[追記]続報として「ペルー続報: 政府により立ち入り禁止となったペルーのイルカ大量死現場周辺の海岸」という記事を記しました。
--
(訳者注) ここ2年くらい、イルカやクジラや魚類などの海洋生物の大量死はあまりにも多く起きていますが、それでも、4月22日にペルーで「 877頭のイルカの死体が海岸に打ち上げられた」という報道がなされて、これにはやや驚きました。
今回はその時のニュースもご紹介します。
その前にも、In Deep の過去記事の、
・イルカが伝えてくれること: 米国とペルーだけで 300頭以上の死亡したイルカが打ち上げられた 2012年2月
2012年02月17日
の中で、ペルー北部の海岸で、たった3日間に 264頭のイルカが死亡して漂着しているのが発見されたことを取り上げたことがあります。
イルカは今年、私が目にしたニュースでの数だけでも、全世界で 1500頭以上は死んで海岸に打ち上げられているはずで、もちろん他に「人目につかないところで死んでいるたくさんのイルカ」というものもいるはずです。
そんなこともあり、今では「イルカの大量死は通常の現象」というようなことになった感さえあるのですが、昨日になって、同じペルー北部の海岸で、「ペリカン 500羽が死んでいるのが発見される」というニュースが英国の BBC ニュースで放映されていて、さすがにこう同じような場所で大型動物の大量死が続くと、気にならないというわけにもいかず、ご紹介します。
500羽というのはペルー政府が確認した数で、ローカルメディアの報道では、他の地区でも 1,200羽くらいのペリカンの死体が見つかっているようです。
イルカの大量死も、ペリカンの大量死も、共に場所は下の地図の「A」(リマ市)の北部にある海岸一帯の地域です。
問題としては、大型生物の大量死が一度だけではなく、数ヶ月も続いているということで、これは、イルカにしてみても、一度の事故か何かで大量に死亡したと考えるよりも、ペルー沖から南太平洋で、「継続的に何か問題が起きている」ということを示唆しているような気もいたします。
まずは、イルカの報道からです。米国のインターナショナル・ビジネス・タイム紙からのものですが、写真はかなり凄惨です。
Mass Dolphin Death Mystery In Peru, Authorities Blame It On Viral Infection
International Business Times (米国) 2012.04.22
ペルーの謎のイルカの大量死: ウイルス感染を疑う専門家たち
▲ 2012年4月6日、ペルー北部のチクラヨにあるサンノゼ・ビーチに打ち上げられたイルカの死体。
2012年の2月からの2ヶ月半だけの間で、ペルー北部の海岸に 877頭のイルカの死体が打ち上げられ続けている。ペルー政府と、環境保護団体は、この背景にある原因を究明しているが、現在のところ、明確な理由はわかっていない。
ウイルス感染による大量死かもしれないと見ている海洋生物の専門家たちがいる一方で、ペルーの環境保護団体は、これらのイルカの大量死の原因を、エネルギー会社「 BPZ エナジー」による海底の石油探査が原因だと非難している。
しかし、ペルー政府の環境副大臣ガブリエル・キジャンドリア氏は、イルカの大量死の原因は、ジステンパーの系統のウイルスである可能性が高いという専門家の言葉を引用した。
▲ 2012年4月6日、サンノゼビーチ。
BPZ エナジーは、米国のヒューストンに本社を置くエネルギー会社で、 2月8日から 4月8日の間、ペルー沖で海底の油田調査をおこなった。
環境副大臣のキジャンドリア氏は、BPZ エナジーの油田の調査で発生した音波がイルカに影響した可能性はあるとしながらも、現在の時点では BPZ とイルカの大量死の因果関係を示す証拠はないと述べた。
漂着したイルカの死体のほとんどは解剖されて死因が調査されているが、その結果、食品中毒などによる死亡の可能性を除外した。
最近、世界中でイルカの大量死が相次いで報告されており、専門家たちは種の存続への懸念を高めている。
(訳者注) 上の最後に「世界中」とありますが、最近では、中国で「スナメリの大量死」のニュース記事を目にしました。スナメリは下の海洋生物です。
スナメリもイルカです。基本的には海の生き物ですが、中国の揚子江(長江)には淡水で生きるスナメリが群生していて、それらが次々と死体で打ち上げられているという記事です。
これまで報道されていなかっただけなのかもしれないですが、以前は、少なくともスナメリの大量死に関してのニュースは中国ではあまり見ませんでした。参考までにご紹介しておきます
それでは、最後に、昨日の英国 BBC のニュースより、ペルーでのペリカンの大量死の記事です。
Peru examines deaths of more than 500 pelicans
BBC (英国) 2012.04.30
ペルーでの 500羽以上のペリカンの大量死の原因を調査するペルー政府
ペルー北部の海岸で、約 70キロメートルの長さにわたり、ペリカンが死亡しているのが発見された。その数は 500羽以上に及ぶ。ペルー政府は大量死の原因の調査を始めた。
見つかったペリカンの多くはこの数日間の間に死亡したように見えると担当職員は述べる。
また、現地で科学者たちは、アシカとウミガメの死体も見つけた。この海岸沿いでは今年の初め、800頭以上のイルカが死亡して漂着しており、その原因は現在でも調査中だ。ペルー政府は、そのイルカの大量死と共に、今回のペリカンの大量死に「懸念している」と述べる。
ペルーの海洋研究所では、発見されたペリカンの死体は 538羽と、あとはバラバラになったものが推定54羽とし、他にアシカとウミガメの死体が発見されたという。
また、ペルーの地元メディアでの報道では、ピウラ地区とランバイェケ地区で、その他に 1,200羽のペリカンの死体が発見されたことを示唆している。
今年はじめのイルカの大量死については、ウイルスである可能性が最も高いとされているが、その原因として、海洋生物自身の免疫システムが弱体化しており、そのため病気での死亡数が増えているのではないかと専門家は言う。
(訳者注) はっきり言って、ひとつの国のひとつの地域で起きていることとしては尋常な話ではないと思います。
たとえば、上の記事では「約 70キロに渡って」とあり、何となく広い範囲に見えますけれど、実際には東京湾や大阪湾を一周するよりも短い距離です。
たとえば、東京湾の海沿いに、4ヶ月の間に 1000頭のイルカの死体と 2000羽のペリカンの死体が打ち上げられたとしたら・・・と考えると、そのものすごさが想像できるような気がします。
原因はわからないにしても、世界中で動物の大量死はなお加速していることを実感します。
--
[大量死]に関係する過去記事:
・新年のノルウェーでの魚の大量死で思い出す「メキシコ湾の原油流出と海流の関係」
2012年01月04日
・鳥と魚の大量死をめぐる報道より(3) 世界に拡大する大量死と磁場変動説。そしてコレキシットの幻影
2011年01月06日
--
[1年前の In Deep ]
2011年05月02日の記事
・緑の意味