2012年07月13日



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私たちが経験している現在の気候変動は次の数万年の人類史への扉かもしれない





洪水被害の報道が「ない日がない」日々の中で







 


昨日の記事、

「太陽が消えたスウェーデン」を含む「経験したことがない」と人々が語る東欧と北欧の異常気象

の中で、「現在の九州などの大雨被害も海外では報道されていない」というようなことを書いたのですが、その後、被害が拡大するにつれて、海外でも取り上げられています。

海外の人たちが最初にこの洪水被害を知ることになった報道は、多分、米国の NBC の報道で、そこにヤマモト・アラタ(Arata Yamamoto / 漢字は不明)という記者の方がいるようで、この名前だと日本人の方だと思うのですが、その人が NBC でリポートした記事が数々のサイトやブログに引用されています。

下はそういうもののひとつですが、「想像もできないほどの大雨により地図から消えた日本の町」というようなタイトルがつけられています。

j-floods.jpg

下の映像は 米国 NBC の報道 に部分的に字幕を入れたものです。あまり時間がなく、ナレーションと字幕の内容は同期していませんが、大体の内容としていただければ幸いです。




数日前に書いた「「アメリカとイギリスで「対極の気候」を迎えた2012年の夏」」という記事の中で、世界各地で起きている洪水のことに少しふれたのですが、正直な思いを書けば、今後も、この「洪水」というものとは向き合い続けなければならないことのように感じています。

その理由は、たとえば、九州の「前例のない雨量の雨」というものを見てもそうですが、「もはや天候は過去とは違う」ということがあるからです。

また、上の記事では、先日発生したロシアの洪水についてふれたのですが、そのロシアの洪水の状況も「異常」だったことが続報で明らかになっています。下は、ロシアのメディア「ロシアの声」の記事で引用されていた、モスクワ国立大学の気象学者の言葉です。


「今回洪水が起きたクバン地方ゲレンジク地域は乾燥した亜熱帯地方に属す。ところが今回ゲレンジクでは1昼夜に300ミリの降雨量を記録した。これは7月としては6ヶ月分の降雨量に相当する。300ミリがどれほど多いものであるかを理解するためには、1平方メートルあたりの面積に10リットルのバケツの水を30回注いでみれば想像がつくだろう」。



つまり、ロシアの洪水の被害があれほどひどいものとなったのは「それまで誰もそんな雨を経験したことがない乾燥した土地」だったからで、洪水に対しての対策や心構えといったものが存在しない土地だったようです。そのような乾燥した地域に「6ヶ月分の雨が一昼夜で降った」という異常中の異常といえる雨だったようなのです。


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▲ 豪雨で水没したロシアのクバン地方西部。本来は雨が少ない乾燥地帯だそうです。


最近の日本や世界各地の自然災害を見ていますと、「もはや今までと同じような気候や天候が繰り返される時代ではない」ということが今年は特に明らかになってきている気がします。

「今まで」というのは、この 2000年とかそういう区切りですが、文化、生活、そして農作なども今までは違う形に変貌させていかなければならない時期の始まりということなのかもしません。もちろん、先のことはわからないですが、しかし今後、突然、穏やかな気候に戻るというような気はあまりしません


上のモスクワ国立大学の気象学者はこのようにも言っています。


「同地方で過去100年にこうした集中豪雨がなかったことから、近い将来に同じ事態が繰り返される危険性が全くないとは言い切れない。これは気候変動に端を発する異常気象が多くなったことと関連する。われわれはいかなる事態が起こってもおかしくないと準備を怠ってはならない」。



九州の大雨でも、雨に関しての表現を変えた気象庁は、

「かつて経験したことがないような雨」

という表現を使いましたが、これは上のロシアの気象学者と同じような表現ともいえます。


これから先、私たちはどのくらいこの「かつて経験したことがない」という現象と遭遇していくのかわからないですが、しかし、それも紛れもない今後の私たちの生活の現実であるわけです。



次の新しい十数万年に向けて


地球上に、通称ミトコンドリアイブなどと呼ばれる私たちの母「みたいな」人が現れたのは 20万年前くらいだと言われています。

その後の十数万年というのが、現代の私たちの人類文明のひとつのスパンだと考えることができると思うのですが、文献や記録といったもので残る私たちの生活は、せいぜい数千年です。日本に関しては 2000年前も正確にはわかりません。

そして、人類が本格的に「世界に広がった」のは、ほんの6万年くらい前のことであることも、遺伝子学でわかってきています。そこから現在の地球の人類文明は事実上スタートしたようです。

そして、その後に「記録としての文明」が生まれるまでの数万年の間、人類がどの程度の気候変動を経験してきていたのかも実は誰にもまったくわかりません。7万年前に人類は「 2000人程度まで減ったかもしれない」ということが、ミトコンドリアDNA の解析によって判明したという発表が 2008年に米国スタンフォード大学から発表されました。

下のニュースは要約ですが、それに関しての 2008年の報道です。


Study says near extinction threatened people 70,000 years ago
AP通信 2008.04.24

人類は7万年前に全世界でわずか2000人にまで減少し、絶滅しかけていたことが研究で判明

遺伝学研究によると、ミトコンドリアDNAの追跡により、現在の人類は約 20万年前にアフリカに住んでいたミトコンドリア・イブと呼ばれる単一の母親の子孫であることがわかっている。そして約6万年前から全世界へ人類の分散が始まった。しかし、この「人類の全世界への分散までの間に何が起きていたか」については今までほとんどわかっていなかった。

最近のスタンフォード大学の研究によると、南アフリカのコイ族とサン族が 9万年前と15万年前にほかの人々から分岐した形跡がミトコンドリアDNAの解析で判明した。

そして、今から7万年前には極端な気候変動によって人類の数は一時 2000人にまで減少し、絶滅の危機に瀕していた可能性があることがわかった。



この研究が完全に正しいかどうかはともかく、「極端な気候変動によって人類は絶滅の危機に瀕した」ということがある程度はわかりはじめています。

ちなみに、上のくだりで大事なのは「絶滅の危機に瀕した」という「瀕した」という部分です。

つまり、人類は絶滅しなかったということです。


もちろん、いつかまた人類は2000人になってしまうのかもしれないですが、それは懸念や心配するような話ではなく、単なる地球の循環でありサイクルです。


幸いなことに、人間は過去も未来も見えません。知ることもできません

このあたりは、震災後に何度も書いていたことと重なりますので、ふれないですが、とりあえず人間が体験できるのは「瞬間の現実」だけです。

なので、過去や未来を心配するより、目の前に起きることにとにかく対処しながら、そして、あとは普通に生活できれば、それでいいのだと思います。
できれば楽しく。


私たちが将来、化石や遺跡として発見される頃、それを見つけたその未来の人々が「この時代の文明は素晴らしい」と思えるようなものが残ればいいのだと思うし、少なくとも日本には多少そういう「素晴らしかった文明」が存在しているとも思います。

そして、私たちが遺跡になっていく時代がこの夏から始まるのかもしれません。
それは同時に次の新しい数万年の時代のはじまりかもしれないです。


上に書いた「人間は過去も未来も見えません。知ることもできません」ということに関しての関係記事をリンクしておきます。

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