・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(1)
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(2) 鎖国と富士山大噴火を生み出した前回マウンダー極小期
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(3) 強い太陽活動は 1800年代に終わっていた可能性
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(4) 太陽活動極小期は何をもたらすのか?
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(5) 地球の天候への太陽の影響
米国のサイト アースファイルズ に、 NASA のマーシャル宇宙飛行センターに所属する太陽物理学者のデイビッド・ハザウェイという人のインタビューが掲載されていました。
その要旨は、
・サイクル24の太陽活動は過去100年で最も弱く、今後、太陽活動の極小期に入る可能性が高い
というものでした。
それをご紹介したいと思います。
長い論文とインタビューということもあり、また、小さな氷河期(あるいは極小期)に入るということ自体、それなりに私たちの実際の生活などで準備や変化への対応が求められる部分もあるように思いますので、丁寧に取り扱いたいために何回かにわけて書きます。
ちなみに、ハザウェイさんによると、どうやらこのことは、米国やグローバルな科学界の認識としては、少なくとも数十年前から予測できていたようです。なので、今になって出てきたという問題ではないようですが、具体的な時期や、どのように気候が変化していくかはまだわからない部分が大きいと思われます。まあ実際、日本なんかも毎日暑くて、氷河期の実感は今イチですしね。
なお、太陽には現在、黒点 1339という2005年以来、最も巨大な黒点群が地球面に向いてきています。これは地球から肉眼でも見えるほど巨大な黒点群です。
NOAA では高いフレア予測(Mクラス以上で70パーセント)を出していますが、そのあたりはどのようになるのかよくわかりません。現時点では、この黒点 1339が発生させた太陽フレアは M3クラスのものまでです。
▲ 11月1日から今日11月7日までの太陽フレア。4日前に小さなXフレアが発生していますが、地球に影響はほとんどなかったようです。
太陽活動の極小期とは
ちなみに、太陽活動の極小期とは、長期間にわたって太陽に黒点などが出ず、太陽活動が弱まることを言います。最近では、370年くらい前から 70年間近く続いたマウンダー極小期という期間があります。「マウンダー」とは人の名前で、他の意味はありません。
Wikpedia から抜粋します。
マウンダー極小期とはおおよそ 1645年から 1715年の間の、太陽黒点数が著しく減少した期間の名称。(中略)
マウンダー極小期は中世における小氷期中頃の寒冷期の遠因と目され、この時期のヨーロッパ、北米大陸、その他の温帯地域において冬は著しい酷寒に震え、暦の上では夏至であっても夏らしさが訪れない年が続いた。
という期間で、 Wikipedia には、他に、
マウンダー極小期における太陽活動の低下は、地球への宇宙線輻射量に影響を及ぼした。
というくだりや、
ある論文によれば、マウンダー極小期の真最中である1666年から1700年に掛けては太陽の自転が遅くなっていると指摘。
などがあります。
まあしかし、世界の他の国でも、あるいは日本などでも(マウンダー極小期の時の日本は江戸時代)、飢饉や不作はありながらも、滅亡せずに文明は存続しています。
地球の気温は10万年程度の周期で規則正しく上げ下げを繰り返している
私たちは地球に普通に生きているわけで、つまり、「地球の法則」から外れて生きるというわけにはいきません。
「氷河期が来る」なんて話は何となく大変そうなのですが、今でなくとも、来るものは来るわけで、氷河期という言い方ではなくとも、上に書いた太陽黒点がほとんど出ない数十年間が続く「極小期」というのは、Wikipedia によれば、
> 過去8000年間に18の極小期があり
となっていて、特別なものではないことがわかります。
また、もっと大きな時間のサイクルで考えれば、地球の気温が10万年くらいのサイクルで大きく上下していることがわかっています。
