2011年11月22日



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1918年の「死のインフルエンザ」へのケロッグ博士の対処法



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▲ 1918年10月25日付けの読売新聞。「毎日700名以上の死亡者」という見出しがみえます。

上の読売新聞の記事の冒頭です。

学校を襲い、寄宿舎を襲い工場を襲い、家庭を襲い、今や東京市中を始め各府県にわたりて大猖獗を極めつつある悪性感冒は単に日本のみならず、実に世界的に蔓延しつつある大々的流行病にして、その病勢の猛烈なる実にいまだかつて見ざるところなり試みに、外務省海軍省内務省等集まれる海外の状況を見るにその惨禍は想いはからずに過ぐるものあり。





(訳者注) タイトルの「死のインフルエンザ」というのは、当時流行した強毒性の鳥インフルエンザのことで「スペイン風邪」と呼ばれるものです。

そして、これが歴史上、人類が遭遇した最初のインフルエンザのパンデミックでした。


第一次大戦とかぶっていたこともあり、正確な死亡者数は今でもわかっていませんが、最大の見積もりでは当時の世界人口 12億人のうち 6億人が感染し、 6000万人が死亡した可能性があります。世界の人々のうちの「2人にひとりが感染」し、「 10人にひとりが亡くなった」というパンデミックでした。


世界の中でも、比較的正確に死亡数の記録が国家単位で残されている国には米国と日本がありますが、米国での死者数は 85万人。日本では、当時の日本の人口の3分の1の 2000万人が感染し、最大で 48万人が亡くなったとされています。

思えば、数年前から発生が懸念されている鳥インフルエンザのパンデミックというのは、この「スペイン風邪」の再来を恐れているということになります。

このスペイン風邪の時の「死者の年代の傾向」は私は昔から大変に興味があり、以前のブログなどで何度かふれていたことがあって、それは、

「子どもや弱った老人などより、健康そのもので体力が充実している若者から死んでいった」

ということが挙げられます。

最も健康な人が最初に息絶えていくという病気。
その点がそれまでの病気(あるいは以降の病気)と違う点のようにも思います。

その理由は今でもわかっていませんが、免疫過剰の一種ではないか(「サイトカイン」という物質が大量に(嵐のように)分泌されることから「サイトカイン・ストーム」と呼ばれることもあります)という説もあります。

いずれにしても、男女ともに、二十代から三十代が多く犠牲となりました。

なので、スペイン風邪自体は「世界で10人にひとりが亡くなった」ということであるとしても、年齢別では「二十代と三十代の数人にひとりは亡くなっていた」ということも言えるものだと思われます。そう考えると、「ものすごいもの」だったと、やはり思います。


いずれにしても、世界中で夥しい人々が亡くなったのですが、米国の診療所で「スペイン風邪による死者をひとりも出さなかった療養所」のことが後年話題となりました。それは、コーンフレークで有名な、ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ博士(ケロッグ博士)が米国ミシガン州に開いていた富裕層向けの療養所でした。


私がその療養所の存在を知ったのは、20年くらい前の映画「ケロッグ博士」(原題: The Road to Wellville)でしたが、アンソニー・ホプキンス主演で、監督は「ミッドナイト・エクスプレス」や「ミシシッピ・バーニング」を撮ったバリバリの社会派演出家であるアラン・パーカーという豪華な組み合わせ・・・なのに、どういうわけだか、単なるカルト映画となってしまい、それだけに当時も今も私の好きな一本となっていて、元気がない時や、病気の時に見たりしています。


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▲ 映画『ケロッグ博士』では、ケロッグ博士の治療院にあった「治療設備」を忠実に再現しており、それはどれも奇妙で刺激的なものでした。


今、また寝込んだりしていて、ケロッグ博士のことを思い出している中で、3年くらい前にクレアで「スペイン風邪のときのケロッグ博士の治療法」をご紹介したことがあったなあと思い出しました。

私はとにかく感染症に弱くて、もし鳥インフルエンザのパンデミックが発生したら、真っ先に感染してしまうんだろうなあ、と昔から思っていました。

その頃調べている中で、1918年のスペイン風邪の記録を見る限り、「積極的な投薬治療がむしろ悪い方向に行く場合も多い」ということを知ります。そこで知ったのがケロッグ博士の治療法でした。治療法というか「対処法」というほうが正しそうです。


今回、そのことが書かれてある 2009年の海外記事をご紹介します。

ちなみに、ケロッグ博士のスペイン風邪の治療法の基本コンセプトは、

・汗をたくさん出して、うんことおしっこをたくさん出す


というだけです(苦笑)。

体の中の悪いものを次から次へと出していくという方法のようです。

なので、これが今後のパンデミック治療に役立つという意味ではないですが、かつてこういう方法があって、「その時は」ですが、誰も死ななかったという事実があったということです。

1918年だけではなく、今も今後も基本的には同じようなインフルエンザのパンデミックが発生した場合、それには「予防は無意味」で、そして、有効な治療法も少ないことは歴史が語っています。

タミフルやリレンザなどのインフルエンザ治療薬の有効性に関しての考え方は人それぞれで、否定も肯定もないですが、それらに頼ること自体も自己責任の世界だとは思います。




1918 Influenza: A Treatment That Worked
Natural News 2009.09.09

1918年のスペイン風邪で有効だった治療法

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・ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ(1852-1943)。


1918年に世界中で流行し、世界で数千万人の死者を出したインフルエンザ(スペイン風邪)について、自然療法の医学博士であるエリーノラ・マクビーンさんが、興味深い話をした。

