2010年09月07日



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フレッド・ホイルさんの霊に捧げる:インドに降った赤い雨の中の細胞が 121度の温度の下で繁殖し、銀河にある光と同じ光線スペクトルを発した



(訳者注) 今回の記事は、マサチューセッツ工科大学で発行されている科学レビューサイトのブログ記事ですが、前提となる「雨」のことなどがあまり詳しく書かれていないので、記事を読むためには、米国の科学者たちの間で議論になっている「2001年にインドに降った赤い雨とは何か?」について知る必要があると思いますので、インドの雨についての記事をリンクしておきます。

2001年、インドの”赤い雨”から地球外生命体を発見か(X51.ORG 2006年03月13日)

それと、パンスペルミア仮説という学説(地球の生命はすべて宇宙から降ってきたという仮説)の現代の最大の支持者であったフレッド・ホイル博士の ウィキペディアよりパンスペルミア仮説の部分を抜粋しておきます。ホイル博士は、元素合成の理論の発展に大きな貢献をした、世界でもっとも著名な天体物理学者のひとりです。

フレッド・ホイル - ウィキペディアより。

ホイルは晩年、生命の起源を自然主義的に説明する化学進化の理論を頑強に批判した。チャンドラ・ウィクラマシンゲと共にホイルは、生命は宇宙で進化し、胚種 (panspermia) によって宇宙全体に広がったというパンスペルミア仮説(胚種広布説)を唱えた。また地球上での生命の進化は彗星によってウイルスが絶えず流入することによって起こると主張した。


どうでもいいですが、今回の記事は何だか嬉しくて、涙を流しながら翻訳しておりました、英国カーディフ大学のチャンドラ・ウィクラマンシゲ博士とインドのコーチン科学技術大学の物理学者、ゴフレイ・ルイス教授の執念の賜といってもいいかもしれません。

私はパンスペルミア説がグリグリに好きなんですが、今でも証拠がどんどんと積み上がっていたのですね。
嬉しい限りです。

もちろん、これで科学や天文学の何かが変わるわけではないでしょう。
何しろ、(いつでも)科学的根拠は完ぺきであるにも関わらず、もう30年間、科学界から無視され続けている学説なのですから。でも、学会の問題ではなく、広く認知されることで、一般の人々の理解に変化があれば嬉しいなと思います。

ここからが今回の記事です。




The Extraordinary Tale of Red Rain, Comets and Extraterrestrials
マサチューセッツ工科大学 テクノロジー・レビュー 2010年09月01日

赤い雨と彗星、そして、地球外生物に関しての驚くべき話

これまで長い間、2001年にインドに降った赤い雨の中に、地球のものとは違う種類の細胞が含まれていたという主張が繰り返されてきた。最近、これらのインドに降った赤い雨の中に含まれていた細胞の自己繁殖に関しての新しい証拠が提示されたために、議論が再度活発になっている。

Red rain.jpg

パンスペルミア仮説というのは、彗星や小惑星、あるいは恒星間にある宇宙塵や宇宙雲に至るまでの、ありとあらゆる宇宙空間の中には生命が存在し、地球の生命の起源はこれらの中のひとつか、あるいは複数の種からできているという考え方だ。

確かにこれは現在の科学の主流の考え方ではない。しかし、この仮説の証拠は今やどんどんと大きくなってきており、こうなってくると、ただ無視をするということではなく、慎重に研究していくべきものに思われる。

たとえば、最近では、地球の微生物の何種類かは、宇宙空間の厳しい環境で何ヶ月、あるいは何年も生き残ることができることを示した。そして、あまり知られていないが、さらに面白い事実として、何人かの科学者たちは火星の隕石に生命があるという証拠を確信している。

地球にある火星の隕石は、流星などの衝撃によって火星の表面から吹き飛ばされており、また地球の厚い大気層の中を通過してくるにも関わらず、隕石内部の温度は摂氏50度を決して越えない。

もし、そこに生命があるならば、それは地球への生命の旅も可能だという証拠を示すものだ。

そして、それらはすでに完全に立証されているように見える。

では、今、議論の的になっている物議とは何か。


(訳者注)この「宇宙で生きた微生物」の話は、先日このブログでも翻訳した「宇宙空間で553日生きのびた細菌の研究が英国オープン大学から発表される 」などもそのひとつだと思います。


