卵や猫のおしっこの悪臭を放つことを探査機ロゼッタが発見

彗星とはどのような「匂い」がするものだと思われるだろうか?
その答えを端的にいえば、かなりひどい匂いのようだ。

欧州宇宙機関( ESA )の彗星探査衛星ロゼッタから送信されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のデータからは、この彗星からは腐った卵や猫の尿やアーモンドの匂いなどが混合した匂いが放たれていることが明らかとなった。

しかし、この悪臭は、実は朗報といえる。

この悪臭の背後にある硫化水素、アンモニア、および、シアン化水素は、凍結した水と二酸化炭素と混合されたものだが、ロゼッタの分光計がこのような様々を検出するとは誰も思ってはいなかったのだ。

成分中には、さらに、ホルムアルデヒド、メタノールおよび二酸化硫黄が含まれていた。

「これは本当に素晴らしいものです。10年待ち続けた後、突然、私たちの前にこのようなもの(匂いの成分のこと)が現れたのです」

と、スイス、ベルン大学のカスリン・アルトウェッグ( Kathrin Altwegg )教授は言う。

アルトウェッグ教授は、 ROSINA と呼ばれるロゼッタのイオン分析計と中性分析計、つまりロゼッタの機械の「鼻」の担当者だ。

「驚くべきは、太陽からこれだけの距離がありながら、非常に豊富な化学的性質を持っているということです」

氷の彗星がさらに熱を帯びると、 ROSINA は、より複雑な分子を検出することができるであろう。
アルトウェッグ教授は、それらの匂いの成分が共通の発生起源を持っているかどうかを判断するために、他の氷玉とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の分子を比較しようとしている。

彗星は、太陽系の初期の時代から残ったビルディング・ブロックであり、彗星観測衛星ロゼッタの目的のひとつが、それらの彗星がすべて同じ発生源から来ているものかどうかを同定することにある。

もし、彗星それぞれの発生源が違った場合、それは地球上に生命が発生するために必要な分子の起源を説明することができる可能性がある。

ちなみに、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の匂いは非常に低い成分であり、人間の鼻では気づかない程度のものだ。「私たち人間が彗星の上に立っても、この匂いを検出するには犬の力を必要とするでしょう」とアルトウェッグ教授は言う。





翻訳記事はここまでです。

それにしても、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から検出された成分を見ていると、

「妙に毒性の強いものが多い」

ことに気づきます。

今回の彗星から検出された成分の性質は下のようなものです。
すべて Wikipedia の説明を引用しています。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から検出された成分

硫化水素 → 水によく溶け弱い酸性を示し、腐った卵に似た特徴的な強い刺激臭があり、目、皮膚、粘膜を刺激する有毒な気体である。

アンモニア → 無機化合物。特有の強い刺激臭を持つ。

シアン化水素 → メタンニトリル、ホルモニトリル、ギ酸ニトリルとも呼ばれる猛毒の物質である。

ホルムアルデヒド → 有機化合物の一種で、最も簡単なアルデヒド。毒性は強い。

メタノール → 有機溶媒などとして用いられるアルコールの一種である。

二酸化硫黄 → 無機化合物。刺激臭を有する気体で、別名亜硫酸ガス。自動車の排気ガス等で大量に排出される硫黄酸化物の一種であり、環境破壊、自動車公害の一因となっている。

彗星とは、かくも毒々しいものでもあるようですが、しかし一方で、この成分たちからは、一部、「生命」の雰囲気が漂います。生命というか「有機物」といったレベルでの話ですが、少なくとも、彗星は「単なる汚れた氷の塊ではない」ということが今回のデータでわかったのではないかと感じます。

さて、この「宇宙の悪臭」ですが、上にもリンクしました過去記事「宇宙空間に「強烈な匂い」が漂っていることを知った日……」では、宇宙飛行たちが「自分が宇宙空間で感じた匂い」を、考え得る限り挙げたディスカバリーの記事をピックアップしていますが、宇宙空間というのは、おおむね、

・アジア料理の香辛料
・ガソリン
・汗をかいた足の匂い
・体臭
・マニキュア取りの薬剤
・肉を焼いた匂い


などが混じったような強烈な匂いがするのだそうです。

Astronaut-EVA.jpg

▲ 何となく「無臭」のように思える宇宙空間には、実は「強力な匂い」が漂っています。


上の記事では、宇宙ステーションでの任務をおこなった NASA のドン・ペティット宇宙飛行士が、自らのブログに記した以下の文章をご紹介しています。

「宇宙空間の匂いを説明することは難しいです。これと同じ匂いを持つものの比喩ができないのです。強いていえば、『チキンの料理の味がする金属の匂い』というような感じでしょうか。甘い金属のような感覚の匂い。溶接とデザートの甘さが混じったような匂い。それが宇宙の匂いです」

どうして「匂い」がするのかというと、その理由として、現在の科学では、

・酸素原子
・イオンの高エネルギーの振動

などの理由ではないかとされていますが、しかし、よくは分からないながらも、そのような理由で、

・アジア料理の香辛料
・ガソリン
・汗をかいた足の匂い
・体臭
・マニキュア取りの薬剤
・肉を焼いた匂い

の匂いが全部出ますかね?

特に「汗をかいた足の匂い」などという臨場感に富んだ匂いからは「生物」という雰囲気をとても感じます。

ちなみに、私自身はぶっちゃけ、これらは「有機物や、大量の微生物」だと思っていますし、あるいは、彗星の「悪臭」を作っているものもそうだと思います。

とはいえ、そのようなことを私のような科学の素人が書いても説得力がないわけで、ここは、現代物理化学の神様的な存在でもあるスヴァンテ・アレニウスと、フレッド・ホイル博士にご登場いただきたいと思います。



宇宙の「チリ」自身がすべて生命だと考えたアレニウス

スヴァンテ・アレニウスという科学者は、Wikipedia の説明をお借りしますと、

120px-Arrhenius2.jpg

スヴァンテ・アレニウス( 1859 – 1927年)は、スウェーデンの科学者で、物理学・化学の領域で活動した。物理化学の創始者の1人といえる。1903年に電解質の解離の理論に関する業績により、ノーベル化学賞を受賞。

という方です。

そのアレニウスは、19世紀以降の科学者の中で最初に「地球の生命は地球外の宇宙から飛来してきたものだ」とする説を持ち、この説に「パンスペルミア」という名をつけました。この言葉はギリシャ語で、「パン」は日本語で「汎」を意味して、「スペルミア」は「種」という意味です。

要するに、パンスペルミアという言葉自体は、

「生物のタネは(宇宙も含めて)広くそのすべてにわたる」

という意味の言葉で「どこにでも生物はある」ということを表しただけであり、言葉の意味自体は難しいものではないです。

宇宙塵自身が生命であることに言及した 100年前のノーベル賞学者の実験
 2011年05月07日

という過去記事にも抜粋したことがありますが、「エピソードで知るノーベル賞の世界」というサイトにはこのように記されています。

「生命の地球外起源説」にも挑戦したアレニウス

アレニウスは、化学の分野のみならず、あらゆる科学にも通じていた。彼が貢献しなかった科学の分野はほとんどなかったとも言われている。

彼は、宇宙空間を漂っている「生命の種子」を想定し、これが太古に地球上に降り注いだ可能性もあり、地球上の生命の発生にもつながったのではないかとする「パンスペルミア説」(汎宇宙胚種説)なども提唱。

彼は、そうした生命種子は「太陽風を受けて、秒速100Kmの速度で宇宙を旅してきた」とまで計算していた。

その後、20世紀に入ってから、「地球の生命は、原始の海の中で《偶然》発生した」という珍説が登場して以降、生命が偶然に発生したという説(自然発生説)が科学上での一般学問となっていたことがありました。

さすがに最近では、遺伝子学などが進み、生物のあまりにも複雑な構造を知るにつれて、この「自然発生説」を信じる科学者はあまりいないと思われます。

たとえば、上のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の記事にも、

> もし、彗星それぞれの発生源が違った場合、それは地球上に生命が発生するために必要な分子の起源を説明することができる可能性がある。

というような記述があることからわかるように、いつの間にか、地球の生命は宇宙からもたらされたとする考え方が、現在の科学界ではむしろ主流になっているという事実があります。

生物学や生物の DNA 構造などが明らかになるにつれて、「物質が偶然組み合わさって DNA やアミノ酸ができて、そこから細胞ができ、そしてそこから何百万という種類の生き物ができる」などということは「無理だ」と考えざるを得なくなったということもあると思います。

それほど生命の構造は複雑です。

だから、科学の探求を真剣におこなった科学者ほど、「神」や「この世の始まり」ということを多く考えるものなのかもしれません。

近代物理学の祖であるニュートンが、現代では一種のオカルト扱いをされているエメラルド・タブレットの解読で「この世の仕組み」を解明しようと試みたり、前述したアレニウスが、『宇宙の始まり』という、天地創造神話を科学的側面から検討するような著作を記したりするというのも、そのようなことかもしれません。

それほど、この「現実の世界」は複雑で「奇跡のようなもの」とも言え、優秀な科学者になればなるほど、そのことを強く感じる傾向はあるようです。

フレッド・ホイル博士も、晩年は、お釈迦様の言う「無限の宇宙」を自著で語っていました。


話をパンスペルミアに戻しますと、結局、

宇宙塵そのものが生命(アミノ酸、 DNA 、バクテリアなどを含めて)である

ということなのだと、私はアレニウスの言葉を解釈しています。

宇宙塵などと書くと難しいですが、宇宙塵というのは Wikipedia の説明を借りますと、単に、

宇宙空間に分布する固体の微粒子のことである。

というもので、つまり、宇宙空間に漂っている微粒子の総称です。

アレニウスは、それらの宇宙塵を含めて、

> 宇宙空間を漂っている「生命の種子」を想定した

のですが、しかし、これだけでは問題があります。

塵は推進力を持ちません。

単に「漂う」だけでは、宇宙空間に生命(あるいは DNA やアミノ酸などの生命の素材)が存在していたとしても「宇宙塵そのものに推進力も方向性もない」という重大な問題があります。

アレニウスは「太陽風に乗って、宇宙空間を生命が移動する」と想定していたようですが、それだと、生命の移動が太陽活動の強弱に支配される(太陽活動が弱い時には推進力が弱い)と共に、太陽から遠く離れた場所に生命が到達することはなくなってしまいます。

宇宙空間全体に生命を行き渡らせるためは、太陽とは関係なく、「何らかの推進力」が必要です。

そんな中で、彗星の観測と分析の中から

「彗星は微生物の塊なのではないか」

とし、彗星こそが生命の運搬役ではないかとしたのが、フレッド・ホイル博士でした。

彗星は自ら軌道をもち、推進力を持ちます。

推進力を持つものには小惑星もありますが、小惑星が「岩」なのに対して、彗星は基本的に「氷の塊」ですので、衝突の際や、あるいは太陽のような熱をもつ天体近くを通過する際でも内部が保護されやすい構造です。

また、今回のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の「匂い」は、彗星が、単なる氷ではないことも示唆していますが、この「匂いの原因」の可能性として考えられるのが「バクテリア(細菌)」です。

これは、フレッド・ホイル博士たちが、1980年代に彗星の尾が「バクテリアである可能性」を観測・分析したことによります。




彗星は生命の運搬を担う

この観測については、過去記事の、

良い時代と悪い時代(3): 2013年の巨大彗星アイソンのこと。そして宇宙から地球に降り続ける生命のこと
 2012年10月11日

に書いたことをそのまま抜粋したいと思います。

ちなみに、彗星は以下のような構造となっています。

comet-core.jpg
コニカミノルタ プラネタリウム


ここから抜粋です。

良い時代と悪い時代(3)より

彗星はそのほとんどが軌道周期を持っており、ある意味では、「自主的に移動」しています。

さらに、彗星の内部に微生物が存在していれば、仮に彗星が大気を持つ惑星に突入しても、大きさにもよりますが、衝突と摩擦による熱から「内部」が守られる可能性があります。

