2012年03月01日



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現代のジョルダーノ・ブルーノを作り出さないために



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今回は翻訳記事ではないです。

前日書きました「米国の火星ミッションが事実上終了へ」という記事を読み直しているうちに、やはり書いておきたいことがあることに気づきました。「どうしてこのようなことになってしまったのか」という根本的な理由に関して、記事では私の考えを書かなかったからですが、やはり書いておきたいと思います。

それはこのブログの存在意義とも直結する大事な話だからです。


ところで、このような宇宙計画の予算の削減に関しては、報道では大体「国家予算の削減の中で」という言葉が併せて使われるために、それを最初に読んでしまうと、「確かにアメリカの予算も大変だしなあ。宇宙どころではないし」と最初に思いこんでしまう部分があります。まあ、予算が大変なのは事実だとしても、それは、今回の NASA の失敗の根本的な理由とは関係ないことです。

米国の宇宙開発の歴史は、その時間も内容も濃いもので、それなのに、オバマ政権下で、(どんな形であれ、大気と生命が生存している星として、火星は人類が最初に訪問できた可能性の高い惑星であるにも関わらず)火星計画が中止となったということは、「NASA のミス」であり、「科学界全体のコペルニクス的転換を促す出来事」なのだとも思います。

そのことを書きたいと思います。

私は米国の政権の事情も、NASA の内幕も知りませんので、内容が合っているとか間違っているということは別としても、これは現在の「全世界の科学的組織が持っている問題と同義だ」と考えていただいてもいいかと思います。

つまり、米国だけでの問題ではなく、日本の国立天文台やJAXAや東大の宇宙研究機構や宇宙線研究所など日本や世界のあらゆる科学機関も「同じ問題を抱えている」(のではないか)と。

なお、世の中には陰謀論がたくさんあり、米国は宇宙の秘密を隠しているとか、 NASA も宇宙の真実を隠している、などの話はたくさんありますが、それに関しては私は知りませんので、「そういうことはない、あるいは関係ない」ということで話を進めます。



科学者集団としての苦悩

米国政府と NASA の関係は、トップのほうの立場にいる人はともかく、政府と NASA それぞれの2つの中にいる人々は「基本的に人種が違う」ということをまず考える必要があります。

つまり、政府という集団が「政治家とその関係者の集団」であるのに対して、 NASA は基本的には「科学者の集団」であるということがあります。この2つの間の溝というのは基本的に深いと思います。

そして、きれいごとを抜きにして、このどちらの集団の人たちも「名誉や名声」、あるいは、「人々からの賞賛」、または「財産」(あるいは研究資金)などを望んでいるとします。

その場合、

・政治家たち

の「名誉と名声」を得る方法と、

・科学者たち

が「名誉と名声」を得る方法はそれぞれ違うということに気づかなければならないと思います。

政治家がどのように名誉を得るのかのほうは私はよく知りませんので、そちらはどうでもいいです。


問題は後者の「科学者が名声を得る」手段。これは政治家のように街頭に立って、研究の内容をマイク演説でいくら繰り返しても得られません。

科学者の名声というのは、

・研究の成果
・実験の成果


が目に見える形で発表され、それが「評価」されないと得ることができないのが通常です。

要するに、ものすごく頭のいい将来有望な科学者でも、「私は将来ものすごい発見と発明をすることが確定しているので、先にノーベル賞の賞金くれない?」と申し述べても、それはもらえません。


どんな科学の賞でも、賞が伴わなくても賞賛や、あるいは「科学史に名前が残る」といった行為には実際の「論文」などが必要です。

その論文の内容自体は理論でもいいし、実験結果でもいいのですが、それが提出され、他の科学者たちの目にふれ、「素晴らしい」と判断された時にはじめて、その科学者は「名誉や名声」を得ることができます。あるいは、研究継続のための「資金」が国や財団などから提供されたりします。その資金がなければ誰も研究を継続できません。

