2012年08月12日



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NASA の火星無人探査計画が無駄な理由: 1976年にバイキングがおこなった火星地表の質量分析から 36年経って進化しない観念



昨日の米国 CNN に「Mars rover: Is all this really necessary?火星探査計画は本当に必要なのか)」という記事がありました。

それは、全体で 2000億円という巨額な資金を使い、たった2年間だけおこなわれる予定の今回の無人火星探査計画(ローバー計画)に対しての嫌疑のような記事でした。しかし、その記事を書いた CNN の記者の人も、過去の火星探査のことをあまり調べずに書いているようで、つまり、「火星探査が必要かどうか」という理由として上げている2点が、


・過去の火星探査で生命が見つかっていないのにどうして続けるのか

・火星の資源が地球の生活に活用できる可能性などあるのか


ということでした。

資源のほうはともかく、「生命」に関しては、 NASA のバイキング計画の研究員自身が、計画後の一連の実験から「バイキング実験より、火星上に有機物の存在を認めざるを得ない結論」を1980年代に出しています。



NASA の研究者が10年の歳月をかけて出したバイキング実験のデータ解析の結論はどこへ?

バイキング計画は NASA が 1970年代に行った火星無人探査計画で、1975年にはバイキング1号が火星に着陸。翌年の1976年にはバイキング2号が火星に着陸して、今回のキュリオシティなどと同じように、地面などからの物質の採取と分析を行いました。

しかし、バイキングの実験のデータから結論を得られたのは 10年後のことです。なので、仮に現在のキュリオシティが送信してきたデータを検証することには、やはり何年もかかるはずです。


しかし、それによって、もしかしたら何か発見される可能性があるにしても、それでも今の私は、 CNN の記者と同様に、でもこの記者とは別の観点から「現在の NASA の火星探査は無駄だ」と思います。

それは、過去記事の、

キュリオシティの悲劇
 In Deep 2012年08月08日

などにあるような、 NASA の科学者たちの体質の問題もありますが、それだけではなく、NASA は「微生物を探すため」にキュリオシティを火星に派遣しているはずですが、キュリオシティを含むローバーの性能はそれに実際に適していると思えないのです。

今のキュリオシティを莫大な予算をかけて、わざわざ火星に送るなら、1976年のバイキングの実験のデータの解析と検証実験をさらに現代の科学で繰り返したほうがいいと思います。

キュリオシティの性能の何が適していないのかというと、それは「地球で極限環境微生物を発見するためにはどのような場所から採取をおこなっているか」ということを考えると何となくわかる気がします。

地球での極限環境微生物の探索の場所は、たいていは、「地表」ではありません。
地下、無酸素の湖、海底、氷床の下、放射性物質の中、などです。

少なくとも、現在の科学や天文学では、火星の地表の環境は厳しいとされています。だとすると、地表そのものからバクテリアが見つけられる可能性より、そうではない場所のほうが遙かに適している可能性があると思うのです。

あるいは、「火星には過去に川などがあったこと」がほぼ確認されています。

このあたりは過去のニュースなどにもあります。
下のニュースは 2003年の NASA のニュースを日本語訳したものです。

火星にかつて川が流れていた証拠が見つかった
 AstroArts 2003.11.14

2003年にそのようなことがわかっていたということは、火星には、現在よりも過去のほうが豊富な生命や有機物が地上にも存在していた可能性を考えるのが普通だと思います。「過去(歴史)が眠っているのは普通は地下」であり、「海底」であり、地表ではないです。


地球上にも様々な厳しい環境の中に「極限環境微生物」と呼ばれる微生物がたくさん存在することがわかっています。極限環境微生物と「宇宙生命」の関係についても過去記事にずいぶんとありますが、それは記事下にリンクしておきます。


いずれにしても、現在は「地表は厳しい環境となっていることが予測されている火星」で、生命を探査したいのなら、地下数十〜数百メートルまで掘削か、土壌を採取できる機能と、あとは火星には氷の存在が確認されていて、その下は氷河等のある可能性もあり、その下は火星の古代の微生物の宝庫である可能性もあります。そのサンプルを採取できる機材。

