2010年03月04日



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宇宙を満たしているガンマ線がどこから来ているのか実はわかっていなかった



ガンマ線の霧を宇宙に吐く謎のドラゴン

ナショナルジオグラフィック 2010年03月04日

 太古の船乗りが宇宙の海図を描いたとすれば、宇宙を満たすガンマ線の“霧”に「ドラゴンに注意」という警告文を書き入れていたことだろう。ガンマ線の霧に関する最新の研究で、高エネルギー放射線であるガンマ線の発生源が予想以上に大きな謎であることが判明した。

 これまでは、この霧を形成するガンマ線のすべてではないにしても、その大半は活発な超大質量ブラックホールを中心に持つ強力な銀河が放出していると考えられていた。活発に活動するブラックホールからは光速に近い速さの粒子からなるジェット流が噴出している。この高速の粒子が周囲のガスに衝突する際にガンマ線が発生し、星間空間を四方八方に飛び出していくという説である。

 だが、フェルミ・ガンマ線天文衛星のおかげで、現在ではブラックホールのジェット流がガンマ線の生成にどの程度の影響を与えているかを直接測定できるようになった。「その結果、せいぜい30%にすぎないことが判明した」と、カリフォルニア州にあるスタンフォード大学カブリ素粒子天体物理学・宇宙論研究所(KIPAC)の天体物理学者マルコ・アジェッロ氏は2010年3月3日に行われた記者会見で明かしている。

 つまり、霧を形成するガンマ線のうち残りの70%がどこからやって来るのかは不明であり、今のところ目ぼしい候補も見当たらないのである。フェルミ観測チームはこの未知のガンマ線源を、中世の地図製作者にならって“ドラゴン”と呼ぶことにした。

 ガンマ線は最もエネルギーの高い形態の光である。宇宙では、超新星爆発のような破壊的な現象や、中性子星、パルサー、活発なブラックホールなどの高エネルギー源によって発生する。例えば超新星からのガンマ線バーストでは、太陽が100億年間で放出するより多くのエネルギーをわずか10秒間で放出することがある。

 1960年代後半には、ガンマ線が宇宙全体を満たしていることが周回観測衛星によって明らかになった。現在ではガンマ線で撮影した画像を使って宇宙を観測することで、光の“毛布”が銀河面で二分され、さまざまなガンマ線源が光の点として散らばって見えることが確認されている。

 しかし、ガンマ線の霧の主な発生源が見つからないのは「驚くべきことだ」と話すのは、NASAマーシャル宇宙飛行センターのチャンドラX線天文衛星プロジェクトの研究員マーティン・ウェイスコプフ氏である。「ここで重要なのは、ガンマ線源の一群がすぐそこにあるというのに、誰もその正体を突き止められていないということだ。胸が躍るような話だ」。同氏は今回の研究には参加していない。

 将来、フェルミ衛星のデータによってドラゴンの“隠れ家”が突き止められるかもしれない。しかし現在のところは、ガンマ線の霧を説明する複数の理論が提唱されている段階である。

 有力視されているのは、星形成銀河から粒子が加速度的に放出されるという説と、合体する銀河の巨大な集団から粒子が放出されるという説の2つである。ガンマ線は「巨大な銀河団が形成される際の衝撃で発生する可能性があるし、暗黒物質(ダークマター)や、中性子星の回転によって発生するのかもしれない」とウェイスコプフ氏は説明する。

 一般に、ガンマ線とガンマ線源の研究は、星や銀河の誕生と死に伴って起こる大きなエネルギーの発生を理解する手掛かりとなり、最終的には宇宙の起源の解明を促進する可能性がある。

 したがって、ドラゴンの正体が何であれ、霧の謎が解明されることによって「宇宙がどのように形成されているのかについて、さらに理解が深まることは間違いない」とウェイスコプフ氏は期待を寄せている。

 この研究は、2010年3月1〜4日にハワイ島で開催されているアメリカ天文学会の高エネルギー天体物理学部会で発表された。

タグ:ガンマ線