2011年11月05日



In Deep のトップページは http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




宇宙で生命が作られる方法と「その場所」の特定に乗り出した NASA の研究機関



生命の有機物質が宇宙空間で作り出される重要な有機物はメタノール

ch3-02.png


(訳者注) このブログにいくつか存在するテーマのようなもののひとつに、「宇宙から来た生命」、あるいは「生命の素」ということがあります。

つい最近も、「惑星間にある宇宙塵に、生命を作るための有機物構造が存在することが確認される」という、香港大学の科学者たちの研究発表がありましたが、その前の段階として、



や、他にも関係するような記事などを昨年から今年にご紹介したりしていました。

現段階では、世界のメジャー科学機関の共通認識として、「生命は宇宙から来た」ということの共通項目が出来てきており、現在の段階としては、「しかし、その仕組は?」という方向に移ってきているようにも感じます。

今回の NASA の関連研究所の発表は、


「宇宙で生命が形作られる仕組の解明」と共に、「今後、生命(の素)が発生している場所を特定していく」



という文字だけ見ると大変に刺激的な発表です。

この NASA の研究機関では、生命を形作った最初の有機のひとつが「メタノールではないか」と考えているようです。その化学的説明については、私に理解できることではないですが、全体としての翻訳をご紹介しておきたいと思いました。

なお、メタノールというのは、いわゆる「メチルアルコール」のことです。工業用として使われるもので、古くから偽造酒などにも使われ、人体に悪影響のあるものです。ちなみに、この「メタノール」という言葉の由来は、このメタノールが、木材由来による木の酢液の蒸留という意味で、「木の精」という意味だそうです。

なお、今回の発表をした科学者たちの在籍している米国のレンセラー工科大学というのは、『神の領域「生命の起源」に挑戦する科学チーム』という翻訳記事に、こうありました。

NASAのジェット推進研究所は、「 NASA 宇宙生物学研究所」の科学チームが、 2008年10月2日、宇宙における生命の起源、発展、分配、および未来の生活を研究するために、全米から10の調査チームを選び、それぞれに 5年間で平均700万ドルの交付金を与えることにしたと報告した。


とあり、 NASA の資金援助によって宇宙生命の研究を行っている機関のようです。

それでは、ここからです。




'Sweet Spots' For Life Forming Molecules Discovered In The Galaxy
Nano Patents and Innovations 2011.11.02

銀河系で生命が形作られている「スウィート・スポット」の発見


life_methanol-01.jpg


ニューヨーク州のレンセラー工科大学の「宇宙生物学研究所」の科学者たちは、宇宙空間の中で、複雑な有機物の分子構造が存在する可能性が非常に大きいと思われる場所を特定するための長年の研究成果を編纂した。

科学者たちは、宇宙空間で「メタノール」を探し続けていた。

メタノールは、生命を形作る可能性がある有機分子として、重要な合成物であると考えられている

彼らの研究発表には、宇宙での「生命の発祥」ということに関して、その分子はどこから来たかということを決定づけることのできる可能性のあるものだ。

この結果は、天文物理学の専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」の2011年11月20日号で発表される。

論文のタイトルは『恒星間と惑星間での氷塵の中でのメタノールの生産についての状態Observational constraints on methanol production in interstellar and pre planetary ices. )』。


「メタノール構造は、惑星間にある宇宙空間で発生する有機物分子の合成に関係する主要な化学的経路なのです」と、研究チームの代表者であるレンセラー研究所のダグラス・ウィテット博士は述べる。


もし、科学者たちが、宇宙でメタノールが豊富に生産されている場所を特定することができるのなら、「生命が形作られるために有機物の合成がどのようにおこなわれているか」ということと、そして、「それは(宇宙の中の)どこで行われているか」ということがわかることになる可能性に繋がる。


言い方を変えると、メタノールが生命につながる化学を示してくれる可能性があるということにもなるかもしれない。



彗星の中のメタノール濃度

科学者たちは、地球上からパワフルな宇宙望遠鏡を使って、新しい星を作り出す原因となる雲の中にある一酸化炭素などの単純な分子の全体の濃度を観察した。

より複雑な有機分子を作り出すためには、化学プロセスに水素が入る必要がある。ウィテット博士によると、この複雑な化学作用が起こる最高のシチュエーションは、宇宙の中にある小さな塵(チリ)の粒子の表面だという。

星間にあるチリやダストの表面の一酸化炭素は、水素によって、低温でメタノール( CH3OH )を作り出す化学反応を起こす。

そして、生命を形作るための、より複雑な有機物が合成されるための重要な手段としてメタノールが用いられると考えられる。


メタノールが宇宙空間にあることは、科学者たちは長く知っていた。しかし、メタノールが生産される場所などについて、今まで詳細がわからなかった。

ウィテット博士たちのチームは、メタノールが「新しく作られた星の周囲に非常に豊富にある」ことを見つけた。

しかし、すべての若い星の周囲にメタノールがあるわけではない。
小数の新しい星の周囲だけにメタノールが確認された。

特定の惑星の周囲で、メタノールが高い濃度で存在しており、これが惑星の生命を発生させるためのプロセスとして始動した可能性も考えられる。


次に、科学者たちは、私たちの太陽系でのメタノールの生産の状況を測定するために、彗星の測定によって、メタノール濃度を比較した。

その結果、太陽系のメタノール濃度も他の宇宙空間と大差はなく、特に高い濃度だったわけではなかった。しかし、科学者たちは、彗星の中にメタノールが集中して存在していることを発見したのだ。


ウィテット博士は「彗星はまさにタイムカプセルです。太陽系が作られた時から変わらない材料を彗星の中に持っているのです」と言った。



ウィテット博士はさらにこう述べた。

「私たちの太陽系が特別だったというわけではないようです。つまり、太陽系がもともと大量のメタノールを持っていたというわけでない。しかし、私たち(地球上の生命という意味)は、今ここにこのように存在しています」。






(訳者注)

上の中の、


> 彗星の中にメタノールが集中して存在していることを発見した。


のくだりは、彗星ファンの私としてはぞくぞくきます。

彗星が地球(および生命の存在するすべての星)に運んでいるメインの物質は一体何なのか。
微生物なのか、アミノ酸なのか、メタノールなのか。

いずれにしても、どのようにこの宇宙の生命が惑星に配置されて、「進化」していったかが、少しずつ明らかになってくる時代なのかもしれません。

--
[パンスペルミア]の関連記事:

国立天文台が地球上の生命の素材となるアミノ酸が宇宙から飛来した証拠を発見
2010年04月07日

NASA のバイキング2号の写真再分析で「火星の生命存在が証明された」という米国報道
2012年04月14日

宇宙塵自身が生命であることに言及した 100年前のノーベル賞学者の実験
2011年05月07日