2010年11月27日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




「我々はビッグバン以前の宇宙を垣間見ることができる」: 宇宙物理学者ロジャー・ペンローズ



ビッグバンは「なかった」のではなく、「何度でもあり、今後もある」。そして、ビッグバンは宇宙の始まりではなく、未来永劫に続く宇宙の歴史の中の区切りであるという新しい宇宙の循環論が、宇宙マイクロ波背景放射の解析研究をもとに、宇宙物理学の第一人者から発表された。


(訳者注) 昨日、「ビッグバン理論では説明できない古い巨大な銀河が多数発見される」という記事をアップして、そこで「ビッグバンはなかった」というような趣旨になっていたわけですが、その日のうちに、またデイリーギャラクシーに新しい記事が。

これがもう何というか、「ビッグバンはなかった」とか言って満足していた自分が叩きのめされるようなもので、ビッグバンは「なかった」どころか、「何度でもあって、またある」というものです。

これを言っているロジャー・ペンローズという人はあやしいオジサンなどでは決してなく、 Wikipedia から抜粋しますと、


ロジャー・ペンローズは、イギリス・エセックス州コルチェスター生まれの数学者、宇宙物理学・理論物理学者。

・スティーヴン・ホーキングと共にブラックホールの特異点定理(重力崩壊を起こしている物体は最後には全て特異点を形成する)を証明し、「事象の地平線」の存在を唱えた。
・量子的なスピンを組み合わせ論的につなぎ合わせると、時空が構成できるというスピンネットワークを提唱。このアイデアは後に量子重力理論の1候補であるループ量子重力理論に取り込まれた。

・時空全体を複素数で記述し、量子論と相対論を統一的に扱う枠組みであるツイスター理論を創始した。

(以下略)



という人です。
ただ、私はこの人の業績とかより、今回の理論にある「ビッグバンは宇宙の循環の中でのひとつの宇宙の時代の始まり」という、「宇宙は未来永劫」という感覚が好きだったのでご紹介した次第です。

感覚的な話ですが、私自身は、「宇宙には始まりもなければ終わりもない」というように思っています。

以前、西洋オカルティズムに詳しい人に「父と子と聖霊」の「父」の話をされたことがあって、それは「ある」としか言えないものだと言っていました。つまり、「生まれた」とか「できた」とか「正体は○○だ」とか、そういうものではないという話です。「とにかくあるもの」だと。

でまあ、それを聞いた時に、「宇宙もそんな感じかもなあ」と直感的なことですけれど、感じていました。私はかなり小さな子どもの頃からそんなふうには思っていました。そして、中学とか高校とかになって、「宇宙はビッグバンで作られた」というように教えられた時に、「ちぇ! 宇宙ってできたものなのかよ」と、残念に思ったことがあります。

それはともかく、今回の理論はまだ議論の余地はあると本記事にも書かれていますが、ビッグバンというような無機質な宇宙論から比べると、今回知ったこの理論はとても人間的な宇宙論に思えます。これは要するに、1年でいえば新年みたいなもので、「ビッグバンからまた次の時代の宇宙があらたに始まる」という感じなのですかね。


ところで、相変わらず難しい言葉がたくさん出てくるのですが(訳しても日本語がわからないものが続出)、理論の基本となるのは、宇宙マイクロ波背景放射( CMB )という宇宙から放射されているマイクロ波で、この観測結果から導き出されたものだそうです。

また、この「ビッグバンと次のビッグバンが起きるまでの区切り」について、オリジナル記事で、ペンローズ博士は aeon という単語を何度も使います。これがよくわからないのです。辞書的には「累代」とか出ますが、累代なんて日本語知らないし、記事でも aeon にしています。要するに「時期的区切りではあるけれど、未来永劫のような非常に長い時期の区切り」というような意味だと思います。

それと、ペンローズ氏の持つ宇宙論名 conformal cyclic cosmology の訳ですが、正式な日本語はないようで、ここでは、ほとんど直訳の「共形周期的宇宙論」としています。









"We Can Glimpse the Universe Before the Big Bang": One of World's Leading Physicists
Daily Galaxy 2010.11.26

「我々はビッグバン以前の宇宙を垣間見ることができる」:世界的な物理学者

cmb.jpg

・ NASA のウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機( WMAP )の調査での宇宙マイクロ波背景放射 ( CMB ) の変動。色は温度変化を表している。


オックスフォード大学の理論物理学者、ロジャー・ペンローズ氏によれば、宇宙マイクロ波背景放射 ( CMB ) の中の循環パターンが示しているものは、空間と時間はビッグバンでは生まれなかったが、しかし、我々の宇宙は、実際に一連の「 aeon (=未来永劫に続いていく時期的区切り)」を通して絶えず循環しているという。

NASA の衛星 WMAP(ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機)によって集められたデータは、ペンローズ氏の「共形周期的宇宙論」( conformal cyclic cosmology )という考えを支持すると言う。

