研究の将来の可能性として、農薬が完全に不要な農作を「ただ作物を触るだけ」によって達成できる可能性も
(訳者注) In Deep では、たまに最新医療技術の話題などを取り上げることがありますが、現在の最先端の医学研究では、人間の防御力の元となるものが、ほとんど人間の体自身の中にあることが明らかとなってきています。
たとえば、過去記事の、
・「すべてのガンに効果のあるワクチン」が開発されたという英国での報道
(2012年04月10日)
・抗生物質に代わる物質がドイツの機関で特定される
(2011年06月09日)
などは、上の「すべてのガンに効果のあるワクチン」は「 MUC 1 」という、もともとすべての人間の内臓の表面に付着しているもので、下の「抗生物質に代わる物質」は「ペプチド」というもので、これはアミノ酸の連なった、要するに、どこにでもあるタンパク質のようなものです。
このペプチドは、「できた後の虫歯に対抗できる」ことも、イギリスの大学の研究でわかっています。人間が自分が持つ治癒力だけで虫歯を治していく(歯を再生させていく)という驚異的な治療法ですが、その方法は、なんと、ペプチドから作られた物質を歯に塗るだけ。相当先とはいえ、将来的にはこの治療法が広がれば、「虫歯がこの世から消える」ということになるはずです。
・虫歯治療の革命: 歯の自発的な再生を手助けする虫歯の治療法が英国で開発される
(2011年08月24日)
つまり、少なくとも人間は、自分自身に対しての治癒力は人間自身が持っていることが、最近、きわめて明らかになってきた感があるのですが、今回の「植物の防衛力」の研究発表も大変に大きなニュースだと思います。
米国のライス大学の生物学者ふたりが研究発表したもので、上のタイトル通りに「植物は人間に触られることにより強くなる」という事実と、そのメカニズムを証明したのです。
写真を先にご紹介しておきます。
下の写真はシロイヌナズナという植物で、いわゆるペンペン草と呼ばれるどこにでもある雑草のひとつで、どこにでもあるものだけに、植物の研究にはよく使われるものなのだそうです。
「右」が一日数回さわって育てたシロイヌナズナで、「左」がさわらずに放置して育てたもの。
これだけ見ると、「さわっていないほうがよく育っているじゃないか」と思われるかと思います。
そうなんです。
確かにさわらないものは成長が早く、茎も細く伸びていきます。
ところが、左の背丈の高いほう、つまり、さわられていないほうは「弱い」のです。
右の毎日触れられて成長した方の植物のほうは、こちらは茎が太く短く、そして「遅く」成長していくことにより基本的に自身の構造自体を強く成長していくと同時に、触られるごとに内部で「ジャスモン酸エステル」という植物のホルモンを多く分泌するのですが、この植物ホルモンの作用で、この植物は「どんどん強く」なります。
このジャスモン酸エステルは、植物の葉を食べる生物の胃の機能を弱め、また、真菌(カビ)などの対しての抵抗力を高めるメカニズムを持つのです。
つまり、上の写真の「右の毎日触られた植物」は、見た目だけの問題ではなく、外部からの攻撃に対して強いのです。菌や昆虫に大きな強い抵抗力を持ちます。「虫も喰わないやつ」という言い方がありますが、そういう植物として成長していきます。
そのジャスモン酸エステルの生産システムを「起動」させるのが、人間がさわることなんです。
また、上の写真を見ると、植物の外観としても、右の背丈の低い植物のほうが安定性よく育っていることがわかります。
いずれにしても、これは感覚的な話ではなく、「植物は人間に触られることにより強くなる」ことと、そのメカニズムが「証明された」ということであり、この意味は大きいです。
なぜかというと、今後、たとえば、植物の生産の現場を含めて、あるいは、経済的な混乱や他の国との貿易の不都合などの中では、日本の農業にはあらゆる意味で厳しい状況が予想されます。
ずいぶん前に、
・日本から肥料が消える日
(2010年12月02日)
という記事を書いたことがありますが、一般的には「窒素、リン酸、カリウム」で肥料は作られますが、この中の「リン酸」というものが日本では採取できず、日本はほぼ 100パーセントすべて輸入に頼っています。そして、その輸出国の最大国は中国で、中国では関税をどんどんと引き上げており、現状はわからないですが、記事を書いた頃に入手した 2008年までのリン酸の価格は下のようになっていました。
これ以上、リン酸の価格が上がっていくと、トマト一個3000円とか、白菜一個20000円とか、そういう冗談のようなことが、冗談ではなくなる可能性は常にあります。現状の肥料はリン酸なしでは作ることができません。
まあしかし、この肥料の問題は別の話ですが、それと同時に「農薬」の問題や、米国モンサント社などに代表される遺伝子操作での作物の問題があります。
それに害があるとかないとかを別にしても、経済的な問題や、あるいは鎖国的なことが起きていくと(私自身は遠い将来であっても日本は再度、鎖国に向かうと考えています)、農作自体が成り立たなくなる可能性はあるように思うのです。
そこに出てきた「植物は人間がさわるだけで防衛力がアップするという科学的事実」というのはとんでもなく素晴らしい発見ではないかと思ってご紹介することにしました。