2001年に、インドの南端にあるケララ州で、2ヵ月間に渡って赤い色の雨が降り続けた。そして、多くの研究家がその観察と研究を行った。

その中のひとりは、コーチン科学技術大学の物理学者、ゴフレイ・ルイス教授だ。
ルイス教授は、この雨に興味を持ち、多数のサンプルを集めた。

博士は当初、この赤い雨の原因は、大気汚染か、あるいは、遠方の砂漠地帯から運ばれてくる砂やちりによるものだと確信していた。

しかし、顕微鏡では、いかなる砂もちりも見つけられなかった。そのかわりに、その雨水は、非常に地球の微生物とよく似た赤い細胞で満たされていたのだ。奇妙だったのは、ルイス教授は、これらの細胞から DNA の証拠を見つけることができなかった。これは、この細胞が既知の生物のものではない可能性を示唆する。DNA の証拠を見つけられなかった理由のひとつとして、これが赤血球だったという可能性があるが、赤血球なら雨水ですぐに破壊されてしまうはずだ。



(訳者注) 赤血球のことが書かれていますが、赤血球は無核なので、DNAが含まれていないのだそうです。こちらより。


ヒトを含め哺乳類の赤血球は、成熟の途中で細胞核とミトコンドリア等の細胞器官を失っているので、正常ではない場合を除くと、DNAを持っていません。



2006年に、ルイス教授はこの研究結果を、学術雑誌アストロフィジカルジャーナル誌に発表した。内容は仮説として、これらの細胞は地球外から来た可能性があることを示唆しているというもので、多分、彗星が地球の熱圏で崩壊して、大気の間を地球まで下りてきたのだろうということ説明した。

実際、その地域ではその時に、大きな爆破の震動音が聞かれたという報告があり、これは地球の熱圏で物体が崩壊したために発生したものではないかと、ルイス教授は言う。

それ以来、ルイス博士は、パンスペルミア説の主要なもうひとりの支持者である、英国カーディフ大学のチャンドラ・ウィクラマンシゲ博士を含む国際研究チームと共に細胞の研究を続けている。ウィクラマンシゲ博士は、20世紀の後半に、著名な物理学者、フレッド・ホイル博士と共に活動している。


(訳者注) チャンドラ・ウィクラマンシゲ博士は1980年代から、極めて実証的なパンスペルミア説の検証と実験を続けてきた人で、2001年のワイアード・ヴィジョンの記事の日本語版の複写があります。「成層圏の微生物は宇宙からの来訪者? (Wired Vision 2010年08月02日) 」です。


今日、ルイス教授とウィクラマンシゲ博士、そして他の研究者たちは、この赤い細胞についての驚異的な学説を発表をする。

彼らの研究チームは、これらの細胞が 121度の温度下でも繁殖することを明らかにしたのだ。「これらの細胞は 121度という環境の中で増殖した。母細胞から分裂した嬢細胞が、この状況の下で見られたのだ」と彼らは言う。

対照的に、これらの細胞は、普通の室温では不活性(繁殖しない)だった。

控え目に言っても、この行動は極めて珍しい。
極限環境微生物ではこれらの温度を生き残ることができるものもある。しかし、極限環境微生物でも、繁殖できるのはそれより低い温度であり、我々が知る限り、このよなう温度下で繁殖までするような細胞は聞いたことがない。

これは、広く認知される前に、真実かどうかを確かめるための独立された調査が行われる必要があるほどの驚くべき発表だ。

もちろん、この生物たちの行動が、これらが地球外の起源の生命であることを示しているわけではない。

しかし、ウィクラマンシゲ博士と研究チームは、これらが地球外由来であることをほのめかすことを止めない。それは次のような研究発表にも現れる。

これらの細胞は光で攻撃される時に蛍光を発するのだが、これを調べた。すると、これが銀河のいろいろな場所で見られる様々な不可解な発光スペクトルと著しく類似していることが判明したというのだ。

この発光スペクトルと似た場所のひとつに、一角獣座の原始惑星状星雲である赤い長方形星雲がある。

もっとも、ケララの雨についての説明が満足にされるためには、さらなる証拠が必要であることは言うまでもない。

しかし一方で、これは何と魅力的なミステリーであることか。





(訳者注)最後に好意的な文言で締められていることも嬉しかったです。まあ、どうでもいいことですが、今回のことでわかったことは、宇宙にある光の中には、微生物などが光で攻撃を受けた際に発しているものも多いということがわかったわけで、つまり、「暗黒物質の存在域というのは、いわゆる生命のいない領域である」ということも推測できそうですが、まあ、それはいいです。

久しぶりに感想めいたものを書いてしまいましたが、パンスペルミア説以外では決して書きませんので、それでは、どうもすみませんでした。

いつもと違って、きちんと訳したので(いつもは適当かい!)、ずいぶんと時間がかかってしまいましたが、訳せてよかった。

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