2010年04月21日



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ヒトの皮膚組織に神経や筋肉などさまざまな組織に変化する力を持った未知の細胞が存在



皮膚組織に未知の細胞を発見
NHK 2010年04月20日

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ヒトの体の表面を覆う皮膚の中に、神経や筋肉などさまざまな組織に変化する力を持った未知の細胞が存在するという研究報告を、東北大学などのグループが発表しました。病気などで失われた体の一部を作り出す「再生医療」の実現に近づく成果として注目されています。

この研究を行ったのは、東北大学の出澤真理教授と京都大学のグループです。研究グループでは、ヒトの皮膚の細胞に特殊な酵素をかけると、ほとんどの細胞が死ぬにもかかわらず、一部に成長を続ける細胞があることに注目し、詳しく調べました。その結果、この細胞は、あらゆる組織や臓器になるとされるiPS細胞と同じ遺伝子を複数持っていたほか、マウスに移植すると神経や筋肉、それに肝臓の細胞など、体のさまざまな細胞に変化することがわかったということです。

この細胞は、ヒトの皮膚のほか骨髄からも見つかり、研究グループでは、さまざまな組織や細胞になるという意味から「Muse(みゅーず)細胞」と名付けました。

事故や病気で失われた体の一部を人工的に作り出す再生医療の研究では、京都大学の山中伸弥教授のグループが開発したiPS細胞が中心となっていますが、特殊な遺伝子を組み込むなどの操作が必要なうえ、細胞ががん化しやすいことが実用化の大きな課題となっています。「Muse細胞」は、iPS細胞より増殖する力は弱いものの、マウスに移植してもがん化することはなかったということで、研究グループでは、もともとヒトの体の中にあるもので、安全性も高いと期待されるとしています。

東北大学の出澤教授は「この細胞がどれくらいの能力を持っているのか、ほんとうに安全なのかなど、まだ研究が必要な部分は多いが、がんになりにくいというのは大きい。安全性という点では再生医療の実現に近づけたと思う」と話しています。

今回の発見について、再生医療に詳しい慶応大学医学部の岡野栄之教授は「Muse細胞が体のさまざまな組織になる力はどのくらい強いものなのか、検証が必要だが、再生医療の実現に向けた大きな成果だ」と話しています。岡野教授のチームは、iPS細胞から神経を作り出す技術を開発し、せき髄損傷で動けなくなったマウスを再び歩けるようにすることに成功していますが、iPS細胞の実用化には、がん化をどう防ぐのか課題も多いといいます。

岡野教授は「さまざまな組織に変化する細胞が骨髄に含まれている可能性は以前から指摘されていたが、今回、骨髄で確認しただけではなく、皮膚からも見つかったのは非常に興味深い成果だ」と話しています。そしてMuse細胞が体のさまざまな細胞や組織に変化する力はどのくらい強いのか、今後さらに検証が必要だとしながらも「iPS細胞のように遺伝子を組み込む必要がなく、がんになりにくいということで、安全性の面では有利だ。体の中にあるので、体内でそのまま変化させる方法がわかれば、人体再生の技術にもつながるかもしれない」と今後の可能性を指摘しました。その一方で課題については、iPS細胞と比べて増殖力が弱いので、必要な細胞が大量に作れるかどうかが鍵になると話しています。