(訳者中) タイトルには「太陽がなくても」と書きましたが、正確に書きますと「太陽が当たっていなくとも」ということです。つまり、夜でも発電可能な太陽発電施設ということになりです。
上の写真でもおわかりかと思いますが、185ヘクタール(185万平方メートル)の土地に数千枚のパネルが建設されているかなりの巨大施設ですが、この「新しい太陽光発電所」であるヘマソラール発電所がスペインのセビリアで稼働開始したことが、英国デイリーメールで大きく取り上げられていましたので、ご紹介します。
これは数百億円の費用が必要な極めて大規模なプロジェクトで、以前、私なども夢想していた「個人によるフリーエネルギー」というものとはほど遠いものではあることは事実で、以前の私ならあまり気にかけなかったですが、今では感想も違います。
それは、3.11の震災以来続いている、日本や世界での原発を巡るゴタゴタという事実があるかかもしれません。
私は原発については何の知識もないので、それについて書いたこともないし、今後も書くこともないでしょうが、真実がどうであっても、「いろいろな意見の人たちの間などでトラブルや精神的なもめ事が続いている」ことは事実であり、どちらが正しいということではなく、「トラブルの原因となっているもの」を冷静に見ることは悪いことではないと思っています。
文明の進歩の重要な点として「否定や反対だけではなく、代替アイディアがなければ、文明は止まるだけに陥ってしまう」ということがあるように思います。「電気など不要だ」という極論なら仕方ないにしても、人類の文明は今は電力と共に進んでいることは否めず、生活から医療まで、電気が消えれば多くが消えます。
そんな中で、今回の「24時間で稼働させられる太陽光発電システム」のニュースがあったわけで、応用次第では、ここまで莫大な予算がなくても、なんとかなったりする可能性はあるのではないかと。小さな街や集落ずつくらいの単位でのエネルギーくらいなら、この「太陽光を溜める」という発想の元で、わりとフリーエネルギーに「近い」ものは得られる可能性はあるのかなとも思います。
まあ、なんだかんだいっても、人間と太陽という関係はあらゆる面から最も重要な関係のような気もします。
ちなみに、これまで In Deep でふれた「発電とエネルギー関係の記事」は以下のようなものがあります。
・ドイツで「バクテリアを使った太陽光の直接エネルギー変換プロジェクト」が始動
2010.10.02
・アインシュタインが存在を予言した現象が実現され、まったく新しい光源「スーパーフォトン」が開発される
2010.11.25
・ベトナムでコメの籾殻を使った新しい電力プロジェクトが始動する
2010.09.24
それでは、ここから本記事です。
Solar plant first to generate energy AT NIGHT - in a glowing 'lightbulb' tower hot enough to melt salt
Daily Mail 2011.10.06
「夜でもエネルギーを作り出せる」世界で最初の太陽光発電システム
2600枚の鏡が仕様されている「電球タワー」は塩を溶かすことができるほどの熱を持ち、日光がなくても、15時間の間、エネルギーを保存することができ、24時間稼働させることができる。
▲ 集めた太陽光の熱をタワーの溶融塩に溜めることによって、24時間の発電が可能となった。
太陽光なしで操業できる世界で最初の太陽光発電施設が公式に稼働が始まった。
2億6千万ポンド(約 300億円)の費用で建設された集光型太陽熱発電所ヘマソラール発電所(Gemasolar 発電所)は、中央のタワーに太陽光を集め、溶融塩に熱をためて発電するシステムにより、世界ではじめて日光への露出がない状態でも、15時間の間、動力タービンに熱を保存することができる。
この、2600枚の鏡が使用された「タワー」を持つこの発電所は、ヨーロッパの中で最も高温となるスペイン南部のセビリアに近いフエンテス・デ・アンダルシアという場所にある。
熱を保存する溶融塩は 900度の高温となる。
▲ 185ヘクタールの広大な土地に 2,650枚の太陽光収集パネルが敷設されている。
現在でも、様々な自然を利用した発電システムが存在するが、人類は決して自然に対しての支配者ではないために、天候の状態によって左右されるものも多い。
たとえば、風力発電は風が弱まると、発電能力も低下してしまう。
しかし、ヘマソラール発電所は、熱をタンクに蓄積することによって、この天候の変化に対してのハードルをクリアすることができる。
このシステムを開発した電力会社トレソル・エナジーはこのように言う。
「タンクに溜められた溶融塩に太陽の輻射が低い時に使う熱を保存する。その溶融塩が、熱を移送し、夜を通して発電させることが可能となる。私たちは集光型太陽熱発電所を使用するグローバル企業となることを目指しており、このヘマソラール発電所は最初のステップとなる」。
現在は、この発電所は最大のエネルギー能力を発揮するには至っておらず、2012年までには70パーセントの能力に達すると予測されている。
今のところ、同じタイプの発電所はどこの国や地域にも存在しない。
もっとも、どの国の地域でもこのタイプの発電に適しているわけではない。ヘマソラール発電所のあるスペインのセビリアの気候は、特にこのタイプの発電に適しているのだという。
また、300億円という予算も、どこの国にでも捻出できる費用ではなく、あるいは、2,600枚の鏡を設置するための広大な土地も必要だ。
しかし、現在、南アフリカなどで次の集光型太陽熱発電所の建設のための事前調査が進められている。
今回の太陽テクノロジーの応用に対しては、環境保護主義団体もおおむね好意的な意見を寄せているという。