2010年08月12日



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オーストラリアでイナゴの大発生による農作物消失の危機



The Perfect Swarm: Locusts Threaten Eastern Australia
タイム 2010.08.09

パーフェクト・スウォーム:イナゴの大群が東部オーストラリアを食い尽くす

locust_0806.jpg今年3月、オーストラリア東部から中央部の農民たちは、曇り空を歓迎した。

雨はダムを満たし、ニュー・サウスウエールズ州の湖を満たし、北部の一部の地域では洪水も発生し、乾ききっていたクイーンズランド州南部にも水は行き届いた。オーストラリア南東部では、この10年で初めて秋の平均降雨量以上の雨が降った。

これによって大地に緑が戻った。
しかし、農民たちはさらに別の脅威に晒されることになった。

イナゴだ。

ダーリングの家畜衛生疫病局のリサ・トマソン氏は「今年は彼らイナゴにとって、もっともいいシーズンのひとつです」と語った。

「しかし、残念なことに、これが目下の最大の脅威となっています」

8月中旬頃に東部オーストラリアでは、この30年でもっとも激しいイナゴの大発生が起きるかもしれない。何らかの対策を打たなければ、牧草地、穀物、飼料などの収穫で18億ドル以上相当の被害が出ることが予想されている。

オーストラリア・イナゴ発生対策委員会の責任者であるクリス・アドリアーンセン氏は、500万ヘクタールの土地が影響を受ける可能性があると言う。しかし、オーストラリアの農民は出来るだけの対策を取っていると述べた。

監視と殺虫剤の空中散布のために航空機の契約者たちで組織が作られ、また、農民たちはリスクに関してのアラートを出している。政府は、ヴィクトリア州にイナゴ大発生への対策費として3990万ドルの予算を割り当てた。当局は農場主の許可なしに、農場に入り、殺虫剤散布をする権利を持つ。

(オーストラリアでの10年間に渡る干ばつの写真はこちら。)

いくつかの農地ではすでにイナゴの被害に遭っている。この夏のオーストラリアの豪雨で、オーストラリアでは昆虫が大発生している。ニューサウスウェールズのフォーブズ・シャイアー市では、秋に孵化したイナゴが今年3月に35000ヘクタールの小麦と大麦を攻撃し、作物は消滅した。これにより、3670万ドル相当の損害が見積もられると、フォーブズ市副市長のグレアム・フォークナーは言う。

フォークナー副市長は、3月にはオーストラリアではイナゴに対しての準備ができていなかったと語る。副市長はこの8月に起きることを心配している。

「これは戦争だよ」と副市長は言う。

「もし、この戦いに負けてしまったら、我々は莫大な作物を失うだろう」

シドニー大学のグレッグ・スウォード教授は、天候と、そして最新の農業テクノロジーが結びつき、この「パーフェクト・スウォーム=完全な群れ」を作ったと説明した。

温暖な天候が長く続いたことによって、メスのイナゴは通常1個である卵袋を3つ置くことができた。この卵袋はひとつに50個の卵が詰まっている。そして、卵は、現在の農業技術の直接穿孔(土を耕すことなく、直接、土に穴を掘って種を入れていく農業技術)のため、ほとんどの卵が死なずに生き残れるのだ。

20年前には、畑の土を耕すことが一般的だったが、耕すことによってイナゴの卵は地表に露出し乾燥するために多くの卵は死んだ。しかし、現在では多くが孵化に至るまで生き残る。


卵から孵化した小さなイナゴの幼虫は、その時点では臆病な性格のバッタと同じような生き物だ。あまり動かないし、他の昆虫を狩ることもない。

しかし、彼らがバッタと違うのは、単独行動をしている時と群れをなして行動する時とではまったく違う生き物となるということだ。彼らが他のイナゴたちと頻繁に交流し、彼らが群れの状態にあることを認識し始めた時、彼らはついに「イナゴ」として行動し始める。

「やつらは行く手にあるものを何もかも食べ尽くすんだよ」と、フォークナー副市長は語る。


そこには、共食いも含まれる。

スウォード教授と彼の研究チームは、飛べるようになる前の幼生のイナゴが地上で群れをなす理由のひとつが、彼らが共食いしていることにあることを発見した。

「彼らは共食いする。群れのイナゴは止まった瞬間に他のイナゴに食べられてしまう」と教授は言う。

ケンブリッジ大学で発表された最近のエジプトツチイナゴに関する論文では、群れをなすイナゴは、定住しているイナゴより脳が 30 パーセント大きいことがわかった。これは、群れの中での競争相手とのやりとりの支えとなっている。

スウォード教授は、このエジプトツチイナゴに関しての発表は、オーストラリアのイナゴについても言えるかもしれないが、まだ、オーストラリアのイナゴに関しては何の研究もされていないと語った。

共食いをしようがしまいが、これらは不気味で小さなモンスターではある。

ニューヨークで発表されたドリス・レッシングの短編小説「イナゴのソフトな攻撃」の中で、主人公は群れの恐怖を描写する。

「鉄の屋根が鳴り響く。やつらが地面に叩きつけられる音は雷のようだ。」

現実も確かに恐ろしく、「絶えず雹の攻撃を受けているような感じだ」と、フォークナー副市長は言う。

現在、すべてのオーストラリアの農民は、イナゴの攻撃に対して十分な準備ができている。10年間続いた干ばつに比べれば、イナゴの攻撃は悪夢ではないかもしれないという希望をオーストラリアの人々に持ってほしい。


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タグ:バッタ