2012年08月23日



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アメリカ国防総省の機関がサイバー戦争での自動対応プロジェクト「プランX」構想を発表



昨日、記事をアップできなかったんですが、「太陽活動と人類史」について調べ直していたら、あまりにも内容が肥大して、うくまとめられませんでした。なので、もう一度まとめて、後日記事にしたいと思います。

どうしてこのことを今、記事にしたいのかというと、

「これからの1年間は歴史上の最も過激な時期と同じ位置にある」

と思われるからです。

これは太陽活動からの観点「だけ」での意味ですが、今の太陽は「第24活動周期(サイクル24)」という中での「黒点数の最大期間のラストの1年間のはじめ」あたりにいます。この時期は、歴史上、大変に激動した時期でした。前回は2001年の後半くらいまでの1年間で、それだけでもいろいろなことが思い出されると思います。

今回の本記事は「軍事」の話ですが、その「太陽についてのこと」を前振りでちょっとだけ書いておきます。






 


2001年9月11日も含まれている「太陽活動最大期」


この「第24活動周期」の「24」という数字ですが、太陽活動の記録は 1750年代に黒点観測が始まってからナンバリングされていて、今回が「人類による太陽黒点の観測が始まって以来 24回目の黒点最大期のサイクル」というような考え方でいいと思います。


この「太陽活動と、人間の活動の関係」については過去にも何度か記事にしているのですが、黒点数と人間の活動に関係があるということを最初に発表したのはロシアの科学者のアレクサンドル・チジェフスキー博士という人でした。チジェフスキー博士は 1920年代に「黒点理論」というものを発表しています。これについては、最近もふれていますので、リンクしておきます。

太陽と宇宙線と人類の関係の中で浮かび上がる 1900年代ロシア宇宙主義の科学(1)
 In Deep 2012年06月22日


Chizhevsky-02.jpg

▲ アレクサンドル・チジェフスキー(1897年- 1964年)。


1920年代のロシアでは多くの科学者たちが、ヘリオバイオロジー(無理矢理日本語にすると「太陽生物学」というような意味)という「太陽と、人間を含む地球の生物の関係」について研究していました。これらは「半分は科学、半分は哲学」という部分があったようですが、私自身も「科学への興味」というものが沸いたのは、科学そのものからではなく、作家の埴谷雄高さんの「形而上文学の世界」、つまり哲学サイドからでした。


話を戻すと、この「黒点数の最大期に向かう最後の1〜2年間」というのが、近代史と現代史での最も「荒れた」時代だったと思われます。

たとえば、下のグラフは1950年代あたりから現在までの太陽黒点数のグラフです。赤く囲んだところが、11年の太陽活動のサイクルの中で黒点数が最も大きかった時期です。

sun-1950.jpg


上の期間だけでも、赤い丸のついている1〜2年のあいだにどういうことが起きていたかというのを、ネットの年表などで確認されてみてもわかるかと思います。

何年か前のクレアなひとときの記事で、そのことを箇条書きでまとめたことがあります。
それを一部抜粋しておきます。



太陽活動(黒点数)の最大期に起きた代表的なこと

第4太陽活動周期(1780年前後がピーク) 小氷期(1780年)

第5太陽活動周期(1790年前後がピーク) フランス革命(1789年)

第6太陽活動周期(1805年前後がピーク) 神聖ローマ帝国の解体(1806年)

第7太陽活動周期(1815年前後がピーク) ウィーン体制の開始(1815年)、タンボラ火山の噴火で世界が寒冷化(1816年)

第8太陽活動周期(1830年前後がピーク) ギリシャ独立(1829年)、フランス7月革命(1830年)

第9太陽活動周期(1838年前後がピーク) アヘン戦争(1840年)

第10太陽活動周期(1850年前後がピーク) 太平天国の乱(1851年)、黒船来航(1853年)

第11太陽活動周期(1860年前後がピーク) アメリカ南北戦争(1861年)

第12太陽活動周期(1870年前後がピーク) 独仏戦争(1870年)

第13太陽活動周期(1885年前後がピーク) 甲申政変(1884年)

