2012年04月26日



2015年10月7日に In Deep は http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




朝鮮人民軍総参謀長が述べる「米国を一撃で破壊できる移動式兵器」の真意



(訳者注) 昨日、ロシアニュースの「ロシアの声」の日本語版を見ていましたら、「北朝鮮:米国を一撃で破壊できる (2012.04.25)」という見出しがありました。

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これだけではあまりよくわからなかったので、韓国の国内メディアを調べてみると、4月25日に北朝鮮の国軍(人民軍)の総参謀長が朝鮮人民軍創建80周年を記念した式典で述べたものだということがわかりました。

すなわち、個人的な談話ではなく、国内でとはいえ、公的な発表といえます。
このことが掲載された韓国の記事をご紹介します。


さて、北朝鮮軍は、先日の記事、

北朝鮮が攻撃開始3分で目的地を焦土化させるという「特別行動」の正体
 2012年04月23日

でご紹介しましたように、これまでの北朝鮮軍にはなかった表現で、韓国に対しての挑発予告をしました。それは、

・今まで誰も見たことがないような特異な手段で

・目的地を3〜4分間以内に焦土化させる


という表現でした。

今回も先日の「特別行動」と同様に「移動式兵器」などの具体的な表現が出ています。

確かに最近の北朝鮮軍の演説は以前とは変わった感じを強く受けます。

これに関して、韓国のメディアは、韓国統一部の元長官のイ・ジョンソクという人に「特別行動の意味」に関して、インタビューしたものがあります。先日、訳していたんですが、紹介する機会がなかったですので、今回の記事の後に抜粋して載せておきます。「統一部」とは、韓国と北朝鮮の南北統一に関して担当する韓国の国政機関です。


ところで、韓国のネット住民たちの間では、こういう軍事的な問題よりも、1枚の写真が話題となっています。



ピョンヤン 2012年4月15日の人文字

その写真は 4月15日の金日成元主席の生誕100周年行事の日の平壌(ピョンヤン)の光景を、人工衛星から撮影したものです。下の写真です。

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右下に「赤地の中の黄色い文字」がある場所がありますが、これはピョンヤンの中央広場(金日成広場)のようで、そして、これは「人文字」なんです。つまり、赤いカードと黄色いカードを持った人たちが作っている。


Pyong-0415.jpg


広場の面積は相当なもので、どのくらいの人が動員されてこの文字が描かれたのかわからないですが、ここまで大きな人文字だと、ナスカの地上絵みたいなもので、地上からはほとんど誰も見えないですので、「空から撮影されることが前提となっているイベント」だというのが興味深いです。


ちなみに、黄色で書かれてある文字は「平和」。


では、ここから本記事です。

ちなみに、今回記事の総参謀長の発言からも、この「移動式兵器」が EMP 兵器を念頭に置いているというように思えて仕方ありません。

かつて米国のヘリテージ財団という保守系シンクタンクが「イランが民間船を装って EMP を米国上空に放つシミュレーション」について米国議会に提出した意見書には次のようにありました。


過去記事「米国の保守系シンクタンクが米国は電磁パルス攻撃で壊滅すると報告 (2010年11月30日)」より。

「EMP 攻撃は、それほど高いレベルの技術を持たなくとも可能なものなのだ。たとえば、敵が米国へ EMP 攻撃を実行しようとする場合、その敵は長距離弾道ミサイルを持つ必要はない。 EMP 攻撃は、高高度に核弾頭を高く打ち上げればいいため、たとえば、米国の海岸沖で貨物船を使って、短距離か中距離のミサイルを使えばできてしまうのだ」



イランは Shahab-III というミサイル実験で EMP 攻撃と一致する高度で高高度爆発させていますが、その状態は今回の北朝鮮のミサイル実験の「失敗」と同じ様相でした。

では、ここからソウル新聞の記事です。




北 총참모장 美 공격할 무기 보유 정체는?
ソウル新聞 (韓国) 2012.04.25

北の参謀総長の「米国を攻撃できる兵器を保有した」の正体は?

