地中から宇宙空間に向けて 16ギガワット以上の熱エネルギーと共に「有機物と微生物」を吹き出し続けている可能性のある土星の衛星エンケラドス
先日、「火星の地表から数百キロ上空まで吹き上がる現象は何か」という記事で、火星で今起きている現象をご紹介しました。
今日は土星の話題です。
メインの話は NASA から発表があった「土星の衛星エンケラドスに微生物の雪が降っている?」というタイトルのニュースリリースの翻訳です。
その前にやはり一昨日くらいに発表された写真を。
それは、「探査衛星カッシーニが土星のオーロラを撮影」という記事にあった写真のご紹介です。
Cassini Probe Captures Saturn's Spectacular Aurora (カッシーニが素晴らしい土星のオーロラを撮影した)より下の2枚。南極と北極の部分の緑のあたりがオーロラです。
なんかこう・・・太陽系の惑星だけでも、日々、私たちの持つそれらの惑星に対してのイメージというのが変わっていく感じがします。
エンケラドスを巡る様々なこと
というわけで、土星の衛星「エンケラドス」のニュースです。この衛星エンケラドスというものを私は知らなかったので、調べたことあたりも抜粋しておきます。
Wikipedia より。
エンケラドゥスは、土星の衛星であり、1789年に天文学者ウィリアム・ハーシェルによって発見された。その後、1847年にギリシア神話のギガース族の一人エンケラドスにちなみ、息子のジョン・ハーシェルが命名・発表した。
となっていて、その後の観測の経緯としては、
・2005年3月 エンケラドゥスに微量の大気を発見。
・2008年3月 エンケラドゥスの南極で有機物の存在を確認。
・2009年6月 エンケラドゥスの水蒸気から塩化ナトリウムや炭酸塩が検出。
・2008年3月 エンケラドゥスの南極で有機物の存在を確認。
・2009年6月 エンケラドゥスの水蒸気から塩化ナトリウムや炭酸塩が検出。
とのこと。
これらの観測はすべて無人土星探査機カッシーニによるものです。
そして、今回の NASA のニュースはそれらの分析と調査に関しての最新発表ということになりそうです。
ちなみに、この衛星の名前の由来は、上の説明では、ギリシア神話のエンケラドスにちなんで、とあります。このエンケラドスという人もどんな神話の人か知らなかったので、Wikipedia から抜粋しておきます。
エンケラドス(ギリシャ語で「大音響を鳴らす者」の意)は、ギリシア神話に登場する巨人族、ギガースたちの一人。ギガントマキアーにおいてアテーナーと戦ったが、敵わないと思って敗走したところにシケリア島を投げつけられて倒された。
その後はエトナ火山の下から炎を吐き続けていると考えられており、その噴火は彼が傷の痛みに耐えかねて暴れるためであるという。
「大音響を鳴らす者」という何となくタイムリーな意味の名前がつけられており、今はイタリアのエトナ火山の下にいるというエンケラドス。
エトナ火山についてはタイムリーなことに、一昨日、「溶岩流出が続くエトナ火山で地震を計測」というイタリアのニュースもありましたので、それも記事下に短く紹介しておきます。
それでは、ここからです。
それにしても、すでに NASA は太陽系の生命の可能性の存在に関して、「仮定」という範囲を出る発言を平気でおこなうようになっています。今回のキャロライン・ポルコ博士も「エンケラドスには生命がいる」と断言している感じに聞こえます。
Is it Snowing Microbes on Enceladus?
NASA サイエンスニュース 2012.03.27
エンケラドスに微生物の雪が降っている?
土星の輪の外側を回っている「土星の月」のうちのひとつは、観測の上では多分、あくまで「多分」だが、その衛星は微生物で満ちあふれている可能性が出てきた。
その衛星にはエンケラドスという名前がつけられており、NASA の無人土星探査機カッシーニは、そのエンケラドスに接近通過した際に、噴出している水蒸気の噴水の様子を撮影した。
▲ 無人土星探査機カッシーニが 2009年11月21日に撮影した噴射する水。異なるサイズの 30以上の「宇宙空間への噴射」を見ることができる。
探査機カッシーニの撮影プロジェクトチームのトップであるキャロライン・ポルコ博士は、「エンケラドスの南極近くで確認される 90カ所以上の" 噴射 "は、氷の小片と、そして有機化合物です」と言う。
そして、今回のカッシーニでの調査で、水と有機物と共に、その氷の中に「塩」があることが確認されたという。
また、エンケラドスの亀裂の熱の測定値は、華氏 120度(摂氏 190度)という、非常に高い熱を持つことも確認された。
▲ 「タイガー・ストライプ(虎の縞)」と呼ばれるエンケラドスの水の溝。
「これらの熱をすべて合計すると 16ギガワットに相当する熱エネルギーがそれらの隙間から噴出していることになります」とポルコ博士は言う。
続けて、ポルコ博士はこのように述べる。
「このエンケラドスの地表下は液体の海となっていて、そこは有機肥料とエネルギー源であることが考えられます。つまり、そこは私たちの地球と類似した環境での生命と同じタイプの存在を見いだせる可能性があるのです。エンケラドスの地中深くの場所では、その生態環境が私たちの地球のようになっている可能性があり、そこは『生命の港』になっているのかもしれません」。
▲ 2012年3月27日。カッシーニはエンケラドスの南極からわずか 73キロメートルの場所を通過した。上はその際の写真。エンケラドスの南極からはプルームが噴出され続けている。
博士は続ける。
「地球の地下にも大量の熱と液体の水が存在します。それらの岩に棲む地球の微生物は水と高温の岩との反応で作り出される水素と、利用できる二酸化炭素で育ち、メタンを作り出します。そして、それは水素へとリサイクルされるのです。この生産と循環の生体活動は、日光のまったく届かない場所でも行われています」。
しかし、エンケラドスで目撃される特別なことは以下の点にあると博士は述べた。
「エンケラドスでは、『地中から宇宙スペースに噴射している』ということを私たちは見ていることになるのかもしれません。おかしな言い方でいえば、この小さな惑星の上には『微生物の雪が降り続けている』という可能性があるのです」。
ここまでです。
ギリシア神話のエンケラドスは、神話では「今はエトナ火山の下にいる」となっているので、その関連ニュースを。
衛星エンケラドスからは「生命の噴水」。
そして、エトナでも火山の噴火の懸念が出てきているようです。
あるいは、上のポルコ博士の説明を読んでいると、「火山の噴火も生命の噴出の一環なのかも」と思えてきました。