では、その研究の「是非の判断は誰がするのか」。


ここがまずひとつのポイントです。

これを判断するのは、私の家の裏にある焼き鳥屋のオヤジではありません。

「科学界」が判断します。

まず、それぞれの分野の小さなグループや学会などが存在すると思うのですが、詳しいことは知らないですが、いずれにしても、「科学的に認められている学会」が、物理にも化学にもそれぞれのジャンルにあり、そして、上のほうには世界的な権威が存在します。たとえばですが、科学なら米国のアメリカ化学界とか、天文学ならイギリスの王立天文学会とか、そういうものが頂点にあって、

それらから完全に無視されるような研究や人物が世界的な名声を得ることは非常に難しい

ということは、多分言えると思います。

そして、 NASA 。

トップの人たちや職員の中には政治家寄りの人たちも多くいるでしょうけれど、NASA で実際に多く研究や観測や開発をおこなう NASA スタッフの多くは「科学者」だと思われます。

つまり、彼らが名声を得る方法は政治家とは違い、上のように、科学的に認められる。あるいは科学的に驚くべき研究や発見を行わなければ、科学的な名声を得ることは難しいはずです。


さて。


その「科学界」というものに現在、根本的に横たわっている基本的概念が、現在の多くの科学の進展を阻害し、そして、今回の NASA の火星開発の中止のような、一種、無駄な研究の挫折というようなことを生んでしまっています。

その「現在の科学界の基本的な概念」というのが何かというと、いろいろとあるのでしょうが、大きく次のふたつです。

・進化論(あるいは自然選択説)

・宇宙有限論(あるいはビッグバン理論)


です。

そして、現在はすでに、このふたつの科学の基本的理論がすでに機能していなくなっていることを一番知っているのは「科学者たち本人」だと思います。2008年くらいまでなら上の理論のほころびを何とか覆い隠せる程度の発見で済んでいたのですが、もう無理です。

2010年頃からの宇宙での発見や、あるいは極限環境微生物などをはじめとする地球上での新しい生物の発見の数々は上の2つの理論をとどめておくことに限界が生じていることを示しています。

私は素人ですので、理屈からのその理由は書けません。

ただ、ブログで海外の報道や研究論文を翻訳しているうちに、やはり上の2つの理論は「そろそろ真面目に考え直さなければならないのではないか」という思いは以前より強くなっています。


それでも、上に書きました理由のように、現状では「科学界では反逆者やアウトローは生き残れない」という事実があります。科学界のアウトローがどうなるのかを実例を示します。

命か名誉か、どちらかを失った例です。



科学の世界のアウトローたち

西暦 1600年にイタリアの科学者であり修道士のジョルダーノ・ブルーノは「宇宙は無限で、そこに神はいない」と主張して、教会から焼き殺されましたが、今のままではまた同じことが起きてしまう可能性があります。

もちろん、「命」そのものではなく、立場的に焼かれてしまうということですが、それでも、「話すことのできない科学者」は命があるとは言えません。


あるいは、私が、「クレアなひととき」を含めて、ブログを継続して書いている動機となっているもののひとつに、ふと古本で100円で買った英国のフレッド・ホイル博士という人の著作があります。パンスペルミアという概念を知ったのはその著作によります。

フレッド・ホイル博士は、当時、最もノーベル賞に近かったひとりでしたが、博士はノーベル賞を受賞できませんでした。そのくだりは Wikipedia にこのようにあります。


フレッド・ホイルの共同研究者であるウィリアム・ファウラーは1983年にノーベル物理学賞を受賞したが、ホイルの元々の貢献は何らかの理由で見落とされた。ホイルのような著名な天文学者の業績が受賞の対象とならなかったことに対して多くの人々が驚いた。



