2011年02月17日



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太陽活動と地震・噴火の活動に関しての2つの考え方



先日、太陽がXクラスのフレアを放出したことを記事にしました。

サイクル24で最初の「Xクラス」の太陽フレア (2011年02月15日)

今後2年くらいは、頻繁に発生すると思われ、それそのものを記事にしていくことも少なくなると思われます。そして、NASA の推測が正しいのなら、今後、2013年くらいまでは我々は、今まであまり経験しなかったほどの強い太陽活動と共に生活していくことになるのだと思われます。

そして、最近になって、このブログでも増えている記事が、火山の噴火に関するものです。イエローストーンなどの超ビッグクラスから、白頭山やセントヘレンズ、アイスランドのお歴々などでいろいろな(すでに公式レベルの)報道も出ています。

イエローストーンに関しては、日本や米国では控えめな報道も、中国報道では野放図の感もあって、1月27日のチャイナネット日本語版では「巨大火山が近く噴火か 米3分の2に被害及ぶ恐れ」と断定口調で書かれていて、何だかアセりました(苦笑)。

ys-2.jpg

▲ 最近ではイエローストーンが噴火した時の想像図や動画をいたるところで見ることができます。


今回は、地震や火山の噴火と「太陽活動」の関係についての資料のようなものです。「太陽フレア」(あるいは強い太陽活動全般)と地震、あるいは火山の噴火に関してはいろいろな意見があります。

代表的な意見のひとつとしては、

・太陽フレアが地震や火山の噴火を誘発する

というものです。

この意見の代表として、アメリカの米国地球物理学連合が 2007年に発表した論文がありますのでこちらの要約をご紹介します。これは NASA が管理運営している「宇宙物理学関係文献情報検索システム」(SAO)にあります。簡単に書くと、「マグニチュード 4以上の 682件の地震と太陽フレアの相関関係を調べた」ところ、「結論は出ないものの何らかの関係はありそうだ」というようなものです。

そして、もうひとつの意見。

もしかすると、これは上の「太陽と地震の影響」について反対する意見となるものかもしれませんが、私自身はどちらかというと、こちらの意見を考えていました。というか好きです。

なので、こちらからご紹介します。


[資料1 宇宙線と地震や噴火の関係]

これは、2年か3年前くらいに、ローカル局(多分、東京ローカルのMXTV)のテレビの深夜番組か何かが YouTube にアップされていることを教えてもらって見たもので、非常に簡単にいうと、

・地震や噴火は宇宙線がトリガーとなっている

というものです。
これを主張していたのは、ヘンな人ではなく、東京工業大学・大学院教授の丸山茂徳さんという人です。

その時の放送から抜粋した動画がありますので、それを貼っておきます。




ここでは、大まかには、以下のようなことを言っていると思います。

・地震を起こすトリガー(発生に至るシステムではなく、あくまで引き金)となるのは宇宙線。地震の起きるシステムは今まで語られていた「力学的」なものではなく、化学的(ケミカル)な反応現象。

・今年(2008年)の初頭から宇宙線がかつてないほどの量、降っており、今後しばらくは火山活動がやばい。

・太陽の黒点活動と宇宙線には活動の相関関係がある(ただし、今までとは逆の相関。つまり、太陽活動が弱いほうが宇宙線の放射が多くなるので影響を受ける)


3つめのは、これはちょっとわかりにくいかもしれないのですが、私が考える分には、要するに、

1 太陽活動が強い → 太陽風(磁気)や太陽光線が多く、遮られる宇宙線がある(かもしれない)

2 太陽活動弱い → 太陽風(磁気)や太陽光線が少ないので、宇宙線は地球にたくさん届く


というようなことではないかと。

つまり、宇宙線が地震や噴火のトリガーとなっているのなら、太陽活動が弱い時のほうが地震や噴火は多くなるということになります。

しかし、この「太陽活動が弱い時のほうが地震や噴火は多くなる」ということに関しては何ともいえない部分があります。

というのも、「地震そのものがこの100年で増えている」というようなデータはあるからです。下のグラフは、Modern Survival Blog に昨年あったものです。

グラフは、それぞれ、左から

・1900年からの年平均の地震数
・2000年から2009年までの10年間の年平均地震数
・2010年の地震の数

となっています。

マグニチュード 5から 5.9の地震

a-2010-earthquakes-magnitude-5.jpg


マグニチュード 6から 6.9の地震

b-2010-earthquakes-magnitude-6.jpg


マグニチュード 7から 7.9の地震

c-2010-earthquakes-magnitude-7.jpg


となっていて、データ数が多く比較しやすい「マグニチュード 5から 5.9の地震」などを見ると、やはり「地震は増えている」と考えるのが妥当なのではないかと思います。

そんなわけで、まあ、正直、宇宙線と地震や噴火のトリガーの関連の話は、私は大好きな話のひとつですが、それをデータに当てはめると、今ひとつわかりづらいという部分はありそうです。

長くなってきましたので、もうひとつのほうにうつります。


[資料2 太陽フレアと地震発生の関係]

これは要点をまとめましたが、概要の冒頭はそのまま記します。

太陽面での爆発現象である太陽フレアと、地球での地震との間に何らかの相関関係があるのかどうかを探るために、 1991年から 2007年までの間に発生した太陽フレアと、その間に全世界で発生したマグニチュード 4以上の地震との関係の研究に関する論文を発表する。1991年から 2007年までの間に世界で発生したマグニチュード 4以上の地震の数は 682ケースとなる。


という文言から始まります。

Whether solar flares can trigger earthquakes?
米国地球物理学連合論文 2007年5月

太陽フレアは地震のトリガーとなり得るのか?(要点)

・太陽フレアの規模の中で重要と見なされるBクラスからXクラスまでの太陽フレアの発生後、10時間から 100時間後に発生していたことが示される多数の地震の存在。

・太陽フレアの増加と地震の発生の時間や遅れには関係があると認められる。

・ただし、大きなフレアが大きな地震と関係するという証拠は掴めなかった。つまり、フレアの規模と地震の規模の関連は見当たらなかった。

・太陽フレアの発生位置(太陽のどこで発生したか)と地震の発生やその規模には興味深い関係が見られるが、特定して書ける段階ではない。

・推論としては、太陽フレアによって放出された荷電粒子が、地球の磁場圏でリング状の流れを作り、それが断層帯でプレート運動を強めるという可能性。



というようなもののようです。


あと、論文自体は読めないですが、独立行政法人「科学技術振興機構 JST」というところの科学技術文系データベース「JDream II」というところに、

Universality in Solar Flare and Earthquake Occurrence
太陽フレアと地震の発生の普遍性

という論文のタイトルがあるようです。

そういう研究は各所で進められてはいるようです。

どれも、研究の目的は「地震や噴火の予知」ということになるわけで、「発生を防ぐことはできない」という認識の中で、どうするかということになるのだと思います。特に、巨大な火山の噴火は世界的に気候を変えてしまう(寒冷化、あるいは太陽の日照時間や光度が減る)可能性も高く、文明存亡に関わることではあります。


なお、地震や噴火の資料に関して、最近、大変に興味深い資料を教えていただきましたので、近いうちにご紹介したいと思います。ひとつは PDF ですので、適度に編集いたします。これは「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性」というタイトルで、娯楽系ではなく、学術系の文書ですが、きわめて刺激の強い内容のものです。

日本に住んでいる我々にとっては怖い内容ですが、逆に知っていてもいいのかもしれないと思いますので、今、編集しています。