2012年06月03日



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ハチドリはどこへ消えた?: 米国のハチドリの「消滅」の阻止を試みるアメリカ国立科学財団



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▲ ユリのはざまを飛ぶハチドリ。






 


今回は、米国のハチドリ(のいくつかの種)が消えてしまうかもしれないというもので、わりと地味な報道ではあるのですが、この数年間、様々な身近な動物たちが「この世から消えていっている」ということを私たちは知りました。

それらのことは、以前のブログなどから続けて断片的に記事にしていますので、一応リンクしておきます。





ミツバチ(世界的に大量失踪が発生。原因は未確定)

 関連記事: 植物の終局とミツバチの大量失踪
 クレアなひととき 2009年03月26日

コウモリ(白い鼻症候群というカビの病気による大量死。どうして流行したのかは不明)

 関連記事:全米に拡大を始めたカビによるコウモリの大量死
 In Deep 2010年02月17日

スズメ (1900年代より、全世界で、地域により90パーセント以上減少。原因は不明)

 関連記事: 日本のスズメの数が 50 年で 10 分の 1 に激減
 In Deep 2010年03月12日



▲ 2010年03月02日の東京新聞より。





スズメやミツバチというのは、その有益性という意味以上に「常に私たちの生活と共にいた生物」であり、それが消えていくということは、農業危機などに現れている実際の問題を越えて、なんとなく希望を失うタイプの話題ではあります。

今、私が住んでいるあたり(埼玉県の所沢近辺)は、以前住んでいた東京の杉並区に比べると、鳥がものすごく多く、「最近の鳥と私の関係」というものに関しては日記的な、あるいは情緒的な話もたくさんあるのですが、そういう個人的な話は最近は自粛するようにしていますので、また今世紀にでも機会があれば書きたいと思っています。

それにしても、毎日、「ホトトギスの鳴き声で目覚める」というのは生まれてはじめてかもしれません。ホトトギス・・・正直にいうと、うるせーくらいに鳴き声がデカイです。


話を戻すと、スズメの減少に関しては英国のインディペンデント紙が 2006年に掲載した記事があります。これは、「 動物の大量死の2011年1月分のリストアップ」という過去記事に参考資料として載せたものですが、わりと長いですので、今回の本記事の下に載せておきます。


スズメやミツバチが消滅していっている「完全な理由」というものはわかっていません。ミツバチに関しては、ニコチン系の農薬(ネオニコチノイド)が、昆虫の中枢神経を破壊することから、それが原因ではないかと言われていますが、ニコチン系の農薬を使用していない国でもミツバチの消滅は起きていて、なかなか原因の確定というのは難しいもののようです。

ニコチン系農薬と昆虫の神経の話は2年くらい前に書いたことがあります。

合理化に殺されていく昆虫
 地球の記録 2010年04月01日


今回の米国のハチドリの消滅というのは、「その地域が暖かくなったため」というハッキリとした理由があるものです。


高地にあるユリを食料として中米から移動してくる種類のハチドリが米国にいるようなんですが、そのハチドリたちは「氷河ユリ」という山野草の一種の花の蜜をエサにします。

しかし、その地方(今回の調査はロッキー山脈)がこの40年間で暖かくなったために、「ハチドリが到着した時にはユリの開花が終わっていて、食べるものがない」という事態に直面しそうだという話です。

それでは、ここからです。






 


Where Have All The Hummingbirds Gone?
Nano Patents and Innovations 2012.06.02

ハチドリたちはどこへ行った?


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▲ 春の短い期間に開花する「氷河ユリ」はマルハナバチとハチドリたちにとって重要な栄養源。


氷河ユリは、北米大陸の西部の高地域に育つ野草だ。このしなやかで、優雅な風情を持つ氷河ユリは、春の雪解けの日から数日間、花を咲かせる。そして、花が咲いている間の花の蜜は、マルハナバチとハチドリたちにとって重要な栄養源となる。

というより、「かつてはそうだった」と言ったほうがいいかもしれない。

このユリは、現在ではこの地域の気温の上昇によって、もっと早くに開花する温帯植物となっているのだ。

メリーランド大学のデイビッド・イノウエ博士と、エイミー・マックニー博士の研究によると、地域の気温上昇により、この氷河ユリは 1970年代より約 17日早く開花していることがわかった。