地球では、南極や北極などで氷の何百メートル下からサンプルを採取して、生命探査をおこなっています。



下の動画は、上の記事に載せた「南極にあるロス氷棚という南極の氷の600メートル下で「エビのような生物」が泳いでいることが NASA のカメラに偶然収められた時のもの」です。2009年に NASA が発表しました。南極の氷の下数百メートルにもこのような大型生物さえいるのです。




まあ、話が逸れましたが、つまり、いくら火星の地表の砂とか土を拾ってもあまり意味がないし、そもそも、それはバイキングも先代のローバーもおこなっていることで、それを繰り返してどうする・・・と。しかも、バイキングの採取した地表の土からでさえ、最終的に「生命の存在を認めざるを得ない」と 1986年に NASA のバイキングチームの研究員は語っています。


写真を見る限り、季節によって火星の表面にはコケのような緑色のものが発生しているようですので、運がよければ、そういうものを採取できるかもしれないですけど、ローバーは移動距離も少ないので、多分、そういう偶然も難しそうです。

地球でだって、砂漠に着陸して、徒歩で植物を探しにいってもなかなか見つからないと思いますけれど、同じような感じに映ります。




▲ 無人火星探査機のオポチュニティ号が撮影した火星の写真。1970年代のバイキングの定点撮影の写真にもこの「緑色の区画」は撮影されていて、その際には、「季節ごとに緑が消えたり出現したり」していたことがフレッド・ホイル博士の著作に書かれています。


私には「 NASA が本気で火星で微生物を発見しようとはもはや思っていない」ように見えます。1970年代でその試みは消えたようにも見えます。


しかし、実際には最近の私が最も思っていることは「すべての宇宙生命探査プロジェクトは無駄」(SETI も含めて)ということかもしれません。

パンスペルミア説によらなくても、一昨年あたりから、私は、すべての宇宙にある生命構造は「ほぼ同じ」と考えるようになっていて、生命の形は違っても、根幹の DNA というか、アミノ酸などからできている有機物として根本的に違う生き物は存在しないと思っています。

お釈迦様が言っていた通りなら、この宇宙は同じ宇宙が無数に広がっているだけで、宇宙は拡大もしないし、そもそも誕生もしていない。この瞬間に存在しているというだけのものです。


だから、地球を見ればいい。


私たちの周囲に何億も何兆もいつも漂っている微生物や、あるいは大型の生命を見ているだけで、それで宇宙の生物の構造はわかると思っています。


上にふと「パンスペルミア説」という言葉が出てきたのですが、上に記した「バイキング計画」での火星探査のあたりのことが、フレッド・ホイル博士が最晩年のころに記したエッセイ風の軽い内容の著作『生命 (DNA) は宇宙を流れる』の中にも記載があります。

その部分をご紹介しようと思います。

バイキングがおこなった「ラベル放出実験」というものについて記載されています。


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1976年のバイキングの実験が示したもの


このバイキングの実験は、「無人火星探査機が火星でどのような採取と実験を行うのか」という点で、今のキュリオシティの実験とも関連する部分があり、その意味でも興味はあります。

実際にはどのような実験で生命存在の探査をおこなっているのかよくわからないですし。もちろん、36年前と今では実験の方法は違うかもしれませんが、「生命探査」というのがひとつの目的ならば、同じ概念の実験を行っている可能性が高いです。

Mars_Viking.jpg

▲ 火星で土壌調査をするバイキング1号。1976年7月頃。


ちなみに、フレッド・ホイル博士は2001年に亡くなっていますので、2003年から始まったバイキングの次の火星無人探査計画(マーズ・エクスプロレーション・ローバー/ローバー計画)を知らないまま亡くなったのですが、それでよかったと思います。

それでは、ここから『生命 (DNA) は宇宙を流れる』を抜粋します。

章の途中からですが、内容そのものは省略できないので、やや長くなるかもしれません。改行だけこちらでおこなっています。


(ここから転載)



生命 (DNA) は宇宙を流れる
第6章「太陽系の生命探査」P123-127



この辺で、「NASA のバイキング計画の実験で、バクテリアの存在さえも否定されたことを忘れたのか?」という読者の声が聞こえてきそうだが、ちょうどわれわれもそれについてお話しようと思ったところだ。