このあたりは何年か前にクレアなひとときの「宇宙はすべて生き物からできている」に書いたことがあります。

そこに英国カーディフ大学のチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士が、1986年に、シドニーのアングロ・オーストラリアン天文台にあるアングロ・オーストラリアン望遠鏡で観測した、「ハレー彗星の赤外線吸収スペクトル」のグラフを載せたことがあります。

下のグラフです。

fred-comet.jpg

この図が何を示しているかというと、「ハレー彗星と地球の大腸菌は、成分分析上で一致した」ということです。

この観測結果が「彗星は微生物の塊であるかもしれない」という推測につながっています。

また、隕石の場合にしても彗星の場合にしても、大気層に突入する際には表面は熱と衝撃によって、分子レベルで破壊されますので( DNA も残らないということ)、「守られる頑丈な外殻」は必要だと思います。そして、それが彗星の構造とメカニズムなのだと私は思っています。

あるいは、「摩擦熱の問題でそもそも微生物しか大気圏を突破できない」ということもあります。

抜粋はここまでです。

上にある「摩擦熱の問題」というのは「彗星の破片は時速3万6千キロ(秒速 10 キロ)という超高速で移動している」ということと、地球を含めた惑星が「非常に高速で自転している」ということと関係します。

大気のない惑星にこれらが衝突すると、その摩擦で生じる衝撃によって、その物体は分子レベルでバラバラに破壊され、生物が生き残る可能性はありません。しかし、地球には大気があり、高層圏では気体の密度が低いために、侵入した破片の速度は減速され、分子レベルでの破壊は免れます。

それでも摩擦による非常に高い熱が生じるのですが、摩擦熱は、「小さな物質であればあるほど、熱も小さく」なります。

size-01.gif

▲ 大きさの比較。髪の毛の直径が 0.1ミリメートルで、細胞は髪の毛の直径の10分の1の大きさ。大腸菌は髪の毛の直径の 100 分の 1 の大きさ。ウイルスは、大腸菌の 10 分の 1 なので、髪の毛の……えーと、計算できないですが、このようになっています。図は、東京都臨床医学総合研究所より。


摩擦熱については、フレッド・ホイル博士の著作『生命はどこからきたか』から抜粋します。

フレッド・ホイル『生命はどこからきたか』より

地球大気に秒速 10キロのスピードで物体が突っ込んできた場合、その摩擦熱は物体の大きさ(粒子の直径の4乗根)と比例する。その場合、物体が針の先くらいのものでも、摩擦温度は 3000度に達し、ほとんどの物質は残らない。あるいは生物なら生きられるものはいないはずだ。可能性があるとすると、それより小さなものだ。

たとえば、細菌やウイルスくらいの大きさの粒子なら、突入した際の摩擦温度は約500度となる。摩擦で加熱される時間は約1秒間と推定される。この「1秒間の500度の状態」を生き残ることができない限り、生物は彗星に乗って地球に侵入してくることはできない。

ホイル博士は、英国カーディフ大学のチームと共に執拗な大腸菌の実験を続けます。そして、大腸菌たちは、「1秒間の 500 度」をクリアしたのでした。

つまり、 DNA や、アミノ酸といった「生命の部品」ではなく、大腸菌のような、生物として完成している大型の生き物でも宇宙から降ってくることが可能であることがわかります。ウイルスは細菌よりさらに小さいですので、摩擦熱も小さくなり、いくらでも地球に降り立つことが可能だと思われます。


この地球において、病気が「突然現れる」ということを不思議に思われたことはないですか?

どんな細菌でもウイルスでも歴史の中で「唐突に」現れる。


それほど広大とも言えない地球で、しかも、たとえば、エイズにしてもエボラにしても、サルとかコウモリなどの動物由来でヒトに伝わったとされていますが、人間より短い寿命の彼らが何千万年も代々、ウイルスを温存して伝えてきた? このことは昔から不思議に思っていました。

まあしかし、そのことはともかく、今回の彗星の「匂い」で、さらに彗星そのものが生命の塊であることを確信した次第です。



  

2014年10月25日



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▲ 2014年10月3日のロサンゼルス・タイムズより。






 



「カルデラ破局噴火」がメディアで大きく報道された日

先日、下のような報道を見ました。

巨大噴火100年で1% 神戸大教授予測
東京新聞 2014.10.23

巨大なカルデラ(陥没地形)をつくる巨大噴火が今後百年間に日本列島で起きる確率は約1%とする試算を神戸大の巽(たつみ)好幸教授(マグマ学)らがまとめ、二十二日発表した。最悪の場合、一億二千万人が死亡し、実質的な「日本喪失」もありうるとしている。(中略)

巽教授らは、二万八千年前の姶良カルデラ噴火と同規模の噴火が九州中部で起きたと想定する被害を予測した。

九州のほぼ全域が火砕流に襲われ、約二時間で七百万人が死亡する。西日本は一日のうちに五十センチの火山灰が積もり、四千万人の生活の場が埋没する。北海道と沖縄以外は十センチ以上の火山灰で覆われる。生活の糧を奪われ救援もできないため、日本の総人口に近い一億二千万人が死亡する恐れがあるとした。

この記事を読んで、

「こういう記事が出ると、海外に過剰に伝わりがちで……」

と思っていましたら、今朝の海外の報道は下のようなものでいっぱいでした。

volcano-japan-01.gif

▲ 2014年10月23日の Yahoo! News (米国)より。


2011年以来、「日本と自然災害」というキーワードは、特に西欧では敏感に反応されるようになっているのか、日本の政治のことは西欧世界で話題になっているのを見たことがないですが、日本の自然災害関係は大きく扱われやすいです。

上のニュースの冒頭を訳しますと、下のようなものとなっています。

日本は次の世紀までに超巨大火山噴火によって破壊され尽くしてしまうかもしれない。

大学による新しい研究によると、日本の人口の 1億 2700万人以上が、この脅威にさらされている可能性があるという。「それは日本を絶滅に陥れることになるかもしれないといっても過言ではない」と神戸大学の巽好幸教授は研究の中で述べている。

話がどんどん大きくなっていっている感じもしまして、何というか、まるで「日本版イエローストーン的な話題」として海外で伝えられているわけですけれど、神戸大学の教授の言う、

> 巨大噴火が今後百年間に日本列島で起きる確率は約1%とする試算

のそのものが何らかの具体的な目安になるというものではないとは思います。

というのも、ここでいう「巨大噴火」の発生のサイクルの「期間」には非常に幅があるために、発生確率のパーセントでの表示での理解は難しい感じがするのです。

なお、報道では「巨大噴火」という言葉が使われていて、「破局噴火」という言葉はあまり使われていないようですが、ここでは「破局噴火」という言葉を使わせていただきます。

過去記事で何度か記したことがありますが、今一度、この噴火について書いておきます。

破局噴火 - Wikipedia

破局噴火とは、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式で、しばしば地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となる。

大規模なカルデラの形成を伴うことからカルデラ破局噴火と呼ぶ場合もある。また、そのような噴火をする超巨大火山をスーパーボルケーノとも呼ぶ。

確率の予測に意味があるかどうかはともかくとして、神戸大学の巽教授の「 700万人が火砕流で2時間で死亡し……」というような描写そのものは、破局噴火においては誇張ではなく、たとえば、アメリカのイエローストーンが破局噴火を起こした場合のシミュレーションについて、上の Wikipedia では、以下のように記されています。

イギリスの科学者によるシミュレーションでは、もしイエローストーン国立公園の破局噴火が起きた場合、3 - 4日内に大量の火山灰がヨーロッパ大陸に着き、米国の75%の土地の環境が変わり、火山から半径1,000km以内に住む90%の人が火山灰で窒息死し、地球の年平均気温は10度下がり、その寒冷気候は6年から10年間続くとされている。

イエローストーンとなると、そのサイクルはさらに大きく、数十万年単位(前回の噴火は 64 万年前)となったりしますが、巨大火山がある国や地域では、海底の巨大火山を含めて、いつかは必ずこれらの災害に遭遇する時が来るということになります。



地球の文明のリセットを考える

先日の、

タイムリーな黒点の姿と「 X 100,000 クラス」の超特大スーパーフレアの存在
 2014年10月21日

では、太陽系外の星で「 X 100,000 」クラスの超巨大フレアが観測されたことを書いたのですけれど、記事の最後のほうに、もし、私たちの太陽が同じような超巨大フレアを「連発」して地球に直撃させたような場合、それは、

「地球のリセットを意味する」

というようなことを書きました。

そして、火山もそうです。

日本だけでも数千年〜1万数千年に1度は、どこかで破局噴火が起こり、その場合には、日本列島の全部ではないにしても、基本的に「命も文明もリセットされる」ことになります。

これらの太陽や火山の存在が示すことは、

「地球はひとつの場所で1万数千年以上同じ文明が存続できないようになっている」

ということを示すものなのかもしれないとも思います。

それは決して火山の周辺の局地的なものに限られるわけではなく、たとえば、上のほうに書きましたイエローストーンのシミュレーションの破局噴火のシミュレーションで、

> 地球の年平均気温は10度下がり、その寒冷気候は6年から10年間続くとされている。

とあるように、広い範囲で農業の存続も難しいような状況となるようなことが何年も続くわけです。


今までぼんやりとは思っていましたが、今回の報道で、、

地球には同じ系統の文明を継続させないメカニズムがある

ということを知った気がします。


ところで、日本で破局噴火が最後に起きたのは、今から 7,300年前のことです。

これは、過去記事、

アメリカ政府はイエローストーンが噴火した場合のために、南アフリカ、ブラジル、オーストラリアなどへの「米国人の数百万人規模の大量移住」を要請していた
 2014年05月09日

などにも書いたことがありますが、東大名誉教授の藤井敏嗣さんが書かれた「カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか?」というページによれば、

わが国では、100立方q以上のマグマを放出するカルデラ噴火は、1万年に1回程度発生しています。数10立方q以上の噴火ならば12万年間に18回、つまり6千年に1回程度は「起こっている」ことになります。

もちろん、これは平均発生頻度で、前のカルデラ噴火から2,000年のうちに起こったものもあれば、1万数千年以上の後に起こったものもあり、このような規模の噴火で、最後に起こったものが先の鬼界カルデラ噴火なのです。

ということになり、破局噴火は平均サイクルが非常に長く、そして規則的でもありません。
1万数千年起きないこともあれば、2000年で起きることもあるというものです。

ですので、

「 2000 年の間隔で起きたことがある」

という事実と照らし合わせれば、前回の破局噴火から 7300 年経っている現在は、日本のどこかで破局噴火が起きる可能性は十分にあるということにもなります。

しかし、

「1万数千年の期間起きなかったこともある」

という視点から見ると、「まだまだ起きることはない」とさえ言えそうで、結局、カルデラ破局噴火の予測に「今後何年で何パーセント」というような数字を入れることの意味にはやや疑問も感じますが、それでも、

新聞記事にある

> 九州のほぼ全域が火砕流に襲われ、約二時間で七百万人が死亡する。

という響きには確かに迫力があります。

今回の神戸大学の巽教授の研究に従って作成した想定される被害地図は下のようになります。

super-volcano-japan.jpg
東京新聞


これは 7300 年前の鬼界カルデラの破局噴火の際の被害の構図とほぼ同じで、7300 年前には下のような被害を出したとされています。

鬼界カルデラから噴出した火砕流の分布域とこの噴火で降り積もった火山灰の暑さ分布
kikai-7300.gif
NHK


そして、この 7300 年前の噴火の後、九州から四国に関しては、藤井名誉教授によれば、以下のような状態になったとされています。

南九州から四国にかけて生活していた縄文人は死滅するか、食料を求めて火山灰のない地域に移動し、1,000年近く無人の地となったようです。というのも、この火山灰層の上下から発見される縄文遺跡の土器の様式が全く異なっているからです。

ふと、「そういえば、富士山が破局噴火を起こしたら、自分が住んでいるあたりはどうだろう」と思い、大体同じ縮尺で、「2時間で 700万人が死亡する」範囲の円を富士山に合わせてみましたら……その中にきれいに収まりました(ああ、ダメだ)。

LocMap-Fuji-Mountain.gif


ここに越してきたときには「富士山がベランダから見えていいなあ」と思っていましたが、富士山が破局噴火を起こした場合、この地は周囲に存在するすべてと共に(多分、分子レベルで)消滅してしまう地域でもあるようです。