第14太陽活動周期(1895年前後がピーク) 日清戦争(1895年)、第1回夏季オリンピック(1896年)

第15太陽活動周期(1918年前後がピーク) ロシア革命(1917年)、ドイツ革命(1918年)

第16太陽活動周期(1930年前後がピーク) 大恐慌スタート(1929年)

第17太陽活動周期(1940年前後がピーク) 第二次世界大戦勃発(1939年)、太平洋戦争(1941年)

第18太陽活動周期(1948年前後がピーク) 第1次中東戦争(1948年)、NATO成立(1949年)、中華人民共和国成立(1949年)

第19太陽活動周期(1958年前後がピーク) チベット動乱

第20太陽活動周期(1970年前後がピーク) ブレトン・ウッズ体制の終了(1971年)

第21太陽活動周期(1980年前後がピーク) イラン革命(1979年)

第22太陽活動周期(1990年前後がピーク) ソ連崩壊(1991年)

第23太陽活動周期(2001年前後がピーク) アメリカ同時多発テロ(2001年)

第24太陽活動周期(現在。予想されるピークは2013年頃)



大きなことが起きているというより、「荒れている」という感じがします。



そして今がまさにその時期

そして、今現在の「2012年の夏から」というのが、上の時期と大体同じだと考えられます。今回の太陽活動で、黒点数が最も多くなるのは 2013年の夏とされていて、つまり、今そこに向かう「太陽活動サイクルの最後の1年」がスタートしたと言えます。

いろいろな国で戦争だ、紛争だ、乱射だ、宗教対立だ、暗殺だと大モメで、日本でも領土問題とか、いろいろありますが、これは過去の歴史を振り返ると、まだまだ拡大するという感じとなる可能性もあるわけで、この1年は「覚悟の1年」かも。

ただし、個人的には太陽活動は過去より小さくなっていると思いますので、過去ほどではないと思いますけれど。


なお、この時期には「大きな火山噴火が起きる」というのも顕著です。サイクル21の太陽活動最大期だった 1980年には「セント・ヘレンズの噴火」がありました。少なくとも近現代で、この米国のセント・ヘレンズ火山の噴火というものは「最大の噴火」でした。


幸い、日本にはセント・ヘレンズ山クラスの破壊力の強い火山は(古代火山の鹿児島の薩摩硫黄島を除けば)存在しないですが、この時期に「現在の世の中で最も大きな爆発のひとつである火山噴火が起きた」ということは興味深いです。

このあたり、先週あたりに書きました、

世界の7つの超巨大火山のひとつが存在するニュージーランドで起きている巨大な徴候
 In Deep 2012年08月14日

の中の「地球の7つの超巨大火山」というところで少し書いています。


St_Helens_Paul_Kane.jpg

▲ 1845年にカナダの画家ポール・ケーンが描いたセント・ヘレンズ山の噴火の水彩画。頻繁に噴火する巨大火山であるセント・ヘレンズは個人的に「世界の人々の感情のバロメータ」のような気もします。


というわけで、「黒点数から見る太陽活動と地球での様々な現象の関係」というのは、上のようにちょっと前振りで書いてもこれほどになってしまうもので、簡単にはまとまらないものです。

なので、多少まとまった時に書きたいと思います。

ガラリと変わって、ここから今日の本題です。
サイバー戦争の最前線の話です。






 



戦争手法の次段階に突入しつつある世界


太陽活動と同じくらい私は「現代の戦争」に興味がありますが、これに関して、興味深いニュースが最近よくあります。

そのうちのひとつが、

韓国が北朝鮮からの EMP (電磁パルス)攻撃に備え EMP 兵器の防護施設の秘密建設計画を推進していたことが判明した

というニュースで、これが最近、韓国の報道でありました。
どうして判明したかというと、その「極秘書類」が流出しちゃったようなんです。

記事は韓国語のものしかないですが、こちらの Google 翻訳をかませたリンクで内容はわかると思います。

韓国は地下にバンカー(地下防御壕)をたくさん建築していますが、そのバンカーを EMP 攻撃から防御するものだそう。ちなみに、上の記事の最後は下のようにしめくくられています。