ペンローズ氏の発見は、宇宙論として一般的に認知されているインフレーション理論モデルのビッグバンに真っ向から対立するものだ。

ビッグバンとは、 137億年前に宇宙は無限の密度の点から始まり、わずかな間に急速に拡大していったとするもので、それ以来、宇宙はゆっくりと拡大を続け、その拡大は、科学的には謎の領域でもある「ダークエネルギー」によって加速していると考えられている。結果として、宇宙は、冷たく均一で単調な宇宙として終わっていくとされている。

しかし、ペンローズ氏が、科学誌「Physics World」誌に語ったところによれば、インフレーション理論の問題に関して、「宇宙が生まれたと信じられている点(ビッグバンとして知られる)の、そのあまりにも低いエントロピーの状態を説明することができないと思われる」のだという。

ペンローズ氏は、時間と空間がビッグバンで生まれたと信じていない。しかし、ビッグバンというのは、それは連続した多くの中の状態のひとつであり、それぞれのビッグバンが「宇宙の新しい永遠の区切り」を宇宙の歴史に作り出していると考えている。

ペンローズ氏の理論の概念の中心は、遠い将来、宇宙はいわゆるビッグバンと言われている中で起きたことと、非常に類似したことになっていくというものだ。

ペンローズ氏は、「これらの観点では、宇宙の形や幾何学はとてもスムーズなものとなる。現在の(宇宙論)では、その形と幾何学があまりにもギザギザなのだ」と言う。

宇宙が無限の大きさにまで拡大していった時に次への移行が始まる。宇宙はもう一度、微分的に小さくなり、次のビッグバンで外側に向かって爆発する。連続性のこの形は、現在の aeon (永遠に続く区切り)の終わりからの移行を可能にしていると、氏は主張する。この移行ステージにおけるエントロピーは極めて低い。なぜなら、宇宙の拡大に伴って、すべての情報を破壊するブラックホールが、それを吸い取り、蒸発させ、宇宙からエントロピーを消し去ってしまうからだ。


ペンローズの理論の基盤は、宇宙マイクロ波背景放射の中で見いだされた。宇宙マイクロ波背景放射とは、天球上の全方向から観測されるマイクロ波放射で、その時の宇宙の状態を我々に示すものだ。これは宇宙が 300,000才の時につくられたと考えられている。


今回の理論の証拠は、アルメニアにあるエレバン物理研究所のヴァヘ・グルツァデァン氏によって得られた。グルツァデァン氏は、NASA の WMAP 衛星と BOOMERanG (南極大陸で風船に観測機器を積み宇宙背景輻射を観測した実験)でのマイクロ波データを7年かけて分析した。

ペンローズ氏とグルツァデァン氏は、それらのデータの中に同心円を発見した。その中は、他の場所と比べると非常に低い温度差だったという。

宇宙マイクロ波背景放射はビッグバンによる残り熱だ。この放射線は宇宙に広がり、そして、もし、我々がマイクロ波を見ることができるのならば、それは天空すべてに均一な輝きとして現れるだろう。しかし、非常に慎重にこの放射線を測ると、空の全域でのそれぞれのポイントで、非常に小さな差異があることが認められる。これは「異方性」と呼ばれている。これらの差異のおかげで、私たちは、宇宙に関しての年齢や内容の特性に関しての多くをエンコードできるのだ。

ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機 ( WMAP ) ミッションは、これらの差異を観測して、そのことによって、宇宙の年齢が 137億才だと判明した。そして、宇宙は、 4.6パーセントの原子、 23パーセントの暗黒物質(ダークマター)と 72パーセントのダークエネルギーで構成されていることもわかった。

物理学などの論文が登録されているプレプリントサーバ arXiv (アーカイヴ)にある、ペンローズ氏とグルツァデァン氏の記述には、

「 1011.3706、これらの循環が、前もって存在した aeon (未来永劫的な区切り)の中でビッグバンが起きたことを理解させてくれる。これらは、その前の aeon で発生した重力波の球状波紋によってブラックホールが衝突したことが、我々の aeon で見ることのできる残された印だ」

とある。

この「ペンロース循環」は、インフレーション宇宙論への大きな挑戦となる。なぜなら、この理論では、空中の温度分布の差異は識別できる構造をもったものではなく、むしろ、ガウスかランダムでなければならないからだ。

オックスフォード大学の客員教授であるジュリアン・バーバー氏は、「 Physics World 」誌のインタビューで、「ペンローズ理論が確かめられて、それが事実ならば。これは驚くべきことだ」と述べた。

「彼らは一般的なインフレーション理論を打ち倒すつもりかもしれない。インフレーション理論は多くの宇宙学者たちに広く認められているものなのだ」

しかし、バーバー氏は、この結果にはまだ非常に議論の余地があるといい、また、他の研究者たちはこのデータを非常に批判的に見るだろうと語った。