2010年10月09日



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現代物理学の変革と崩壊: 世界的な物理学者が言う「重力は存在しない」



(訳者注) 物理学のこの周辺のことは私はよくわからないですが、このニューヨークタイムズの記事をアップしようと思ったのは、大紀元日本の10/7の記事のこの部分に興味を持ったためです。

現代科学は、宇宙研究において重力理論が基本となっている。しかし重力が存在しないのであれば、銀河系や宇宙構造に対する認識も必然的に誤っていることになる。天文学者は、はるか遠くにある天体の運動を重力理論では説明できないから、限りなく強い重力をもつ「ブラックホール」理論を導入せざるを得ないのかも知れない。事実、「ブラックホールは存在しない」と唱える物理学者もいる。

という下りです。
要するに、仮に重力が存在しなかった場合、現在ある宇宙や地球に関する多くの理論は「何もかも」崩壊するのかもしれません。





A Scientist Takes On Gravity
ニューヨークタイムズ 2010.07.12

重力を引きつけるひとりの科学者

歩くために足を上げる瞬間から始まる毎日の生活を考えてみても、地球に重力が存在しない生活などということを想像することは難しい。

しかし、もし、仮にこの「重力」というものが、単なる宇宙のおまけみたいなものか、あるいは何か他で起きている深いレベルでの現実での効果だったと言われたら、どう思われるだろうか。

これを言うのは、弦理論(ひも理論)の世界的な第一人者であるオランダ・アムステルダム大学の物理学者エリック・ベルリンド博士だ。彼は「重力というのはまったく幻想に過ぎない」という主張を発表し、物理学者や、あるいはその専門家たちの間に大論争を引き起こしている。

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・エリック・ベルリンド博士


ベルリンド博士はこの 300年間の科学の理論を真っ向から否定する論文として、最近、新聞に「重力の起源とニュートンの法則」 ( On the Origin of Gravity and the Laws of Newton ) を発表した。そこで博士は、重力というものは、熱力学の法則の単なる結果に過ぎないと主張している。

ベルリンド博士は、科学はこれまで間違った方法で重力を見てきており、そして、そこには何か基本的なものがあると言っている物理学者のうちのひとりだ。これはたとえば、株式市場は個人投資家の集団での行動から作られるとか、あるいは、ゴムの弾性が原子力学から現れたというようなことで、つまり、重力というのはもっと自然的な現象の傾向に過ぎないと博士は言う。

この視点から重力を見ることによって、宇宙に関しての理解についての様々な問題、たとえば、暗黒エネルギーや、宇宙の拡大の速度を上げているように見える一種の反重力、あるいは銀河を理解する上で必要とされる暗黒物質の理解などに光を投げかけるものだと博士は言う。

ベルリンド博士は、誰でも経験する「髪の毛がまっすぐにならなくてセットがうまくいかないこと」を例にあげて説明する。あなたの髪の毛が多湿な環境で縮むのは、真っ直ぐになるよりも縮むほうが多くのオプションを持っているからで、従って、縮んだ髪の毛を真っすぐにするには力を必要とするのだという。

曲がった宇宙とか気味の悪い引力といったようなアイザック・ニュートンの方程式の立場から描かれたものを忘れてみるべきだと博士は主張し、重力は熱力学の法則の副産物に過ぎず、自然の傾向だと言う。

ハーバード大学の弦理論学者であるアンドリュー・ストロミンジャー氏は、「ベルリンド博士の理論を正しいと言う人々もいるし、正しくないという人々もいる。しかし、いずれにしても、この理論は極めて正確な理論なのだ」と言う。

そして、「この主張が様々な議論を引き起こしているということは実に興味深い。これは(重力という)我々がもっとも密接に深く関わった世界についての議論だということが実に面白い」と付け加えた。


ベルリンド博士は自制心を失うタイプの人ではない。博士と兄弟のプリントン大学教授のハーマン氏と共に、絶対的な弦理論の計算で世界的に名高い。

1962年に、オランダのウォウデンベルクに生まれ、兄弟は1970年代のテレビ番組から粒子物理学とブラックホールについて初期のインスピレーションを得た。兄弟は、1988年に、共にオランダ・ユトレヒト大学からプリンストン大学に行き、エリックはアドバンスド・スタディ研究所に、ハーマンは大学で教えた。

ベルリンド博士が最初の大きな脚光を浴びたのは大学院生の時に、ベルリンド代数( Verlinde Algebra )と、ベルリンド公式( Verlinde formula )を発表したことによる。これは弦理論では重要で、いわば、「世界は微細な紐が絡み合ってできている」と断定した理論だ。

なぜ、弦理論家がニュートンの方程式に興味があるのか疑問に思う方もいるかもしれない。

ニュートンの理論は1世紀前にアインシュタインによってひっくり返された。アインシュタインは、重力を時空の幾何学的な歪みと説明した。そして、その一部の理論家も、次は弦理論によってひっくり返されるかもしれない。

「この30年間で重力の正体は明らかになりつつある」とベルリンド博士は言う。

重力の正体の解明は、1970年代にヘブライ大学のジェイコブ・ベケンシュタイン博士と、ケンブリッジ大学のスティーブン・ホーキング博士による、熱力学とブラックホールの不可解な関係の発見から始まった。1974年にホーキング博士は、量子の影響によってブラックホールは輝き、結局爆発するという理論(ブラックホールの蒸発理論)を発表した。

1995年には、メリーランド大学の理論家であるテッド・ジェイコブ博士が刺激的な計算をおこない、これらのホログラフ的な考え方に対して、アインシュタインの一般相対性理論の方程式は、熱力学の法則をも述べることができることを示した。

ブラックホールは実質的にはホログラムだ。たとえば、誰でも持っている銀行のカードの上にホログラムのシールが貼ってあるが、あれと同じようなものだ。内部で失われた情報は、その表面でコード化されている。


物理学者たちは、この「ホログラフの原則」についてずっと考えていた。

 --- 我々の存在は遠い壁の上から投影されている単なる影なのか?

と、宇宙に問い続けている。


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(訳者注) この後、ニューヨークタイムズの記事は同程度の内容量の2ページ目( こちら )に続くのですが、ちょっと力尽きました(苦笑)。そのうちにと思いますが、やはり、弦理論、あるいは「超ひも理論」というものを理解しないと難しそうです。まあ、わたくし、一般相対性理論も理解していないような科学ダメ人間ですので、これは険しい。とりあえず、「重力は存在していないかもしれない」と、世界的な物理学者が言っているという記事です。