朝鮮日報 韓国語版より

EMP (電磁パルス)は、強力な高出力電磁波を放出し、敵の電子機器を無力化することを意味する。 レーダー、航空機、防空システムなどコンピュータを使用する指揮統制体制などを無力化することができ、未来戦の主要武器として評価されている。戦闘機や艦隊に使用すると、瞬間的に制御機能を喪失して墜落させたり、防御機能を無力化する効果をおさめることができる.。



ここに「未来戦の主要武器として評価されている」とありますが、それは困るのです。過去、何度も書きましたが、どれだけの大戦争になろうが、 EMP とスタクスネットの及ぼす被害とは種類が違うように思います。EMP とスタクスネットはこの世を原始時代に引き戻す武器です。

とはいえ・・・今の人類、一度原始に戻ったりすることも必要なのですかねえ。

まあ、韓国の場合、隣の北朝鮮が EMP 兵器を持っていることはほぼ確実ですので、対策しているのだろうとは思っていましたけど、秘密書類が流出してわかるとは。

EMP 兵器とスタクスネットに関しての過去記事は、翻訳記事の下にリンクしておきます。



元ハッカーと手を組んで開発を進めているアメリカ軍の最新サイバー対応ツール


今回は、アメリカの「新しいサイバー戦争」の記事をご紹介します。
米国 WIRED のものですので、日本語でも紹介されるでしょうけれど、記しておきます。

以前、こちらの過去記事の後半で、「現代の戦争」とは、


最前線の兵士は並べられたコンピュータの前で淡々とウイルスとしてのソフトウェアの作成とハッキングのシミュレーションを繰り返し、他の一団は EMP 兵器の性能を高めるための研究を続ける。

このふたつだけで、その気になれば世界全滅も可能ということでもあり、軍部から見れば、便利な時代になったものだと思います。


と私は書いていますが、米国のその「未来戦争」に関しての方法論の記事をみかけました。

「X計画」という新しいサイバー戦争プロジェクトがアメリカ国防総省下の「国防高等研究計画局」から発表されたというニュースです。

米軍は「プラン+アルファベット」の名称が好きみたいで、上の過去記事でも出てきた、スタンリー・キューブリック監督の1963年の映画『博士の異常な愛情』の中も揶揄的に使われていて、ソ連への核攻撃計画の名称は「プランR」でした。

Dr._Strangelove_-_Wing_Attack_Plan_R.png

▲ 映画『博士の異常な愛情』(1963年)より。B-52爆撃機で、無線で受け取った暗号「プランR」(R作戦)の内容を、機密書類で確かめる搭乗員たち。そこに記載されているのは「ソ連への核攻撃命令」。ここから BGM は1953年の『第十七捕虜収容所』のテーマ音楽に変わり、ギャグ度を深めていきます。


ちなみに、今回の米軍のサイバー戦争の新プロジェクトの要点のひとつには、「攻撃への対応の自動化」というものが含まれているようなんですが、この「サイバー戦争の自動化」というのは、上の『博士の異常な愛情』での話とほとんど同じことになっています。

『博士の異常な愛情』の話の根幹は、当時のソ連が、

「どこかの国から核攻撃を受けた場合、自動的に対応した兵器が作動する(地球上のすべての場所に死の灰が降るたぐいのマシン)」

というシステムを作った話で、それを「終末の日マシン」(以前の日本語訳は「世界全滅装置」でした)と呼んでいましたが、問題は「完全な自動反応システムなので、誰にも止めることはできない」ということ。その中で、一種の「誤」命令により、米軍がソ連に一発の核爆弾を落としてしまって、このソ連の「世界全滅装置」が作動してしまうという話でした。

自動化の宿命というのはこういう部分にあります。
「人間の手で止められない」という。

自動は危険なんですよ。
でも、作っちゃうんだろうなあ、きっと。

ここから本題です。

ちなみに、私たちは今このようにインターネットを使っていますが、このインターネットの原型を最初に作ったのも、今回登場するアメリカの「国防高等研究計画局」です。






Darpa Looks to Make Cyberwar Routine With Secret ‘Plan X’
WIRED (米国) 2012.08.21

国防高等研究計画局が極秘プロジェクト『X計画』でサイバー戦争のルーチンを構築する


Keith-Alexander.jpg

▲ 米軍の緊急即応部隊である「ストライカー戦闘旅団」の指揮官トッド・ウッド大佐(右)とアメリカ国家安全保障局のキース・B・アレクサンダー将軍(左)。アフガニスタンにて撮影。


