(訳者注) 宇宙探査の中でも、とても多くの国の関与で支えられているもののひとつが「ガンマ線バーストの観測」で、 この探査を行う NASA のフェルミガンマ線宇宙望遠鏡というものは、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スウェーデンの共同での研究が続けられています。
この「ガンマ線バースト」というものなんですが、これについて、Wikipedia から説明を抜粋しておきます。
ガンマ線バースト
ガンマ線バーストは、天文学の分野で知られている中で最も光度の明るい物理現象である。
ガンマ線バーストは極超新星と関連しているという説が最も有力であると考えられている。しかし天体物理学界ではガンマ線バーストの詳細な発生機構について合意は得られていない。
つまり、「ガンマ線バーストが、どこから、どのように発生するのかよくわかっていない」ということなんですが、この解明の研究のために NASA のフェルミ望遠鏡も運用されている面があります。
そして、昨日の NASA の発表。
「ガンマ線バーストの約3分の1の発生源はまったくわからない」
と。
調べれば調べるほどわからなくなる宇宙のいろいろ。
まあ、調べてわかってしまうほど程度のものなら宇宙も大したものではないですが、「調べれば調べるほどわからなくなっていく」というのがなかなか宇宙の懐の広いところです。
最終的に「全部わからなくなりました」と NASA から発表があると嬉しいのですが。
ちなみに、ガンマ線というのは放射線の一種で、原爆などの爆発の際に大量に放出されて、また、人間の DNA を損傷することから、明らかに有害とされていますが、しかし、宇宙からのガンマ線は大量に常時地球を直撃しています。
では、どうして私たちは大丈夫なのか?
それは上のWikipedia に答えがあります。
宇宙から飛んでくるガンマ線は地球の大気によって遮られるため
宇宙の「ガンマ線」と「ガンマ線バースト」の正体は何で、一体何のために宇宙に存在しているのか。
ここから翻訳です。
NASA はそのタイトルで明確に「宇宙の謎」と銘打っています。
なお、後半の「ガンマ線バーストの発生源トップ10」は、それぞれにその星雲などの解説が文章で記述されているのですが、画像などがあった方がわかりやすいと思って、写真をこちらで入れています。

NASA 2011.09.09
フェルミ望遠鏡の最新の調査が浮き彫りにする「宇宙の謎」
NASA のフェルミガンマ線宇宙望遠鏡は、3時間ごとに全空中をスキャンし、宇宙のすべての高エネルギーを探査する。そして、科学者たちは集めたデータのすべてを毎年分析する。
ガンマ線がどこから来ているかを探るために次々と編み出される新しい分析法のもとで、調査と分析を進めていく。
今年のはじめ、フェルミ望遠鏡の調査チームは、フェルミの主要な検出器である Large Area Telescope(LAT/広域望遠鏡)によって発見されたガンマ線のソース(発生源)の目録を公開した。
そこには、 1,873 の高エネルギーで輝く物体が納められている。
「これらのソースの半数以上は、LAT/広域望遠鏡が見つける活動銀河のブラックホールの要因によるものだ」と、天体物理学者のジノ・トスティ博士は言う。

▲ この2年間の間のフェルミ望遠鏡での観測から作られた全スカイマップ。宇宙で、10億電子ボルト(※ Wikipedia - 電子ボルト)より高いエネルギーが出現するかをあらわす。比較でいうと、可視光のエネルギーは、2億ボルトから3億ボルトだ。
より明るい色で示されている部分が、その示す通りにより明るいガンマ線の発生源を示す。
このガンマ線のソースの目録を編集したひとりであるトスティ博士は、このように言及した。
「この新しい目録の中でもっとも興味をそそられることは、把握しているどの波長とも関連していない多数のガンマ線バーストの発生源だ」。
このフェルミの観測したものを見る限り、確かにこれだけ多くの発生源のわからないガンマ線の発生源が存在するということは純粋なミステリーと言える。

(※)バルサーとブレーザー
・バルサーとは、パルス状の可視光線、電波、X線を発生する天体の総称。
・ブレーザーは、巨大楕円銀河の中心にある大質量ブラックホールがエネルギー源となって明るく輝く天体。
上の図の通り、ガンマ線の発生源の約3分の1は、今まで知られた何とも関連のないものであって、これはそこから新しい種類のガンマ線放出を見いだすことのできる可能性があるということになる。
それにしても、フェルミからのデータが増加するほどに、我々( NASA )も、「天文と宇宙の多様性」というものに驚くことがある。
これまでフェルミが観測した中で、この天の川銀河での「ガンマ線バーストの発生源トップ10」は以下のようになる。
かに星雲

かに星雲は、おうし座にある超新星残骸で、地球からの距離は 6500光年。中心部にはパルサーの存在が確認されている。超新星自体は1054年に出現したことが記録に残されている。
2008 年以降、かに星雲がその高エネルギーにおいて7パーセント弱まった ことが天文学者たちによって示されている。
超新星残骸 W44

9800光年の距離にもあり、およそ2万歳の超新星残骸であると考えられている。
V407

V407は、はくちょう座にあり。太陽の約500倍に膨らんだもので、白色矮星と赤色巨星の両方を含んでいる。これはつい最近、2010年3月に超新星爆発が起こり、フェルミがここに新しいガンマ線の発生源を発見した。
これまで、この種の爆発でガンマ線が生じると科学者たちは予想していなかった。
パルサー PSR J0101 - 6422
パルサーというのは、中性子星はが速く回転しているもので、今回のガンマ線バーストの発生源全体の6パーセントに及ぶ。
以下、
2FGL J0359.5+5410
ケンタウルス座A

アンドロメダ銀河 (M31)

葉巻銀河 (M82)

ブレーザー PKS 0537-286
2FGL J1305.0+1152