2010年10月03日



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アメリカを侵略している南京虫は DDT にも耐えられるスーパー南京虫(前編)



アメリカを侵略している南京虫は DDT にも耐えられるスーパー南京虫(後編)
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[追記]2012.12.20 この翻訳記事を書いたのは 2010年10月ですが、この2年後の2012年の日本の NHK の番組で、「日本でもスーパー南京虫の被害が増えている」ことが放映されていたようですので、追記として、そのページの内容を下に記しておきます。


忍び寄る“スーパーナンキンムシ”
クローズアップ現代 (NHK) 2012.12.06

深夜、音もなくしのび寄り人の血を吸う害虫、ナンキンムシ。戦後、DDTの大量散布で一度は駆除されたかにみえたこの虫が今、再び海外から持ち込まれ、その被害が増加している。しかも押し寄せているのは遺伝子を変異させ、市販の殺虫剤にかつての1万2千倍の抵抗性を持つに至った「スーパーナンキンムシ」。

アメリカではすでに被害が拡大し、ニューヨークの大型衣料品店が一時、閉店に追い込まれる事態となった。スーパーナンキンムシはいつどこで、なぜ発生したのか。そして殺虫剤の効かない相手をどうやって駆除していけばいいのか。



(訳者注) 以前、南京虫の異常増殖に対しニューヨークで南京虫対策の特別キャンペーンという翻訳記事を紹介したことがありますが、ニューヨークではすでに南京虫対策に数千万円規模の特別予算を計上しています。わりと深刻な問題のようです。




Invasion of “Super Bed Bugs” in America
EARTH FILES 2010.10.02

アメリカへの「スーパー南京虫」(スーパー・ベッド・バグ)の侵略

「全米害虫管理協会 ( NPMA ) の最新の調査で、世界中に約 1,000社ある害虫コントロール会社の 95%がほぼ毎日、南京虫の駆除に対処していることが明らかとなっています。」
- ヴァージニア工科大学昆虫学博士、ディニ・ミラー氏。


bedbug-1.jpg

成虫の南京虫(トコジラミ)の大きさはリンゴのタネ程度(16分の3インチ=約 4.7ミリメートル)で、足は6本あり、羽はない。色は明るい褐色(右)だが、エサを食べた後は色は赤暗くなる(左)。彼らの大好物は人間の血液で、5〜7日ごとにエサをとり、5分から10分で相手の血で満腹になることができる。卵は針の先ほどの大きさで、5段階の幼虫期間を経た後、10週目に成虫になる。

南京虫の寿命は半年から1年で、彼らは主に寝室の周辺で、マットレスの縫い目やスプリングの隙間、板の割れ目や壁紙の裏などに隠れて生活する。そして、ヒトの血液を食べる時をうかがっている。南京虫は、華氏約118度(摂氏45度)の温度で死ぬ。
写真は CDC (米国疾病予防管理センター)より提供を受けた。



2010年 9月18日、ナイキスポーツ社は、マンハッタンにある巨大な敷地面積のナイキタウンを閉鎖した。その後、1週間以上の期間の閉鎖に追い込まれた。

何のための閉鎖か?

それはなんと、そのビルの至る所にはびこっていた南京虫を絶滅させるための閉鎖だった。

ニューヨークは現在、全米で南京虫のもっとも多い都市とされている。しかし、他の米国の州にも南京虫は拡大している。

「これはこの何十年かの間で、我々が遭遇した最大の害虫問題だ」と、ワシントンポスト紙に、政府の全米害虫管理協会の副代表であるボブ・ローゼンバーグ氏が述べた。

たとえば、ニューヨーク以外で現在もっとも南京虫の被害に悩まされている都市のうちのひとつのオハイオのテッド・ストリックランド知事は、6月30日に米国の環境保護局に手紙を書いた。その内容は、「南京虫の問題は、肉体的だけではなく、感情的にもとても大きな問題を発生させている。オハイオの南京虫による経済的な損失はあまりにもひどい」というものだった。

オハイオの大規模マンション「ワン・デイトン」のオーナーは、南京虫駆除に 180,000ドル(約1500万円)を使ったが、南京虫は結局戻ってきた。


BedBugsNiketownManhattan.jpg

・2010年 9月18日に閉鎖されたナイキタウン。理由は南京虫。


南京虫は大量に襲撃してきた場合には、壁と天井が黒く染まることさえある。

bedbug-2.jpg

・マットレスの縫い目に集まる南京虫。


彼ら南京虫の大好物・・・。
それは人間だ。

他の南京虫に噛まれてもそれほどの痛みなどは感じないものだが、この米国の南京虫に噛まれると、ひどく痒く、むずむずとして、赤く腫れる。

BedBugsThumb.jpg

・南京虫の大きさはリンゴのタネほど。色は赤褐色だが、血を吸った後は赤黒くなる。


1950年代には、南京虫の根絶のために殺虫剤 DDT が至るところに散布された。

その結果として、南京虫たちは、 DDTをはじめとして、多くの農薬に対して耐性を示す「スーパー南京虫」として進化したのだ。

ケンタッキー農業大学の研究によると、最新のスーパー南京虫の中には、現在広く使われている殺虫用の農薬を直にスプレーされた後も最大で 16日間のあいだ生存したものもいるという。

この半世紀の世界的な海外旅行の流行の拡大などにより、虫たちはスーツケースの中でも、そして、衣服の中で、どんどんとタフになり、抵抗力をつけていったとも考えられる。

南京虫の謎のうちでもっとも大きなものは、彼らが人間に病原菌をうつさないことだ。多くの南京虫はエサをとりやすいように、人間の寝室のすぐ近くで生活している。それにも関わらず、人間は南京虫から病気をうつされない。

南京虫の問題が、なぜ今の米国でここまで大きな問題となっているのか。それをきくために私(Earthfiles の管理人)は害虫管理の専門家のもとを訪れた。相手は、ヴァージニア工科大学の昆虫学博士、ディニ・ミラー氏だ。



(訳者注)ここからインタビューで、後編として、次回に回させていただきます。

» アメリカを侵略している南京虫は DDT にも耐えられるスーパー南京虫(後編)
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