2012年08月21日



2015年10月7日に In Deep は http://indeep.jp に移転しました。よろしくお願いいたします。




国際宇宙ステーションで行われている「宇宙空間での生物移送実験シミュレーション」



(訳者注) 先月くらいに書きました、

宇宙空間に「強烈な匂い」が漂っていることを知った日
 In Deep 2012年07月24日

で「宇宙は焼けたステーキと熱い鉄の匂いがする」ということを知って以来、宇宙空間や「宇宙遊泳」という行動そのものに興味があるのですが、宇宙遊泳の関係のニュースを見かけました。

ところで、今回の記事とは関係ない話ですが、上の「宇宙の匂い」の話の中に NASA の宇宙飛行士たちが宇宙の匂いについて地上で再現するための会話のようなエピソードを紹介していますが、そこに挙げられていた宇宙の匂いの「要素」は下のようなものだそうです。


アジア料理の香辛料
ガソリン
汗をかいた足の匂い
体臭
マニキュア取りの薬剤


それに加えて、「焼けたステーキと鉄の匂い」。これらを頭の中で想像しながら足していくと、ふと、「宇宙空間ってバンコクとかクアラルンプールみたいな匂いなのかもなあ」と思ったりいたしました。

バンコクというか、東南アジアの都市部の屋台などが並んでいる場所では、ナンプラー系(魚醤)の焦げた匂いと揚げ物の匂い、それと渋滞の排気ガスと、女性たちのわりと濃いめの香水の匂いと、人々のムンムンとした「人間の匂い」などが入り交じっていますが、それが上の比喩と似ている。

「宇宙の匂いとはアジアの都市の匂いなり」

と悟りつつも、こんなことで横道に話題が逸れている場合ではないので、話を戻します。



国際宇宙ステーション(ISS)のミッション


宇宙関係のニュースは、最近では、NASA の火星無人探査ミッションのことが多いですが、一方で、宇宙空間では常に、「有人のミッション」が行われていることに気づきます。国際宇宙ステーションでの長期滞在クルーによるミッションです。

国際宇宙ステーションでミッションを行うのは、基本的に、アメリカとロシアの宇宙飛行士ですが、現在の国際宇宙ステーションには、日本の JAXA 所属の星出彰彦さんが NASA 認定の宇宙飛行士として搭乗しています。

iss-32.jpg

▲ 現在の国際宇宙ステーションに「第32次/第33次長期滞在クルー」として搭乗している3名の宇宙飛行士。左から、星出彰彦(日本)、ユーリ・マレンチェンコ(ロシア)、サニータ・ウィリアムズ(米国)の各宇宙飛行士。サニータ・ウィリアムズさんは NASA 所属の女性宇宙飛行士。JAXA 広報ページより。


そんな中、それと関連して、ロシアのイタルタスという通信社の報道で、「ロシア人宇宙飛行士による宇宙遊泳ミッションによる実験」についての記事を見かけました。

ロシアのイタルタス通信には、毎日何度も宇宙ステーションでの活動に関しての報道がありますが、「どうしてかな」と思ったら、どうやらイタルタス通信社は、モスクワの ISS 司令部内に記者を常駐させているようです。


今回の記事は、その国際宇宙ステーションでのロシア側の実験に関してのものですが、その実験の中に、「宇宙空間での生物の移送」に関してのものがあり、それに興味を持ちましたので、ご紹介させていただこうと思った次第です。


はじめて知ったんですが、どうやら科学者たちは近い将来、「他の惑星へ地球の生物を送ろう」としている意図があるようです。生物といっても、この場合、バクテリアや真菌(カビなど)などの微生物ということになるのですが、確かにそれなら、かなり簡単に送ることができる。


まあしかし・・・実際には、今まで地球から宇宙へ打ち上げられた、ほぼすべての宇宙飛行マシンは、「地球のバクテリアなどを付着させた状態で宇宙空間へ飛び立っている」はずですので、すでに宇宙のあらゆるところに地球の微生物は降り立っているとも思います。

過去記事の、

宇宙空間で553日生きのびた細菌の研究が英国オープン大学から発表される
 In Deep 2010年08月26日

にありますように、「宇宙空間でも死なない」地球の生命はたくさんいて、あるいは、大腸菌のようなありふれた地球の微生物や、あるいは、他のどんなものでも微生物であるなら、宇宙空間のような超低温状態なら生きのびられると個人的には思っています。

これは、宇宙空間がマイナス270度などの「超低温」ということが理由で、微生物ならフリーズドライ的な状態、つまり「仮死状態」のような形で宇宙空間に存在できるとされています。


いずれにしても、火星探査機などもそうですが、地球から宇宙へ飛び立っていったマシンは数多くの地球の生き物と共に宇宙に行っているはずです。



太陽系を突破しつつあるボイジャー1号


現在、もっとも遠くまで地球の微生物を引き連れていっていると考えられるのは、NASA のボイジャー1号です。35年前に打ち上げられたボイジャーは、現在、地球から約 170億キロメートル<(113天文単位)という途方もない遠い場所にいて、NASA によると、「もうすぐ太陽系を突破する」とされています。

voyager-115.jpg


このことが NASA から発表されたのは今年6月のことですが、その要約を掲載しておきます。


もうすぐ太陽圏脱出? ボイジャーの周りで宇宙線が急増
Astro Arts 2012.06.15

1977年に打ち上げられ、現在は太陽圏の果てを航行しているNASAの探査機「ボイジャー1号」。178億kmの距離から16時間36分かけて届いたそのデータから、探査機の周囲の宇宙線が急激に増えていることがわかった。2009年1月〜2012年1月の間では25%の増加だったが、5月7日以来、1か月に9%というペースで急増しているという。