バイキング計画とは、1970年代に NASA が行った、一連の無人火星探査プログラムである。 1975年の8月にバイキング1号が打ち上げられ、翌年7月に火星に到着、火星周回軌道に入った後、7月20日に周回機から分離された着陸船が火星大気に突入し、クリュセ平原(北緯22度、西経48度)に軟着陸した。

1号と同じ年の9月に打ち上げられた2号の着陸船も、1976年の 9月3日にユートピア平原(北緯48度、西経226度)に軟着陸した。

両着陸船は、自動シャベルを使って砂を採取し、光合成、代謝および呼吸についての3種類の実験を行った。

なかでも重要だったのが、ラベル放出実験(LR)だ。

この実験では、殺菌されたフラスコの中で、放射性同位元素14Cを含む栄養液と火星の土のサンプルを混ぜるという操作を行った。土に微生物が含まれていたら、栄養素を摂取して、14Cを含む二酸化炭素のガスが放出されるはずである。実際、 C14 を含む二酸化炭素が放出されるのが確認された。

次に、土のサンプルを 75℃まで熱して3時間おいておき、それから栄養液と混ぜるという操作を行った。その結果、ガスの放出量は90パーセントも減ったが、完全に0になったわけではなかった。地球上のある種のバクテリアや菌類が温度 75℃の環境で生きていることを思えば、この実験の結果も生物が活動している証拠だと解釈できた。

何よりも重要なのは、時間が経つにしたがって、もとの高い活動水準が回復されたことだ。これこそ、生物の特徴である。

最後に、土をさらに加熱してから同じ実験を行ったところ、ガスは放出されなくなってしまった。これは、加熱によってバクテリアが完全に死んでしまったことを示唆する。

バイキングのおこなった実験のうち、もう一つ重要なものがあった。

GC・MSと呼ばれるこの実験は、土を加熱した際に放出される気体をガスクロマトグラフと質量分析計で分析することで、微生物そのものではなく、土壌中の有機物を検出しようとするものだった。

この実験の結果は、がっかりするほど否定的なものだった。
有機物は存在しない。
もし存在するとしても、ごくわずかであるという結果が出たのだ。

この実験を担当した有機化学分析チームは、「火星の土壌の中に微生物が存在していれば、その死骸や排泄物が有機物として残されていなければならない。しかし、バイキングの行った実験では有機物は見つからなかった。したがって、この土には微生物は存在していないことが分かった」と発表した。

LR実験が疑う余地もないほど肯定的で、GC・MS実験がきわめて否定的だったという結果は、 NASA のミッションに関わる学者たちを困惑させた。

これらのデータを考え合わせた結果、生物学チームは、「バイキング計画の結果は、火星に生命が存在するかどうかという問題に対して決定的な結論を出すには不十分だった」と発表した。もちろん、このコメントには「バイキングが実験をおこなった地点では」という限定がついていたのだが、 NASA の言い回しは、一般人の耳には、「火星にはバクテリアさえいないことが確認された」と響いた。

けれども、実は、バイキングの実験は、生命を検出していたと考えるほうが適切なのだ。

最も重要なLR実験で肯定的な結果が「出てしまった」ことにつき、 NASA は、「火星の土に、無機物の強力な酸化剤が含まれていたためだと考えられる」と発表した。彼らは続けて、「現在のところ、そんな物質は知られていないが、そのうち見つかるはずだ」と言い切った。しかし、当時の NASA の研究者の一人は、

(LR実験で得られた)肯定的な結果を非生物的に説明するのは、容易ではない。この問題についての研究は、現在も、地球の実験室に場所を移して続行している。火星の土の代用品として、バイキングの着陸船の実験結果をもとに合成された土が利用されている。

LR実験の謎が解ければ、GC・MS実験では火星の表面に有機物を見つけられなかった理由も説明できるだろう。しかし、この謎が解決されるまでは、小さいながらも可能性を持ち続けるだろう

と言っていた。

バイキングの実験から 10年の歳月が流れ、その間も、火星で得られた実験結果を非生物的に再現するために数々の実験が行われた。バイキング計画の研究員だったG・V・レヴィンと、P・A・ストラートは、 1986年に一つの結論に達した。