確かに、こんなことを心配するのは馬鹿馬鹿しいことではあるかもしれないですが、

「太陽にも火山にも地球の文明をリセットする力がある」

ことは、おそらくは事実で、その「リセットされる時代はいつか」というような話とも関係するのかもしれません。


群馬大学教育学部の早川由紀夫教授は「現代都市を脅かすカルデラ破局噴火のリスク評価」というページの最後をこのようにしめています。

ひとの一生の長さはせいぜい百年であるから、そのようなリスクがあることはすっかり忘れて、日々の暮らしを楽しく送ったほうがよいとする人生観もある。

一生の間に遭遇する確率が1%に満たないカルデラ破局噴火を心配するのは、たしかに杞憂かもしれない。愚かしいことかもしれない。しかし地球上のどこかの現代都市をいつか必ず襲うだろうカルデラ破局噴火を、純粋理学の研究対象だけに留めておいて本当によいのだろうか。


そして、冒頭のロサンゼルス・タイムズの報道のように、最近になって、

「今まで知られていなかった数千以上の海底火山の存在が明らかとなった」

ということがありました。

今回の研究によれば、海底には 10,000 以上の火山が存在するということのようです。

海底火山は今まで、その存在が知られていなかったものが多く、「噴火して初めてわかる」ということが多いものでした。

hung-haapai1.jpg

▲ 2009年 3月 18日に爆発的噴火を起こした海底火山フンガ・ハーパイ( Hunga Ha'apai )。場所はトンガから北西に約60キロメートルの場所でした。


ちなみに、7300 年前に破局噴火を起こした鬼界カルデラも基本的には海底火山です。

そして、

御嶽山の噴火やマヤカレンダーが示した「 5000年間」という時代の区切りに「日本神話の根源神」は何を私たちに示そうとしているのだろうかと考える
 2014年10月06日

という記事に書きましたように、現在の日本の火山学では「死火山」という言葉も概念も存在せず、「どんな火山でも、いつでも噴火する可能性を持つ」という考え方が普通になっています。

そんな「いつでも噴火する可能性を持つ火山」が地球の海底に「万単位」で存在する。

そういう場所に私たちは住んでいます。

というわけで、ロサンゼルス・タイムズの記事をご紹介します。




Thousands of undersea volcanoes revealed in new map of ocean floor
LA Times 2014.10.03


何千もの海底火山の存在が新しい海底地図で明らかに


最近、科学者たちにより最高解像度の海底地図が作成された。そして、その地図によって現在は活動していない火山を含めて、今まで知られていなかった数多くの海底火山の存在が明らかとなった。

この地図と研究結果は 10月 23日に発表された。この地図は 20年前に作成された海底地図より少なくとも2倍正確だという。

研究を主導したカリフォルニア大学サンディエゴ校のデヴィッド・サンドゥエル( David Sandwell )教授は以下のように述べる。

「良い話には聞こえないかもしれないですが、海底には 5,000 以上火山の海底火山があると思われていましたが、今回の解像度の地図では、10,000 以上の古い海底火山を見ることができます」

深海の海底の状態については、科学者たちもいまだにほとんどのことを知らない。サンドゥエル教授は、海底の探査は、太陽系の別の惑星を探査することと同じようなものだと考えている。

新しい海底地図を作成するに当たっては、欧州宇宙機関( ESA )の地球観測衛星 CryoSat-2 と、米航空宇宙局( NASA )とフランス宇宙機関 CNES が運営する海洋観測マッピングミッションでの宇宙艇「ジェイソン-1 ( Jason-1 )」が使用された。

両宇宙船は、海洋表面の形状をインチ( 1インチは約 2.5センチ)単位で計測することができる機器を搭載している。海底の巨大な山や火山は、海の表面の水位に影響を与えるため、海水面を計測することが海底で起きていることを知るための手がかりとなる。

今回の研究以上に正確な海底地図の作成ができるかどうかについて、サンドゥエル教授は「不可能ではないですが、予算と時間がかかりすぎるのです」と述べる。

観測衛星ではなく、船に機器を搭載して計測すれば、さらに正確な海底地図を作成することが可能だが、 10隻程度の船に機器を搭載したとしても、計測が完了するのに10年間かかるという。しかし、そのためには莫大といえる予算がかかり、それを喜んで拠出してくれる機関は存在しないだろうという。




  

2014年10月16日



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▲ 2014年7月6日の Extinction Protocol より。






 



10月11日の関東の重低音

私はリアルタイムでの情報発信を読んだりする習慣がありません。つまり、ツイッターなどでの情報を得るということや LINE なども使ったことがありません。

でまあ、それはそれとして、数日前の 10月 11日の夜に聞こえた「音」のことが、昨日( 10月 15日)になっても、まだ気になっていました。

時間は正確には覚えていないですが、夜の8時くらいでしたかね。

うちの奥さんが、「何これ?」と言って、部屋の周囲を見回したのですね。

わたし 「何って?」
奥さん 「この音」
わたし 「……あ……なんだこれ?」


どこかでとてつもない「重低音」が響き渡っているのです。

私は、ベランダを開けて、外に音を聞きにいきましたけれど、これは低音の特徴でもあるのですが、その発生源の方向がつかめません。つまり、「空から鳴っているのか、地面のほうから鳴っているのかさえよくわからない」のでした。

空か地面かわからないけれど、そのあたり全体が「ゴゴゴゴゴ」と鳴っている。

音の感じとしては、

・雷(ゴロゴロの時)
・大きな花火大会の低音
・飛行機の超低空飛行(ソニックブーム)


などの「低音」の部分を彷彿させるのですが、とりあえず雷の可能性はありません。また、私の住んでいる場所は米軍や自衛隊の軍事基地が近いということもあり、このあたりに住む人は、毎日、空軍機の音を聞いていて、かなりの低空飛行の轟音をも日常的に聞いています。

したがって、「軍用機の音を聞く回数についてはプロ」(笑)である住民たちが多いのですが、この音がそれらの航空機でもないこともわかります。

今までの経験を凌駕する「ものすごい低音」が、ゴゴゴゴゴ……と、わりと長い間続いているのです。

わたし「うーん……なんだろう、この音」
奥さん「花火大会?」
わたし「花火でこれだけの低音が出るとすると、すぐそこの駅前あたりで、史上最大級の花火の打ち上げが行われて、さらにその花火大会で戦後最悪の爆発事故が立て続けに 10回くらい起きないと、こんな音にはならいなと思うな」


私は大きな花火大会も比較的近くで何度か経験していますけれど、こんな低音は聞いたことがない。

その時に、何かリアルタイムの情報でも見ていれば良かったのですが、上に書きましたように、私はリアルタイム情報をあまり見ない上に、夜はインターネットを見ません。

そして、実は、私はその翌日の昼もどうも釈然としない低音を聞いたのです。ここに至り、「ちょっと調べてみよう」と思いまして、今日ネットで検索してみましたら、関東の全域でその「音」を聞いた人たちがツイッターなどに書き込んでいたことを、まとめサイトで知りました。

10-11-twitter.gif
まとめサイト


それで、上のまとめサイトの流れとしては、下の投稿によって、「ギネス級の花火によるもの」という方向になっていったのですね。

鴻巣(こうのす)市商工会青年部主催の「第13回こうのす花火大会」が11日、鴻巣市の糠田運動場で行われ、1万5千発を超える花火が秋の夜空を彩った。重さ464キロの4尺玉の打ち上げにも成功し、「最大の打ち上げ花火」としてギネス世界記録に認定された。

hanabi-100.jpg
鴻巣花火大会

私もこの「ギネス」という言葉に惑わされたのかどうなのか、一瞬、「ああ、花火だったのか」と思ったのですが、

「ちょっと待て。鴻巣市?」

と、「位置関係」について疑問が出てきたのです。

埼玉県の鴻巣市と、私の住む所沢市の周辺の位置関係は下のようになります。

kyori.gif


距離は、バスの路線から調べて見ると、最も直線距離に近いコースの道路で 所沢周辺から 鴻巣市周辺までは 40キロメートル以上あります。

この距離だと、私の住む場所を中心としますと、東京都の大部分までをカバーする距離であり、もし、あの音が鴻巣市の花火の音だとすると、夏に東京でおこなわれる、すべての大きな花火大会の音が全部聞こえてくるという計算になります。

さらに、当日のツイッターの投稿を見ますと、

湘南地区、20時頃に地鳴り?地響き?すごかった。(・・;)以前から聞こえている音とちょっと違ってゴゴゴゴゴ…と連続音。雷かと思ったけど明らかに違う。埼玉のギネス級の花火の音が聞こえるわけないし…。

というものや、

関東広域で地鳴りが聞こえたとの噂が多数? 鴻巣花火が原因? しかし、四尺玉は最後の一発だけど。 地鳴りの鳴っていた時間や長さが分からないし、いくらどうでも横須賀まで届くわけないと思うが。

というものなどがあり、千葉や神奈川方面まで轟音が拡がっていたようで、こうなってくると、私個人としては、常識的に考えて、この轟音は「埼玉県のギネス級の花火」とは関係ないと思います。

しかし、じゃあ何かというと、それはわからないです。

とりあえず「首都圏一帯」に、この重低音が聞かれていたらしいんですけれど、関係ない話ではありますが、ちょうど同じ頃、アメリカでも「轟音」のニュースが報道されていました。




同じ頃、アメリカでも謎の轟音

海外の「謎の音」といえば、2年以上前に、

世界中で響き渡る音から「ヨハネの黙示録」の天使のラッパを考える
 2012年02月21日

などで、世界各地で聞こえた(とされる)奇妙な音のことを何度か記事としてご紹介したことがあります。

実際にはそれ以降も、アメリカでは「謎の音」の報道が頻繁になされています。

そして、つい先日の 10月 12日に、アーカンソー州にあるアークラテクス( ArkLaTex )という場所で広範囲で重低音が響き渡るという出来事があり、比較的大きく報道されました。

Boom-ArkLaTex.gif

▲ 2014年10月13日の KSLA より。

map-arklatex.gif

▲ アークラテクスの位置。


上のニュースは毎日アップデートされていて、最初は「原因不明」とされていたのですが、10月 15日になり、その轟音の聞こえた時に、

「上空を何かの破片の大群が横切っていた」

ことがレーダーで確認されたという記事になっています。

下がそのレーダーに写った「何かの破片の集まり」の通過の様子。
広範囲です。

rader-ArkLaTex.gif
KSLA


しかし、この日には、航空機の事故や、あるいは周辺の工場や石油関連施設での爆発事故のような、つまり、このような「大量の破片を生じさせる」いかなる出来事も起きていないということで、むしろ、レーダーによって、この「破片の大群」を見つけられたことによって、この出来事はさらに謎が深まっているようです。

この破片の大群が轟音の原因かどうかもわからない上に「そもそも何の破片の大群なのか」もまったくわかりません。

このニュースは、何か興味深いことがありましたら、ご紹介します。




謎の音に対しての一般的な見解

この数年は世界中で、「謎の音」の報告が頻繁にありましたが、あまりに報告が多くなるにつれて、単なる気のせいやオカルトでは済まされなくなってきた頃から、科学者の人々もコメントを出すようになりました。

たとえば、もう3年前の記事ですが、

あらかじめ予測されていた小氷河期の到来
 2011年11月07日

では、地球が寒冷化に入る可能性について言及した NASA の太陽物理学者デイビッド・ハザウェイ博士のインタビューを何度かにわかりご紹介しました。

このデイビッド・ハザウェイ博士も Earth Files という米国のサイトの中で、

「太陽からの激しいプラズマと地球の重力の相互作用によって発生する重力波によって、これらの謎の音を説明することができるかもしれません」

と言っていたことがありました。

謎の音の原因が、太陽活動と地球の重力の関係の中で起きているかもしれないという説です。

あと、

世界中での異常な音は「地球内部の新しいエネルギー活動の始まり」という学説
 2012年02月08日

という記事では、アゼルバイジャン出身の科学者エルチン・カリロフ博士( Dr.Prof. Elchin Khalilov )という人の説をご紹介したことがあります。

カリロフ博士の所属する GNFE という団体は国際科学団体ではありますけれど、いわゆる西欧の一般的な科学の視点とはやや違うものですが、その主張は下のようなものです。

当時の翻訳は読み直すと無用に長いですので、訳し直して短めにしました。




世界中で報告される空からの不可解な音 - これらは何なのか?

