2012年02月26日



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米国イエローストーンに鳴り響く「謎の音楽」の正体は



(訳者注) 米国のイエローストーン国立公園は、地球の歴史でも最大級の噴火を起こしていた歴史を持つイエローストーン火山を持つことで有名ですが、大自然が多く残る「観光地」として重要な場所でもあるようです。

そのイエローストーン国立公園を観光面から紹介する代表的なサイトに「イエローストーン・ゲート」というものがあります。

そのサイトの昨日のトップニュースは不思議な見出しでした。

「多くの人々から報告される『湖の音の謎』の理由はいまだにわからない」

というものでした。

それをご紹介いたします。
これは最近のことではなく、「イエローストーンの歴史」の話のひとつのような感じです。


最近の「世界で鳴り響く音」に関しては、あまりにも類例の報道を読み過ぎたせいか、次第に「不思議慣れ」してきていまして、不思議ではなく、「これが通常なのでは」と思うようになってきてしまいました(苦笑)。

地球のいたるところから音や音楽が鳴っているのが「正常」だと考えると、世の中も案外楽しいものだと気づきます。

ところで、イエローストーン国立公園というのは、アイダホ州、モンタナ州、及びワイオミング州にわたって広がる広大な国立公園で、場所は下のあたりです。

yellowstone-2012.jpg


ちなみに、最近のイエローストーンはそんなに穏やかな状態でもないようで、Wikipedia には、


現在 マグマが噴出している場所はないが、地震が活発化しており、この10年間で公園全体が10cm以上隆起し、池が干上がったり、噴気が活発化するなど危険な兆候が観察され、新たに立ち入り禁止区域を設置したり、観測機器を増設したりしている。

イギリスの科学者によるシミュレーションでは、もし破局噴火が起きた場合、3〜4日内に大量の火山灰がヨーロッパ大陸に着き、米国の75%の土地の環境が変わり、火山から半径1000km以内に住む90%の人が火山灰で窒息死し、地球の年平均気温は10度下がり、その寒冷気候は6年から10年間続くとされている。



と書かれています。

そのイエローストーンには湖があります。その湖で「晴れた日に空から音が聞こえる」のだそうです。今に始まったことではなく、ずいぶんと昔から文書で報告されていることだそう。

結構長い記事ですので、すぐに始めます。




No explanation for mysterious ‘lake music’ reported by many Yellowstone visitors
Yellowstone Gate (米国) 2012.02.25

多数の訪問者たちから報告される「湖の謎の音楽」の理由はいまだにわからない

yellowstone-lake.jpg


イエローストーン・レイクとそれを取り囲む荒々しい自然環境は、その辺鄙さと静けさを見に、あるいは研究しにくる訪問者たちが数多くおとづれる場所だ。

その場所には実は不思議な現象が存在する。

これは文書ではその発生が裏付けられているものだが、現象について真剣に論じられることはほとんどなかった。それは、ここを訪れる観光客や訪問者たちが、この場で不可解な「天からの音」を聴くという現象だ。

1895年にハイラム・チッテンデンが記した『イエローストーン国立公園』という著作では、下のように記されている。


「それは、電報の電線が出す唸り音にも似ているし、ミツバチの群が発生する音にも似ている。それは遠くでソフトな感じで聞こえたあとに、急速に平坦な音となり、直接、頭の上を通っていく。そして、急速に音は小さくなり、反対側の方向に消えていくのだ」。



チッテンデンの記述は、歴史の中で記録されたイエローストーン・レイクとショショーニ・レイク(※ ショショーニは米国の先住民族のひとつ)のふたつの湖の周辺で聞かれる「湖の音」、あるいは「湖の音楽」の説明のひとつとなっている。

ハイラム・チッテンデンは、厳密に科学化された建築学の理念を持つ 19世紀のエンジニアで、イエローストーン国立公園内の橋などを設計、建設した人物だ。なので、チッテンデン自身はその昔からイエローストーンに伝わるその「科学的とはいえない音の伝説や、うわさ話」などはまったく相手にしていなかった。

しかし、チッテンデンは自らの耳でそれを聞いてしまったのだ。


chittenden-1895.jpg

▲ 19世紀の建築家ハイラム・チッテンデン。


ワシントン大学の生物学の教授で、海洋生物の研究者だったエドウィン・リントンは 1890年の夏にイエローストーンで研究を続けていた。当時の米国魚類局の調査プロジェクトの一員としてだった。