「ホイルの元々の貢献は何らかの理由で見落とされた」とあります。「何らかの理由」。

これは、フレッド・ホイル博士が、ジョルダーノ・ブルーノと同じで、「その時の科学界の意見に従わなかった」からです。

ホイル博士は一生を通じて、

・ビッグバンの存在の否定
・進化論を否定


というふたつの意見を持ち続けました。

そして、その結果、博士は天文学と元素合成に著しい功績を残しながら、上のような科学界での扱いを受けました。「その貢献は何らかの理由で見落とされ続けた」のです。フレッド・ホイル博士が 17世紀に生きていてたら、ブルーノと同じ運命だったかもしれません。


17世紀には、ジョルダーノ・ブルーノの火刑で見せしめをして、科学界の意見は落ち着きました

20世紀も、フレッド・ホイル博士がノーベル賞を取れなかったという、「立場の焼き殺し」の見せしめによって、やはり科学界は落ち着きました。

その証拠として、今でも多分、学校の教科書には、

・進化論
・ビッグバン

このどちらも掲載されているのではないでしょうか。

そして、これは NASA が火星の発表について慎重になった理由とも直結します。それは前回も書いた「火星へ送った探査機に付着した地球上のバクテリア」の問題とも関係あります。


しかし、まだまだ長くなりそうですので、この話は何回かにわけます。

ニュースの翻訳などもありますので、続けて書くというのではなく、その合間に適度に書きたい時に続けます。


進化論とビッグバン理論のせいで、「発見したものに適切な説明をつけることができない」という事象は世に溢れているはずで、そのタガを外せば、科学は一気に進むと思うのです。

ブルーノが亡くなって 400年経っても世の中の「権威に従え」という基本的な構造はあまり変わっていない。

そのことがどうにも残念です。

今回、ジョルダーノ・ブルーノが自著『無限、宇宙および諸世界について』の最後のくだりで、ブルーノ自身に対して語りかける役割の男性の台詞を書いておこうと思います。

(ここから)





ジョルダーノ・ブルーノ『無限、宇宙および諸世界について』 第五対話より。


天の真実とはいかなるものであるかを知らせるために、君は説きつづけたまえ。

万物の真の実体、素材、活動、動力とはいかなるものであるか。感覚されうるあらゆる合成物は、どのようにして同じ原理、元素からつくられるのか。無限なる宇宙を認めることについて確信をもたせてくれたまえ。

あの元素と天界を内外に限る凸球面、凹球面を打ち砕きちまえ。

輸送軌道とか天蓋に固着された星などを笑いものにしてやりたまえ。

この地球が真の唯一の中心だという考えを崩してやりたまえ。

この我々の星、世界も、我々の目に入るあのたくさんの星、世界も、同じものからできているのだということを知らせてくれたまえ。

巨大で広大な数限りない諸世界のなかで、どの一つをとっても、他の、より小さな無数の世界と、同じ秩序で結ばれていることを、繰り返し教えてくれたまえ。

扉を開いて、この星もあの星も相違ないことを見せてやりたまえ。

この世界同様、他の諸世界も自立自明していることを示してやりたまえ。

万物の運動はその内にすむ霊魂から生じることを明らかにしてくれ。







(ここまで)

これはブルーノが自分自身に語りかけた言葉ですが、私は、世界の科学者の方々に差し上げたいと思います。これからの世の中では科学者の方々は上のブルーノが書いたような行動ができるのだと確信しています。


関係の In Deep の過去記事を少しだけリンクしておきます。

キーワード[ビッグバンと進化論]に関しての In Deep 過去記事

ビッグバンより 22億年古い 160億年前の大銀河団
(2011年10月23日)

「暗黒物質理論」を否定する2つの銀河の存在
(2011年10月18日)

太陽の150倍の質量を持つ「浮遊星」が天の川銀河で発見される
(2011年05月30日)


(注)下の浮遊星の記事では、「このような巨大な星がどうしてその位置にあるのかということに関しては、現在の天文学ではまったく説明することはできないという」という部分がありますが、これも「ビッグバン理論」の縛りなんです。宇宙が有限で膨張しているという理論からすると、このような巨大な浮遊星や、あるいは、ベテルギウスのような巨大なものが太陽系の近くに「あってはいけない」のです。

でも、実際にはある。