昨日の記事の「正体不明の「ヘビの軍団」に襲われているナミビアの村」のオリジナル記事はアフリカのナミビアの報道メディアからのものでした。そのナミビアの公用語は英語で、報道も英語でした。そして、その記事の「見知らぬヘビの群れからの被害を受けるナミビアの村」という意味のタイトルは、
・Namibia: 'Strange Serpents' Plague Tubuses
でした。
ヘビの英語として思い浮かべる「スネーク ( Snake )」ではなく、「サーペント ( Serpent )」という単語で表されていました。
私はこのタイトルの Serpent という単語を知らなかったんですよ。
それでこちらの英和辞典を見たんですね。
すると、
1 蛇 (snake)
2 悪魔;サタン〈《聖書》創世記3:1-5;黙示録20:2〉(Satan)
3 陰険な人, 狡猾な人, 悪意のある人
4 蛇花火
5 セルパン:蛇の形をした木管楽器
6 《天文》へび(蛇)座(Serpens)
とある。
この中の「2」の聖書の創世記に出てくるというのが気になりました。
というのも、ナミビアのヘビの記事の前の日の記事である、
・地球と太陽の組成はまったく違うものというオーストラリア国立大学の研究発表
にも、調べている途中で創世記が出てきました。
それは、旧約聖書「創世記」の第1章 16-18節の部分。
神は二つの大きな光る物を造られた。大きいほうの光る物には昼をつかさどらせ、小さいほうの光る物には夜をつかさどらせた。
という部分でした。
しかし、先日知ったのは、地球から見る「夜の月」と「昼の太陽」は同じ大きさだということ。これはどういうことなのかなあとずっと引っかかっていたところに、また旧約聖書の話が出てきた。
今年になってからの In Deep には「旧約聖書絡み」の話題が多いんですが、とりあえず、その「ヘビ」の出ている創世記の部分を記しておこうと思います。
Sponsored Link
創世記に描かれるヘビ( Serpent )
旧約聖書より。
創世記 第3章 1-7節
主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。
女はへびに言った、「わたしたちは園の木の実を食べることは許されていますが、ただ園の中央にある木の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではいけないからと、神は言われました」。
へびは女に言った、「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」。
女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また共にいた夫にも与えたので、彼も食べた。
すると、ふたりの目が開け、自分たちの裸であることがわかったので、いちじくの葉をつづり合わせて、腰に巻いた。
と、ここまでです。
「ははあ」と思いました。
これはあの有名なアダムとイブが禁断の果実かなんかを食べて、突然、チンチンと女性のそれが丸出しであることが恥ずかしくなるくだりですね。これがそんなに悪いことだとも思えないのですが、このあとの創世記 3章 14節では、神はヘビにひどいことを言います。
創世記 第3章 第3章 14節
主なる神はへびに言われた。
「おまえは、この事をしたので、すべての家畜、野のすべての獣のうち、最ものろわれる。おまえは腹で這いあるき、一生ちりを食べるであろう」。
どういうわけだか、神は怒って、ヘビをこの世で最も呪われる生き物とした、と。
さすがにこれを読んで、私は、「チンチンと女性のそれを隠す気になる実を食べさせただけで、どうしてそんなに怒る?」と、その神に聞きたい気分になったのですが、いずれにしても、創世記においてヘビは「この世で最も呪われる生き物」とされる宣告を受けるわけです。
しかし、この後の世界では、「ヘビ」は他に例えるもののない崇高な生き物として、次々と世界各地の古代神話に登場することになるのです。このことは後で書きます。
旧約聖書とその後の世界観
それにしても、どうも次々と矛盾というのか疑問の思いがわいてきます。
上にも書きましたが、創世記には、
神は二つの大きな光る物を造られた。大きいほうの光る物には昼をつかさどらせ、小さいほうの光る物には夜をつかさどらせた。
とあります。
しかし、地球から見る限り、「太陽が大きくて、月が小さい」という概念はどうも釈然としない。
たとえば、最近たまに出てくる18世紀の『薔薇十字の秘密のシンボル』という本の中でも、「太陽が月より大きく描かれている部分」はありません。
薔薇十字の秘密のシンボルは旧約聖書より後に書かれているものであって、天文学を含めた科学的な観測については、進んでいたはずです。それでも、シンボルとして「太陽が大きくて、月が小さい」ということは、少なくともシンボルやイラストでは書かれてはいない。
その「薔薇十字の秘密のシンボル」の中から抜き出したものです。月と太陽が同じイラスト内に出てくる場合は必ず下のように「対等」に描かれます。
▲ 下の「逆三角」の中にある「 Fons miraculorum 」のラテン語の意味は「奇跡の源」というような感じだと思います。多分、「月と太陽の力によって起きている奇跡」について描かれているのだとは思いますが、それ以上はわかりません。
あるいは、何より中世神秘学の象徴ともいえる「エメラルド・タブレット」のシンボルでも、月と太陽は(大きさも)対等な関係であることが示されています。
