最近、世界中で「子どもだけを襲う未知のウイルス」が爆発的な流行の兆しを見せていて、なんとなく気になるので、そのことを書こうと思っていたんですが、書いていると、また、前振りが長くなってしまいましたので、その記事は別として今日アップしようと思います。
その「謎のウイルス」の記事は、昨日書き上げるつもりだったんですが、昨日の日記、「「絶望の粒子」の発表に委ねられる In Deep と私の人生の存亡」を書いた後、なんとなく散歩に行って、そのまま電車に乗って、所沢で何となく降りて、所沢でダラダラと過ごして、焼き鳥屋でお酒を飲んだりしているうちに一日が終わってしまいました。
昨日、毎日新聞に出ていたんですが、今、私の住んでいる埼玉というのは「昼夜間人口比率」というものが全国最低なんだそうです。
昼夜間人口比率:全国最低 90年以来5回連続で
毎日jp 2012.07.04
10年に実施された国勢調査で、県内の夜間人口100人当たりの昼間人口の割合を示す「昼夜間人口比率」が88・6と、全国最低だったことが県の分析で分かった。全国最低は、90年の国勢調査以来5回連続で、都内の職場や学校へ通う「埼玉都民」という性格が続いている。
「昼夜間人口比率ってなんだ?」と読むと、つまり「東京都内などに仕事に行っている人が多いので、昼はあまり人がいない」ということのようです。
その比率が世界一(世界かよ)。
いや、日本一。
この比率、「働き盛りの年齢の男性や女性」に限定すると、もっと大きな数値になるはずです。つまり、埼玉県の日中は「二十代から五十代くらいの労働年齢の男女が少ない」ということだと思います。
そのせいかどうか、午後4時過ぎくらいだと、所沢の町は学生さんのような若い人の姿がとても多く、女子高生などは、どこで着替えているのか、制服ではなく私服で闊歩しています。
そういう中に私などを含めた「社会の落ちこぼれ的な中年男性たち」がダラーッと徘徊したり、ゲーセンのメダルコーナーで苛立ったりしている光景を目にします。
というわけで、またどうでもいい話から始まりましたが、帰ってみると、CERN のニュースは確かに大きく報道されているのですが、その見出しを見て、「またか」と、思いました。
ヒッグスに関しては「永遠にこの繰り返し」でもいいのかも
ヒッグスに関しての報道は見られた方も多いと思いますが、これらの見出しが並びます。
「発見か?」
「〜とみられる」
という文字が続きます。
英語だと下のような「99パーセント、ヒッグスに違いない」などが並びます。
実は一昨年からずっとこの繰り返しなんですが、なんとなく不思議な感じがしませんか?
つまり、普通の、他のいろいろな科学の発見で、「〜と見られる」とか「発見か?」とか「ほぼ間違いないと思われる」というような暫定段階での研究成果がこんなに大きく報道されることがあるでしょうか。
普通だと、科学的発見というのは、
「確定」
ということになって、大発表になるはずだと思うのです。
報道では、
CERNは統一見解で、暫定的な結果としながらも「新粒子を観測したことは画期的で、その意味は非常に重要だ」と強調。年内にもヒッグス粒子かどうか確定するとの見通しを示した。
とあり、「暫定的」と自ら述べて、さらに、「年内にも確定」と、確定していないことを宣言しています。
それがどうして、こんなに大きく報道されるのか。
その理由はいくつかあると思いますが、ひとつは報道側が、この「新しい神の登場」の重大性をあまり意識していないということもあるかもしれませんが、それよりも「何らかの強力なプッシュ」はあるのだと思います。
プッシュというか、「報道してほしい」と。
どうしてか?