冗談ではなく、たとえば、自給自足などをしていかなければならない毎日だとして、農作の日課のうちのひとつが「ことあるごとに作物にさわること」だったりするという未来もありうるのかもしれません。
私も植物が好きでいろいろと育てているのですが、この「さわると植物は変化する」ということは感覚的という以上にずっと感じていました。どういうことかというと、
・頻繁に触れている植物は成長が遅いが、美しく強く育つ
ということです。
そして、逆のこともまた言えました。
逆のこととは、つまり放置していくと弱っていくということも見てきたのですが、それらは「感覚的な問題なのだろう」と自分では思っていました。
しかし、科学的根拠があったのです。
いずれにしても、今回の研究結果を読んで決めたことがあります。
それは、
「明日から全部の植物を一日に一度はさわろう」
ということでした。
植物を育てている方は試してみてはいかがでしょうか。
きっと、カビや葉を食べる虫(毛虫、ナメクジ、アブラムシなど)に強くなると思います。
いずれにしても、農薬から解放される方法の「第一歩」が「人間がさわる」という単純なことで、ある程度達成できるとしたらかなり素晴らしいことだと思うのですけれど。
それでは、ここから記事です。
Touchy Plants: Plant Growth And Defenses Affected By Touch
Nano Patents and Innovations 2012.04.22
デリケートな植物: 触れられることで成長と防御力が強化されることが明らかに
米国ライス大学の科学者による新しい研究で、植物が真菌(カビなど)の感染を避けるため、あるいは、昆虫を撃退するために「植物自身の触覚」を使用していることがわかった。
この研究結果は、生物学の学術誌「カレントバイオロジー」誌に、4月24日に掲載される。論文では、植物が「触られているとき」に防衛力が強化されることが明らかとなったことが記される。
研究をおこなったライス大学の生物学者であるワッシム・シェハーブ博士はこのように語る。
「以前の研究で、植物が触れられることによって成長に変化が出ることはわかっていたんです。しかし、その成長の変化がどういうものなのかということまではわかっていませんでした。今回、私たちはシロイヌナズナを使って実験を行いました。そして、触られることによって触発された植物の成長が、ジャスモン酸エステルと呼ばれる植物ホルモンにコントロールされているという推定を確認するための実験をおこないました」。
その結果、植物は触られることにより成長に影響を受けることがわかった、
上の写真は、「毎日数回触れたシロイヌナズナ(右)」と「さわらずに放置したシロイヌナズナ(左)」だ。
毎日数回さわったシロイヌナズナは、放置されたものよりも茎を短く成長させる。この成長反応が、昆虫や真菌感染から植物を保護する植物ホルモンのジャスモン酸エステルによって制御されることを突き止めたのだ。
このジャスモン酸エステルは、植物を食べる昆虫に対しての防衛手段として重要な役割を演じている。たとえば、ジャスモン酸エステルの分泌レベルが上がると、植物は草を食べる動物の胃のむかつきを与える代謝物質の生産を増加させる。
いくつかの真菌(カビ)の感染症から植物を保護するジャスモン酸エステルは、トマトやコメ、トウモロコシなどを含む、実質的にすべての植物に含有する。
そして、今回の研究は、これら植物の防御力が触られることによって引き起こされるという最初の証拠を提示したことになる。
研究の中では、ライス大学の学生たちが毎日、実験対象の植物をさわり続けた。しかし、この研究の中では、植物は、人間だけではなく、「昆虫などにふれられる」時もジャスモン酸エステルのレベルが上がる反応が起動することがわかった。
研究者のひとり、ジャネット・ブラーム博士はこう言う。
「植物は自分で移動することができませんので、環境の変化に速く反応するために非常に発達した触覚を持っていることには大きな意味があるようです」。
ライス大学では以前から、シロイヌナズナの触覚がとても鋭敏であることを突き止めていた。そして、定期的に触られたシロイヌナズナが短く、遅く成長することがわかっていた。その中で、博士たちはジャスモン酸エステルと植物の成長反応の関係性の研究を続けていた。
「植物が繰り返し触られることにより、ジャスモン酸エステルのレベルを高い水準で維持し、それにより、昆虫と菌類に対しての防衛力を強化したことを実験は示したのです」と、ブラーム博士は言う。
そして、植物の葉を食べるような下の写真の毛虫(イラクサギンウワバ)に対しての防衛手段のシステムは、植物が触れられることによって起動することがわかったのだ。
▲ 植物は、触られることにより、自身の葉を食べるこのような毛虫への攻撃力(食べると相手の胃を荒らす物質を分泌する)を持つようになる。
▲ 米国ライス大学の生物学者ワッシム・シェハーブ博士(左)と、ジャネット・ブラーム博士。
また。ブラーム博士はこのように述べた。
「植物の触感はひとつですが、しかし、この反応が「植物の内部時計」、あるいは、24時間の周期リズムによって調整されていることも最近判明したのです。これはかなり複雑な構造なのですが、しかし、これらの反応をつなぎ合わせていくことによって、植物が抵抗力を獲得するシステムについて、さらなる理解を得ようとと思っています」。