太陽圏と恒星間空間の境界付近では、太陽風の荷電粒子と、超新星爆発で生成され恒星間空間から飛来する宇宙線とがせめぎ合っている。計測される宇宙線が増加したということは、それだけ「外の世界」に近づいているという証だ。



ボイジャーに付着している微生物なり、「地球の有機物」なりが太陽系の外へと出て行く日が近いのかもしれないですけれど、しかし、それら微生物も、辿れば元々がそちら側(太陽系の外)から来たものだと考えると、輪廻というか虚無というか複雑な感覚が沸いたりします。


それにしても、たった 35年で 178億キロメートルも進むボイジャー1号の速度もすごいですけど、そんな距離からのデータも「16時間36分」で地球に届いちゃうんですね。


個人的な感覚では、火星の生命探査もそうですが、「宇宙の生命」という存在に関して、何となく、そのミッションは筋違いのような気もしつつも、でも、そういう批判的な意味とは別に、宇宙ステーションで生物の惑星感転送のシミュレーションがおこなわれていることと、その実験の結果には興味があります。

まあ、他の惑星に生命を送るということが、倫理的に(何の倫理かよくわからないですが)是か非かは非常に難しいことだとは思いますが。


今回はロシア語の記事なのですが、ロシア語での専門用語をうまく訳せていないところが多いと思いますので、翻訳する際に用語などを参考にした関連リンクを記しておきます。

Wikiepdia から

ピアース(ISSのロシアのモジュール)
ズヴェズダ(ISSのロシアのモジュール)


また、JAXA の「宇宙ステーション・きぼう」のウェブサイトからは、



などを参考にさせていだきました。
機器の名称や、乗組員の方の名前の日本語表記などは JAXA の表記に準じました。

それでは、ここからイタルタス通信の記事です。




ISS
イタルタス (ロシア) 2012.08.21


ISS の司令官と乗組員が宇宙遊泳での任務を終え、宇宙ステーションに帰還


tass.JPEG


8月21日、ISS (国際宇宙ステーション)の長期滞在のロシア人クルーであるゲナディ・パダルカとユーリ・マレンチェンコは、ISS のロシア活動ブログラムである宇宙遊泳での実験の基本的なタスクを実施し、宇宙ステーションに帰還した。

モスクワ近郊にあるミッション・コントロール本部内のイタルタス通信支部からの報告では、パダルカとマレンチェンコのふたりの宇宙飛行士は、モスクワ時間の午前1時28分に ISS の宇宙遊泳用モジュール「ピアース」に移動した。ピアース内で5時間以上を過ごした後に、宇宙遊泳ミッションが開始された。

開始時間の遅れにも関わらず、パダルカとマレンチェンコの二名は、予定より30分早くタスクを終えた。

ISS に戻ったパダルカとマレンチェンコを出迎えたのは、米国宇宙航空局 NASA のジョセフ・アカバ宇宙飛行士とサニータ・ウィリアムズ宇宙飛行士。そして、日本の JAXA 所属の ISS フライトエンジニア、星出彰彦宇宙飛行士の三名。

パダルカとマレンチェンコが宇宙遊泳でおこなったミッションは、まず、宇宙遊泳用モジュール「ピアーズ」の移動と分離だった。ピアーズは、将来的に ISS から切り離され、太平洋上に落下させ沈ませるのだという。

次に、二名の宇宙飛行士は、宇宙空間での物質の転送の実験を行った。

その後、バレーボール大の大きさの小型の人工衛星スフィアーズ (SPHERES)を使っての実験を行った。これは、科学者たちが、地球への物質落下をシミュレートするのための実験で、二名の宇宙飛行士が、宇宙空間にこの人工衛星 SPHERES を運搬した。この後、ISS の軌道の旋回中にいつでも、この人工衛星のパラメータを観測できる。

その後、二名の宇宙飛行士は、サービス・モジュールと呼ばれる ISS を構成するモジュールのひとつである「ズヴェズダ」( Zvezda )に移動した。このロシアのモジュールには、乗員の居住空間や生命維持装置などの機能が備えられている。

パダルカとマレンチェンコは、このズヴェズダに、宇宙空間の流星の衝突から機体を保護するパネルを強化する作業をおこなった。

そして、最後にパダルカとマレンチェンコは、「ズヴェズダ」にある3つのコンテナのうちのひとつに入った。このコンテナには、宇宙空間の過酷な条件の中で生き残ったバクテリアや真菌などの容器がある。

これらの宇宙空間での生物の研究は、将来の惑星間ミッションや、惑星での検疫活動の問題のための重要な研究要素となる。

また、近い将来、科学者たちが考えている「他の惑星へ地球の生命を移送させる」という試みにおいて、その惑星の生態系に対して、地球の生命がどのくらいの影響を与えるのかを考える必要があるという。

科学者たちは「私たちは地球の住民としてこの問題を真剣に考える義務がある」と言う。

また、科学者たちによると、同様に重要な点として、地球の生物が他の惑星に移送された場合、その地で突然変異する可能性があることだという。





[ロシアの宇宙ミッション]に関連した過去記事:

太陽と宇宙線と人類の関係の中で浮かび上がる 1900年代ロシア宇宙主義の科学
2012年06月22日

ロシアの宇宙飛行士たちが見た「地球の軌道上の7人の巨大な天使」
2011年06月22日

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[1年前の In Deep ]
2011年08月10日の記事

DNA が宇宙で生産されている証拠を発見: NASA が発表

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