アメリカ国防総省のトップレベルの研究セクションである国防高等研究計画局 ( DARPA )が、新しく分類されたサイバー戦争のプロジェクトを発表した。

国防高等研究計画局によると、これは次世代のスタクスネットの開発計画ではないという。しかし、この『X計画(プランX)』は、米軍の軍事オペレーションによるネットワークへの攻撃を容易にするためのルーチンを開発するもので、また、「スタクスネットの息子」を作り出すことも簡単になるという。計画局は、「このプロジェクトにより、(我々米軍が)サイバー戦争を支配できる」と語る。

国防高等研究計画局は、「サイバー戦争における防御」について長い間、研究してきた。そして、この数ヶ月、敵からの攻撃に対しての防御法の性能の改善の必要性をプッシュしていた。

この「X計画」は、オンラインでの素早い防御と反撃に関してのもので、軍事マルウェアに攻撃された場合に、その損傷の程度を素早く判断して、即時に反撃するための戦略計画者のソフトウェアの構築を意味する。

また、国防高等研究計画局のケン・ガブリエル行動課主任がワシントン・ポスト紙に語ったところによれば、「デジタル戦場マップ」のようなものを作成し、軍のトップがサイバー戦争の展開を視聴することを可能にするという。

この計画には、年間1億ドル(約 80億円)の資金が供給されているが、8月20日に記述によると、「計画Xは、脆弱性の分析とサイバー武器の生成に関しての研究開発運動の資金の供給をはっきりとは受けていない」という。

これまで、アメリカの防衛と諜報の機関は、ネットワーク攻撃の承認に難色を示し続けていた。

その理由は、開発したツールの効果と影響が、敵への攻撃を越えて拡大していくことを怖れたためだ。

たとえば、ブッシュ政権だった 2003年の米軍によるイラク侵攻の前夜、米軍において、イラクの首都バクダッドの銀行のオンラインシステムに大規模なサイバー攻撃を仕掛けるという計画のアイディアが出されたことがあったが、手控えられた。

しかし、ネットワーク攻撃が手控えられてきた理由はそれだけではない。

アメリカ国家安全保障局のキース・B・アレクサンダー将軍(米軍のサイバー軍司令官でもある)は、「米国に(サイバー戦争での)攻撃計画の事前通告などのルールがある限り、国家レベルでのサイバー攻撃に正しく対応できるかどうかの懸念がある」と表明したことがある。

そんな中、「プランX」では、航空機のオートパイロットシステムと同様に、自動的に実行するように計画することで、上のふたつの問題を解決しようと試みる。

もちろん、サイバー兵器そのものが今ではあまりにもお決まりの手順となっていると批判的に考える人は多い。イランに対してのアメリカによるオンライン諜報活動は論争の的だった。

また、ロシア政府とその同盟国は、サイバー兵器は国際条約によって禁止されるべきであると主張している。

今、米国でも、スタクスネット(Stuxne)のような軍事用破壊工作ソフトウェアをオバマ政権の政治的ツールとして、サイバー攻撃を合法化したのではないかという懸念がある。

それでも、国防高等研究計画局は一歩先に進んでいる。
たとえば彼らは元ハッカーにも研究の下請けを依頼している。

コンピュータへの侵入を感知する会社を運営するIT会社のダニエル・ルールカー氏(Daniel Roelker)は、元ハッカーだ。ルールカー氏は、現在の「ハッカー対ハッカーによるサイバー戦闘のシミュレーション・アプローチ」の方法を非難している。それは実戦では機能しないだろうと述べる。彼は「外部のアドバイザーの助けで戦争は勝てない。我々はテクノロジーでのみ戦争に勝てる」と言う。

そのために、米国はネットワークを分析して、サイバー攻撃への対応を自動化して確認する一連のツールを必要とするのだとルールカー氏は語った。