2012年07月14日



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五億年前の遺伝子を復活させた NASA の科学者による「リアル・ジュラシックパーク」実験への賛否



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▲ 古代の遺伝子を現代の遺伝子に混合させて「進化」させるという試みを生物学史上初めておこなった NASA の宇宙生物学者のベトゥール・ガージャール(Betül Kaçar )博士。女性です。博士が手にしているのがその大腸菌。
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(訳者注) うちの子が小学生としてはじめての夏休みが近くなりました。7月中は子どもといろいろと行く予定になっているのですが、8月には奥さんと子どもは2週間ほど私の実家の北海道へ帰省することになっています。

で、私は・・・帰省しないのですが(笑)、実家にしてみれば「孫の帰省」こそがイベントであるようです。

どこの家でも、あるいは昔からそうでしたけど、この「孫バカ」というものにはスゴイものがあって、いつの時代でも「孫には無償で与える」という部分はあるようです。

「どうしてそんなに孫がかわいいのか」に関しては、私自身が孫を持つ可能性は年齢からもあり得ませんので、わからないまま死んでいくのでしょうけれど。

そういえば、「パンスペルミア説」を取り上げる時に、いつも名前を出させていただくフレッド・ホイル博士は、性格が非常に気むずかしいことで有名だったようで、インタビューなどでも、特に科学の素人には非常に不親切な人だったそうですが、インタビュアーや取材者たちの中では、フレッド・ホイル博士とスムーズに対談するための「ある秘訣」が知られていたそうです。

それは、

「ホイル卿の機嫌を良くするには孫の話から入れ」

だったそうです。

フレッド・ホイル博士は 2001年に 86歳で亡くなりましたが、博士には4人の孫がいて、特にその中の末孫であったニコラ・ホイルという女の子の話なら「いつまでも笑顔で続けた」ようです。

強固に現代宇宙論を批判し、パンスペルミア説の研究に生涯を捧げた英国科学界の最大の科学者であり、また、現代のジョルダーノ・ブルーノそのものでもあった異端児であるホイル博士も、家では相当な「孫バカのおじいちゃん」だったようです。


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▲晩年の頃のフレッド・ホイル博士。


そのあたりに関しては、ホイル博士が1987年の著作『進化の数学』の中に次のようなくだりを書いているあたりにも垣間見られるような気がします。


孫を持つ身になると、直接の子供では両親の遺伝子の混合は起きていないように思えてならない。混合は、孫の代になってようやく起きる。それだから、孫と祖父母との関係は、直接の親子関係とかくも違ったものになるのだろう。

遺伝子の立場から見れば、男の女の直接的な結びつきでは、何とも達成されていないのだ。その次の世代、すなわち孫が生まれるまでは・・・。


『進化の数学』(1987年)より。


上の文章はまったく科学とは関係ないです(笑)。

これは結局、「孫ってのはなんてかわいいんだろう。この存在こそ私の遺伝子の現れなんだな。自分の子どもなんかとは比較にならないほど最高にヨイね」という気分を現したくだりだと思います。ホイル博士ほどの人を、このようにしてしまう「孫」というのは何なんでしょうかね。


上のフレッド・ホイル博士の写真を見て、孫と書いていたら、クッキーか何かの CM を思い出しました。

調べてみると、クッキーではなくて、ヴェルタース・オリジナルというドイツのキャンディーの模様。森永製菓のサイトに CM がありました。

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この CM のこの場面のナレーションは、「それはこの子もまた特別な存在だからです」というものです。


さて、ずいぶんと話が逸れましたが(本当だな)、上でフレッド・ホイル博士の名前が出て来ましたが、今回は、「進化」というものに関しての研究についての話でもあります。



太古の DNA への介入を始めた人類科学


記事のタイトルに「ジュラシックバーク」とありますが、考えれば、スティーブン・スピルバーグ監督の映画ジュラシックバークも公開されてから 20年近く経っていることに気づきます。

ジュラシックバークの内容は、その根幹をきわめて簡単に現すと、

 > 本物の恐竜がいるテーマパークを作る

という話です。

では、その「本物の恐竜をどのように作るのか」ということに関しては、Wikipedia の説明をそのまま掲載します。


琥珀に閉じ込められた蚊の腹部の血液から恐竜の DNA を採取し、これを解析・復元した上で欠損部位を現生のカエルの DNA で補完し、さらにこれを現生爬虫類(ワニ)の未受精卵に注入することで恐竜を再生する。



ということです。

これに関しては、映画の中でも「子どもたちのためへの説明映画」という形で、わかりやすく説明しているシーンがあります。


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▲ 映画内の映画に登場するアニメで、DNA の移植と再生について説明する「ミスター DNA」というキャラクター。この映画で説明を受けた後、テーマパーク「ジュラシックパーク」では、実際の受胎作業の光景なども見物できるということになっています。


現在、 NASA の科学者がおこなっているのは、このような「大型生物の再生」に関してではないですが、「古代の遺伝子を現代の生物の遺伝子に組み込む」という意味では、似た話にも思えます。


また、上のジュラシック・パークについての Wikipedia の説明には、続けてこのような記述があります。


琥珀中ではなく、剥製や永久凍土中に保存されている絶滅生物のDNAから情報を復元することは2009年現在の技術でも可能であると考えられており、絶滅生物のクローニングを目指す研究が行われている。マンモスなどはこの対象として良く取り上げられる。



