▲ アタナシウス・キルヒャーが『地下世界』で描いた「太陽」。300年以上前のイラストですが、現実に、現在観測されている太陽とさほど差はありません。最近になってようやくリアルな写真が撮影されるようになった太陽の黒点の写真
などを見ると、ほぼそのままのように見えます。
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[資料] 17世紀に描かれた地球の「内側」
[地球の内なる太陽] Vol.5 - 歴史の中での地球中心の謎(前編) の後編となるはずの「The Hollow Earth Enigma (地球空洞説というミステリー)」を訳している中に、はじめて知る人や単語が数々出てきます。
ここに出てくるアタナシウス・キルヒャーとか、フェルディナンド・オッセンドフスキとか、これまでまったく聞いたことのない名前にあたる際に、それを調べるという段取りが多くなり、翻訳そのものより、その背景や歴史を調べる時間に大きく使っています。そして、その中で、「地球の内側の世界はずいぶんと昔から具体的に描かれている」ということを知ります。
そういうことなどを、自分が知るためのメモという意味も含めて、資料的に断片的に記しておきたいと思います。
今日は17世紀に書かれたに『地下世界』という文献からイラストをご紹介します。
ちなみに、このアタナシウス・キルヒャーという人は、 Wikipedia によりますと、当時の科学界の最高権威にいた科学者の一人だったようで、
ヒエログリフ (ヒエログリフ=聖刻文字、神聖文字) の科学的研究と読解に取り組んだパイオニアとしても有名。また伝染病がなんらかの微小生物によって引き起こされるという考えをはじめて実証的に示し、その説にもとづいた予防法を提案した。当時のヨーロッパ学会における最高権威であったが、最晩年はルネ・デカルトなどの合理主義の立場から批判にさらされた。
ということです。
この「地下世界」を描くことになる研究についてはこうあります。
地質学
1638年、アタナシウスは地球内部の構造を調査するために南イタリアへ赴き、ヴェスヴィオ火山に登って噴火口を調査している。
またメッシーナ海峡では地底から聞こえる不思議な音に興味を引かれている。一連の地質学研究は1664年に出版した『地下世界』にまとめられた。同書の中では潮流の原因は海洋における温度の違う水の動きにあると鋭い考察を行っている。
今回は、フランス国立図書館(こちら(仏語))で公開されているキルヒャーの『地下世界』のイラスト内容の抜粋などを資料として書いてみたいと思います。
▲ アタナシウス・キルヒャー(1602-1680年)。
日本語の文献でこれらのことにふれている詳しいものに、間瀬玲子さんというヨーロッパ語系文学の研究家の書かれた PDF 書類「ネルヴァルとアタナシウス・キルヒャー」という論文を見つけましたが、そこで、キルヒャーと共に、やはり地球の地下の様子が描かれている 19世紀フランスの作家ジェラール・ド・ネルヴァルという人の『オーレリア』という作品のことに触れられています。オーレリアで描写される「地球内部」はこのようなものです。
『オーレリア』 第一部 第4章 より
私は地球を貫く深淵に落ちたと思った。溶解した金属の流れによって苦痛もなく運ばれていくような気がした。
無数の似たような河は、その色調が化学的相違を示していて、脳葉の間を蛇行する脈管と血管のように地球の内奥に筋をつけていた。
それでは、ここからキルヒャーの「地下世界」のイラストです。
アタナシウス・キルヒャー 『地下世界』より
地球内部の火
▲ 縮小しているので、ちょっとわかりにくいかもしれないですが、「四隅」から人のようなものが息(多分、風をあらわしている)を吹いています。下の絵は右上の人(のようなもの)の部分です。
地下の川
地下のドラゴン
鉱物の基質
▲ 内部にアルファベットが書かれています。鉱物記号などに詳しくないので、何をあらわしているか、私にはわからないですが、真ん中に「B」があり、左から、G、F、E、D、C、その右側に、n、E、F、Gとあります。
地球内部の火(1678年版)
▲ キルヒャーの作品で、一番上の「地球内部の火」と同じ構図のイラストですが、内部の様子がやや違う角度で描かれている作品。下のはこちらの「風を口から出す人のようなもの」。
タイトル部分のイラスト