(訳者注) ところで、あまり関係はないことかもしれないですが、以前、ブログにコメント欄があった頃に、西洋の薔薇十字の修行をされている方がコメントを書かれていたことがありました。
その内容は「人間と植物の関係」にもふれているものでした。
全文は、過去記事の、「日本人研究者が獲得した「暗闇での視覚」: 人類と光と植物」の後半にありますが、そこから植物と関係のある部分をピックアップしておきます。
ここに古神道の大国隆正という人の『本学挙要』という本が紹介されていて、その本の中には「人と稲が逆さに並べて描かれている図」があるのだそうです。
この「人間は逆さまになった植物である」という概念は西洋にも東洋にもあるものだそうで、つまり、もともと植物と人間の関係は極めて強いというか、「同じもの」だといえる部分はあるようです。
なので、今回の科学的発表は、そういう古代からの概念を証明できる可能性とも結びつくものかもしれません。
そのコメント欄の抜粋です。
書かれたのは。ねるさんというペンネームの方です。
(ここから)
シュタイナーが言う体内における光合成の件、これは明らかにオカルトに聞こえますが、薔薇十字の伝統に生きる者は本気でこれを実践します。狂気の沙汰と言われようと、呼吸による身体内の炭素の把握はぼくらの最重要の関心事です。
これは呼吸の行とよばれます。
ぼくら薔薇十字の徒は人間の本来のバランスを取り戻そうとします。呼吸の行というのは人間である自分と植物との共生の問題です。人間は生きているだけで大気中に二酸化炭素をばら撒きます。そして「どれだけ二酸化炭素を排出しないか」という冗談みたいなことが、ぼくら薔薇十字の修行者にとっては真面目な課題です。
古神道の大国隆正という人の『本学挙要』という本の中に人と稲が逆さに並べて描かれている図があります。これはフトマニの区象といって、人間は逆さまになった植物であり、互いに共生しているという旨を説明するものです。西洋でも東洋でも霊学ではこれは一般的な認識です。
薔薇十字でもおなじです。
植物というのは、体内に緑色の血が流れ、太陽に向かって真っすぐに成長する地上の存在としてはピュアなあり方のお手本みたいなものです。
ゲーテには「原植物」という理想的な植物の概念があります。つまりあれが人間として目指すべき理想であり、最高の元型です。鉱物の中にも例えば水晶のように炭素が純化された存在として理想的な存在たちが居ます。植物や鉱物というのは本来の意味において頭上の天体運動の鏡像みたいなものです。薔薇十字の理想は、赤い血の情熱を保ちつつ植物のように上へと向かうことです。そして太陽に向かうことです。これが重要な点です。
(中略)
太陽へと向かう植物のようにしかも自由への衝動を内に担いながら上へと成長しようとする、地上では類をみない神聖な存在として人間存在が語られ、そしてその正しい道が古今東西どの流派に限るとなく実践されて来ました、、、、、と、このようなことを信じる、信じないは別として、いずれにせよこれが宇宙と人間の歴史に対する薔薇十字の伝統の解釈です。
これは呼吸の行とよばれます。
ぼくら薔薇十字の徒は人間の本来のバランスを取り戻そうとします。呼吸の行というのは人間である自分と植物との共生の問題です。人間は生きているだけで大気中に二酸化炭素をばら撒きます。そして「どれだけ二酸化炭素を排出しないか」という冗談みたいなことが、ぼくら薔薇十字の修行者にとっては真面目な課題です。
古神道の大国隆正という人の『本学挙要』という本の中に人と稲が逆さに並べて描かれている図があります。これはフトマニの区象といって、人間は逆さまになった植物であり、互いに共生しているという旨を説明するものです。西洋でも東洋でも霊学ではこれは一般的な認識です。
薔薇十字でもおなじです。
植物というのは、体内に緑色の血が流れ、太陽に向かって真っすぐに成長する地上の存在としてはピュアなあり方のお手本みたいなものです。
ゲーテには「原植物」という理想的な植物の概念があります。つまりあれが人間として目指すべき理想であり、最高の元型です。鉱物の中にも例えば水晶のように炭素が純化された存在として理想的な存在たちが居ます。植物や鉱物というのは本来の意味において頭上の天体運動の鏡像みたいなものです。薔薇十字の理想は、赤い血の情熱を保ちつつ植物のように上へと向かうことです。そして太陽に向かうことです。これが重要な点です。
(中略)
太陽へと向かう植物のようにしかも自由への衝動を内に担いながら上へと成長しようとする、地上では類をみない神聖な存在として人間存在が語られ、そしてその正しい道が古今東西どの流派に限るとなく実践されて来ました、、、、、と、このようなことを信じる、信じないは別として、いずれにせよこれが宇宙と人間の歴史に対する薔薇十字の伝統の解釈です。
(ここまで)
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[植物]に関係する過去記事:
・日本人研究者が獲得した「暗闇での視覚」: 人類と光と植物
2011年02月28日
・緑の意味
2011年05月02日