2012年03月08日



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オーストラリアで繰り広げられるクモの大発生による驚異の光景



現在オーストラリアでは大変な洪水になっていて、この様子については日本語の報道にもなっていて、「オーストラリア南東部3州で洪水 (AFP 2012.03.07)」などにあります。特に、ニューサウスウェールズ州のワガワガという地域一帯では、ひどい洪水となっていて、マランビジー川という川の水位は 1844年以来の高さに達しているのだそう。


この洪水の報道と共にオーストラリアで大きく報道されているニュースが今回ご紹介するものです。

下の写真が何の風景かおわかりになりますでしょうか。

art-wagga-20web4-420x0.jpg


広大な土地に漂う幻想的ともいえる白い絹のようなもの。

これ、全部「クモの糸」なんです。

下の本記事には動画もあります。


洪水に見舞われているニューサウスウェールズ州で、日本語ではドクグモと表記されるウルフ・スパイダーというクモが、水を避けるためにいっせいに草の高いところからバルーニングという「糸を空中になびかせる」という行為をおこなっていて、その中を通ってクモが移動しているそうです。

以前、 In Deep でオーストラリアでの「バッタ(イナゴ)の大発生」の記事を何度かご紹介したことがありますが、その時、「大発生」というのものがどこか根幹で通じた理由もあるような気がしたこともあります。オーストラリアのバッタの大発生は、「近代化された大規模農場の農作方法が主な原因」ということが研究でわかっています。


最近あまり話題になっていませんが、「ミツバチの集団失踪」というものがあります。原因は今でもハッキリとはしていないですが、ネオニコチノイド系農薬というものがクローズアップされたことがあります。

その是非はともかく、このネオニコチノイドの特性には興味深いものがあって、


・昆虫の視神経などにダメージを与えるが、クモやダニ(クモ科などの節足動物)の神経はダメージを受けない


ということがあります。

このことは藤原養蜂場という養蜂場の人が 2009年にリリースした「消えたミツバチの行方」というページで、3年くらい前に知りました。

また、こちらのページでは、

ネオニコチノイドは、昆虫ではないもの、たとえばクモ(クモ綱クモ目に属する節足動物)やダニ(クモ綱ダニ目の節足動物)などは機能を奪われないので、単に「天敵がいなくなる」となり、クモやダニにとっては天国状態となってしまう。


とあります。

このことを思い出したのは、今、クモが大発生しているオーストラリアでは、2010年に「バッタの大発生」があったのですが、その時に類似したものが大量に散布されています。

オーストラリアのバッタの過去記事は下のものなどです。

この際、オーストラリアでは国を挙げてバッタの対策を施したのですが、その方法が「フィプロニル」という殺虫剤を使った大規模な駆除でした。ソースは英語しか見当たらないですが、当時のオーストラリア ABC ニュースの記事などが残っています。

フィプロニルは Wikipedia によると、「ネオニコチノイド系殺虫剤とともに、ミツバチの蜂群崩壊症候群(CCD)の原因の仮説のひとつとなっている」とあるのですが、ハチの中にはクモの天敵となっているものもいて、仮にそれらまでも一掃されると、やはりその場所はクモやダニにとってのパラダイスになるようです。

今回のクモの大発生と関係あるかどうかはわからないですが、「大発生の因果関係」というものに興味があります。


しかし、この「農薬」という問題は決して「使わないようにすればいい」というような単純な理想的な問題でもないです。現代の農作に従事している人たちの高齢化を見ていると、農薬を使わない農業という理想だけでは大変すぎてとてもやっていけない現状が存在するように思います。

しかも、今の日本の人々は形や色が悪い野菜を通常の価格では買ってくれません。
それに加えて放射能の風評。

本当に難しいところです。
とりあえず「どんなものでも食べる」ということの大事さはあるように思いますが。

話がそれました。

ここからオーストラリアのクモの話です。




Web wonders: spiders spin for their lives as floodwaters rise
WA Today (オーストラリア) 2012.03.07

クモの巣の驚異: 洪水の水から逃れるために巣を作るドクグモたち




ニューサウスウェールズ州で続く洪水で、地域では多くの住民たちが避難を余儀なくされているが、「逃げない住民の一団」がいる。

それは「クモ」だ。

洪水に見舞われているニューサウスウェールズ州のワガワガ地区の一部は、現在、ドクグモたちが張り巡らしたクモの巣で覆われていると、クィーンズランド博物館でクモ類の担当をしているオーエン・シーマン博士は言う。

クモたちは上昇する水から逃れるために草の葉の上部に上り、そこからクモの巣を放つ。それが風により数百メートルもの長さに広がることによってクモの巣を張り巡らせ、そして、自らそのクモの巣を通り安全な場所へと移動しているという。

オーストラリア国立大学の進化遺伝学の研究家であり、クモの専門家でもあるアンバー・ビーヴィス博士は、成虫のクモがこのような振る舞いをすることは珍しいと語る。このクモの行為は「バルーニング」(クモが糸を空中に飛ばすこと)として知られている。

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ビーヴィス博士によると、この「バルーニング」は、一般的には、クモが幼虫の時、生まれた場所から旅立つために使われるものだという。

博士によると、ドクグモは、普通は集団行動をしない種で、個別の行動をおこなう「孤独なクモ」だという。

タロンガ動物園でクモの飼育を担当しているブレット・フィンレイスン氏は、以下のように述べた。

「通常、土の中などに住むドクグモにとって、雨はクモのエサとなる様々な昆虫が地面に落ちてくる食料供給のチャンスです。しかし、今回の雨には何かがありそうです。それによりクモの巣の粘着性が増しているようです」。


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クモは自分の巣を食べて、それを栄養にできる。雲の巣はタンパク質で、自分のクモの巣を食べることで次のクモの巣を作り出すことができる。

また、フィンレイスン氏によると、雨は雲の巣を丈夫にするという。そして、今シーズンのクモの巣は特に人の目にもよく見える強いものとなっていて、そのことについては、動物園に来場する訪問客からも質問を受けることが多いという。

クモの危険については、フィンレイスン氏によれば、まったく心配はないという。





キーワード[大発生]に関しての In Deep 過去記事

水質変化から生まれた微生物の複合体による「新しい生物」が中国の湖で大発生
(2010年06月30日)



中国山東省の海と海岸を覆い尽くす「大発生した青藻」
(2010年07月01日)

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[1年前の In Deep ]

2011年03月08日の記事

オーストラリア・クィーンズランド州の町でほとんどすべての住民が目撃した謎の光