
▲ 昨日のスペースウェザーの記事「ELECTRIC-BLUE CLOUDS」より6月24日にスコットランドで観測された夜光雲。以前なら高緯度でしか見られなかった夜光雲が、今では各地で見られていて、米国でも、コロラド州、ヴァージニア州、カンザス州、それと南部であるユタ州でも観測されていることが説明されています。
(訳者注) タイトルでは「謎の」としたのですが、これまでも通常に観測されていて、名称もある「夜光雲」(やこううん)というものに関しての記事です。
夜光雲は Wikipedia では、
夜光雲
中間圏にできる特殊な雲で、日の出前や日没後に観測される気象現象である。通常の雲が地上〜10km付近にできるのに対し、夜光雲は地上約75〜85 kmの中間圏界面付近にできる。高度の高い位置に発生するため、太陽が地平線付近にあるとき下から日が当たり、青白く輝いて見える。
と説明されます。
「中間圏」というのは下の図で黄色で囲んだあたり。

普通の雲は、そのずーっと下の高度10キロメートル以下で発生するものがほとんどです。夜光雲の発生する場所はほとんど空気もなく、どちらかというと、宇宙空間ですので、「雲」というよりは宇宙現象に近いものかもしれません。
以前、
・『日曜日にパパと宇宙を目指しました』: 手作りオモチャで宇宙から地球を撮影した親子の記録
In Deep 2011年11月24日
という、風船にカメラをつけて宇宙に飛ばして宇宙から地球を撮影することに成功した親子の話をご紹介したことがありますが、その時はその風船は最大で 30キロメートル付近の上空にまでのぼったのですが、その写真が下のものです。

上空 30キロでこの状態ですので、高層 70キロとか80キロとかは「ほぼ完全な宇宙空間」だということがおわかりだと思います。
夜光雲というのはそういう場所で発生する現象なんです。
上の Wikipedia では夜光雲の発生原因などについてもふれていますが、実際には、今でも確実な発生原因は特定されていないです。
しかし、タイトルの「謎」とはその発生原因のことではないのです。
現在の最大の謎は、
・以前に比べて異常に頻繁に、かつ広範囲で発生している。
・高度が下がってきている。
・輝きが増してきている。
・高度が下がってきている。
・輝きが増してきている。
の3点です。
つまり「状態が変化してきている」ということが謎といえるようです。
今回の記事は、米国のユニバース・トゥディに「国際宇宙ステーションから撮影された夜光雲」の記事があり、それをご紹介します。
ところで、この夜光雲とは違うのかもしれないですが、「高層大気圏でのみ観測される雲」として有名なものに「銀雲」というものがあります。高層大気圏というより、「宇宙空間からのみ観測できる雲」ということなんですが、この銀雲は、昔から宇宙飛行士たちの間では「地上の自然災害と関係あるのでは」と言われてきていたものです。
ロシアの宇宙飛行士たちが確信した「銀雲」と地球上の災害の関連
かつてロシア(旧ソ連)には、宇宙ステーション「ミール」というものがありましたが、その宇宙ステーション・ミールで 1994年から 1995年にかけて、実に 438日におよぶ長期のスペース・ミッションをおこなったロシアのワレリー・ポリャコフという宇宙飛行士がいます。
このポリャコフさんには 1999年に記した『地球を離れた2年間』という名著の誉れの高い著作があるのですが、そこに「銀雲」についての記述があります。

▲ 宇宙ステーション・ミールで長期のミッションをおこなったワレリー・ポリャコフ飛行士。
銀雲(silvery clouds)というページに、その部分が書き出されていますので、一部抜粋します。
ワレリー・ポリャコフ『地球を離れた2年間』より。
それからもうひとつ忘れられない現象がある。それは"銀色の雲"のことで、地上で起きる災害と関連があると言われている。
それは不思議な雲だ。銀色の雲という、まことにロマンチックの名前は、地表が円形になる地平線上の60キロメートルから70キロメートルの上空にしか現れないところからきている。(中略)
その後、仕事の忙しさもあってこのエピソードは忘れられていた。ところがその晩、地上との定期無線交信のときに、アルメニアで大地震があり、膨大な数の犠牲者が出て、街は壊滅状態だという連絡があった。(中略)
2回目のフライトの際には、ロケットが打ち上げられ、安定飛行状態にはいるやいなや、巨大な銀色の雲を目にし、不吉な感情に襲われた。(中略)
管制センターとの無線交信によって、アメリカ合衆国のロサンジェルス市か、あるいはその近郊地域に大型の地震が発生し、大きな被害が出ているというニュースが伝えられた。
そして、地上に戻った後に、他の飛行士や、ロシアの学者たちとの話の中で、この銀色の雲が災害と結びついているのではないかという考えを強くしたというようなことなのですが、まあ、どうしてこのことを書いたかというと、夜光雲の出る高度と大体同じなんです。高層 70キロ程度の場所にできる。

▲ 宇宙空間で撮影された「銀雲」の映像。
銀雲と夜光雲が同じものかどうかはわからないですが、宇宙空間からのみ観測できたような雲が今では地上からどこでも観測できるようになっているという変化が現在存在しているということは確かなことかもしれません。
そういう変化が「謎」だというのが今回のタイトルの「謎」の由来です。
ところで、上の『地球を離れた2年間』は新書としては見当たらないようで、Amazon では下の通り、古本として何冊かあっただけでした。
この本、レビューを読まれるとおわかりかと思いますが、宇宙飛行士が「好き放題に喋る」という意味ではこの世で唯一のものかもしれません。宇宙飛行士の数では現在ではアメリカのほうが多いですが、語る内容に規制がかかるせいか「立派な話ばかり」で、アメリカの宇宙飛行士からはあまり面白い話は出ないです。
たとえば、過去記事ですが、ロシアの宇宙飛行から出た話として、
・ロシアの宇宙飛行士たちが見た「地球の軌道上の7人の巨大な天使」
In Deep 2011年06月22日
みたいなエピソードもあります。
これは 1982年に旧ソ連が打ち上げた宇宙ステーション「サリュート7号」に乗っていた6人の乗組員たちが、天使のような形のシルエットの光を宇宙空間で目撃したという話です。
ふと見ると上の記事はほぼ1年前ですね。
そんなわけで、ここから夜光雲の記事です。
米国の「ユニヴァース・トゥディ」より。
Mysterious Noctilucent Clouds as Seen from the International Space Station
Universe Today 2012.06.25
ミステリアスな夜光雲が国際宇宙ステーションから観測される

ナイト・シャイニングと呼ばれたり、あるいは、夜光雲と呼ばれるミステリアスな現象は見るぶんにはとても美しい自然現象だ。この夜光雲は、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士たちからは地上から見るものとは違った見応えのある光景となる。
古来から夜光雲はその存在自体、珍しいものといわれていたが、最近になって、それらの光る雲の輝きは明るさを増していて、また、以前よりも頻繁に観測されるようになっている。
その高度も以前より低くなってきており、その明るさのため、今では日中でさえ観測できることもあるほどだ。
下の写真は 2012年 6月 5日に、国際宇宙ステーションから撮影されたものだ。
白い円弧のような輝きが夜光雲だ。

西アジアの上空で撮影された。
夜光雲の発生の原因については、これまでいろいろな議論がされてきた。
流星の塵、地球の温暖化、ロケットの排気などが原因としてあげられたこともあるが、最近の研究では、大気の気体組成や温度の変化が、夜光雲が明るくなってきている原因であることを示唆している。