リントンと調査チーム、そして、彼のガイドたちはイエローストーンの調査旅行の間に、不可解な音を聞いた。それは一度だけではなかった。

リントンは、その不思議な体験を、科学専門誌『サイエンス』で、1893年11月3日に発表した。その時は、自分の日記から状況を詳しく記した。


リントンはサイエンス誌に以下のように記している。


その次の朝、私たちは明らかに「音」を聞いた。その音は自分たちの頭上から始まり、そして、南西の方へ向かって行くにつれ小さくなっていった。遠ざかっていくときには不明瞭で、反響(エコー)しているように感じた。そして、わずかに金属的な響きを含んでいるように聞こえた。



リントンと、その同行者たちはその音が「ハープ」のようであるとか、あるいは、「人の声にも聞こえる」とか、あるいは、「衝突している金属のケーブルの音」などにも似ていると話し合ったという。

しかし、その音がどこから鳴っているかについての説明はできなかった。


イエローストーン国立公園についての著作を記した歴史家のリー・ホイットルセー氏は、「イエローストーンの謎の音については、公園の管理者などの内部者で議論が避けられてきた歴史がある」として、以下のように言う。


「私たちは本当のイエローストーンの歴史を知らなければならないと考えます。音については、過去に何度か記述されたことがあったのですが、それらはいつも隠蔽されてしまいました。その音が『通常ではないもの』だということは、過去の記述を見るとわかるのです。そして、それを書いた記述家たちの歴史は、それらの音の記述が真実であることを示していると思います。これまでに名のある科学者や著名人などのたくさんの人々によって報告されているのです」。


ホイットルセー氏は 35年以上、イエローストーンの周辺で仕事をしていて、この「音」のことを1970年代に知ったという。ホイットルセー氏自身は聞いたことがないそうだ。

「その音に興味があり周辺でキャンプを続けましたが、私は音を聞けませんでした」。


「音」は、多くの記述で、イエローストーン・レイクか、ショショーニ・レイクで、「風がほとんどない晴れた日の朝」に聞こえるという。


地質学者のフランク・H・ブラッドリーは、1873年に記した文書で、イエローストーンの調査中に、イエローストーン・レイクの沿岸沿いで聞いた不思議な音のことを記している。
ブラッドリーは以下のように記している。


朝食の支度をしている時に私たちは奇妙な音を聞いた。
それは、口笛のような、あるいは、うなり声のような音だった。

私たちはその音の発生源と、その音が何であるのかを突き止めようとしたが、わからなかった。水鳥の声だと考えたかったが違う。奇妙な音だ。


Frank-Bradley-1872.jpg

▲ 1872年、イエローストーン国立公園に建てたテントでくつろぐフランク・H・ブラッドリー。


これまで、この「音」の原因については、科学的なものから空想的なものまで様々な説明と推測がなされた。そして、時にその話題はイエローストーンの独特な地質に関係しているという説に集中した。

1930年8月に科学誌「ポピュラー・サイエンス」で説明された理由は、「穏やかな地震によって、地下の洞穴で響いているのではないか」というものだった。

また、アメリカ気象局の局長だったF.C. マーヴィンは、イエローストーン・レイクの上空の大気と湖の水温の関係に着目し、大気の温度と湖の水温が逆転する際に発生するのではないかと記している。

イリノイ州の自然歴史研究家のスティーブン・フォーブズ氏は、以下のように語る。


イエローストーンの音は旅行者などからも何度も言及されましたが、科学的な説明は今までなされませんでした。いろいろな原因が言われました。電気的な現象、カモなどの水鳥の翼の音、そして、蒸気船の音。

音は、空中でエコーする性質を持っているようですが、そこから推測しても、発生源が何であるのかを推定するのは難しい。


音がイエローストーン国立公園の地質と関係があるとするなら、温泉や間欠泉などの地熱の特徴も取り上げられることもある。自然の要因が複雑に絡まって発生しているという説明だ。

歴史家のリー・ホイットルセー氏は、「もっと多くの人々がその音を聞いたが、人に言うのをためらい、口にしなかった例もあるかもしれません。いずれにしても、この音のことはイエローストーンのガイドの間ではかなりの話題です」と言う。

ホイットルセー氏は音が存在することを確信している。






(訳者注) ここまでです。

ちなみに、その「音の感じ」ですが、19世紀にはまだ YouTube のサービスが始められておらず、音の記録は残っていません。上の事例ですといろんな音が混じっていたりいるようなもののようですが、過去の記述に出て来たものは、

・ハープのよう
・電線がうなる音のよう
・人のうなり声のよう
・金属的
・ミツバチの群の音


それらの音を私が全部ミックスしてみました。


イエローストーンの音の再現(ハープ、電線、人のうなり声、ミツバチ、金属音)




こりゃカオス。

でも、こうミックスすると、最近の「世界中の音」にも近くなっちゃうことにも気づきました。いろいろな要素のミックス音ですね。