・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(1)
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(2) 鎖国と富士山大噴火を生み出した前回マウンダー極小期
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(3) 強い太陽活動は 1800年代に終わっていた可能性
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(4) 太陽活動極小期は何をもたらすのか?
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来(5) 地球の天候への太陽の影響
「今後、太陽の活動が長期間に渡り、縮小していくかもしれない」という考えを持つ NASA の科学者のインタビューの4回目です。
その前に、同じ「太陽関係」の話題で、スペースウェザーに興味深いニュースが出ていましたのでご紹介しようかと思います。
それは「太陽では、地球方向以外の面では非常に激しい活動が続いている」というものです。それが「その活動領域が地球の方向に向くと、それらの活動が起こらなくなる」というのが何ヶ月も続いています。
そのことが書かれていたスペースウェザーの記事より。
REMARKABLE SOLAR ACTIVITY
Space Weather 2011.11.14
驚くような太陽活動の姿
この数日、強い太陽フレアがまったく発生しない状態が続いている。
しかし、太陽活動がないというわけではない。いくつかの印象的な太陽活動が太陽で進行している。そのひとつが、下の写真の「巨大なプラズマの壁」だ。太陽の南東側で発生している。11月11日に撮影された。
今回のものは、今まで目撃された同様の現象の中では最大のものだろうと、世界中の太陽学者たちが驚いている。しかし、これより大きなものが発生する可能性もある。
太陽の表面上の磁気フィラメントが、ときに長さ数十万キロメートル以上になることがある。このフィラメントは「ハイダーフレア」と呼ばれる巨大な太陽爆発現象を誘させることがある。
活動領域が地球に向いている時にハイダーフレアが発生することがないとは誰にも言えない。
上の記事にある「ハイダーフレア」というのは、普通の太陽フレアは「黒点から発生する」のですが、そうではなく、磁気フィラメントという「太陽の表面を這っているようなヒモのように見えるもの(動くので龍やヘビのようにも見える)」が結合して爆発する広範囲のフレアのことです。上の記事の写真にもあります。
全体像としては、下の矢印のような部分となります。
この磁気フィラメントの長さは 100万キロメートルにも及ぶこともあります。
ハイダーフレアに関しては、昨年の In Deep で何度か記事にしましたので、リンクしておきます。
昨日の太陽の動きを含めて、現在の太陽活動を見ると、現時点では「太陽活動が弱まっている」とはいえないように見えます。
ところが、今日ご紹介するインタビューに出てくる米国太陽観測所の科学者が集計したデータを見ると、「1992年から一貫して太陽活動が弱くなっている」ことが明らかとなるのです。
うーむ・・・どっちにどうなるんだか。
では、ここから NASA の太陽物理学者デイビッド・ハザウェイ博士のインタビューの続きです。
Will Solar Cycle 24 Maximum Be Weakest in 100 Years and Go Into Grand Minimum without Sunspots?
Earthfiles 2011.10.31
太陽活動「サイクル24」は過去 100年で最も弱い太陽活動なのか? そして、それは太陽活動の極小期へと布石へとなるのか?
▲ NASA マーシャル宇宙飛行センターの太陽物理学者、デイビッド・ハザウェイ博士。
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もし、太陽が活動極小期に入った場合、何が起きるのか?
[記者の質問] 太陽活動が今のサイクルの中で段階的に弱くなっていくとした場合、どんなことが起こると考えられますか?
今回の太陽に関しての会議で、太陽活動が弱まっている可能性があると発言したのは、アメリカ国立太陽観測所の科学者であるビル・リヴィングストン博士とマット・ベン博士でした。
彼らが集計したデータによると、現在のサイクル24の以前の活動周期である「サイクル 23」の終わり頃には、太陽黒点の磁場の数値が弱くなっていたようです。
▲ ビル・リヴィングストン博士とマット・ベン博士が集計した1992年から2009年までの太陽磁場の推移。1992年以来、減少していることがわかる。
つまり、現在の傾向はサイクル23の時から続いているようにも感じられますが、このあたりは、まだ結論づけるには研究に多くの時間を要します。
ただ、実際に、現在のサイクル24の太陽活動は、前回サイクル23の時の太陽活動と比較しても著しく小さくなっています。最近の太陽活動のピークは 2000年でしたが、それからは以前のサイクルより小さくなり続けています。そして、サイクル23もそれ以前のサイクル(サイクル22)より太陽活動が弱いのです。
私たち太陽学者はその傾向を見ていて、「このサイクル24が今後数十年で最後に黒点を見られるサイクルになるのだろうか」と考えたりすることもあります。
しかし、まだサイクル24の活動最大期は来ていませんので、その活動の最大時点を見てみないと何とも言えません。サイクル24は、 2013年の中頃にその活動が最大に達すると見られています。
それによって次の太陽活動であるサイクル25がどのようになるかを知りたいと思っています。
[記者の質問] もし現在の太陽活動のサイクル以降、太陽に黒点が出ないとすると何が起きると思われますか?
その場合、良い面と悪い面があります。
良い面に関しては、太陽フレアの発生が減少することで、衛星や地球上の通信などに対しての影響が少なくなり、太陽フレアによる通信障害等が減ると思われます。
それと、地球温暖化という議論がありましたが、もし、太陽活動が極小期に入った場合、その議論に対しての答えが出る可能性があります。つまり、地球の気温と太陽活動の関係がはっきりする可能性があるということです。
ここまでです。この翻訳は次回でおわりとなりそうですが、インタビューの最後では、質問者が「氷河期について」などを質問しています。
関係ないですが、ご紹介したいキレイめの写真があったので貼っておきます。
ネブラスカの「虹色の空」
やはり太陽の話題で、スペースウェザーの11月12日の記事にこんな写真が出ていました。
米国ネブラスカ州で 11月10日に撮影された空の様子だそうです。
日本でいえば、いわゆる「彩雲」というようなものにあたるようですが、オマハという町の空が広範囲でこんな感じにレインボーの空となったのだそう。実際に見るとキレイだっただろうなあと思います。
アメリカは先月も、全土の多くの空がオーロラで真っ赤に染まるということもあったり、太陽絡みで空の色がどんどん変わっているようです。
▲ 10月24日の「アメリカの赤い夜」。これはミズーリ州。
「地上で目に見える変化を伴いながら」、太陽活動も実際に変化していっているということなのかもしれないです。
そういえば、このシリーズの最初の記事の冒頭でご紹介した、近年最大の太陽黒点群 1339 。この黒点群からの巨大な太陽フレア発生の懸念が NOAA などから出されていましたが、黒点1339はこの1週間、ほぼ何の活動もせずに太陽の裏側に姿を消していこうとしています。
今まで通りの太陽への観測予測では対処しにくくなっているようです。
あるいは「起きたことを見るしかない」のかもしれません。