彼女はこう言う。

「当時、薬での治療に頼った病院では、患者の 33パーセントが治療に失敗したのですけれど、ミシガン州にあるケロッグ博士のバトルクリーク診療所などの投薬に頼らない非医療機関としての診療所の治療率はとても高かったのです」。

特に、ケロッグ博士の診療所でのスペイン風邪の治癒率は「 100パーセント」に近かった。

それはどのようなものだったのだろう。



医薬品を使わない治療


ケロッグ博士が 1918年に編纂した医療報告文書に「スペイン風邪の治療」と題された記事がある。ここにケロッグ博士の奨励するインフルエンザへの対処法が書かれてある。


ひとつめは、患者は1日に2回、水での浣腸をおこなって腸内を洗浄する。この際には、1〜2リットルの温水を使用し、腸内の汚物が完全に取り除かれるまで、丁寧に腸内を洗浄する。

この温水による浣腸は、インフルエンザが発病してから回復するまで続けられた。

ふたつめには、毎日3リットルから4リットルの水か、または果実ジュースを飲むこと。これにより、腎臓(尿)と皮膚(汗)を通して、患者の排出を促進させる。

3〜4リットルというのは大量に思われるかもしれないが、起きている間の 30分に一度、グラスに一杯の水かジュースを飲むことで達成できる量だ。また、食事の米やオートミールに糠などの繊維質を混ぜて、腸の活動を促し、体内の有害物の排出を促進させた。

次に、短時間の温水の入浴をおこない、その後、「暖かい毛布」で全身を包み(温毛布パック)、熱と体の痛みを緩和させた。

温毛布パックは、毛布を熱いお湯で濡らすが、その温度は患者が我慢できるギリギリの温度まで上げる。この温毛布で 12分から 15分間、全身を包み、さらに毛布の外側からは羊毛の毛布で覆う。

この際、頭は温めないようにする。

脈が速い場合は、氷嚢を心臓の上に置く。熱が非常に高い場合は、温毛布パックの時間を4〜5分に短縮する。

頭痛がある場合には、冷湿布を使用する。
熱が高い場合は、短めの温毛布パックの後にすぐ冷湿布を使用して熱を下げた。


なお、ケロッグ博士は、インフルエンザを発病している間の、砂糖、加工食品、ジャンクフードを食べることを警告している。

少なくとも、インフルエンザにかかった場合、熱が下がった後も4〜5日は安静にして、また、その間も砂糖、加工食品、ジャンクフードを口にすることは避けたほうがいい。


ケロッグ博士は以上の方法を組み合わせることにより、1918年のスペイン風邪での患者の死者数をほぼゼロにすることに成功した。






(訳者注) ここまでです。

ところで、文中にインフルエンザに発病している時の「砂糖、加工食品、ジャンクフードはよくない」ということが書かれてありますが、これはケロッグ博士がかなり強く言っていたことなので、それなりの根拠があるようです。

そういえば、大紀元のコラム記事「頭痛の漢方治療」の中にこのようなくだりがありました。

頭痛が治らなくて、漢方医のとこに来た若い女性のエピソードで、どのような漢方治療をしても彼女は良くなりません。

後半その理由がわかる下りがでてきます。

ある日、彼女の舌苔が粘ついていることに気づき、甘い物を食べる嗜好がないかと聞いたところ、彼女は「はい」と頷きました。

どのくらい甘い物を食べるのかと聞くと、彼女は2、3日で一箱の飴を「完食」し、一日にチョコレートを数枚と毎日のようにアイスクリームを食べているという驚きの情報を提供してくれました。

これでやっと、彼女の頭痛の「導火線」を発見できたのです。

漢方医学から見ると、糖分は湿邪や痰を生じやすいものです。痰と湿邪が経絡を塞ぎ、陽気の流れが抑えられ、怪我したことも重なって、彼女の頭痛が止まなかったのです。

甘い物が頭痛の誘因だと分かった彼女は、甘い物と炭水化物の摂取を減らしました。すると、彼女の頭痛は直ちに軽くなりました。



とのこと。

これが本当のことかどうかはわからないですが、少なくとも健康への対処において、「塩はよくて、砂糖は良くない」ということは古来からいろいろと言われていますので、体調が悪い時には、甘いものやジャンクフードを控えるのも悪くはないのかもしれません

そういう意味ではケロッグ博士の考案したコーンフレークも病気の時にはヤメたほうがよさそうです(苦笑)。


というわけで、何だか健康ブログじみてしまいましたが、体調の悪い時だから思い出すケロッグ博士の存在であります。

下の場面は映画『ケロッグ博士』からですが、ケロッグ博士の療法として有名な「健康は笑いから」というコンセプトを実際におこなっている風景です。このあと、やっている人たちは、「自分たちのやっていることのバカバカしさにおかしくなって」そのうち本当に笑い出します。




▲ このハリウッド大作が、むしろカルト映画となってしまったのは「事実に忠実に作りすぎた真面目な映画」だったからかもしれません。ケロッグ博士という存在自体がカルトなので、それをキチンと描くとこのようになってしまう。楽しいですが、一般受けは難しい。


ちなみに、ケロッグ博士の療養所では、男女ともに、

・笑いとセックス

が、体と心の健康を保つ大きな要因だとされていました。

まあ、確かに変人です。
ケロッグ博士という人は。

それでも、「健康」というテーマには真剣な人だったようです。