とあります。

これは、今年2012年になり、何度も報道されていて、ひとつは「日本とロシアの共同研究によるマンモスの再生」の報道で、もうひとつは「韓国とロシアと共同研究によるマンモスの再生」です。

それぞれ、今も日本語のニュースが残っていますので、ご参照下さい。



日本のほうは、日本側の主軸区となるのは近畿大学の研究チームです。また、上の韓国のほうのニュースでは、2006年に胚性幹細胞(ES細胞)研究で論文を捏造したとして報道された黄禹錫(ファン・ウソク)元ソウル大教授が主軸です。

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▲ ロシアの研究機関とマンモス再生の共同研究について調印する韓国のファン・ウソク元ソウル大教授(左)。テレグラフより。


というわけで、どうも人は「古代の生物の再生」にえらく興味があるようです。


私自身は、実はこれらのすべての行為に、かなり否定的で、その理由は、

「絶滅したものは絶滅する理由があったから絶滅した」

のであり、再生に何の意味があるのかよくわからないということがあります。
絶滅もまた「摂理」だと考えます。


とはいっても、実際に DNA レベルで生物に介入できるようになった生物科学では、これらと類似した様々な研究と実験が繰り返されるとは思います。もちろん、もしかしたらこれらの研究は、実際に世の中の役に立つことなのかもしれないし、それはわかりません。


というわけで、大型生物の再生とは違うながらも、 DNA に介入して、「生物の進化を眺める」という、科学史上初めての試みが米国の大学内にある NASA 研究所で進められています。


実験進化

なお、翻訳記事には「実験進化」という言葉が出て来ます。初めて目にしたのですが、調べると「人為的に進化を引き起こす研究」のことだそうです。

つまり、「人間の手による進化」ということのようです。
進化といえるのかどうかは微妙ですが。




Real Life Jurassic Park: Scientists Resurrect And Place 500-Million-Year-Old Gene In Modern Organism
Nano Patents and Innovations 2012.07.11

本当の「ジュラシックパーク」: 5億年前の遺伝子を現代の生物に移植して復活させようとする科学者たち


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ハリウッドの映画の制作プロジェクトの期間に比べると、このたび始まったプロジェクトの期間は非常に長いものとなるようだ。

その期間は「5億年」。

しかし、これは映画を作るプロジェクトではなく、米国ジョージア工科大学の NASA センターで実際に進められている。

ジョージア工科大学の研究者たちは、「古生物の実験進化」( paleo -experimental evolution )と呼ばれるプロセスを使用し、バクテリアから5億年前の遺伝子を抽出し、それを現代の大腸菌に着生(移植)した。

このバクテリアは、成長を続けており、今では 1,000以上の世代を経ている。そして、科学者たちは活動中の進化を観察し続けている。


ジョージア工科大学にある「 NASA リボソームの起源と進化の研究センター」( NASA Center for Ribosomal Origins and Evolution )」の宇宙生物学者であるベトゥール・ガージャール(Betül Kaçar )博士は、以下のように語る。

「私たちは、生命の分子のテープを巻き戻して、『リプレイ』できる時に非常に近いところまで来ています」。

「生命が、かつての進化と同じ軌跡を繰り返すかどうかということ。あるいは、生命がかつての進化とは異なった経路に沿って適応していくのかどうかを、現代の生物(大腸菌)に着生させた古代の遺伝子の進化から私たちは学んでいます」。


2008年に、ガージャール博士のアドバイザーである生物学者エリック・ゴーシェ博士( Eric Gaucher )が、大腸菌の中の EF-Tu (細菌細胞で最も豊富に見られる蛋白質)内に配列させる古代の遺伝子配列を決定した。


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EF は、バクテリアで最も多いタンパク質のひとつだ。そして、 EF はすべての既知の細胞内で見つかっている。


これらの試みは、現代の大腸菌の遺伝子のかわりに、正しい染色体命令と位置に古代の遺伝子を置くという難しい作業だが、ガージャール博士はそれを成し遂げた。そして、「古代の生物」を再度進化させようとしている。

現代の遺伝子と古代の遺伝子の両方から成るこの幻想的なバクテリアは、生き残ることには成功したが、しかし、当初、その成長率は通常より遅かった。

エリック・ゴーシェ博士は、「最初変化を加えられた生物は、現代の大腸菌ほど健康ではなかった、あるいは、あまりフィットしていなかったかもしれません。しかし、日が経つうちに、突然変異が積み重なり、変化を加えられた生物は次第に適応してきました」と言う。

そして、成長率も上がっていった。

最初の 50世代のあと、科学者たちはこのバクテリアがどのように適応していったかを確定するために、ゲノム配列を確かめた。

その結果、変化を加えられたものは、ほとんど現代の生物のレベルにまで適応しただけではなく、それらのうちのいくつかは現代のものより健康になった。

そして調べると、 EF - Tu 遺伝子が突然変異を蓄積させているわけではないことに気づいた。バクテリアの中で、古代の EF - Tu と相互作用する現代のタンパク質が突然変異をしたのだ。

要するに、古代の遺伝子は、その最新の形と類似しているようになるために突然変異したのではなく、バクテリアは新しい進化の経路で適応するとわかった。

これらの結果は、最新の NASA 国際宇宙生物会議で発表された。


ガージャール博士は、

「このプロセスの中で、私たちが分子生物学において長いあいだ疑問に思っていたいくつかの質問に答えられることになると思います。生物の歴史というものが、進化によりひとつの進化の結末しか持っていないのか、あるいは、進化が複数の解決方法を持つのかを知りたいのです」

と述べた。





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