20世紀初頭に初めて黒点理論を提唱した旧ソ連のチジェフスキー博士の理論に「宇宙線の存在」を重ね合わせてみる試み
▲ アレクサンドル・チジェフスキー博士( / 1897年2月7日- 1964年12月20日)。 Russian cosmism より。
宇宙関係のサイト「メッセージ・トゥ・イーグル」を見ていると、アレクサンドル・チジェフスキー ( Alexander Chizhevsky )という名が出ていて、久しぶりにこの名前を目にしました。
この人は 1897年に生まれて 1964年に亡くなったロシア(あるいは旧ソビエト)の科学者で、世界で最初に「黒点と人間の精神活動」についての相関関係をまとめた人です。チジェフスキー博士のことを初めて知ったのは、3年くらい前のヤスの備忘録の記事でしたが、その後、自分でも興味を持って、調べていた時期がありました。
最初にそのチェゼフスキー博士についてご紹介しておこうと思います。日本語での通常のプロフィールはほとんどないようですので、英語とロシア語での Wikipedia を要約しておきます。
アレクサンドル・チジェフスキー
旧ソビエト連邦の国際的な科学者。
太陽が生物に与える影響に関しての学問「ヘリオバイオロジー ( heliobiology ) 」を設立。また、生物学的実体上の大気のイオン化の影響に関しての研究「エアロ・イオン化」 ( aero-ionization ) もおこなった。
また、博士がおこなった、コスモバイオロジー(宇宙生物学 / cosmo-biology)、生体リズム( biological rhythms )、そして、ヘマトロジー(血液学 / hematology)などについての研究も現在では注目に値すると言われる。
そして、最近になって最も注目されている博士の研究として、11年周期の太陽活動と地球の環境変化の関係、そして、太陽活動と人間の活動の関係の研究である。
とあります。
チジェフスキー博士の研究で、最初に出てくるのが学問の分野としての「ヘリオバイオロジー」というものなのですが、これは直訳すると「太陽生物学」という意味になると思うのですが、調べると、現在の公式な学問のジャンルには存在しないようで、チジェフスキー博士のこの分野の学問は途切れてしまったようです。
その後に続く「生物学的実体上の大気のイオン化の影響」というのは自分で訳していて意味がよくわからないのですが、何となく魅力的な妖しい響きを感じる部分はあります。
そして、その後のコスモバイオロジー(宇宙生物学)、生体リズム、ヘマトロジー(血液学)は、それぞれ現在にまで続いており、特に宇宙生物学は、 NASA を始めとする宇宙探査の研究施設での「最大級の学問」といっていいと思います。
▲ 生体リズムでよく使われる図の一例。
▲ 過去記事「最近のカオスな太陽データから考えるいろいろなこと」より、チジェフスキー博士が1920年代にまとめた「太陽黒点と戦争や社会暴動の推移の変化の一致」を現したグラフ。下の太い線のほうが太陽の黒点数で、上の細い線は世界で起きた軍事と政治暴動の数。オリジナルの論文は、こちらにあります。
宇宙と人間の関係を追求した20世紀初頭のロシア宇宙主義
そして、今回、調べている中で初めて知ったのですが、このチジェフスキー博士は、「ロシア宇宙主義」という一派の代表的な学者だったようです。
ロシア宇宙主義の簡単な説明は、日本語の Wikipedia にもあります。
ロシア宇宙主義
20世紀初頭のロシアで発生した宇宙を中心とした哲学的・文化的運動である。
ロシア宇宙論とも呼ばれるが、いわゆる宇宙論とは直接の関係はない。
ロシア宇宙主義は自然哲学を基盤として宗教と倫理学の要素を組み入れたもので、宇宙と人間の起源・進化・未来の歴史と哲学を扱う。西洋と東洋の哲学的伝統の要素を組み合わせ、さらにそこにロシア正教の要素も組み入れている。
ロシア宇宙主義の多くの考え方は後にトランスヒューマニズムへと発展した。
ここにでてきた「トランスヒューマニズム」という聞き慣れない言葉は以下の説明のようです。
トランスヒューマニズム
超人間主義などと訳される。新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を進化させ、人間の状況を前例の無い形で向上させようという思想である。
また、トランスヒューマニズムは人間の機能拡張やその他将来の科学技術の開発・使用により、将来起こりうることを研究する学問でもある。
ここに至って、「ははあ・・・ロシアだなあ」と、先月の過去記事を思い出しました。
5月の連休くらいに、
・ロシア軍の最終兵器: 通常の人間を超人にするサイコジェネレーターや細胞の電極に作用する周波数兵器
In Deep 2012年05月04日