「バイキングの実験は、火星に生物がいることを示しているとしか考えられない」

というのが、それだった。 10年間におよぶ無数の実験により、LR実験で得られた結果を説明できるような非生物的なモデルはないことが確認されたからだ。

彼らはまた、このことがGC・MSの結果とは必ずしも矛盾しないことも示した。GC・MSは、1グラムの土の中に1億以上の微生物がいなければ検出できないが、LRでは、1グラムの土の中に1万の微生物が存在していれば検出できることがわかったのだ。つまり、LRはGC・MSの1万倍も感度がよかったのだ。

結局のところ、GC・MSは、火星の土に有機分子がごく少量しか存在しないことを明らかにしただけだったのだ。火星のような厳しい環境では、微生物の代謝活動は極めて不活発だろう。それならば、有機物が少なくともおかしくはない。

レヴィンとストラートは、もう一つの驚くべき事実を明らかにした。

それは、バイキングの着陸船に搭載されたカメラが撮影した火星の岩石砂漠のカラー写真だった。この写真は、同じ場所を一定の期間をおいて撮影したものだったが、そこには、緑色を帯びた区画が、季節ごとに消えたり広がったりしている様子が映っていた。

この様子は、地球の岩石の上で、地衣類が生きていく様子に、驚くほどよく似ていた。地衣類は、極端に乾燥した環境でも、空気中のわずかな水蒸気を手に入れて生きてゆくことができる。

この発見の興味深い点は、地衣類は地球の生命体の中で、最も原始的な生命体ではない、という点だ。地衣類は、菌類とソウ類が合体したもので、バクテリアよりもよほど高級な生き物なのだ。




(ここまで)


以上ですが、上に「地衣類」という言葉が出て来ます。バイキングの撮影した写真にあった緑色がそれと似ているという記載なのですが、この地衣類の説明を Wikipedia から記載しておきます。



地衣類

地衣類(ちいるい)は、菌類と藻類(シアノバクテリアあるいは緑藻)からなる共生生物である。地衣類の構造は菌糸からできている。しばしば外見が似るコケ植物と混同されるが、地衣類は菌類であって植物ではない。




これを読んで、「ああ、なるほど!」と思いました。

いや、何がなるほどなのかというと、私は火星の写真を以前集めていて、何百枚も見ているのですが、火星の写真は「とにかく青と緑の色が多い」のです。

これは誰しも火星の写真を見て感じることではないでしょうか。


下のは無人探査機ローバーのオポチュニティ号が撮影した火星の写真です。
特に青が多いもののひとつです。

mars_nasa-op.jpg


地球でたとえば砂漠の写真を撮影しても、そんなに「青い部分」というのは映り込まないと思うのですよ。そりゃあ、地球と火星では環境が違うので、すべてが同じではないとはいえ、青と緑が多すぎると感じるのです。

上の写真など何だか植物っぽくも見えるのですが、しかし、火星の(少なくとも地表は)植物のようなものが存在するには厳しい環境であるとも思います。

また、下のは、いっとき有名になった「真ん中に人のようなモノがうつっている」という写真ですが、私は「その人のようなもの」より、岩が青いことがずっと気になっていました。

man-mars.jpg


上の写真のオリジナルはパノラマですので、もっとも広範囲を撮影したものなのですが、どこまでも「岩が青い」のです。上の写真は NASA が色修正をしたものですが、オリジナルの色に修正しても青は残ります。

それ以来、「どうして火星の岩の表面は、青かったり緑ばかりなのだろう」とずっと思っていました。そういう材質の岩もそりゃあるでしょうけれど、どれも表面が青い写真さえあったりする。

上の地衣類の説明を読んで、確信しました。火星にある緑は地衣類、あるいは地球の砂漠にもある菌類の関係の生物の「青」、あるいは「緑」だと。

植物が育つのは無理でも、菌類なら、なるほど極限環境でも繁茂できるかもしれない。


ちなみに、地球の砂漠にある地衣類は下のような感じです。

chi-sampo.jpg

ナミブ沙漠の地衣類・多肉植物。より。


そうかそうかあ・・・菌類の緑というものが、この世には存在しているんだ。
なんでも知るものだなあ。


そして、キュリオシティは火星の地衣類の道の上を散歩中(ちい散歩)。

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