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▲ 4月15日、ピョンヤンの金日成広場でおこなわれた金日成主席生誕100周年を祝う大規模な閲兵式で、リ・ヨンホ(李英鎬)朝鮮人民軍総参謀長(手前)とチェ・ブイル(崔富日)副総参謀長が、金正恩(キム・ジョンウン)国防第1委員長に閲兵報告をしている。


北朝鮮の高官であり実力者である人民軍のリ・ヨンホ総参謀長は、「米国を一撃で破壊することが可能な移動式の兵器システムを保有している」と述べた。しかし、兵器に関しての具体的な言及はなかった。


朝鮮中央通信は 4月25日、平壌の人民文化宮殿で開かれた朝鮮人民軍建軍 80周年を祝う中央報告大会で、米国の攻撃に対応するための防御態勢の重要性を強調しながら、リ・ヨンホ総参謀長がそのように述べたと伝えた。

報道によると、総参謀長はこの日、人民文化宮殿を訪問した席で「移動式の兵器で米国を一撃で破壊することができる」と語った。 しかし移動式武器の名称などは具体的に明らかにしていない。

先立って、北朝鮮は 4月23日、「逆賊一味の分別ない挑戦を完全に壊してしまうための私たちの革命武力の特別行動がまもなく開始されることを告知する」と、韓国を威嚇した。

その威嚇の内容は、「人民軍最高司令部 特別作戦行動隊」の名義で発表された内容によれば、「特別行動の対象は主犯の李明博(イ・ミョンバク)とその逆賊一味であり、かつ、公正な世論の大黒柱をにいる保守報道機関らを含んだ鼠野郎ども」とし、その報道機関の対象を、「ソウル真ん中に位置している東亜日報、そして、KBS、MBC、YTNらと同じ報道機関ども」と明らかにした。

この日の行事には金正恩国防委員会第1委員長など党指導部が大挙参加した。 北朝鮮の正規軍である人民軍は1948年2月8日政権樹立を控えて建軍された。 北朝鮮は1977年までは 2月8日を建軍節で記念してきたが、それ以後は 4月25日を「人民軍創建記念日」とした。

北朝鮮では、故金日成主席が 1932年4月25日に中国吉林省で抗日パルチザン部隊の「朝鮮人民革命軍」(当時の名称は「反日人民遊撃隊」)を組織したと喧伝されてきている。





(訳者注) ちなみに、先日の北朝鮮のミサイル実験の時にも目にしましたが、以前から「ミサイル迎撃」というような文字を見ますが、正直、それは現実的な話ではないと思います。

大国の軍産複合体などが「防衛できますよ」と自国と他の国に植え付けた幻想を引きずり続けている「アニメ的な話」のように感じます。

「来るコースがわかりきっているもの」を「そこで待ち受けて迎撃する」というようなことならともかく、実際の戦争はそういうように親切ではないです。

しかも、仮に EMP 攻撃なら、さほど大げさな発射装置も必要とせず、移動式兵器として民間の船を装えば、どこからでも発射可能です。そんな「未知の場所から突然発射されるミサイルに対処できる」と考えるほうがおとぎ話のように感じるのです。


ここからは前記した、数日前の韓国の YTN といメディアに掲載されていた、イ・ジョンソク元韓国統一部長官へのインタビューから抜粋です。ちょっと長くなるかもしれないですが、単独した記事にするほどのものでもないので、こちらに載せておきます。

ちなみに、元長官は、「特別攻撃」は「サイバー攻撃」ではないかと推測しているようです。




북한의 특별행동 개시 도발 아닌 실제 행동으로 이어질 가능성은?
YTN 2012.004.24

北の特別行動の開始が挑発ではなく、実際の行動につながる可能性はあるのか

年初から南北関係がさらに急激に危機局面に駆け上がっており、特に北朝鮮の長距離ロケット発射を契機に、南北の関係はさらに悪化している状況だ。

挙句の果てに、昨日、北朝鮮軍は「韓国に対しての特別行動がすぐに開始される」として、事実上の韓国への挑発の予告までした。韓国では大統領選挙を控えていることもあり、ニュースが政治上の懸案に埋没しており、もう少し南北関係を慎重に探ってもいいのではないかと感じる。

今回、イ・ジョンソク元韓国統一部長官に電話でお話を伺った。



記者:4月13日に、北朝鮮は光明星3号を発射して全世界の耳目を集中させました。その衛星打ち上げは失敗に終わりましたが、国連安全保障理事会は、北朝鮮を糾弾する議長声明を採択しています。2009年にも長距離ロケット発射と安保理議長声明、そして核実験ということがありました。現在の状況は、2009年のようになると予想されますか?