▲ エメラルドタブレットの上部のイラスト。薔薇十字の概念では、世界という存在は、「月と太陽の奇跡を水星が完成させる」ということになっているようです。
しかし、創世記の「大きいほうの光る物には昼をつかさどらせ、小さいほうの光る物には夜をつかさどらせた」には大きさとしての比較級が入っている。なんとなく対等ではない感じがする。
この「旧約聖書と、その後の神話や神秘学などとの間に生じる矛盾のようなこと」がヘビのくだりにも見られるのです。
創世記ではヘビは「この世で最も呪われる生き物」とされているにもかかわらず、その後のいろいろな国の古代神話では「死と再生を表す永遠の象徴」として、尊い存在として登場するのです。
これは、Wikipedia の「ヘビ」を読んでいて知ったことですが、そのことについて少し書いてみたいと思います。
その古代神話に出てくるものの名前はいろいろですが、ここでは、ウロボロスというものを中心にとして書いてみます。
ウロボロスとケツァルコアトル
以下の説明は Wikipedia のウロボロスより。
▲ ウロボロス
ウロボロスは、古代の象徴の1つで、己の尾を噛んで環となったヘビもしくは竜を図案化したもの。
(中略)
「死と再生」「不老不死」などの象徴とされる。そのヘビがみずからの尾を食べることで、始まりも終わりも無い完全なものとしての象徴的意味が備わった。
とあり、そして、次のようなことが書かれてあります。
・古代後期アレクサンドリアなどでは、世界創造が全であり一であるといった思想や、完全性、世界の霊などを表した。
・錬金術では相反するもの(陰陽など)の統一を象徴するものとして用いられた。
さらに、
・キリスト教や一部のグノーシス主義では、ウロボロスは物質世界の限界を象徴するものとされた。
・ヒンドゥー教では、世界は4頭のゾウに支えられており、そのゾウは巨大なリクガメに支えられ、さらにそのリクガメを、みずからの尾をくわえた竜が取り巻いているとされている。
▲ ヒンドゥー教での自らの尾をくわえる竜。
・アステカ文明では、ケツァルコアトルがみずからの尾を噛んでいる姿で描かれているものがある。
▲ アステカ神話の文化神・農耕神であるケツァルコアトル。そもそもの名前の意味が「鳥(ケツァル)ヘビ(コアトル)」であるヘビの神様。顔らしきあたりの右側にヘビの姿が見えます。
・ヒンドゥー教では、世界は4頭のゾウに支えられており、そのゾウは巨大なリクガメに支えられ、さらにそのリクガメを、みずからの尾をくわえた竜が取り巻いているとされている。
▲ ヒンドゥー教での自らの尾をくわえる竜。
・アステカ文明では、ケツァルコアトルがみずからの尾を噛んでいる姿で描かれているものがある。
▲ アステカ神話の文化神・農耕神であるケツァルコアトル。そもそもの名前の意味が「鳥(ケツァル)ヘビ(コアトル)」であるヘビの神様。顔らしきあたりの右側にヘビの姿が見えます。
さらに、Wikipedia のケツァルコアトルを読んで初めて知ったのですが、ケツァルコアトルは「金星を象徴する神様」なんですね。
その部分を抜粋します。
ケツァルコアトルは、神話では平和の神とされ、人々に人身供犠をやめさせたという。それ故に、人身供犠を好むテスカトリポカの恨みを買い、呪いのかけられた酒・プルケをそうとは知らずに勧められるまま飲み、気分が荒んだ挙句自分の妹・ケツァルペトラトルと肉体関係を結んでしまい、アステカの地を追われた。
この際、自分の宮殿を焼き払って財宝を埋めた後自ら生贄となり、火葬された灰が何羽もの美しい鳥となって空へ舞い上がったとも、虹の彼方に消えていったとも、金星に姿を変えて天に逃れたとも言われ、ケツァルコアトルは金星の神ともされるようになった。
さらに調べていると、ケツァルコアトルについて面白い事実も発見しました。
それは、「ケツァルコアトル」という名前の小惑星の存在です。
正式名は 1915 Quetzalcoatl 。
NASA の「ジェット推進研究所 ( JPL ) 」という研究所のサイトでは、 NASA が軌道を把握している小惑星のリアルタイムでの現在の位置と、その軌道シミュレーションが調べられるのですが、小惑星ケツァルコアトルの軌道を見ると下のようになっていました。
青と水色のラインが小惑星ケツァルコアトルの軌道です。
小惑星ケツァルコアトルは、「水星と地球と金星を取り囲むように周回している」という軌道を持っているようです。だから、ケツァルコアトルという名前がつけられたのかどうかはわからないですが、なんというか、「地球と水星の守り神としての金星の神様」という感じがよく出ている感じがします。
さて・・・。
旧約聖書では、神によって「最も呪われた生き物」とされたヘビ。
しかし、その後の地球の多くの古代神話ではあらゆる生物の中で最大に尊いものとして考えられていたという部分さえあるヘビ。
そしてヘビは(アステカ神話では)金星の神様でもある。
うーん。
話がこじれるだけこじれてきていますので、今日はいったんここまでにします。
ちなみに、これは、旧約聖書が正しいとか正しくないとかいうことが大事なことなのではなく、自分(ここでは私)が、月と太陽の関係、それに「ヘビ」をどう考えていくといいのかということを思う次第であります。
あるいは、「もしかすると、自分は旧約聖書とは違う世界に生きているのかもしれない」と、ふと思ったり。
--
[太陽系の神様たち]に関係する過去記事:
・アステカ神話の過去4つの世界と太陽。そして、現在の太陽トナティウの時代の終わりは
2011年12月18日
・月食を司る不滅の魔神 ラーフ
2011年12月13日