この数年、世界の異なる国や地域から「空からの奇妙な音」についての報告が相次いでなされている。

科学者たちによれば、報告された音のうち、実際にそれが奇妙な音だと認定されるようなものはごくわずかだというが、しかし、その中には確かに説明がつかない音が含まれており、そして、それらは、米国、英国、コスタリカ、ロシア、チェコ、オーストラリア等、位置の異なるさまざまな国々から報告されている。

これらは一体何が原因で起きているのか?

地球物理学と地質学を専門としているエルチン・カリロフ博士によると、これらの奇妙な音を分析する中で、これらの音の大部分が「超低周波」であり、不可聴音(人間が聴くことができない低い音)の範囲にあることがわかったという。

カリロフ博士は、「このような非常に強力で巨大な音響の重力波を作り出すためには、極めて大規模なエネルギー・プロセスがなければならない」と述べる。そして、その巨大なエネルギーは、太陽フレアを含む太陽表面で発生する巨大なエネルギーの流れと関係していると博士は言う。

同時に、カリロフ博士は、私たちの地球の内部からの要因についても語る。

「これらの不可解な音の発生源の可能性としての他の要因は、地球のコアにあるかもしれない。地球の磁場を作っている内側と外側の殻の移動のプロセスは 1998年から 2003年の間に5倍に増加している。現在、地球の北の磁極の移動が加速しているが、これは地球の中心のエネルギー・プロセスの増大を示していると思われる」。

地震と地球の重力を記録するための世界的ネットワークであるアトロパテネ・ステーションは、2011年11月に、強力な重力の衝撃を世界で同時に記録した。この理由について、博士は、「2011年の年末に地球のコアで起きた大きなエネルギーの解放は、地球の内部エネルギーが新しい活発な活動段階に入ったか、あるいはエネルギーの移行の開始を示す何らかの信号なのかもしれない」と述べる。





ここまでです。

この「地球が新しい活動期に入った」というフレーズは、最近の地球の「磁場の移動」や、火山活動、そしてシンクホールの多発などの地殻変動などの頻発を考えましても、いい加減な考え方とは言えない面もありそうです。

ところで、「謎の音」に関しては、2004年にすでに「謎の音が拡大している」という主旨の論文が出されていることを知りました。




2004年の「世界に拡がる謎の音」の研究論文から思い出す「良い周波数」と「悪い周波数」

下の文書は、オクラホマ州立大学の地球物理学者デビッド・デミング博士が 2004年に書いた論文の1ページ目です。

the-hum.gif
The Hum: An Anomalous Sound Heard Around the World


上に赤いラインで示しましたが、LORAN (ロラン)、 HAARP、TACAMO などとある文字列は、通信用語、あるいは、アメリカ軍の軍事関係の頭文字です。

それらの文字が並んでいるということは、このデビッド・デミング博士という人は、世界に拡がる謎の音とこれらの関係を書いているという可能性が高そうです。

「可能性が高そうです」と書きましたように、私はまだ中は全部は読んでいないのです……というか、読めないほど長いのです。しかし、これについて説明しているサイトも見つけましたので、今後またご紹介できるかとも思います。

何より「謎の音」が 2004年にすでに科学者でさえ無視できないほど、世界中で報告されていたということを知ったということの方が驚きでした。

ところで、上の中の HAARP (高周波活性オーロラ調査プログラム)については、昔からいろいろと言われていますが、公表されている目的自体はいまだに曖昧な説明となっています。

ですので、その目的についてはどの意見も憶測に近いものがあるのですが、目的はともかくとして、 HAARP のシグナルが「低い周波数である」ということを以前知りました。

今年の4月に書きました、

太陽黒点と事故の関係。そして、太陽と HAARP の関係。あるいは「太陽にとって替わりたい人たちの存在」を感じる最近
 2014年04月22日

という記事では、

・太陽の磁場エネルギーは低周波
・人間が発信している波長も低周波


という、太陽と人間の波長が同じ領域にあることを記していますが、HAARP のシグナルである「5Hz 程度の非常に低い周波数」も同じような領域にあるものです。

ここから、

「HAARP のシグナルは、人間と太陽が共有している周波数に干渉している可能性がある」

ことがわかります。

ただし、これが偶然なのか、意図的なのかまでわかるはずもありません。

他の TACAMO も超長波の関係のようですし、LORAN(ロラン)というのも、地上系の電波航法システムの一つだそうで、すべてが、軍事用の通信システムと関係しているということになりそうです。

そして、デビッド・デミング博士の論文には、どうも、

「それらのシグナルが人間の精神に影響を与えている可能性がある」

ことについて書かれているようです。

要するに、人間が耳では聞こえない低い周波数のシグナルも含めて、轟音や重低音などで、人間を一種の狂気や暴走に走らせるというようなことなのでしょうかね。

きちんと論文を読んでいないですのでわからないですが、もし、そういうことができるのなら、たとえば、誰かが、あるいは、国家や組織が、

「ある国や地域を暴動や混乱が起きやすいように導きたい」

という願望を持ったとした場合、意図的に「起こりやすい状態」に人の精神を導くことができたりする・・・というような研究もどこかではおこなわれていたり、あるいは、実験や実践がなされているという可能性もあるのかもしれません。

そんなことは無理っぽい……と思いつつも、しかし、過去記事の、

ジョン・レノンの曲に DNA を修復するといわれるソルフェジオ周波数 528Hz コード「だけ」で作られていたものがあることに気づいた日……
 2014年08月26日

などで書きましたような「音(あるいは周波数)には人間の肉体と精神に直接影響を与える力がある」とするソルフェジオの理論が本当ならば、

人間にとって良い音(周波数)

の反対となる、

人間にとって悪い音(周波数)

も存在すると思われます。

5000年前の古代人が「良い音」を探求していたのと逆に、現在の世界のどこかに「悪い音」を研究し続けている人(たち)が存在するとしたなら、そして、それに効果が認められるとするなら、なかなか手強い世の中であるかもしれません。

しかし、現在の地球の各地で報告される轟音は、それらとは関係のない「地球内部の営み」であるのかもしれないですし、それは私たちには推測の域以上は何もわからないです。



  

2014年10月14日



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▲ 2014年10月12日の Space.com より。






 



アメリカの10月第2月曜日の祝日

昨日のアメリカは「コロンブス・デイ」という祝日だったんですけれど、今回はそのことと少し絡んだ話です。

このコロンブスという人物がアメリカでおこなったことは、よく考えれば、「歴史的に巨大な出来事」だったにも関わらず、その詳細があまり学校教育などでも教えられていないために、「コロンブスがアメリカ大陸を発見した」という、ある意味では間違ったイメージが定着しているような気もします。

たとえば、コロンブスがアメリカ大陸においておこなった「インディアンへの大虐殺」は、彼の2度目の航海の時で、 1493年のことでした。

その様子は、クリストファー・コロンブス - Wikipedia によりますと、下のようなものでした。

コロンブスの率いるスペイン軍はインディアンに対して徹底的な虐殺弾圧を行った。行く先々の島々で、コロンブスの軍隊は、海岸部で無差別殺戮を繰り返した。まるでスポーツのように、動物も鳥もインディアンも、彼らは見つけたすべてを略奪し破壊した。

という壮絶なもので、そして、

コロンブスの襲撃戦略は、以後10年間、スペイン人が繰り返した殺戮モデルとなった。

というものとなりましたが、このことについては後で少し書きます。

いずれにしても、昨日のアメリカの祝日は、こういう人の名前を冠した祝日でした。

ところで、この「コロンブスの虐殺」が起きた 1493 年という年代なんですが、これは過去記事、

西暦が始まって以来の「4回連続する皆既月食」(テトラッド)の発生はたった8回。そして、その時に起きていたこと
 2014年10月03日

で書きました、西暦が始まっての約 2000年の間に、たった8回しか起きていない「4回連続する皆既月食」の中に含まれているのですね。

1. 西暦 162 - 163 年
2. 西暦 795 - 796 年
3. 西暦 842 - 843 年
4. 西暦 860 - 861 年
5. 西暦 1493 - 1494 年
6. 西暦 1949 - 1950 年
7. 西暦 1967 - 1968 年
8. 西暦 2014 - 2015 年


やはり「4回連続する皆既月食」と大量死は関係しやすいのでしょうかね。

とはいえ、これは今回の本題ではありません。

本題は、

「コロンブスは赤い月(皆既月食)を利用して生き残ったことがある」

というエピソードを宇宙関係のサイト Space で見かけましたので、ご紹介しようと思った次第です。



戦いをせず、所有の欲望がない「過去にいた未来の人びと」にコロンブスたちがおこなったこと

ちなみに、この「コロンブス・デー」という祝日は、概要としては「 1492 年に北アメリカ大陸にクリストファー・コロンブスが到着したことを祝う」となっていますが、その一方では、この日( 1 0月の第 2 週)に毎年、アメリカの各地では下のような「祝日」がいとなまれるようになっています。

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▲ 2014年10月13日の CNN より。


記事の内容はシアトルとミネアポリスの市議会が、毎年「コロンブス・デイ」として祝われている祝日を「アメリカ先住民の日(Indigenous Peoples' Day)」に変更するという議案を可決したというものです。

コロンブス・デイは国家の祝日ですが、アラスカ州、ハワイ州、オレゴン州、カリフォルニア州バークリーなどでは祝日とはされていません。

まあ、そして、冒頭のほうにも書きましたけれど、このコロンブスを含めた、当時の征服者たちがアメリカなどでおこなったことをほんの少し読むだけで、この日を祝日をすること自体がおかしなことに気づきます。

今回の本題ではないですが、この「コロンブス」および、当時「新世界」を発見していった白人たちがどのようなことをしていたのかを簡単に書いておきたいと思います。

私もすぐ忘れるのですが、こんなに巨大な大量死のことを世界全体が忘れがちになっているというのも何だかあれですので。

コロンブスという人については、一言でかくと、 Wikipedia - クリストファー・コロンブスの冒頭の

クリストファー・コロンブスは探検家・航海者・コンキスタドール、奴隷商人。大航海時代において、キリスト教世界の白人としては最初にアメリカ海域へ到達したひとりである。

となり、私たちの子ども時代などは、上の肩書きの中の「探検者」という側面だけをクローズアップして教えられたような気がします(あんまり覚えてないですが)。この「キリスト教世界の白人としては最初にアメリカ海域へ到達したひとりである」コロンブスに発見されてしまったアメリカ大陸は、どのようになったか。

これも Wikipedia からの抜粋です。

1492年の「新大陸」へのコロンブスの上陸時に約800万人いたインディアンの人口は、1496年の末までに、その3分の1までに減った。

さらに1496年以降、死亡率は倍加していった。

量的にもスケール的にも、コロンブスは、虐殺目的で戦争を楽しんだ最も悪名高いコンキスタドール、征服者の一人と言えるだろう。

この数字が正しいのならば、コロンブス一行は、アメリカ大陸発見後、たった約4年間で、500万人から 600万人の先住民を殺した計算となりますが、この2回目の航海では、植民地化を目的としていたもので、スペイン人側の乗組員の数も多く約 1500人と言われています。

しかし、 1500人 vs 800万人なら、先住民が本気で戦えば、何とかなりそうな数字ですが、後のほうに書きますけれど、当時のアメリカの先住民たちは「そういうこと(戦争や争い)と無縁な生活をしていたらしい」人びとだったようです。

なので、一方的にやられるだけやられてしまったようです。なお、先住民たちの死因として、「西欧から持ち込まれた疫病」も大きかったとされています。

ここに「コンキスタドール」という耳慣れない言葉が出てきますが、15世紀から17世紀にかけてのスペイン人などのアメリカ大陸の征服者、あるいは侵略者といってもいいと思いますが、その人たちを指します。

