そこにあるエネルギーは超新星 100,000に相当するあまりにも膨大な高エネルギー
11月04日に紹介した記事「[フナブクーの正体]銀河系の中心部から強大なガンマ線が噴出している」と関連した記事がニューヨークタイムスにあり、こちらのほうがわかりやすいので、紹介させていただきます。
先日わからなかった、そのエネルギーの規模が書かれてありますが、「超新星爆発10万個に相当する」とのことで・・・。いわゆる「ガンマ線バーストによる大量絶滅」という概念を当てはめると単純に考えると、現在の銀河系中心部にはほとんど生命は存在し得ないだろうし、今後の銀河系の恒星は随時全滅していくのでは?というような懸念もありますが、そういう単純な話とも違いそうです。
それにしても、下の本記事のイラストを見て思ったのは、「銀河系の形の概念そのものが変わってしまったのかも」ということでした。また、今回の発見により、現在の宇宙論の根幹にある「暗黒物質理論」と、もしかすると「ビッグバンの存在そのもの」も考え直す時期に来たのかもしれません。
なお、今回わかりにくい用語が少しあるので、(注1)というような形にして、記事の下にまとめて説明を補足しています。
Bubbles of Energy Are Found in Galaxy
ニューヨーク・タイムス 2010.11.10
エネルギーの泡が銀河系で見つかる
▲ 新たに発見されたガンマ線の泡は、端から端まで 5万光年、あるいは天の川銀河の直径の約半分の規模に広がる。これはその様子を描いたイラスト(日本語は訳者による)。
銀河系の中心部で何か巨大なことが進行している。
天文学者たちはそれが何であるのかわからないと言う。
NASA フェルミガンマ線宇宙望遠鏡 (注1) からのデータを調査している科学者チームは火曜日(11月9日)に、銀河系の中心部から噴出している2つのエネルギーの泡を発見したと発表した。
11月10日にリリースされた学術雑誌アストロフィジカルジャーナルによると、NASA の調査チームは記者会見を行い、 この泡が、銀河系の両サイドから各方向に 25,000光年の距離で広がっており、これは、超新星 100,000個分にも相当するものだと語ったと記した。
「これは非常に巨大なものだ」と、今回の現象を発見したハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームのダグフィンク・ベイナー氏は言った。
どこからその泡が来ているのかはわかっていない。
ひとつの可能性として、それは銀河の中心部での星の誕生と死から放出されるエネルギーではないかということが考えられるという。もうひとつの可能性としては、ジャバ・ザ・ハット (注2) のように銀河系の中心の近くに住んでいることが知られているブラックホールから吐き出されているというもの。まさしく、ジャバ・ザ・ハットがゲップをするように。
これは明らかに暗黒物質 (注3) ではない。
暗黒物質とは、天文学者たちの意見では、宇宙の4分の1を占めるとしている物質で、それが何かということについては、まだ正体のわかっていないものだ。暗黒物質は、銀河も同じような割合で占拠しているとされる。
今回の調査に参加していなかったプリンストン大学の天体物理学者であるデイビッド・スパーゲル氏は、この泡がこれまで銀河系の中にあったとは信じられないほど巨大であることに驚嘆の声をあげる。
NASA 本部の天体物理学部上級幹部のジョン・モース氏は、「宇宙というのは驚くべきことでいっばいだということを再び示したものかもしれない」と語る。
この発見にもっとも驚いている科学者のひとりが、米国サンタバーバラにあるカブリ理論物理学研究所に在籍していたフィンクベイナー博士だ。今回の発見は、天の川銀河の中心部を激しく動き回っている高エネルギーの粒子による不可解な「もや」の存在を認めたものになるのだという。
この「もや」は、これまでの既知のガンマ線において、その後の余剰エネルギーによるもやとして観測されていたものだ。フィンクベイナー博士と研究チームは、これまで、その「もや」が暗黒物質によってもたらされるものと推測していた。
銀河系の中心はあらゆる種類の高エネルギーの現象が集まる場所で、そこには巨大なブラックホールもある。宇宙論では、そこには暗黒物質も集中していることを示唆する。
理論では、暗黒物質の粒子の衝突によってガンマ線の放出が起きる。しかし、今回の追跡分析によって、その考え方に新しい境界を引く必要が出てきているのかもしれない。
それでも、暗黒物質理論は、一般の理論とし広く認識される必要はあるだろう。
科学者たちも、今回の発見が「銀河の中心付近に暗黒物質が存在していなかった」ということを意味するものではないと言う。しかし、これは難しい問題になったかもしれないとも語る。
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上記注記の説明:
(注1) 「フェルミガンマ線宇宙望遠鏡」は、 NASA のガンマ線観測用の天文衛星。
(注2) 「ジャバ・ザ・ハット」は映画スターウォーズに出てくるキャラクター。初出はオリジナル版では1982年の「ジェダイの復讐」。下の写真でレイア姫(左)に首を絞められているのがジャバ・ザ・ハット。
(注3) 「暗黒物質」とは天文学上の仮説で、これがないと現在の宇宙論は成り立たないとされています。ただし、ビックバンが「なかった」のなら、暗黒物質にこだわる必要はないと思われます。記事では「宇宙の4分の1」とありますが、Wikipedia によると、
74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かってきている。
とのことで、実は宇宙の 96パーセントは科学的にもまだよくわかっていないというのが現状の宇宙学です。
ちなみに、訳者は個人的には「ビックバンという現象はなかった」と今では考えています(ヒミコという天体や宇宙の大規模構造などをご参照下さい)。
天文学者たちが、どうしてそんなにビッグバンにこだわるのかはわからないです。
何か理由があるのでしょうけれど。
ちなみに、「ビッグバン」という名称は、私がこの In Deep でたまに口にする「パンスペルミア説」を最初に提唱した英国カーディフ大学の故フレッド・ホイル博士が生み出した言葉ですが、ホイル博士は他の物理学者との論争で「批判」として口に出した言葉でした。
つまり、宇宙物理学の第一人者であったフレッド・ホイル博士は、最初から最後まで強固に「ビッグバンを否定」し続けました。
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