2012年02月15日



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耐震設計環境のないスイスでの地震から思う「世界全体は環境の変化にどこまで耐えられるのか」という懸念



先週の週末、2月11日に、スイスで地震がありました。震源はチューリッヒ近郊で、最大でマグニチュード 4.5程度の地震でした。スイスは、地震は確かに極めて少ないとはいえ、全然ないわけではないですので、それ自体はそれほどのニュースではありません。

その地震の雰囲気については、スイス在住の日本人女性の方の「スイスの街角から」というブログに書かれていましたが、「大きな音と共にグラグラと地面が横に振動し、最初は近くで爆発事故でも発生したかと思ったのだとか・・。次の瞬間、ドーンと下から突き上げるような大きな揺れが起こり」というような地震だったそうです。

地震になれていないスイスに住む人たちには大きな地震だったようです。

しかし、今回ご紹介するのは、この地震そのものの話ではなく、「その地震で発生した被害に対しての支払いを保険会社が拒否した」というスイスのメディアの報道です。

理由は「被害レベルが想定される地震に達していなかったから」ということなんですが、しかし、チューリッヒの周辺では、この地震によって 100以上の被害報告が保険会社へ届けられているという事実がありながら、保険会社はすべて拒否しているそうです。

「うーむ・・・保険って・・・?」と思うと同時に、今回の記事を翻訳した理由として、記事の中に、スイスの地震学者の言葉として、次のようなものがあったことがありました。


「教授は、スイスの建物のほぼすべてに耐震性がないことを懸念している」



これを読んで、3年くらい前に米国のニューヨークで起きた地震の時に書いたブログ記事を思い出しました。「ニューヨークの地震 (2009年02月05日)」という記事ですが、ニューヨークというか、米国で地震の少ない多くの地域での「建物の様子」をご紹介したことがあります。

たとえば、



エンパイア・ステートビルの高さは443メートル102階ありますが、地下階は11メートルで1階だけ、基礎工事はわずか17メートルです。





とか、あるいは、その記事にコメントを下さった米国在住の方がいて、その方は、



ニューヨークの高層ビルは全く耐震構造になっていませんね。建設中のビルを見ていると、非常に早くフロアーが積み上がっていくので驚くことがあります。30階くらいのアパートでも柱は木造で、速乾性のセメントで周囲を固めただけの建物が結構あります。建設工事の最盛期には、毎日1フロアーづつ高くなっていたりするのを見ると、ビックリしますね。





とあり、とにかく「耐震設計はゼロ」の状態の地域が米国にはかなり多いようなのです。ちなみに、2008年9月の MSN産経ニュースに「ニューヨークに地震帯 想定被害額は最悪21兆7000億円」という過激な見出しが出たことがあります。

そして、この「耐震設計がない状態が多い」のは米国だけではなく、全世界で地震が少ない場所で共通していることだと思います。

すなわち、「地震はほとんど来ないのだから、耐震設計など必要ない」と。


しかし、その米国ニューヨークでも上記の「ニューヨークの地震」という記事から抜粋しますと、



記事によると、確かにこのニューヨークのあたりは大きな地震がほとんど起こらない場所ではあるようで、

> ニューヨーク地域では、マグニチュード(M)5以上の大地震は1884年以来発生していない

とのこと。

そして、「それ以前のM5以上の地震は1737年と1783年」。ニューヨーク地域で、1677年から2007年までの330年間で発生した地震は383件となっていて、これらの地震を総合的に調べると、


> M5以上の地震が同地域で発生するのは100年に1度で、M6以上は670年に1度、M7以上は3400年に1度の確率

と書かれてあります。

これはどういうことかというと・・・「起きてはいる」のです。



とあります。
しかも、100年に一度とか、670年に一度というのは、さほど小さな頻度ともいえない部分があります。

もちろんこれは米国とスイスだけの話ではありません。
その理由を少し地図から説明します。



36万回の地震データが示す「地球で地震が起きる場所」

地震のデータに関して、とても参考になる資料のひとつとして、「1963年から1998年の間に発生した世界のすべての地震」の発生ポイントをすべて記したデータがあります。