コンキスタドールはたくさんいますが、現在名前が残っている中では、その代表格ともいえるコロンブスは、冒頭にも抜粋しましたように、「行く先々の島々で、まるでスポーツのように、動物も鳥もインディアンも、彼らは見つけたすべてを略奪し破壊した」ようなのですが、 Wikipedia では、その後に次のような一種救いようのない文章に続きます。

> スペイン軍は面白半分に彼らを殺す楽しみを決してやめなかった。

この「面白半分」という部分には、この文章を書いた人の主観が入っているように思えるかもしれないですが、コロンブスの航海に同行し、その虐殺を目のあたりにしたキリスト教宣教師のバルトロメ・デ・ラス・カサスという人の日記を読むと、「面白半分に近い」状態であったかもしれないことを伺わせます。

宣教師の日記には以下のように記されています。

「彼らはインディアンたちの手を切り落として、それが皮一枚でぶらぶらしているままにするでしょう、そして、『ほら行け、そして酋長に報告して来い』と言って送り返すのです。 彼らは刀の切れ味と男ぶりを試すため、捕虜のインディアンの首を斬り落とし、または胴体を真っ二つに切断し、賭けの場としました。彼らは、捕えた酋長を火炙りにしたり、絞首刑にしました」

「イスラム国」も真っ青な非道ぶりですが、とにかく、コロンブスとその部下たちは「黄金」と「奴隷の調達」にしか興味がなかったようです。

そして、私がしみじみと悲しみを感じた部分は、コロンブス自身の記述にあります。

コロンブスが最初にアメリカ大陸に上陸した時、どうやら、その地の先住民たちは「戦争や殺し合いを知らなかった」ふしが伺えることです。

以下はコロンブスの日誌の記述です。
太字の部分は、もともとの Wikipedia でも太字となっていて、私が太字にしたものではありません。

「彼らは武器を持たないばかりかそれを知らない。私が彼らに刀を見せたところ、無知な彼らは刃を触って怪我をした。 彼らは鉄を全く持っていない。彼らの槍は草の茎で作られている。彼らはいい身体つきをしており、見栄えもよく均整がとれている。彼らは素晴らしい奴隷になるだろう。50人の男達と共に、私は彼らすべてを征服し、思うままに何でもさせることができた」

さらに、どうやら、この先住民たちには「個人所有」という意識がなかったようです。

下もコロンブスの日誌からです。

「原住民たちは所有に関する概念が希薄であり、彼らの持っているものを『欲しい』といえば彼らは決して『いいえ』と言わない。逆に彼らは『みんなのものだよ』と申し出るのだ」


・争いがなく(武器を知らない)
・所有意識がない



これこそまさに「理想的な未来の人類の姿」だと感じます。

というか、未来の人びとはこのような人類であってほしいと。

この、「所有意識がない」というのは、かつての先住民の多くにあった概念だと思われ、日本のアイヌもそうだった可能性があります。縄文人と古代アイヌというページには、

もともと、アイヌの生活領域は狩猟生活を中心に移動していたから、「和人」のような土地所有意識を持たなかった。彼らの間に基本的に、土地や獲物の争いごとはなかった。

とあり、そして、そういう民族は下のような思想へと発展しやすいものなのかもしれません。

アイヌは、人間と人間がお互いを助け合うこと。自然を愛すること。生き物をむやみに殺してならないこと、などを伝統的に学び取りかつ実践した。

今では既知の世界にはこういう人々は、ほとんど消えてしまったかのように見えます。

もちろん、現在の社会でも学校でも「道徳観念」として、自然、あるいは他人を愛することや生き物をむやみに殺してならないという概念を「強制的」に大人にも子どもにも浸透させていますが、現実の世の中はそういう道徳だけで貫かれているわけではないこともまた誰でも知っています。

住居でも食料でも「所有」しなければ生きていくことは難しく、あるいは、自然や他人を愛することだけでは「所有して生きていく」ことはできない社会が現在の非常に多くの国と民族の姿だと思います。

こう考えると、「所有」という概念は諸悪の根源である可能性もありそうですけれど、「所有の願望」は現在の経済活動を支える根幹でもあるわけで、経済的に進んだ国では、「所有欲」をさらに鼓舞する方向で今の時代は進んでいます。



でもねえ……。



実際には最近は、多くの人びとが、この「所有することが価値である社会」に疲れてきている気はするんですよね。

たとえば、新しいスマートフォンが出てワーッとそれに飛びついたりする報道を見ますけれど、すでにそれを手にすることによる幸福感は存在していないような気がします。

「所有の時代の意志」を惰性で持続させているみたいな。

なんか……たまに疲れますよね。


今のこの世の中で「きれいで素敵なものばかりが見えるし、そういう体験しかしない」という人たちは羨ましいとは思いますけれど、そこにはどこかコロンブスと似た一方的な視点を感じます。

もちろん……本当に見えないなら、それを悪く言うのはおかしな話でしょうけれど。


それにしても、この日本もちょっと間違っていれば、先住民が数百万人殺されたアメリカ大陸のようになっていたかもしれないのですけれどね。何しろ、Wikipedia には、

> 『東方見聞録』にある黄金の国・ジパングに惹かれていたコロンブスは

という記述があります。

この人は狙ってたんですね、この国を。

ちなみに、その東方見聞録には、マルコ・ポーロが中国で聞いた噂話の中の日本が書かれていて、それがどのように描写されているかというと、

ジパングは、中国北部の東の海上1500マイルに浮かぶ独立した島国で、莫大な金を産出し、宮殿や民家は黄金でできているなど財宝に溢れている。また、ジパングの人々は偶像崇拝者であり、外見がよく、礼儀正しいが、人食いの習慣がある。

と書かれてあります。

当たっているのは……人食いの習慣くらいですかね(やめろって)。

いずれにしても、コロンブスが「惹かれていた」のは上の中の「黄金」だけだと思われますので、彼に発見されていたら、日本もえらいことになっていたかもしれません。


そんなコロンブスですが、1493年の「コロンブスの部隊によるインディアンの大虐殺」が、4回続く皆既月食の中で起きたことを最初に書きましたけれど、

赤い月と黒い太陽: 2014年から 2015年まで「4回連続する皆既月食」がすべてユダヤ教の重要宗教祭事の日とシンクロ
 2014年04月06日

という過去記事から書いている「皆既月食」と、犠牲や大量死との関係についての話とは違うものですけれど、コロンブスは、助かるために「赤い月」を利用していたことが記事になっていました。

その記事をご紹介したいと思います。

現地の先住民を「血のような赤い月はキリスト教の神の怒りだ」として騙す話です。


ところで、コロンブスという人物は 15世紀の人で、それほど遠い昔の人ではないにも関わらず、「出自」に関してはよくわかっていないのだそうです。 Wikipedia には以下のようにあります。

出自に関する諸説

コロンブスに関してはその出自が明らかではない事、また大航海の目的自体があまり明確に語り継がれていない事等から様々な異聞が流れている。また、残されている肖像画は全て本人の死後に描かれたものであり、今となってはコロンブスの真の素顔を知る術はない。

この時期のいわゆる有名人としては珍しいことのように思います。
そして、その中には、

多く語られているものとしては、コロンブスはユダヤ人の片親から生まれたのではないか、とする説である。(中略)コロンブス出航の真の目的はユダヤ人の移住地探しではないか、とする奇説も存在する。

ということものもあるのだそう。

赤い月とユダヤの歴史のこれまでの関係を見ると、あるいは、この一見珍説に見えるこの説もあり得るものなのかもしれません。

ここから記事です。




How a Total Lunar Eclipse Saved Christopher Columbus
Space 2014.10.12

クリストファー・コロンブスはどのように皆既月食によって生きのびたのか


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10月 13日はアメリカに住む人たちにはコロンブス・デーの祝日だが、この有名な探検の旅に「月」が関わっていたことをご存じだろうか。

1492年 10月 12日、コロンブスは、後に彼がサン・サルバドル(「聖なる救い主」の意)と名付けるキューバの北東部の島に上陸した。

この 10年間の航海の中で、コロンブスは3つ以上の「新世界」( New World )を発見したが、コロンブスの4度目の探検では、中央アメリカの海岸を探索する中で、コロンブス自身が苦境に陥ることになる。

コロンブスは、 1502年 5月 11日にスペインのカディスを、カピターナ号、ガレッガ号、ヴィズカイナ号、サンティアゴ・デ・パロス号( Capitana, Gallega, Vizcaína , Santiago de Palos )の4隻の船と共に出発した

ところが、船の板張りの木材を食べる虫が発生したことによって、 1503年 6月 25日に、今はジャマイカとして知られる島の北部の海岸に、2隻の船を放棄する他なくなったのだ。

最初のうちは土地の先住民だったアラワク・インディアンたちは、漂流者を歓迎して、食糧や避難所を提供した。しかし、日が経つに従って、両者には緊張が増してきた。

そして、漂着から半年以上経った後、コロンブスの乗組員の半数が反乱を起こし、先住民に対しての強奪と殺戮が始まった。

それまで、先住民たちは、コロンブスたちの部下たちに笛や装身具などと引き換えに、キャッサバやトウモロコシや魚を与えていた。しかし、自らや部下に飢餓が迫る中、コロンブスは独特な方法による脅迫という絶望的な計画を打ち立てた。


救助への暦

ジャマイカに取り残されたコロンブスたちを救ったのは「暦」だった。

その暦は、ドイツで高く評価されていた数学者であり、レギオモンタヌスの名前で知られている天文学者であり、占星術師でもあったヨハネス・ミュラー・フォン・ケーニヒスベルク(1436-1476年)によって作成されたものだ。

レギオモンタヌスは自分の死の前に、西暦 1475年から 1506年までをカバーする天文表を含む暦を発表した。

彼の天文表は、太陽、月や惑星についての詳細な情報だけでなく、より重要な星や星座による航海のナビゲーションに大きな価値があることがわかった。

この暦が発表されて以来、航海に出る者で、この暦の写しを持たない者は誰1人としていなかった。この暦の示す星の位置のナビにより、未知の大洋上でも、新たな方角へに向かって探検することができたのだ。

ジャマイカに取り残されたコロンブスも当然その暦を持っていた。

コロンブスは、その暦の表組みの中に 1504年 2月 29日の夕方に皆既月食が起こる項目を発見した。

この知識を武器に、コロンブスは、月食の3日前に、先住民アラワク族の首長との会談を要請した。そして、自分の部下たちに十分な食糧が供給されていないことに対して(コロンブスたちの)キリスト教の神が大変に怒っておられる、と首長に述べた。

そして、コロンブスは首長に対して、「神の怒りは3日後に現れる。(このまま食糧の供給が滞れば、神の怒りにより)夜空から満月が消え、不吉な徴候を示すだろう」と脅した。

そして、3日後の夕暮れの後、普通なら満月の時期のこの日の月は赤いボールのようだった。完全な闇の中に現れたその月は「血を流している」かのような真っ赤に染まっていたのだ。

先住民たちはこの光景を見て恐怖し、コロンブスと部下たちに協力することを約束するので、月を元の色に戻してほしいと願い出た。

コロンブスは、「それには私ひとりで神にお願いを申し出なければならない」と言い、ひとり、小屋の中に 50分間こもった。コロンブスは暦から「皆既月食が終わる時間」を砂時計で計算していたのだ。

そして、コロンブスは、満を期して小屋から出てきた。

「神はすべてを赦したもうた」

と語った。

すると、次第に、月は赤い色から通常の満月へと戻っていった。

その後、先住民たちは、コロンブスと部下たちに多く食糧を供給した。

1504年 11月 7日にコロンブスと一行は無事にスペインへ戻った。



  

2014年10月10日



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▲ 2014年10月7日のインターナショナル・ビジネス・タイムスの記事を引用したイギリス Yahoo! ニュースより。






 



心停止後の意識は生前と変わらず継続している可能性

イギリスにサウサンプトン大学という国立大学があります。その大学から最近発表された研究結果が、人間の「死後」に対してのひとつの方向を示すものかもしれないとして、英国のメディアを中心に大きく報じられました。

というのも、臨死体験(英語で Near Death Experience )という言葉そのものは、かなりの人びとが知っていても、それに関しての科学的、臨床的な大規模調査というのはこれまで行われたことがなかったのです。

