2012年02月10日



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1178年に「二つに割れて炎を噴き出した月」の記録(2)



前回記事:1178年に「二つに割れて炎を噴き出した月」の記録(1)
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ジョルダーノ・ブルーノ・クレーターが示した「月のショッキングな真実」


(訳者注) 前回記事をお読みでない場合は、かなり続いた話ですので、前回記事をお読みいただけると嬉しいです。

なお、今回の翻訳記事にある「1178年の出来事」だけを書いておきます。


カンタベリー修道院の僧侶ガーベイス「年代記」より

この年(1178年)、聖ジョン祭の前の日曜日の日没後、月にむかって坐っていた5人以上の人が素晴らしい光景を目撃した。(中略)突然、月の弧の上半分が二つに分かれた。

分裂した中心から、たいまつのような炎が舞い上がり、火焔と火の粉とスパークが遠くまで飛び散った。

その間、月はその体をもだえさせ、ふるわせた。その後は月は元の状態に戻った。しかしこの現象は12回以上も繰り返して起こり、そしてその後平常に戻った。




それでは、翻訳はここからです。

後半の科学的解説が、私の科学的理解の不足のせいでどうもうまく訳せませんでしたが、最近の NASA の月の周回衛星からの詳細な画像や、日本の「かぐや」のデータにより、ジョルダーノ・ブルーノ・クレーターの年齢は少なくとも 100万歳というような数百万年規模の歴史を持っていて、 1178年の月での出来事とは関係がないということのようです。




Lunar Crater Reveals Many Secrets, Including a Not-So-Young Age
Universe Today 2012.02.09

月のクレーターが多くの謎を明らかにする


月面は様々な形と大きさのクレーターで覆われており、それはいろいろな状態で維持されている。科学者たちはこの 50年以上の間、これらのクレーターを研究してきたが、今でもなおクレーターに関しては理解できていない多くのことがある。

クレーターは、惑星の表面の年齢を測定するために利用されるため、その研究はとても重要なものだ。

現在は NASA の「ルナー・リコネサンス・オービター」( LROC / 2009年から運用されている米国の月を周回する無人衛星)に搭載されているカメラにより、かつてない高解像度の月の画像を見ることができるようになった。

そのような詳細な月の調査の中で、今まで非常に新しいと考えられていた、「あるクレーター」の形成プロセスについての数多くの秘密が明らかとなってきており、そのクレーターは当初考えられていたほど若いものではないことが判明した。

問題のクレーターは、月の裏側にある直径 22キロメートルのクレーターで、「ジョルダーノ・ブルーノ・クレーター」と名付けられている。



GiordanoBruno-C.jpg

▲ルナー・リコネサンス・オービターが撮影したジョルダーノ・ブルーノ・クレーター。


月のクレーターには過去の偉大な科学者の名前がつけられるが、このジョルダーノ・ブルーノという人物は、16世紀のイタリアの哲学者であり科学者で、1600年に教会によって火刑に処されている。

このクレーターは 1959年に、当時のソ連の「ルナ3号ミッション」によって写真が撮影されるまで、人間の目で見られることはなかったが、非常にはっきりとした光条(月面の線のこと)を持ち範囲の広いこのクレーターの重要性がすぐに認識された。

この非常に明るい光条を持つと共に、その斜面も非常に急で、観察された上では、当時このクレーターが「若いものである」とする説に多くの科学者が賛同した。

そして、このクレーターが作られたのは 1178年に中世の修道士によって記録された「月での出来事」と関係がある可能性さえ一部の研究者により提案された。


その後、研究は続けられたが、ルナー・リコネサンス・オービターが打ち上げられた以降の過去2年間は、以前にも増して、このジョルダーノ・ブルーノ・クレーターは非常に詳細に研究されている。

ルナー・リコネサンス・オービターに搭載されたカメラ ( LROC ) は最高で1ピクセルにつき 50センチという驚異的な解像度を誇っており、非常に詳細な月面映像を撮影することが可能だ。

興味深いのは、クレーターの西にある衝突で溶解した渦だ(下の写真)。
この渦のような構造は、この部分が液体である間に混沌とした混合を経たことを示している。


melt-01.jpg


溶解した部分はよく見ると、溶解の混合物が変化する間に取り入れられた岩の断片であることを見ることができる。


ウクライナのハリコフ天文台の研究所のユリィ・シュクラトフ博士の研究チームが最近発表した研究結果は、この渦を新しい技術によって徹底的に調査したものだった。異なる状況で撮影された複数の画像を結合するものだ。

クレーターの中央にあるくぼみと、その周囲の溶解した高い部分を比較すると、高い部分は、より自然の状態に近いことが示された。これは、衝突での溶解物が、クレーターの壁から流れてきた溶解物に冷却を妨げられていたことを示すと考えられた。


ジョルダーノ・ブルーノ・クレーターのもうひとつの特徴としては、クレーター北側の壁近くにある急激な落ち込みだ(下の写真)。このような構造は、一般的にクレーター構造での遅い段階で形成されると考えられている。


melt-02.jpg


この落ち込みの部分とクレーターが同じ年齢でなければならないのだが、研究チームは、この落ち込みは比較的最近の出来事であることを突き止めた。そして、このような大きな変化が、ひとつのクレーターの形成の後にそれほど長く起こるとは考えられない。


今回のシュクラトフ博士の研究で最も興味をそそる結果は、このジョルダーノ・ブルーノ・クレーターの「年齢」だ。

クレーターの北の壁の上にある非常に明るい光条を持つ地滑りがクレーターの周囲で観察される。同様に、小さな明るいクレーターが、ジョルダーノ・ブルーノ・クレーターの「壁の上」で多く発見される。そして、これらの地滑りとクレーターは周囲よりとても明るい線を持つ。

月では年月を経れば経るほど、素材は暗くなる傾向がある。これを宇宙風化(大気圏外で起こる風化)と呼ぶ人もいるが、ここから考えると、ジョルダーノ・ブルーノ・クレーターの周囲のこれらは、ジョルダーノ・ブルーノ・クレーターより若いと考えられることになる。

日本の「かぐや」のデータは、これらの明るさは物質の構成要素と関係なく、「経年変化と関係がある」ことをはっきりと示した。


シュクラトフ博士の研究チームは、ジョルダーノ・ブルーノ・クレーターは、どんなに若くても 100万年は経っていると結論づけた。

かつて 1178年にできたものではないかとする説もあったが、その 1178年に月で発生したできごとがジョルダーノ・ブルーノ・クレーターを作ったわけではない。






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