2010年10月01日



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南極大陸の微生物から探る地球外生命の潜在的な可能性



(訳者注) 記事は Daily Galaxy の昨日のものですが、ここに書かれてある「南極のエビのような生き物」が NASA によって発見されたのは2009年の12月です。 NASA ウェブサイトの該当記事に詳細があります。そこにある動画がこれです。



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Does NASA Antarctica Discovery Mirror Potential Extraterrestrial Life Forms ?
Daily Galaxy 2010.09.30

NASA の南極大陸での発見は地球外生命の潜在的な可能性を反映するのか

6a00d8341bf7f753ef013487ddec63970c-800wi.jpg南極にあるロス氷棚の氷の下で泳ぐ端脚目( Lyssianasid amphipod / ヨコエビ目)の生物の発見は研究者たちに大変な驚きを与えた。そして、この海底での発見は、地球外生命の探査に影響を及ぼす可能性を持っているという科学者たちがいる。

NASA の科学者たちが氷面の裏側を見るためにボアホールカメラを使っていた時に、氷の下を泳いでいるこのピンクがかったオレンジ色の生き物を見つけた。この生物は、氷の約600メートル下の海底を泳いでいた。

科学者たちは、南極のこの海底には微生物が生息する可能性は考えていたが、それ以上の高等生物はいないと考えていた。

2009年12月に NASA によって提供されたこのビデオ(上の動画)では、エビの種と関連がある「端脚目」の生物が写っていると思われる。この生物は好奇心が強いかのような動作で、 NASA のビデオカメラのケーブルやカメラに止まったり、その周囲を泳いだ。

科学者たちは、このエビのような生物と共にクラゲが氷床の下に浮いていることも発見した。これらの驚くべき発見は、高等生物の生存環境の概念自体を考え直さなければならないほどの衝撃を科学者たちにもたらしている。

2006年に70の海域で行われた海洋センサス(海洋種調査)で発見された 500の新しい海洋種の中のおよそ 150種類が新しい魚類だった。そこには毛ガニやロブスターも含まれている。

その中の多くの種が、それまで「生命には適していない環境」だと考えられていた場所で見つかっている。たとえば、海底の穴から摂氏 407度の高温の液体が噴出している場所で生物が見つかったり、あるいはまるで火星や金星の上のような、生命には適さないと思われていた過酷な環境で生物が見つかっている。


「発見の時代はまだ終わっていません。発見の数々は NASA のメンバーにも、そして、地球以外の生命に興味を持つすべての人々に刺激的なものとなるはずです」と、米国のアルフレッド・P・スローン財団の10年海洋調査チームの広報担当であるジェシー・オースベル氏は言う。


2006年の海洋調査での発見の時に大西洋の北にあるアセンション島近くの海底では、 407度の熱が噴射している過酷な穴の近くで生活しているエビやハマグリ、そして、バクテリアが発見された。

「これは生命が生きる環境としては、地球上でもっとも過酷な極限環境でしょう。そして、その超高温環境の周囲にたくさんの生き物たちが暮らしているのです。」と、英国サザンプトン海洋センターのクリス・ジャーマン氏は言う。

海底 3000メートルのその海底の水温は、周囲は大体 2度程度の低温だが、その熱噴射のある場所では、水温は最高で 80度に達する。これは沸騰しているに近い水温だ。ジャーマン氏は、生物たちがどのようにその環境に対応して順応していったのかを解き明かしたいと語った。

2003年に「Strain 121」と名付けられた摂氏 121度の温度の中で生きることのできる超好熱性鉄還元古細菌が太平洋で発見されたが、この Strain 121 がこここまで頑丈な理由の詳細な調査もまだ進んでいない。

また、他の調査チームが、南極海にあるウェッデル海で、海面から 200キロメートル離れた場所で、厚さ700メートルの氷の下の真っ暗な海底を泳ぐクラゲを発見した。

「そこは洞窟と考えていいです。そして、そこは地球でもっとも隔絶された洞窟です」と、ロボットカメラでのその発見についてオースベル氏は言う。

「地球のどこであろうと我々は生命を探し続けます」。

オースベル氏は、最近のこれらの生命の発見は、宇宙の他の場所での生命の調査の励みになるかもしれないと述べている。

木星の衛星エウロパは、その極寒の表面の下に海があるかもしれないと天文学者たちは考えている。オースベル氏は、地球での生物が海底のメタンのすぐ近くでも発見されていることに注目している。土星の衛星タイタンにもメタンがある。

そして、NASA は先週、液体の水を火星で発見したと発表した。

2006年の海洋調査で発見されるまでは、オーストラリアのコーラル・アイランドの「ジュラシック・シュリンプ(ジュラ紀のエビ)」は、5000万年以上前に絶滅したと考えられていた。



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参考資料:

木星の衛星エウロパ

エウロパ (衛星)より。

250px-Europa-moon.jpg氷に覆われた海は南極のボストーク湖に近い環境であると推測されており、生命が存在するのではないかという可能性が指摘されている。そのような環境に存在する生命は、地球の深海に存在する生命に近いものであると推測される。エウロパにおける生命の存在はまだ確認されていないが、水の存在は、探索のための大きな動機となり続けてきた。

1970年代まで、生命は、少なくとも一般的に理解される概念としては、太陽からのエネルギーに完全に依存していると考えられていた。地球表面の植物は太陽光のエネルギーをもとに、二酸化炭素と水から炭水化物を光合成し、その過程で酸素を放出している。酸素は動物の呼吸に使用され、そのエネルギーは食物連鎖へと繋がっていく。たとえ太陽光の届かない深海の生命であっても、表層から降り注ぐ養分の雨や、それを摂取した動物から養分を取り入れており、地球が生命を維持できるのは太陽光のためであると考えられていた。

しかし、1977年、深海探査艇アルビン号によるガラパゴス海嶺の探索では、ジャイアントチューブワーム、貝類、甲殻類など、さまざまな生物がブラックスモーカーと呼ばれる熱水噴出孔の周りに群生しているものが発見された。

これらの生物は太陽光がまったく届かないにもかかわらず繁殖しており、また後に解明されたところによると、まったく独立な食物連鎖を形成していた。この食物連鎖の基盤は植物ではなく、化学物質の酸化反応からエネルギーを得ていたバクテリアだった。これらの化学物質とは、水素や硫化水素などであり、地球内部から噴出していた。このようなエネルギー合成システムを化学合成という。

これは生命の研究において革命的な発見であり、生命には必ずしも太陽は必要ではなく、水とエネルギーがありさえすればよいということが明らかになった。また、この成果は宇宙生物学にも新たな道を開き、地球外生命の存在可能性を著しく広げることになった。エウロパの光の届かない海洋は、21世紀初頭において、太陽系の中でも最も地球外生命の存在が期待されている。




・Strain 121

Strain 121より。

増殖可能温度は85〜121°C。至適生育温度は106°C(世代時間約1時間)。130°C2時間のオートクレーブにも耐える。この菌の発見までは近縁の古細菌 Pyrolobus fumarii の113°Cが生物の増殖温度の限界だと考えられていたが、通常のオートクレーブ条件(121°C15分)に耐え、増殖する生物が発見されたことは驚きをもって伝えられた。


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ロス氷棚の場所

Map-antarctica-ross-ice-shelf-red-x.gif

・南極大陸でエビのような生き物が見つかったロス氷棚の場所。赤い×印の場所。


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参考記事:

1億年の冬眠サイクルをもつとされるバクテリアがスヴァールバル島沖合の海底で発見される (2010年09月21日)

宇宙空間で553日生きのびた細菌の研究が英国オープン大学から発表される (2010年08月26日)