そんな中で、サウサンプトン大学の研究者グループは数年かけ、英国、オーストリア、米国の病院で、2,060人の「心停止」、つまり「臨床的に死亡した」と判定された人たちを対象に調査を行うという初の試みをおこなったのです。

そして、その中から「蘇生した人たち」の「心停止後の意識」(死亡を宣告された後の記憶を覚えているかどうか)についての聞き取り調査を行い続けました。これは、2008年からおこなわれている長い研究の中の一環のようです。

これだけの人数を対象にした規模で、臨死に関しての調査研究がおこなわれたことは過去にはなく、それだけ調査結果に注目が寄せられたということのようですが、結果を先に書きますと、

死後も人の意識は続いているという可能性が高い

という結果となっています。

今回はその記事をご紹介します。

ちなみに、上の英国 Yahoo! ニュースの記事で使われているイラストは、小さくてわかりにくいと思いますが、下のイラストです。

near-death-experience.jpg


いかにも世で言われる臨死体験を現しているような絵ですが、今回の研究で調査したのは、

このような「暗いトンネルを通る」という方の話では「ない」

です。

「心停止の直後」、つまり、死亡した直後の病室の状況、聞こえた音、病室などにいた人などの記憶の方の調査です。

というのも、科学的に検証できる部分はそこしかないからだと思われます。

暗いトンネルや、体外離脱などの経験を語られても、それは「比較検証」できないものですが、患者の死の直後の様子を記録しておけば、蘇生した人からの聞き取りと、実際の状況に合致する点(つまり、記憶と現実が一致するかどうか)を調べられるからです。

しかしまあ、科学的には画期的な調査とはいえ、なんと言うか「イマイチな部分」が生じるのは仕方のないところもあります。




死後の意識の研究の限界とは

その「イマイチ」の意味ですが、その前に、まず、今回の英国サウサンプトン大学の「死後の意識」についての調査が、なぜ重要なのかというと、脳は心停止の 20 〜 30 分後には停止するもののようですので、つまり、今回の調査は「脳死の後の意識」とある意味では同義ともいえます。

ですので、学問的な重要性としては、

脳死の後の意識の有無

ということに関係しそうです。

なぜなら、「脳がその人の意識や記憶をつかさどっている」というのが現代の科学であり、死んだ後も意識や記憶があるとなると、この部分に微妙な摩擦が生じるためです。つまり、

「意識や記憶に脳は必要ないかもしれない」

という、科学的・医学的には受け入れがたい概念が認められてしまう可能性があるからです。


また、もう一方では、スビリチュアル的に、

肉体と意識は別のもの

という考え方を立証させられる可能性があるという意味での重要性もあるかもしれません。

「意識と肉体が別だなんて当たり前のことでは?」のように思われるスピリチュアル系の方もいらっしゃるかもしれないですが、「そうは考えていない人を納得させる」ことこそ一般科学の重要な役割だと思っています。

私が、現代科学のことをたまに記事にするのも、そこに意図があります。

もっといえば、

現代科学が、現代科学自体の矛盾を自ら明らかにしていくこと

こそが現代科学のこれからの使命だとさえ考えます。


いずれにしても、この「肉体が滅びても、意識はそのまま永遠に残る」ということの証明は、現在の科学と「非科学」を線引きするかもしれない最も強烈なテーマでもあります。

実際、今回の調査を最初に報道した英国テレグラフの記事の冒頭は以下のような出だしで始まります。

時の経過に従って、人類はより多くの発明や発見を行い、そして、同時に、答えが出る以上に多くの疑問が噴出してきた。

なかには、強力な疑問もある。

それは、太古の昔から哲学者や科学者たちを悩ませ続けてきた疑問 − 死後の世界はあるかどうか − という疑問だ。


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▲ 2014年10月7日のテレグラフより。



臨死体験研究の歴史

そして、今回、「死後の世界」ではなく、「死後の意識」が存在する可能性についての研究が発表されたわけですが、この「臨死体験」の学術的な歴史というのは、臨死体験 - Wikipedia によりますと、1800年代の終わりからあったことはあったようのですが、事実的にこの研究が進んだのは、1975年にキューブラー・ロス医師が『死ぬ瞬間―死とその過程について』という著作に、約 200人の臨死患者から聞き取りしたものをまとめたことから始まります。

まあ……このキューブラー・ロスという女性に関しては、今年の夏前に書きました、

聖女キューブラー・ロスが「神を呪った」とき : 寿命は長いけれど命そのものが粗末な感じがする今の時代に読んだ聖女の「最期」
 2014年07月14日

という記事で、この聖女と呼ばれたキューブラー・ロス医師が最期に豹変していく描写などを読みまして、「自然死の受容の難しさ」を書いたことがありますが、このキューブラー・ロス医師が、臨死体験の学問的発展の先駆者であったとは知りませんでした。

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▲ キューブラー・ロス医師(1926 - 2004年)。


今回の冒頭に貼った英国 Yahoo! の記事のイラストは、「トンネルのようなところを渡っている人のような感じ」が描かれていますが、臨死体験のパターンというものは、おおむね定型化されているもののようで、 冒頭のイラストはその中の一部をイメージしたものだと思われます。

上記 Wikipedia の「臨死体験のパターンと経験者の変化」というコーナーから抜粋しますと、次のようになります。そのページでは、

> 臨死体験には個人差がある。ただ、そこに一定のパターンがあることは否定できない。

と注記した後に、以下のように書かれてあります。




臨死体験のパターン

1. 死の宣告が聞こえる

心臓の停止を医師が宣告したことが聞こえる。この段階では既に、病室を正確に描写できるなど意識が覚醒していることが多い


2. 心の安らぎと静けさ

言いようのない心の安堵感がする


3. 耳障りな音

ブーンというような音がする


4. 暗いトンネル

トンネルのような筒状の中を通る


5. 物理的肉体を離れる

体外離脱をする


6. 他者との出会い

死んだ親族やその他の人物に出会う


7. 光の生命

光の生命に出会う。神や自然光など。
自分の過去の人生が走馬灯のように見える。人生回顧(ライフレビュー)の体験。


8. 境界あるいは限界

死後の世界との境目を見る


9. 蘇生


生き返る




となっています。

冒頭のイラストは「4」の「トンネルのような筒状の中を通る」のイメージだと思われます。

そして、重要なのは、ここでは

9. 蘇生

生き返る


までありますが、ここに至らない「8」で終わった人、つまり

「蘇生しなかった人の話の聞き取り調査は出来ない」

という事実があります。



約3分の後の「意識」はどのように

いずれにしても、今回の英国の大学の調査では、少なくとも蘇生するまでの「心停止(直後に脳死)の間の数分の記憶を持つ人が多い」ということと、その記憶と現実の光景の一致の状況などから、

「脳死後も意識は継続している」

ということが推測されるということになったわけですが、しかし、やはり、この調査には「限界」があります。

その限界は先にも書きましたように、心停止から蘇生した人の調査しかできない。

つまり、「死者からの聞き取り調査はできない」という、当たり前といわれればそれまでの話なのですが、これは決して笑い話として書いているのではなく、やはり、「死んでしまった人のその後の意識はわからない」ということの「壁」は大きいと思います。

ここは結構重要なことで、どうしてかというと、今回の調査の結論として、研究者たちは、

「心停止(脳死)後3分間程度、意識が続いているようだ」

という主旨に至りましたが、この「3分間」というのは、多分、大体の「心停止から蘇生に至るまで」くらいの時間なのではないかと思うのです。

要するに、心停止、あるいは脳死後、時間が経てば経つほど蘇生する可能性が低くなりますので、調査対象となった蘇生した人たちは、

「死んでいる時間が短かった人たち」

だったはずです。

ちなみに、調査対象の 2060人のうち、蘇生した人は 330人です。

そういうこともあり、今回の研究では、永続的な「死後の意識」というものについてはわからないままです。


突然かもしれないですが、今の世の中は、非常に大ざっぱに分類すれば、「死後」、あるいは「肉体と意識」について次のように考えている人たちに分類できるように思います。

A 意識は脳の中にある(つまり、肉体が死ぬとすべての意識が消滅する)

B 意識と肉体とは別のもの(肉体は容器であり、意識は永続的に続く)

C 死後は違う存在となって「死後の世界」に行く

細かくわければキリがありませんが、非常に大ざっぱに上のような感じではないでしょうか。

これを別の言い方で書くと、

A 意識と肉体はひとつのもの(現代の西洋科学)

B 輪廻転生、あるいは、意識が肉体を授かる、という概念

C 天国や地獄や幽霊の世界の概念


というような感じでしょうか。

「A」はともかくとして、「B」と「C」は似ているようで違うところは、

B 意識という観点からは生前と死後の区別はない

C 生前と死後では違う存在となる

というあたりでしょうか。

どの考え方の方々が一番多いのかはわからないですが、たとえば昔の日本では「C」だったような気もするし、それが「A」へと「教育」されてきたという感じでしょうけれど、今では、「B」、つまり、

永久に続く意識としての存在

として人間を見る立場の人も多いようにも思います。


私自身の考え方としては……まあ……多少は「B」に近いと思いますけれど、完全にそうではないのも確かで、なぜなら、病気や災害に会う度に、自分の、そして家族の「死を恐れ」、そして、報道でも「死」を特別に見ている。

最近の In Deep のテーマのひとつの「大量死」に関してもそうです。

これは、私が「死を特殊なこととして見ていて、自分でも大変に恐れている」ことを意味します。心の底から「意識は永遠に滅びないので、肉体の死など関係ない」と思っているのならば、こんな考え方にはならないはずです。

やはり、「永遠の意識」を心底では信じ切れていないのかもしれません。

死を恐れるのは、ほぼすべての人間の、そして動物たちの本能ですけれど、人間が違うのは、上の





のように、「死」に対して多様な考え方を持つことができるところです。

他の動物でも……まあ、そのことを考えている動物たちもいるのかしれないですけれど、それは彼らの世界の中のこととして、とりあえず、人間から見れば、こんなに一生懸命に「死と意識と肉体の存在」のことを考えるのは、やはり人間の特性であるのだろうなあと思います。



父の昔の話

ところで、私が初めて「臨死体験」というものに興味を持ったのは、今から 40年くらい前の小学生の時だったと思いますが、教師だった真面目な父親が、夕食時、お酒を飲みながら、自分の幼い時に体験したことを語った時でした。

冗談や嘘を言うことのない父親でしたので、多分本当に体験したんでしょうけれど、父が子どもの頃、高い木の上から落ちて、仮死状態となって病院に運ばれた時のことを語っていました。

「病院の天井の間上から自分を見ているんだよ。オレは目を閉じていて、母さんと兄弟がベッドを取り囲んでいてさ。その後、暗いところを通ってどこかに行って、明るいところに出た時に、後ろのほうから母さんの気が狂ったかのような叫び声が聞こえたんだ。オレの名前を叫んでるんだよ。それで振り返ったら、誰かに手首を引っ張られて。そうしたら、ベッドの上で目が覚めた。その間、オレはずっと息が止まっていたらしい」

そして、

「でも不思議とその間は気持ちよかったんだよ。『もっとここにいたい』と思ってた。だから、母さんの叫び声だけでは戻らなかったと思う。手首を引っ張られなければ」

とも言っていました。

多分、話の感じとしては、下のようなところで、父の「母さん」が、多分、息子が仮死状態の中、絶叫して父の名前を呼んだのでしょうけれど、それで振り返ると同時に手首を引っ張られて「ご生還」と相成ったようです。

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examiner


この時、父親が亡くなっていたら、今の私もいないわけで(いや、いたかも)、手首を引っ張ってくれた人に感謝したほうがいいのか、そうでもないのかさえわからない 50代の晩秋なのでした。

いずれにしても、「意識は永遠に継続する」に一票、ということで前振りが長くなってしまいましたが、冒頭の記事の翻訳です。




Life After Death: 'Near-Death Experience' Study Shows Awareness Continues After Brain Shutdown
Yahoo ! News (英国) 2014.10.07

死後の世界:「臨死体験」の研究は脳死の後も意識が継続していることを示した

臨死体験についての史上最大規模の研究によって、脳活動の停止後も意識が継続していることが発見され、そして、私たちが死ぬ時に何が起きるのかということについての詳細が明らかになってきた。

