核廃棄物の燃料集合体の中で成長を続ける生命のようなもの
(訳者注) いわゆる「極限環境微生物」(過酷な環境の中で生きている微生物)の話題といえそうな感じなんですが、「使用済み核燃料の中で成長する生命」という響きがなかなかショッキングですので記事にしました。
核施設の中で生き続ける「放射性耐性の生物」の記事としては、ずいぶん昔ですが、中国の核施設で見つかった「広島型の 3000倍の放射能濃度の中で生きられる微生物」のニュースがあります。
また、極限環境微生物という概念自体がパンスペルミア説とか、あるいは宇宙の生命という概念と直結するものなので、過去にずいぶんとご紹介しました。
個人的に好きな環境微生物関係の記事をリンクしておきます。
地球の様々な生物
・宇宙空間で553日生きのびた細菌 (2010年08月26日)
・1億年の冬眠サイクルをもつとされるバクテリア (2010年09月21日)
・地中3.6キロから発見された「悪魔の虫」 (2011年06月03日)
ここから今回の記事です。
ちなみに、記事にある写真(これはイタリアの過去の核保留地の施設の写真)でいうと、矢印のあたりに燃料集合体が収められているラックがあるようです。
そして、そこで「成長」している様子が水の上からもわかるということだと思われます。
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Mysterious "white web" found growing on nuclear waste
io9 2011.12.16
核廃棄物の中で、謎の「クモの巣状に成長する白い物質」が発見される
▲ 写真は、形式が類似したイタリアのカオルソ原子力発電所の核貯蔵プール。この施設は1990年に廃棄された。
私たちが動揺するほど、一種魅力的なものが発見されている。
米国サウスカロライナ州の核特別保留地のサバンナ川領域にある米国エネルギー省の科学者たちは、使用済み核燃料の燃料集合体(原子炉で使用される核燃料の最少単位)のラックの中で、クモの巣状に「成長」している奇妙なものを発見した。
科学者たちによると、もともとあるものではなく、自分たち(核施設)のものではないという。
防衛核施設安全委員会(DNFSB)による報告によると、成長するそれらは、まだその特徴が確定されたわけではないが、事実上、この「クモの巣状に成長し続ける」ものが生物的な特徴を持っている可能性があるとしている。
最初に報じたのは、米国の日刊紙オーガスタ・クロニクル紙で、記事では「白いストリングス状のもの」が、使用済み核燃料の燃料集合体の中手数千発見されているのだという。これらの使用済み核燃料は、地下深い貯蔵地に埋められている。
サンプルから、その特徴を決定づけるのには、その「物」はあまりにも小さく、さらなる評価への検討が必要だと安全委員会のレポートは主張している。
この「成長」がクモの巣と似ているという事実と、生物学的特徴を持つかもしれないということ以上のことは現在はわからない。
しかし、極限環境微生物の未知の種かもしれないという可能性はあり得る。
サバンナ川の貯留地では、深さ6メートルから9メートル程度の貯蔵プールに核廃棄物を保管している。
それは、労働者たちを放射線から保護するのに十分な深さだが、伝えられるところでは、その深さでも水中の燃料集合体での「成長」を見ることができるという。
▲ 放射線耐性生物として知られるデイノコッカス・ラディオデュランス (Deinococcus radiodurans)。「放射線に耐える奇妙な果実」という意味。
自然界には、放射背に対しての抵抗力を持っている生物は確かに存在する。
たとえば、デイノコッカス・ラディオデュランスという極限環境微生物は、放射線耐性生物としては最も広く知られており、5,000グレイ(グレイは放射線被ばく量の単位)を浴びても死滅せず、15,000グレイでも37%は生き残る。
この謎の成長を見せるものに関して今後の研究が待たれる。
(訳者注) 上にある「5,000グレイを浴びても死滅せず、15,000グレイでも37%は生き残る」という中の「5000」とか「15000」のスゴさの比較としては、上と同じ単位で、
「人間は10グレイで死亡」
します。
また、5グレイを浴びると1時間しか生存できないそう。
人間よりはるかに強靱な大腸菌でさえ、
「60グレイの放射線で死滅」
します。なので、「15,000グレイでも37%は生き残る」というデイノコッカス・ラディオデュランスというのは、とんでもない強靱な生物なのです。
1年前の In Deep
2010年12月20日の記事
・欧州の寒さは「まだまだ終わらない」という懸念