2011年08月29日



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空の赤い妖精「スプライト」



(訳者注) スペースウェザーに「レッド・スプライト(赤い妖精)」というタイトルの記事が掲載されていました。

記事に載せられていた写真はこちらです。

Red-Sprites-2.jpg

▲ チェコの天文写真家が 8月27日に撮影に成功して、スペースウェザーに送ってきたもの。撮影の難しいスプライトの写真はまだ少ないようです。


スペースウェザーの記事のタイトルにある「スプライト」という言葉を初めて知りましたが、これもまた、「宇宙と地球との境目」といえる高度の上空で起きている謎の現象のひとつのようで、過去に、日本の報道でも紹介されていたようです。 2008年06月17日の朝日新聞の記事「空の妖精に会いに行こう 謎の現象「きぼう」が迫る 」などがこちらなどに残っています。


このスプライトに関して、日本の東北電力の子ども向け科学サイト「電気と科学のひろば 不思議な理科室」に詳しく載せられていましたので抜粋させていただきます。子ども向けのサイトなので、元のひらがな表記を一部漢字に修正しています。



空に「落ちる」カミナリ! 謎の光の正体

空は今も昔も不思議なことでいっぱいだ。

カミナリ雲の上にあらわれる謎の発光現象も、そのひとつ。
飛行機のパイロットたちがときおり目撃していたけれど、ずっと正体不明のままだったんだ。

ところが1989年、アメリカの大学が撮った写真のなかに、その謎の発光現象が写っていた。写した人たちは、偶然とはいえ驚いたろうね。だってそれまで本当かどうか分からないと言われていた光が、実際に写っていたんだから。

謎の発光現象には、妖精という意味の「スプライト」という名前がつけられた。



ということです。

上の東北電力のページには、現象の高度に関してのわかりやすい図(想像図)が載せられています。

atom-2.jpg

▲スプライト、ジェット、エルブスの想像図(東北大学福西研究室による)


スプライトの他にも、「ジェット」や「エルブス」という現象もあり、それらもまだよくわかっていない現象だそう。


elps-1.jpg

▲ エルプスという現象。2003年12月16日、東北大学飯舘観測所で撮影。エルブスは、非常に広範囲で光が空に広がる現象のことだそう。


ちなみに、原因はどれもわからないですが、どれも「光」の現象です。

面白いのは、ほんの20年ほど前までは、この現象の存在は「信じられていなかった」ということです。

今回のスペースウェザーの記事にもありますが、このスプライトは、1989年までは「存在自体が科学界では信じられていなかった」ものなのだそうで、それが信じられるようになったのはほんの 20年ほど前のことでした。そして、今では「存在する現象」ということになっています。

「千分の1秒から0.1秒ほどの短い時間だけ赤く光る」現象ということで、撮影や確認が難しかったということなのでしょうが、このような「あるはずがない」とされている現象でも、機材や観測技術の発達によって、「存在する現象」となるものは今後もあるかもしれないですね。


スペースウェザーの記事の訳も載せておきます。




RED SPRITES
スペースウェザー 2011.08.29

赤い妖精

地球の上空の高高度に、不思議な、そして美しい光のフォームが踊っている。
この場所はすでに、地球と宇宙の境といえる場所だ。

この謎の発光現象を研究者たちは「妖精(スプライト)」と呼ぶ。

この妖精たちは、非常に素早い動きを見せて、そして、束になってやってくる傾向にある。

このスプライトの写真(このページの1番上の写真)は、チェコ共和国のマーティン・ポペック氏が 8月27日に撮影して、送信してくれたものだ。


稲妻の研究者であるスペインのオスカル・ヴェルデ博士はこうスプライトについて述べる。

「スプライトはまったくの宇宙の現象なのだ。この妖精たちは、高度 80キロメートルの中間層で生まれて、成長しながら最初は降下して、それから上昇する。スプライトは、多くは地球上で激しい稲妻が発生した時に起きる。そして、地球の高高度へ電界を放つのだ」。


このすべてのプロセスに要する時間は 20ミリ秒に過ぎないのだという。

スプライトは、少なくともこの1世紀の間に目撃はされていたが、1989年に初めてカメラで撮影されるまではほとんどの天文家や科学者たちはスプライトが存在するということを信じていなかった。


スプライトが現実に存在することを知った現在では、世界中に多くの「スプライト・ハンター」(写真家のこと)たちがおり、彼らの撮影によって、スプライトの写真は少しずつ増えている。