サウサンプトン大学の科学者たちは、英国、オーストリア、米国各地の 15の病院において、心停止に陥った 2,000人以上を調査した。 これは臨死体験に関しての調査規模としては過去最大規模だ。

心肺停止から蘇生した人たちの約 40%の人たちは、臨床的に死亡してから、心臓が活動を再開するまでの間に「意識」があったことについて説明した。

その描写は正確で、たとえば、ある人は、心肺停止中の治療マシンの音とノイズを覚えており、どの医師がその間の治療に当たっていたかを記述した。

研究を率いたサム・パルニア( Sam Parnia )博士は、英国紙にこう述べた。

「私たちは心臓が活動を停止した際に、脳が機能しないことを知っています。そして、心臓が停止すると、その 20〜 30秒後には脳活動が停止するのが通常であるにも関わらず、今回の研究では、心停止の後、最大で3分間、明確な意識が続いていたような例があります。」

ある男性は、心停止の間に、治療器から流れる2種類の電子音を正確に説明した。そして、その間に病室で起きたことをすべて正確に説明したのだ。

今回の研究のために、科学者たちは 2,060人の心停止患者を調査した。心停止から生き帰ったのは、そのうちの 330人で、さらにその中の 140人が、蘇生する前の心停止中の経験を説明して、「意識があった」ことを述べた。

意識があったと答えた中の5人に1人は、彼らが、その間、平和な感覚を感じたと答えた。

何人かは明るい光を見たと言い、何人かは、時間が高速化していくことを感じた。また、他の何人かは時間が遅くなる感覚を持った。他には、深い海に沈んでいくような感覚を持つ人もいた。

パルニア博士は、今回の調査で、より多くの人が、死に際して同じような経験を持っていることが示されたとする一方で、蘇生の際に使われる薬の種類によっては、その心停止中の意識と記憶が阻害される可能性があると語った。

博士は以下のように言う。

「これまで、何百万人もの人びとが臨死に対しての鮮烈な経験を持っていたが、科学的には曖昧な証拠しか示せませんでした。あるいは、これらの体験が幻想や幻覚であると想定されてきた面もあります。しかし、今回の調査は、心停止中の彼らの体験は実際に起きたことを認識していたようにとらえられるのです」

さらに、

「しかし、心停止の原因が脳損傷の場合や、蘇生の際に記憶経路への鎮静剤を使った患者たちの場合、心停止の間のことを覚えていません」

と付け加え、さらなる研究が必要だと語った。

ベルニア博士は、心停止中の脳の酸素送達の測定をおこない、蘇生の意識について調査する 2008年に成立された「蘇生中の意識」( Awareness during Resuscitation )の主任研究員を務めている。




  

2014年10月09日



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最近のユダヤ教やイスラム教の宗教の重要な祝日や祭事が、皆既月食の発生の周辺で起きていることを、前回の記事などで書いていましたが、そのような地球の大地上のイベントの中、「地球の上空」も大騒ぎになっていることを知りました。

それは「地球上空を交差する火球の数」です。

下は、10月 7日の火球観測ネットワークによって観測された火球の数です。

fb-2014-1007.gif

▲ 2014年10月7日の Spaceweather より。






 


この 173 個という数は、地球の上空で観測される火球の数としては非常に、あるいは、現在の天文学的な状況を考えると「異常に多い」です。

ふつうの場合は、まあ、いろいろですけれど、たとえば、その前日の 10月 6日は下のような感じでした。こういう日が普通で、しかし、このたった1日後には大狂乱状態となるのですから、宇宙はわかりません。

fb-1006.gif
Spaceweather


この数年、私は、この火球ネットワークに関しては毎日見ていまして、感覚的にはこの「 173個」というのは、1日の数としてはマックスに近い状態だと思います。

上に「異常に多い」と「異常」をつけましたけれど、これは今の時期とも関係します。

つまり、今は地球で観測される流星群が基本的にはない時期だからです。一般的には、地球で火球が多く観測されるのは、「流星群が観測される時」で、そういう時には 100を越えるような火球が観測されます。

たとえば、最も最近で、比較的多く流星を観測できたペルセウス流星群が最大となった 8月 13日の流星の観測数は下のようになっています。

ペルセウス流星群が観測されていた8月13日に記録された火球の数

2014-0813-perseids.gif
Spaceweather


流星群の場合の火球は、母体の方向から同じような軌道を描いて地球上空を通過していきますので、軌道も秩序だっていて、大変美しい軌道を見せてくれますが、この 8月 13日に記録した 163個という火球のうちの 99個はペルセウス流星群によるものでした。

それでも、この時には、ペルセウス流星群とは関係のない「独立した火球」が 61個と、全体として活発だったことがわかります。

この「独立した火球」という書き方は、天文用語として正しいのかどうかわからないのですが、 要するに、「流星群などに属さない、それぞれバラバラの発生源を持つ火球」というような意味で、そう記しています。

冒頭の 10月 7日の火球は、そのうちのほとんどが「独立した火球」ということになるようです。

つまり、「バラバラの発生源から、いっせいに時を同じくして地球めがけて流星がやってきた日」とも言えます。

正確には、173個の火球のうち、169個が「独立した火球」(残る4つのうち、2つが、おうし座南流星群、2つがおうし座北流星群というもののようです)。

そして、その数 169個という数自体が、今年のこれまでの最大級の火球を記録したペルセウス流星群の際の観測数を越えているあたりに「異常な数」という言葉を使った所以です。


それにしても、あらためて、冒頭の流星たちの軌道などを見てみますと、発生源のバラバラな流星たちがこうも見事に地球の上空をかすめて去って行く。

173-kidou.gif


これが「あくまで偶然」であろうと、天体の動きが、常に何らかの「地球上の意味」を示唆してしようと、それはどちらでも構わないのです。いずれだとしても、やはりこんなことに関しても、太陽系全体から見る地球の大きさ(小ささという意味)から見れば、これは奇跡は奇跡のように思えるわけで。



小惑星も賑やかに

火球も上のように派手になっていますが、地球に近い場所を通過していく小惑星(地球近傍小惑星)も、10月に入ってからはとても多く、また「 2014年になってから発見されたものがとても多い」のが特徴です。

下は、10月 1日から、その後の接近が判明している地球近傍小惑星の表です。

asteroids-1005.gif
Spaceweather


表で Miss Distance と書かれている欄が「地球へ最も接近すると予測される距離」ですが、ここでは「 LD 」という単位が使われます。 LD は、「地球と月の距離」を意味しまして、 1 LD は、大ざっぱにいえば、約 38万キロメートル程度ということになります。

ですので、上の表の最初にある「 0.3 LD 」というのは、非常に地球に近く接近しそうなイメージを与えますけれど、0.3 LD は 地球から約 11万キロメートルほどもある距離で、このくらいではどれだけ軌道計算に誤差があったとしても、地球に到達する可能性はほとんどゼロです(ただし、何らかの物理的作用で、軌道を変えられない限り)。

そして、この距離の数値が「 0.01 より下」という距離が表示された場合は、あるいは地球に衝突するコースをとっている可能性があります。

たとえば、今年 2014年 1月 1日に発見され、翌日の 1月 2日に地球に衝突した小惑星の軌道は、以下のように表示されていました。

asteroids-0001.gif

▲ 2014年1月4日の記事「元旦に発見された小惑星はその翌日に地球を直撃した : そんな始まりを告げた 2014年」より。

この小惑星は、幸いなことに直径3メートル程度の非常に小さなものでしたので、地球の大気圏を通過した後、大西洋上空で燃え尽きました。


まあ、そんなわけで、10月に入ってから、今、「地球の上空」がとても賑やかになっているということをここまで書きました。


ところで、この小惑星ですが、最近、

小惑星のひとつが地球の周囲を周回する「新たな月」のような軌道を持った

ことがわかりました。

天文学的には、私たちの地球は、現在、

ひとつの安定した衛星(月)



3つの準衛星

を持っていますが、ここに新たに非常に安定した準衛星が加わったことがわかったということです。




地球の「複数の月」にまたひとりが加わった

この「地球の複数の月」については、いくつかの過去記事があります。
どちらも古い記事ですが、

「地球は隠された月を持つ」というマサチューセッツ工科大学の発表
 2011年12月23日

地球の「隠された複数の月」の実態がスーパーコンピュータでのシミュレーションにより解明される
 2012年04月02日

などです。

これらの準衛星は、非常に小さな天体のため「ミニ・ムーン」などと呼ばれていますが、その軌道は地球に対して固定しているものではなく、その特徴は、

・地球の小さな月(ミニ・ムーン)の数はひとつではない。
・ひとつの月が一定期間、地球の周囲を旋回する。
・そして、その後はその月は太陽の軌道に移動して「太陽の衛星」となる。


というもので、つまり、「いくつものミニ・ムーンが地球の軌道と太陽の軌道上を交代で周回している」というようなことです。

いわば、地球と太陽で衛星のバトンタッチをしているというイメージです。

これに関して、ハワイ大学の研究チームが、スーパーコンピュータを使って計算したその軌道は非常に複雑なもので、下のようなものです。

mini-moon-01.jpg

Daily Mail


今回ご紹介する「新たな月」は、少なくとも現時点では、地球の周囲だけを回る安定した軌道を持っています。これは、地球が獲得した小惑星と見なされています。

下が 2014 OL339 と名付けられている、その小惑星の現在の軌道です。

2014-OL339.gif


地球を周回するように安定した軌道を持つことがわかります。
動きとしては、たとえば、下のようなイメージです。

moon_orbit.gif


お月様のように地球に寄り添った形で動くわけではないですが、安定した地球との関係を持つ軌道となっているようです。

この「新しい衛星」について報じた THP の記事をご紹介します。




Earth Has A New Moon, And Its Name Is 2014 OL339
THP 2014.10.06


地球が得た新しい月の名称は 2014 OL339


私たちの地球の持つ「月」は、たったひとつだけだ。

しかし、専門的な観点からは、地球は 1969年から、より多くの月を持っていることがわかっている。

そして、今、新たにもうひとつの月が地球に加わった。それは、地球の準衛星として認識できる安定した軌道を持ち、地球を周回する小惑星だ。

公式には、地球はひとつの衛星(いわゆる、月)だけを持っていることになっているが、しかし、現在の天文学者たちは、私の地球の上空がかつて示されていた以上に複雑であることを認識している。

地球は、その軌道に入ってくる小惑星を定期的に「獲得」し、時には、短い期間に4つ以上の新しい月の軌道を持つことさえある。

そして、研究者たちは多くの小さな小惑星が、それは私たちの目で観測できないけれど、実は永久に地球の月としての軌道を持つものもあると考えている。

今回新たに発見された、「月となった小惑星」、それは 2014 OL339 と名付けられた小惑星もそのような小惑星のひとつだ。

2014年 7月 29日に発見されたこの小惑星は、直径が約 100メートルある。これまでは太陽を不安定に周回する軌道を持っていたが、現在は地球に対して非常に安定した軌道を持っている。

地球の重力が直接小惑星にあたえる重力の影響は強力なのだ。

この天体の軌道の過去については、数千年の地球と軌道を共有していたことが予測できるが、これからの軌道の変化に関してを予測することは困難だ。しかし、この小惑星 2014 OL339 は、過去において、地球に対しての軌道がより安定していたと考えられる。

地球は他に3つの準衛星を持っている。
それぞれの名前は、2004 GU9、2006 FV35、そして、2013 LX28 という。





ここまでです。

最近の派手な天体の様子も含めて、実際の地球周辺の天空の様子は、これまで考えられてきた以上に複雑な様相を呈しているようです。もしかすると、地球も実は、まるで土星のように、観測では見えないようなとても小さな月を何百、何千と持っている可能性さえあります。

しかし、たとえば、そういう「小さな月たち」が、地球の重力、あるいは磁場に変化が起きるようなことがあった場合に、どのような挙動で地球に関わるのか、ということも考えたりします。

それは火の球が注ぎ降るような災害と関係するのか、あるいは単に美しい空の天体ショーを見せてくれるというだけなのか、それはわからないです。



  

2014年10月07日



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b-moon-7.jpg






 