下の図は、こちらの資料集にある「南極での気温の変化」を現したグラフです。
これを見ると、現在の地球の気温が、1万年少し前あたりから急激に上がっていることがわかります。そして、それ以前を見ても、同じように周期的に気温が上がる時期があり、そして、「上がると次は下がる」という繰り返しになっています。
ただ、見てみると、そのグラフは、気温の上昇は急激ですが、下り方はゆっくりとしていて、「数千年かけて平均気温が2、3度下がる」というもののようです。
もちろん、平均気温が2、3度変われば大変なことなのですが、しかし、たとえば今年とか昨年の気候に対して感じること。
実際の平均気温はそんなに変化していないとしても、
「なんだか異常気象だなあ」
と感じるのではないでしょうか。
多分・・・まあ・・・なんとなくですが、要するにこんな季節の感覚がこれから何千年も続いていくような気もするし・・・まあ、そうではないかもしれないですが、いずれにしても、極小期とか小氷期といっても、寿命がせいぜい数十年の人間個人にとっては、その劇的な変化を感じ取れるようなものかどうかは不明です。食べ物とかは少なくなりそうですが。
そんなわけで、NASA の人が言うようにこれから太陽活動が小さくなっていくのかどうかは今はわからないですが、仮にそうだとしても、「突然、劇的に何かが変わるというものでもないかもしれない」という感じはします。
何しろ、ご存じの通り、すでに気候も天候も自然災害も十分に異常です。
今は私たち人類が「異常慣れ」していく期間だと最近は感じます。
ここから翻訳記事です。
今回は、インタビュー記事の概要を翻訳しました。
Will Solar Cycle 24 Maximum Be Weakest in 100 Years and Go Into Grand Minimum without Sunspots?
Earthfiles 2011.10.31
太陽活動「サイクル24」は過去 100年で最も弱い太陽活動なのか? そして、それは太陽活動の極小期へと布石へとなるのか
2011年10月の第三週、科学者たちは、アメリカ・ニューメキシコ州にあるサンスポットに集まった。ニューメキシコ州サンスポットは、米国の国立太陽観測所「アパッチ・ポイント天文台」がある場所として知られている。
▲ ニューメキシコ州サンスポットにあるアパッチ・ポイント天文台
今回の会合の目的は「今、太陽に何が起きているのか」に関してのワークショップを太陽物理学者たちで行うことだ。
現在の太陽活動であるサイクル24では、現在の期間の前に約3年間、太陽黒点のない状態が続いた。
多くの太陽学者たちは、これらの太陽の動きに対して、ずっと疑問を感じていた。
「何かが違う」。
多くの専門家がそのように思っていたが、今回の会合ではそれらの異変と、そして、これが、何十年もの間、太陽黒点の出ない期間のいわゆる「極小期」というものへの段階的に突入していくのかどうかについての議論を行う。
ニューメキシコ会議の1ヶ月前には、皮肉にも、太陽表面では、約 10万キロの長さにまで伸びた磁気構造による巨大なXフレアが発生しており、太陽活動は活発になってきているようにも見える。その際の、太陽黒点の中心部の黒いコアの面積は地球よりも大きかった。
▲ 2011年9月24日にXフレアを発生させた黒点群 1302。
太陽黒点は強い磁場となっている。
その磁場は太陽の内部からの熱の表面への流れをさまたげる。
2011年まで、太陽にはほぼ3年間の間、黒点がない状態が続いたが、この時期には、科学界ではこの状態に関して大きな論争が起こっていた。
その最大の論争の論点は、
「サイクル24はこの100年間で最も弱い太陽活動なのだろうか」
という点だ。
そして、この状態はは次の太陽活動であるサイクル25から太陽活動の極小期の始まりとなることを示唆しているのだろうかと。
今回のニューメキシコでの会議に参加した中のひとりに、 NASA のマーシャル宇宙飛行センターの太陽物理学者、デイビッド・ハザウェイ博士がいる。
▲ デイビッド・ハザウェイ博士。
ハザウェイ博士は 2013年に最大期を迎える太陽活動サイクル24は、この100年間で最も弱い太陽活動になるだろうと推測している。
そして、サイクル25から太陽活動が極小期に入るかもしれないという予測を支持するデータが増加していると博士は言う。
そのハザウェイ博士にインタビューを試みた。
今回はここまでです。
次回から、少しずつインタビューを掲載します。