その1963年から1998年の間に世界で発生した地震の数は、なんと 36万回です。 正確には、 358,214 回分のすべての地震がドットで示されています。

下の地図です。
わかりにくいですので、今回のスイスと、そして、(地震が多すぎて)真っ黒で見えなくなっている日本の位置を示しておきました。


Quake_epicenters_1963-98.png


オリジナルの地図はこちらにあります。黒いドットが地震が発生した場所ですが、わりとハッキリと偏っていることがおわかりかと思います。黒の点がない場所は「35年間のあいだ、一度も地震が発生していない」場所なのです。

この地震の頻発帯がどういう場所かというのもハッキリしていて、下の図は、プレートが示されているもの(青い線がプレートの境界)に、上の「36万回の地震分布図」で、最も色の濃いところ(地震が多く発生しているところ)に、赤い線を私がアバウトに引いたものです。

plate-11.png


これを見ると、地震は(記録に残る上では)主に次の地点で発生することが多かったということがわかります。


・太平洋を囲んだプレートの境界上(チリから米国西海岸、アリューシャン列島を回り、日本列島、フィリピン、ニュージーランドまでのグルッとまわるライン)

・ユーラシアプレートとアフリカプレートの境界上(インドネシアからインド北部を経て、イラン、トルコからヨーロッパにまで至るライン)



などです。

地図上に代表的な都市名を載せましたが、過去に起きたいくつかの大地震を思い出していだたくと、このライン上にあったことが多いことがわかります。

もちろん例外も数多くあり、地震はどこでも起こるとはいえるとはいえ、上の地図では、「35年間の間に一度も地震が発生したことのない地域がどれだけあるか」ということに驚かれると思います。


日本は「国家の主要都市すべてが地震帯に入っている」という意味では世界でも珍しい国ですが、それだけに耐震設計の技術は常に世界でトップでした。それでも昨年の例をあげるまでもなく、地震が起きるたびに被害というのは出ます。しかし、「震度4くらいの地震で平然としている」という人間は世界には実に少ないということもまた事実です。


先週のスイスの地震では、マグニチュード 4.5の地震で多くのビルに髪の毛ほどの亀裂が 100カ所以上で発生したということですが、世界の多くの国は、スイスやアメリカと同じく、建物の耐震設計がない場所が非常に多いということがあります。


今後の自然環境がどうなるのかはわかりませんが、本当に大きな変化が地球に訪れているのだとすると、地震を含めて、どんなことが起きるかはわかりません。

今回の翻訳記事の内容自体は大したものではないですが、そこに出てきた地震学者の「憂い」というのを少し想います。


では、ここからです。
スイスの英字メディアより。




Insurance firms reject Zurich quake claims
The Local (スイス) 2012.02.14

保険会社はスイス・チューリッヒでの地震被害の主張を拒絶した

2月18日の土曜の夜にチューリッヒ周辺で発生した地震の後、保険会社に送られた被害報告の数は 100件以上に及んだ。

マグニチュード 4.2以上を記録した地震は、チューリッヒ周辺で多くの建物を揺らした。震源の深さは 30キロメートルだった。

この30キロメートルという深さでは地震による被害はほとんどないだろうと考えられたが、その後、チューリッヒにあるビルや建物からは被害の報告が 100件以上、保険会社に報告された。

チューリッヒ建造物保険社のハインツ・フリーリッヒ氏によれば、被害の多くは、ビルの壁に入ったわずかな亀裂によるものだという。そして、亀裂が見えても、それが建物の安全性を脅かすものではないとフリーリッヒ氏は言う。

そして、この保険会社では、今回の地震の規模があまりにも小さかったとして、今回の被害の主張に対しての支払いをおこなわないことを決定した。これはチューリッヒだけではなく、同じように被害報告のあったルツェルンでも同様の措置がとられる。

ウェブサイトで被害を最初に報告した、「20ミニッツ・オンライン社」の被害への支払いの要求も保険会社は拒絶した。

チューリッヒにあるスイス連邦工科大学の地震学者であるフロリアン・ハスリンガー教授によると、この程度の規模の地震の場合は通常だと一度だけの発生で、余震等が起こることは少ないという。それでも、ハスリンガー教授は余震の可能性を完全に否定したわけではない。

教授は、スイスの建物のほぼすべてに耐震性がないことを懸念しており、今後、仮にどんな小さな地震でも、スイスで起きた場合についての結果を憂慮していると、20ミニッツ・オンラインは伝えた。