▲ 10月 8日は「4回連続する皆既月食」の2回目が発生し、また、ユダヤ教の重要祭事「仮庵の祭り」が同日から始まります。その前日の 10月 7日には、イスラム教最大の行事のひとつのハッジと呼ばれる大巡礼が終わります。



今日から明日にかけては上のような日なのですね。

このことに関してましては、今年4月に記しました、

赤い月と黒い太陽: 2014年から 2015年まで「4回連続する皆既月食」がすべてユダヤ教の重要宗教祭事の日とシンクロ……
 2014年04月06日

から、わりと何度も取り上げていることで、関係記事は、こちらのリンクで表示されると思います。

そして、今まで気づいていなかったのですが、今年は、上のユダヤ教と重要な祭事と、イスラム教の重要なイベントが、

「皆既月食の日に向かって収束するように進んでいた」

ことに昨日気づきました。

先日の記事、

イスラム国によるアメリカへの「エボラウイルス・自爆テロ」は実行されるのか
 2014年10月05日

で、イスラム教の最も重要な宗教的行事のひとつであり、数百万人のイスラム教徒たちが集う「大巡礼」は、今年 2014年は 10月 2日から 7日までおこなわれることを書きました。

そして、その大巡礼が終わった翌日の 10月 8日。

この日に、ユダヤ教の重要祭事である「仮庵の祭り」(あるいは、スコット)が始まります。
そして、それと共に、皆既月食が発生するのです。

sukkot-03.gif


・10月 7日までイスラム教の重要行事
 ↓
・10月 8日からユダヤ教の重要祭事
 ↓(同時)
・皆既月食


と、まるでバトンタッチするかのように、ふたつの相反する宗教の重要行事が続きます。

ちなみに、どちらのイベントも現代の暦でおこなわれているものではなく、イスラム教の行事はイスラム暦、ユダヤ教では太陽暦をもとに行われるので、それぞれ、毎年行われる日が違うのです。

つまり、こんなことが毎年起きているわけではないです。

たとえば、ユダヤ教の「仮庵の祭り」は、今年は 10月 8日からですが、昨年 2013年は 9月 18日からでした。

あるいは、大巡礼ハッジは、今年は 10月 2 - 7日の日程ですが、来年は、9月 21 - 26日と、毎年ずいぶんと違うようです。

それだけに、今年のイスラム教の重要行事からユダヤ教の重要祭事への流れが、

「まるで皆既月食(血の月)にバトンタッチするかのようにきれいに流れていく」

という今年の時間に何か因縁めいたものを感じないでもないです。




コロンビアの先住民ウィワの精神的指導者たちの命を消し去った雷

御嶽山の噴火は、その山頂付近にある「聖」や「信仰」に関係するものや、あるいは人の命を容赦なく破壊しましたが、またも「容赦ないなあ……」と思った出来事がありました。

先住民の儀式中に落雷、11人死亡 コロンビア
AFP 2014.10.07

afp-wiwa.jpg

南米コロンビア政府の6日の発表によると、同国北部の山岳地帯で先住民ウィワ(Wiwa)の精神的指導者たちが儀式を行っていたところ落雷に遭い、11人が死亡、15人が負傷した。

落雷があったのは同国北部マグダレナ州のシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタ山脈。コロンビア先住民族全国組織(ONIC)によれば、集まっていたウィワの部族の指導者たちが儀式を行っていたところ、稲妻に打たれたという。

これって、「精神的指導者たち」が儀式を行っていたということですから、単なる部族の伝統行事ではなく、このウィワ族という人たちの、多分は神聖な儀式だったわけですよね。

そして、コロンビアの先住民族の人口を考えると、このウィワという先住民の人口も多くはないと思われます。その中の「精神的指導者たちの人数」というのもそれほど多くはないと思うのですけれど、その中の 11人が亡くなっている。

しかも、昔から「神の怒り」のような表現もされることもある落雷によって……。

上の AFP の記事の写真を見ると、建物の原型はなく、焦げた柱が少し残っている程度で、建物全体が雷によってほぼ完全に破壊された様子がうかがえ、壮絶な落雷だったことがわかります。

ところで、この、コロンビアのウィワ族とはどのような先住民なのか。

名称自体も初めて聞くのですが、調べると情報が少ない。

日本語でも英語でも本当に少なく、 IC Magazine という英語のサイトででやっと見つけました。翻訳します。

WIWA
IC Magazine

ウィワ族は、コロンビア北部サンタマルタのシエラネバダに住んでおり、ウィワという名称の他に、アルサリオス(Arsarios)やマラヨ(Malayo)とも呼ばれる。

彼らは山岳地帯に住む4つの先住民族のなかのひとつで、ウィワは自分たちを、地球に現れた人間の中で最も古い兄弟だとしている。

コロンビアの文化省によると、ウィワ族の人口 13,627人。このうちの 12,803人は農村部で暮らしており、都市部には 824人が住んでいる。全体の約 79%が 30歳未満で、 60歳以上は 2%に満たない。

ウィワは、「文明化した世界」との接点を断つことによる独自の生存戦略を持つため、世界でも、西洋社会との歴史的な接点が最も少ない先住民のひとつでもある。

しかし、今日、彼らは、コロンビア革命軍( FARC )や国民解放軍( ELN )といったような不法武装グループとコロンビア政府との紛争に巻き込まれている。

ということで、自称とはいえ、

地球で最古の兄弟

であり、そして、

西洋文明との接点を断った独自の精神文化を持つ

といったような、本来なら「これからの世の中に一番残っていてほしかったようなタイプの民族」の精神的指導者たちが「自然現象によって大量に死んでしまう」。

やりきれない……というより、冒頭に書いたように、「容赦ない」というような形容詞が浮かびます。

ちなみに、ウィワは下のような人たちのようです。

wiwa-01.jpg
IC Magazine


wiwa-02.jpg
First Peoples


なお、さきほどの翻訳記事にあります「紛争」に関しては、アムネスティ・インターナショナルの「コロンビア:先住民族が生存の危機」という記事などに書かれてあります。

詳しいところは上のアムネスティの記事をお読みいただきたいですが、

「コロンビア先住民族全国組織(NIOC)の統計によれば、2009年だけで少なくとも114人の先住民族の男女や子どもが殺害され、数千人が強制的に立ち退かされた」

とのこと。

どうして「最古の兄弟たち」が、ゲリラなどのターゲットになっているかというと、

コロンビア先住民族たちが住む多くの地域は、生物多様性に富み、鉱物・石油などに恵まれた土地に住んでいるため、拠点として狙われやすく、その場から追い出されるか殺されている。

ということで、これだけではないですが、たとえば、このような理由により存続が危ぶまれているようです。

ただ、これらは人為的な事ですけれど、今回のウィワの件は「雷」ですからね。

人口約1万3千人(そして、その中の 80%が 30歳未満)のウィワ族の中に精神的指導者が何人くらいいるのかわかりませんが、60代以上の人口比率が 2%未満ということは、長老的な存在は多くはなさそうです。この落雷によって1度に 11人が亡くなり、15名が負傷したというのは、部族の精神的な伝統の上ではかなりの痛手なのではないでしょうか。

なんかこう、特に最近の「落雷」は信仰の種類を問わず、「精神的」あるいは「宗教的」なものを直撃します。



自然現象 vs 聖なるもの

今年1月には、ブラジル・リオデジャネイロで、落雷がイエス像を直撃し、像の指が破損しました。

ブラジル・リオデジャネイロ 2014年1月16日

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Gizmodo


昨年は、前ローマ法王ベネディクト16世の退位の発表の直後に、バチカンの聖ピエトロ大聖堂に稲妻が何度も何度も落ちるという出来事も。

バチカン 聖ピエトロ大聖堂 2013年2月11日

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▲ 2013年2月13日の過去記事「最後の法王と呼ばれ続けたベネディクト16世: 聖マラキの予言とコナン・ドイルの未来感の時間軸」より。


また、昨年 12月には、アフリカのマラウイ共和国にあるキリスト教の教会に雷が直撃して、8名が死亡するという出来事もありました。

マラウイの首都リロングウェ 2013年12月29日

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Independent


そういえば、雷ではないですけれど、つい先日の台風18号では、横浜のお寺(成田山水行堂の仮本堂)が倒壊して、1人が不明になっています。

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▲ 倒壊した寺。2014年10月6日の毎日新聞「台風18号:横浜で寺倒壊、1人不明」より。

他の建物なども数多く壊されたならともかく、今回の台風18号で、横浜で建物と人命に関わる被害を受けたのは、報道で知る限りは、他に共同住宅が1軒だけだと思います。


どうもこう……聖なるものや人物(と、その地で言われるもの)が「自然現象に狙われている感じ」がしたり……。


そういえば、今年の1月には、イタリアで、崖から転がり落ちてきた岩石が、他の建物を一切損傷させず、カトリック教会所有の建物「だけ」を押しつぶしたというようなことがあったのも思い出しました。

イタリア・トラミン 2014年1月29日

italy-church.gif
Independent


御岳山の白川大神の頭部の破壊も含めて、この「自然 vs 神聖」の構図が続いているのは気にはなります。

日本・御嶽山 2014年9月27日

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過去記事


「たすけて……」

と言いたくなったりしても、変に TASUKETE なんて文字にしますと、過去記事、

ローマ字「 TASUKETE (たすけて)」から偶然導かれた日月神示や神様と悪魔の関係。そして、バチカンに正式に承認された「国際エクソシスト協会」の存在
 2014年07月26日

にありますように、日月神示に行き着いたりしてしまって、この世は何が何やら。

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Weblio TASUKETE


上の意味はよくおわかりにならないと思いますが、ご興味のある方は、上のリンクの記事などをお読み下されば幸いです。

ちなみに、上の日月神示の日本語訳(?)は、

「仏もキリストも何も彼もはっきりたすけて七六かしいご苦労のない代が来るから みたまを不断に磨いて一筋の誠を通してくれよ。いま一苦労あるが、この苦労は身魂をみがいて居らぬと越せぬ、この世初まって二度とない苦労である。」

になるのだとか(ひふみ神示データー ひふみ神示 第01巻 上つ巻より)。

その仏やキリスト、あるいは「神」を象徴するものが自然からムチャクチャに「やられて」いる。




悪の意味。善の意味

これらのことは、いわゆる「偶然」がどんどんと積み上がっただけなんでしょうか。

それとも、こちらの記事の「「善は悪から生まれる」と同じことを述べる日月神示とメリン神父」というセクションに書きましたように、このような破壊や、あるいは最近続けて起きまくっている「悪」としか言いようのない出来事も、小説『エクソシスト』の中で、メリン神父の言う

「このような悪からでさえ、善が生じてくる。なんらかの方法でだ。われわれには理解できず、見ることもできない何らかの方法でだ。……おそらく、悪こそ、善を生み出す『るつぼ』であるからだろうな」

「そしておそらく、大悪魔(サタン)でさえもが −− その本質に反して −− 何らかの意味で、神の意志を顕示するために働いているともいえるのだ」

や、あるいは、日月神示の第21巻 空の巻 第八帖にある、

悪も元ただせば善であるぞ、その働きの御用が悪であるぞ、御苦労の御役であるから、悪憎むでないぞ、憎むと善でなくなるぞ

というように、「悪」が生じない限り善はないという理解で、この世界を眺めるのがいいということなんでしょうか。

そのようにしていれば、日月神示・第21巻 空の巻 第十帖にある、

此の方 悪が可愛いのぢゃ、御苦労ぢゃったぞ、もう悪の世は済みたぞ、悪の御用 結構であったぞ。早う善に返りて心安く善の御用聞きくれよ。

という気持ちでいられる世界になるということなんでしょうか。

この4月頃から半年以上見続けている、

・大量死
・完全な悪
・犠牲


というような概念は、私が思っている「4回続く皆既月食」の考え方でいえば、来年の9月が終わる頃まで続くことになります。

メリン神父や日月神示のような心境でその間を生きていけばいいのかもしれないですけれど、それより前に精神的に疲弊して、その時代を走り抜けることへの自信を失ってしまう人も多く出てしまいそうな気もします。

もちろん、私も含めて。


TASUKETE ……(それを書くと複雑なことになるからやめなさい)。