これの何が問題なのかというと、生物学者たちによると、現在の開花の時期が、ハチドリの到着の時期と同期していないということだ。つまり、かつては、氷河ユリの開花の時期とシンクロしてこの地に到着していたハチドリたちだが、現在では、かつてと同じタイミングで到着すると、その時期にはすでに開花は終わりを迎えていて、ハチドリたちは彼らの栄養源である花の蜜と出会えないのだ。



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▲ この研究は、米国のロッキー山脈にある研究所で続けられている。


広い尾を持つハチドリたちは、春を迎えると、中米からアメリカ合衆国の西部地域のへと移動してくる。ハチドリたちは短い夏をこの北米大陸のこの山岳地帯で過ごす。

まず、オスのハチドリたちがユリが咲く前にその地域でユリを探す。かつては、そのようにハチドリたちはユリの花の蜜を摂取していた。

しかし、この40年間で、その時間的周期が13日間ほど崩れてしまったと研究者たちは言う。


「特に、この数年では、最初のハチドリが米国に到着する頃にはユリの開花は、すでに終わっているのです」と、マックニー博士は言う。

現在の傾向がこのまま続くとすると、あと 20年で、ハチドリたちは完全にユリの開花との時期がずれてしまうと生物学者たちは計算している。この研究結果は、科学専門誌「エコロジー」の最新号で発表される。


アリゾナ大学のデイビッド・バーテルセン博士は、今回の研究発表について以下のように述べる。

「ハチドリたちが、ユリからの栄養資源がもはや利用できないとなると、広い尾のハチドリたちのような種はこの地に到着すること自体が生存の危機であるという可能性に接触するのです。到着しても食べ物がない。生物学者たちは、気候の温暖に伴いハチドリたちは今より北部に移動していくだろうと予測していますが」。

しかし、もし、ハチドリたちが生きるための適当な場所を見つけられない場合に備えて、アメリカ国立科学財団は、研究に資金を提供した。

南の地域で孵化するハチドリたちは、あまり挑戦的な行動をしない傾向がある。なので、生息地を見いだせない可能性があるのだ。


イノウエ博士は以下のように言う。

「たとえば、アリゾナ州の場合、蜜の供給源となるカステラ草の開花している時期と、ハチドリがこの地に到着する時期が明らかに短くなってきているのです。あるいは・・・いずれ、山の雪が今より早く溶けるようなことになれば、ハチドリたちがやってくるより前に、氷河ユリの開花が終わってしまうという自体も考えられなくもないのです」。


そして、イノウエ博士はこう続けた。

「ハチドリがこの地に着いた時、『花はどこにいったんだ?』と思うようになった後、私たちは、『ハチドリたちはどこに行ったんだ?』と思うことになるのかもしれません」。





ここから2006年のインディペンデント紙の記事です。


First they disappeared from Britain. Now Europe's house sparrows have vanished
インディペンデント (英国) 2006.04.19

スズメは最初、英国で消え始め、今ではヨーロッパ全域でその姿を消している

スズメは、フランスや他の欧州諸国ではもはやありふれた鳥ではなくなっている。

かつてはいくらでも飛び回っていたスズメだが、今ではパリを始めとするフランスの都市部で急激に減少しており、また、ドイツ、チェコ、ベルギー、オランダ、イタリア、フィンランドの都市部ではさらに減っている。

イギリスでは、過去 15年間でスズメの数が 90%減ったとされているが、鳥類学者たちは突然のスズメの激減に対しての合理的な理由を見出すことができていない。また、フランスのパリでは、20万羽のスズメが消滅したとされるが、これは謎としか言いようがない。

ひとつの理由として、「他の種類の鳥が増えて、スズメの生活域が浸食されたのではないか」というものがある。また、車の移動電話や携帯電話の電磁波に原因を求める人たちもいる。

ただ、どんな理由にしても、なぜ、その影響が「鳥」全般ではなく、「スズメ」に限定されるのか。

類似パターンは、ヨーロッパの各地で報告されている。ハンブルクでは、過去30年間でイエスズメの50パーセント、プラハでは、60パーセントのスズメが消滅したと見られている。

フランスの専門家は「危険信号だ」と述べる。

「イエスズメは、この1万年のあいだ、人間と共に暮らしてきたわけで、人間にとって非常にシンボリックな鳥なのだ」と、生態系への懸念を表している。

私たちにとって最も身近な鳥の衰退の問題は6年前から議題に載せられており、様々な原因が検討されている。それには、カササギや猫による捕殺、殺虫剤、ピーナッツ、あるいは気候変動、または住居の構造の変化などの原因などが挙げられているが、それでもスズメの減少の原因の謎は残っていると言わざるを得ない。