というものをご紹介したことがあります。
そこで取り上げたロシアの記事には、このようにありました。
4月12日のロシア新聞では、超心理学専門家アレクセイ・サヴィン中将の「作戦第 10003号」に関する秘密情報について書かれており、これは普通の人間が超人になれる未来兵士のコンセプトがあったとされている。
というもので、このあたり、上のトランスヒューマニズムの「新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を進化させ、人間の状況を前例の無い形で向上させようとする試み」というあたりを彷彿させます。
「トランスヒューマニズムは戦争のための学問ではない」と思われるかと思いますが、歴史上の多くの学問もそうでした。戦争兵器のために研究されていたものではないものでも、「ある人にとっては兵器に転用できるように見える」、あるいは「兵器に転用したいと思う」ということです。
核兵器なんてのはその最たるものかもしれません。あるいは、現代ではさらにそれを上回る「兵器として研究されたわけではない」様々な科学が兵器に転用されています。
まあ、どんな有用な科学でも「使う人次第」というのは本当にその通りで、このあたりは今後も含めて何とも言えないです。
さて、話が逸れましたが、このような「ロシア宇宙主義」というところから始まった中で生まれたチジェフスキー博士の「太陽黒点理論や、あるいは、「宇宙と人間の関係」を見つめ直す試みですが、最近の In Deep の記事では、この「太陽活動と人間の精神関係」というものに関して、そこに「宇宙線と人間の精神」というものの関係を見ざるを得ないという形となってきています。
太陽活動と人間の関係に「宇宙線の量」も加えて考えてみる
過去記事で、何度かふれていますが、太陽活動と地球に到達する宇宙線の量には「逆」の関係があります。
すなわち、
・太陽活動が「弱い」時期 → 宇宙線が「多く」地球に到達する
・太陽活動が「強い」時期 → 宇宙線の地球への到達量は「少ない」
という関係です。
これは、太陽からの磁場などで宇宙線が遮られたりするということがあるためで、「太陽(活動)は宇宙線の地球への到達量をコントロールしている」ということが言えるようにも思います。
さて、先日、
・私たち人類も他のあらゆる生命たちも「宇宙線にコントロールされている可能性」を感じて
In Deep 2012年06月13日
という記事を書いたのですが、ここで、「宇宙空間の宇宙線は、生物の DNA に対して、地球で受ける宇宙線の影響とは違う影響を与える可能性があるのかもしれない」と私の個人的な推定を書いて上で、この50年間のうちで、
・宇宙線の観測数値が最も高かった(つまり太陽活動が最も弱かった)1965年
と、
・宇宙線の観測数値が最も低かった(つまり太陽活動が最も強かった)1992年
を比べてみたりしてみました。
内容的には主観もあるので繰り返しは触れないですが、そのそれぞれの時期で、地球の人類の性質というのか、気質が全体として違うもののようになっていることがなんとなくわかるようなが気がしたのです。
そして、さらに大事なことがあるのですが、その後に書いた記事、
・消えていく私の中の「宇宙人」と、消えていく「母なる太陽」
In Deep 2012年06月17日
などに書いたことなのですが、「太陽は地球の衛星(月)かもしれない(概念としてですが)」ということがあります。
つまり、地球にとって、「太陽という存在が地球のツールとして存在している可能性」を想定すると、宇宙線を太陽がコントロールしていることは納得もいくのです。
そういう前提があるということで、さらに「宇宙線が多い時と少ない時を太陽活動周期ごとに見てみる」ことにしました。下のグラフは、上記の過去記事に載せたものですが、下の図をさらに詳しく見てみるという感じです。
とはいっても、地球での宇宙線の観測は 1960年代からのものですので、やはりこの 50年くらいの間ということになり、決して長い期間のデータとは言えないですが、そのことを見ていきたいと思います。
すでに、ずいぶんと長くなりましたので、ここでいったん切ります。
次回に宇宙線と太陽黒点のデータと、最初に書きました「」メッセージ・トゥ・イーグル」のアレクサンドル・チジェフスキー博士のことが出ていた記事の翻訳を書こうと思います。
ところで、チジェフスキー博士は少なくとも、ロシアでは一種の「英雄」と言える部分はありそうで、その証としては、「ロシア連邦の記念硬貨」の肖像となっていることです。
▲ チジェフスキー博士がデザインされた 1997年のロシア連邦の記念硬貨。
西洋社会では忘れられた「科学」ですが、地元のロシアではわりと継続的に信奉を集めている学者さんといえるように思います。