イ・ジョンソク:現在は、 2009年のように北朝鮮が国連議長声明に反発した状態ではありません。しかし、過去のように核実験に進む可能性は大きく、その可能性を排除することはできません。ただ、おそらく金正日時代とは違い、金正恩体制になって北朝鮮の変化があるのではないかと考えます。

たとえば、金正恩は衛星打ち上げが失敗に終わった後に、すぐに失敗を認めたではないですか。こういうことは金正日の時代にはなかった。金正恩は透明性を高めようとして国際的な規範に少し近づいた上で動いたという意味ではないでしょうか。

だから、今回一応は議長声明に反発した北朝鮮が出してきた声明でも、宇宙の平和的利用のための自主権を強調しています。まだ正確には分からないですが、統治スタイルが金正恩と金正日では違うようです。そのような状態ですので、今後、核実験ににつながっていく可能性については、半々くらいでないかと考えています。国際社会がどのように北に対応するのか、あるいは、中国が北朝鮮をどのように説得するのかによって、核実験の実施の行方はあるかもしれません。



記者:金正日と金正恩の統治スタイルが違うとおっしゃいましたが、具体的にどのような変化を見せていると思われますか? 金正恩体制になり、すでに4カ月を越えています。権力継承がスムーズにいっているのか、あるいは、何か問題が存在しているのか​​に関してはいかがでしょうか?

イ・ジョンソク:確かに、金正日と金正恩の統治スタイルは若干違うようです。この前の閲兵式で、金正恩は公開演説をおこないました。しかし、金正日の時は、最初の第一声では「朝鮮人民軍に栄光あれ」と一言叫んだだけでした。

ところが、金正恩は出てすぐに、いわゆる指導者としての 20分間の演説する姿をそのまま公開した。その次に前回の韓米合同軍事訓練の時にも、ここに対抗して軍事訓練をAP通信に公開したのも彼だった。また衛星の打ち上げも公開した。このあたりを見ると、金正恩のスタイルが政策の透明性を見せたがる側面があるというのは事実のようです。

金正恩の現在の権力継承は確実にされているようです。それは、金正恩が、衛星の失敗後にすぐに失敗を認めたことに現れています。また、金正恩の公開演説は、全国に生中継されましたが、演説の経験が全くない若い立場では、いくつかのミスが出てくることがあります。それらのリスクをすべて我慢したということは、ある程度の権力基盤があると見るのが妥当だと思われます。



記者:昨日、北朝鮮軍が 「北の特別行動がまもなく開始されることを発表する」と明らかにしましたが、これは韓国への挑発でしょうか。各社の報道を見てみると、「これは単なる脅しだ」という脅迫論と、そうではなく、実際の行動があるという議論が入り乱れている現状ですが、イ・ジョンソク元長官はどのように判断されていますか?

イ・ジョンソク:北朝鮮軍は今回、「まもなく開始される」という具体的な表現をしています。そのため、単純な脅しと見るのは難しいと思います。実際に何らかの形で北が行動する可能性が高いと思われ、それに関しては心配です。今は非常に危険な状況だと思います。



記者:それなら、北朝鮮が主張する「特別行動」はどのようなことを意味しているのでしょうか?

イ・ジョンソク:北は、自分たちの短い瞬間に「今まで誰も見た事がないような珍しい手段と我々流の方法により焦土化する」と話しています。この発言だけで、それがいったいどのような方法であるのかを探ることは難しいです。ただし、いくつかの状況を見た時、戦争に発展するような武力挑発ではないような気がするのですけれどね。



記者:正面きっての挑発ではないと?