どうして暫定結果を世界的報道としなければならないのか。
ここからは否定的な意味で書くのではなく、こういうことはすべての科学の研究には必要なことなんですが、「予算の確保」なんです。 CERN は世界で最も大きな予算を編成している科学組織で、年間予算は大体 800億円〜1000億円くらいです。
下の収支は10年くらい前のものですが、以後も大体同じような予算です。スイスフランで書かれてありますが、非常に大ざっぱにというと、この数字に「億円」をつければ、桁としての大体の目安となると思います。
これを見ると予算のほとんどが「加盟国からの分担金」でまかなわれていることがわかると思います。つまり、単独運営をしている組織ではないのです。
コトバンクの CERN には以下のようにあります。
この分野の実験的研究には巨大な粒子加速器が不可欠であるが,加速器の建設には莫大な費用がかかるので,アメリカとソ連以外の国は単独ではこの負担に耐えられない。
この「加速器」とある中の、LHC というものには2兆円などの莫大な予算がかかっています。
上に「ソ連」とあるのは、CERN が創設された 1950年代はロシアは旧ソ連だったからですが、上にあるように、この CERN というのは、各国から予算を集めて運営している組織です。
しかも、それでも赤字を計上したりしていて、とにかく、お金のかかる実験をしているのですが、いずれにしても、「成果を出し続けていかなければならないという宿命」を負っています。
1000億円といえば、南太平洋あたりの小国の GDP にも匹敵する金額で、決して小さいとは言えない額です。
特に資金を出している主体がヨーロッパの国々です。
それで、「今年は何の成果もありませんでした」というわけにはいかない。
現在のヨーロッパの経済的問題は書くまでもないと思います。
場合によってはユーロ崩壊などとも言われている中で、どこかの国の誰かが、
「CERN へ金出すのをやめればいいんじゃないか?」
と言ってそれを実行したら、他の国も追随してしまうわけで、そうすると CERN は機能しなくなってしまうのです。さすがに、今の経済状態の中で、科学研究に単独で 1000億円を出せる国はあまりないはずです。
なので、それを避けるために、 CERN は成果を発表し続けなければならない。
次々とノーベル賞クラスの発見をしなければならない。
そういうあたりが、暫定的な発表に繋がっているのだと思います。
正直、心情はよくわかります。
新しい「神」を数百年以上求めて続けてきた科学界
ヒッグスは「神の粒子」とか呼ばれていますが、この「神」とは何かお考えになったことがあるでしょうか。
一般的には、「神」とは宗教などでの「神様」のことを言うと思うのですが、そんな大それた冠をつけている。
名前は忘れてしまいましたが、 ALS で車椅子に乗っている米国かどこかの科学者の博士が、「神がなくても宇宙は説明できる」と言っていたことがありましたが、これが科学者の夢だと思います。
新しい神様。
それが科学者たちにとっての「夢のヒッグス粒子」です。
仮にそれが見つかれば、この世の中は自分たちの「計算通りの世の中」であることが証明されるわけで、計算が適用できない宇宙は存在しない。
見た目がどうであろうと、
「それは計算ではこのようになります」
と言える世界。
太陽黒点が顔みたいに見えても、
「それは計算ではこうなります」と。
宇宙の銀河の形がどれだけ美しくても、
「それは計算ではこうなります」と。
人間の感情とか、見た目とか、考えとか、夢とか、形而上とか、宗教とか、芸術とか、恋愛とか、美的感覚とか、味覚とか、そういうものもすべてが、
「計算ではこうなりますから」
と言える世の中。
そのための「神様」がヒッグス粒子なのだと思います。
そして、その発見は、計算のできる科学者だけが「神の使者になれる瞬間」だということにもなるのかもしれません。なので、科学者(の一部)は本当にその発見を望んでいるでしょうし、あるいは、「望んでいない」という科学者もいると思います。
しかし、上にも書きましたけど、私は別に批判的ではないのですよ。
私は実は CERN は存続してほしいのです。
その理由はただひとつで、CERN がクラウド実験というプロジェクトをおこなってるからです。
過去記事の、
・「宇宙線が雲を作るメカニズム」の一部を欧州原子核研究機構 CERN が解明
In Deep 2011年08月26日
にあるように、宇宙線の働きの根本に対しての検証を莫大な予算でおこなえる組織は、現在は CERN だけだと思うのです。
このクラウド(CLOUD)実験というのは、「雲はどうしてできるのか」というための実験で、そんな実験に考えられない予算をつぎ込んでいるというのは、ばかばかしいと思う方のほうが多いと思います。
それでも、私はこの実験ではじめて「宇宙線が雲を作り出している」ことを知り、そして、もしかすると宇宙線の働きはさらに大きなものであることがわかるかもしれない。
わかってどうなる、という話もありますが。
いずれにしても、 CERN は今後も、「ほぼ間違いない」ということで、発表を続けていくと思いますが、それでいいのだと思います。
欧州連合が崩壊して予算が機能しなくなる日まで。