イ・ジョンソク:もちろんこれは推測ですが、サイバー攻撃や、あるいは、通常の兵器や武力を使わない挑発ではないかという推測はできますが、やはり推測でしかありません。明らかなことは、何らかの形での挑発を北朝鮮は予告したわけで、実際に挑発してくる可能性は高いと思っています。



記者:たとえば、 DDoS 攻撃などのサイバーテロの形になる可能性があるということですか?

イ・ジョンソク:サイバーテロの形やハッキングなどの形をとるのかはとともかく、それらにより、制御装置やコントロール装置を機能麻痺をさせるような攻撃をおこなうなど、もちろん、それは分からないですが、今までよく話されているような古来からある軍事的な挑発のような形ではない様相でおこなわれるのではないかと考えています。



記者:この点について、わが韓国側の対応を考えてみたいと思います。韓国の態度としては、今後、どのように北との対話を進めるべきでしょうか。

イ・ジョンソク:今、北のこのような脅威発言が出てくることについての、たとえば、私たち韓国側の対応についでてすが、北朝鮮がロケットを発射した時に、それに対しての非難や対応といったものをとることは当然なんですが、ところが、その過程の中で、われわれ韓国側から本質から外れた論調が出ていたりしたのが実際です。

たとえば、金正恩をターゲットにする罵詈雑言がメディアに公開されたりとか、あるいは、李明博大統領が北朝鮮を刺激する発言をするとか、このように双方が敏感になっている時期に、そのようなことをおこなうということは、むしろ北に争いの口実をつくりだす材料となっているような気がするのです。なので、結局、金正恩体制の発足以来、韓国と北朝鮮の間の感情的な争いや、あるいは口論が激化していく現在の状況というものは、とても危険な状況に来ていると言いたいのです。



記者:北の挑発には断固たる対応が必要だという意見が多いですが、ここにつきましては、どう思われますか?

イ・ジョンソク:もちろん、断固として対応するべきです。しかし今現在、北朝鮮の最も重要な挑発はロケット発射だったはずなんです。なので、ロケット発射について、我々は厳重な対処をしてきたはずなのです。韓国政府は声明も発表し、国会の韓国国防委員会での糾弾決議も出た。そして、国連安保理の議長声明も出ました。

ところが、最近の韓国で話されていることは、我々のロケットに対しての厳重対応についてではなく、まったく別の方向、つまり、本当に責任のある人たちがこの敏感な時期に、北への批判発言や金正恩への侮辱発言などをし、そこから相手(北朝鮮)がここまでの態度を見せることになってしまったのではないかと思えるのです。責任のある人々が問題への本質的な取り組みをしていれば、このようなことにならなかったとも思います。本質を外れたところから派生したことだけに心配なのです。



記者:消耗的な感情論の対立になることが多すぎると。

イ・ジョンソク:相手に挑発の口実と大義名分を与えてここまで来てしまったのですが、これで果たして実益があるのかと思います。​今の韓国の「ならず者国家と話している」というような北朝鮮との対応が、さらに国際社会も同じように行動するようになった場合、あるいは、わが国の安全保障を担当する大​​統領が先頭に立ってこの鋭敏な時期に北に挑発的な言動を繰り返した場合、これは本当に危険かなと思います。

最も重要なことは、この激化した北朝鮮の挑発と脅迫の連鎖を直ちに断たなければなりません。韓国の当局者も北朝鮮を刺激する行動をせずに、いったん南北が激化した対立を自制するのが一番重要ではないかと思います。

そして、南北対話をする必要があります。李明博政府の強硬政策の4年間で私たちが得たものはなく、葛藤や紛争、傷だけが積み上がった。北朝鮮もこの4年、南北対立の立場をとってきましたが、北は核能力を強化しているかもしれないですし、また、空腹の多くの国民がいます。今は南北両方が対決する政策で損失を計上している場合ではないと思います。お互いに相手を尊重し、対話する上でいくしかないと思うのです。



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