2012年08月26日



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洪水...洪水...洪水.. 世界中で異常な数と規模で発生し続ける洪水








 


現在、日曜(8月26日)の午後で、今日の夜から沖縄を台風15号(英名:BOLAVEN / ボラヴェン)というものが通過していくのですが、これがとんでもない大きさのようです。そして、沖縄通過後に朝鮮半島を完全に縦断していく模様です。

台風の威力は、「何とかヘクトパスカル」と数字でいわれてもわくわからない感じで、個人的には海外での、カテゴリーわけのほうが何となくわかりやすいです。下のは、RSOE EDISというハンガリーの自然災害リアルタイム情報サイトにある予想進路図ですが、海外では、米国などのハリケーンの威力に準じて表記されていて、その「強さ」がわかります。

米国でのハリケーンの強さの指標は下のようになっています。
上の熱帯低気圧から、最大はカテゴリー5となり、色分けでは薄いピンクとなります。
威力は風速を基準にしているようです。

storm-c.png


一番下のカテゴリー5というのが最大で、このクラスの台風やハリケーンは、どこの国であっても、滅多に上陸するものではありません。

たとえば、2005年に米国に壊滅的な被害を与えたカトリーナというハリケーンでさえ、上陸時にはカテゴリー3でした(海上でカテゴリー5の時があった)。

それで、今回の台風の進路と勢力の予測。

edis.jpg


沖縄を通過する際にすべてカテゴリー5が示されています。
これはもう、いわゆる「スーパー台風」と呼ばれるものに近いもののような感じがします。


これまで、日本の領域内をこのような威力の台風が通過していくという予測を見たことがないですので、もしかしたら、「日本の観測史上最大の台風が近づいてきている」ということなのかもしれません。何というか・・・ご注意下さいとしか言いようがないのですが、ただ、沖縄の方は台風に慣れてらっしゃるので、被害も最小限で収まってくれるのではと・・・・・。


ちなみに、この台風の進路予測では、沖縄を通過した後は、カテゴリー4という強力な勢力を保って韓国に上陸して、そのまま北朝鮮へと北上していく予測です。後で書きますが、北朝鮮は最近、幾度も洪水に見舞われています。韓国も北朝鮮も、日本と比べるとこのようなクラスの台風の直撃を受ける経験は少ないはずですので、やや心配な面もあります。


そんな時に洪水の話題というのもどうかと思いますが、しかし、これは昨日あたりから書こうと決めていたことで、つまり、「なんだか世界中で大きな洪水が異常に多い」のです。

今日はそのことを少し書いてみたいと思います。

その前に、今朝見かけたニュースのこと。



消えていく氷と関連して


8月の中旬頃、「熱波地帯での言い訳」という、暑くて記事を書けません、という言い訳を書いたりしていましたが、そこで、「地球の氷が消える日というタイトルで記事を書いていた」と記しています。

その後、すぐに記事をアップしていない理由なんですが、毎日のように「氷関係」の報道があるのです。

今朝は NHK ニュースで、氷の報道がありました。

日本のJAXAの観測衛星「しずく」の撮影で明らかになった「事実」の報道でした。
下に抜粋します。


北極海の氷 観測史上最小に
NHK 2012年08月26日

shizuku.jpg

北極海に浮かぶ氷の面積が、観測史上最も小さくなったことが、JAXA=宇宙航空研究開発機構の調査で分かりました。これは、JAXAがことし5月に鹿児島県の種子島から打ち上げた、水観測衛星「しずく」を使った調査によって明らかにしたものです。

それによりますと、地球の北の端、北極海に浮かぶ氷の面積は、24日の時点で421万平方キロメートルとなっていることが分かりました。これは、アメリカの衛星などによる記録が残る1978年以降、最も小さかった2007年9月の425万平方キロメートルを下回り、観測史上最小となりました。

JAXAによりますと、北極海の氷は毎年、9月中旬から下旬にかけて最も小さくなるため、ことしはさらに小さくなることが見込まれるということです。原因について、JAXAは、北極海の温度の上昇により、氷が薄くなっていることがあるとみていて、引き続き水観測衛星による監視を続けていくことにしています。



1週間ほど前に、同じ「しずく」の観測によって、「史上最速のペースで北極の氷が溶けている」という報道がありました。

そして今回、その結果とも関連して、北極海の氷が観測史上で最も少なくなっていることがわかったということのようです。

これら「消えていく氷」については、この夏、まだまだ報道や発見がありそうですので、いろいろとはっきりとしてきた頃にまとめてみたいと思います。

また、あくまでも個人的な思いこみですが、私は最近、太陽などと共に「地熱(地下から噴出している放射性崩壊による膨大な熱)」も関係しているような気がしていて、もしそうなら、この先、海の上の氷だけではなく、永久凍土など含めた「あらゆる地球の氷が溶ける」ということもあるのかも、などと思うこともあります。

まあ、そういうことは素人の私の予測を書いても仕方ないですので、何らかの「事実」が起きることがありましたら書かせていただきます。

ちなみに、この「地球の地下の熱」に関しては、

地球からのニュートリノと地球内部からの膨大な熱の源は何か
 In Deep 2011年08月27日

という過去記事にあります。

実は、地球の内部からは、「44兆ワット」という原発何千基分にも相当する膨大な熱が絶えず噴出していることがわかっています。エネルギーの半分は、放射性崩壊という反応によるものだそうですが、あとの半分は原因がわかっていません。日本の東北大学大学院の研究者の方々などが中心となって、この現象の解明を進めています。


さて、ここから洪水に関しての記事です。




圧倒的な規模と発生件数の2012年の洪水


洪水は、季節になれば世界各地で起きるもので、洪水そのものは珍しいことではないですし、日本でも頻繁に発生します。

しかし、近年、「大きな規模での洪水発生が多くなっている」という事実があります。

洪水の被害の規模を線で引くことは難しいですが、たとえば、世界の災害や犯罪などの中で、特に大きく報道されたものなどを 2001年頃からウェブ上に記録している World News Atlas というサイトの中に、「洪水」という項目があります。

その数を下に並べてみます。


2000年から2011年までの大規模洪水報道の件数

World Flood Timeline より。

2011年 ( 37件)
2010年 ( 23件)
2009年 ( 7件)
2008年 ( 6件)
2007年 ( 13件)
2006年 ( 3件)
2005年 ( 4件)
2002年 ( 3件)
2000年 ( 1件)




2010年頃から、世界的に報道される洪水の数が飛躍的に増えていることがおわかりかと思います。

このサイトが、どの規模で洪水に線引きをしているのかはわからないですが、どういう線引きでも、ある程度は同じ基準でおこなっていると思います。なので、年ごとの「比較の目安」程度にはなると思います。

また、上のサイトでは「英語での報道」だけを取り扱っているはずですので、たとえば、日本や韓国やタイ、あるいは中東などのように、英語から遠く離れた言語を使う国で「現地語だけで報道されたもの」は含まれていないはずで、実際の報道数よりかなり少ないとは思います。


今年も、この夏前後から加速度的に多くの報道を目にします。

たとえば、この1週間ばかりの間に洪水に関して、どんな報道があったのかをご紹介したいと思います。

繰り返しますが、「この1週間の間」だけの期間の報道です。

ご紹介する国は、ミャンマー、台湾、北朝鮮、ハイチ、パキスタン、ロシア南部等です。
それぞれ要約です。

私は、世界の洪水のニュースをわりとチェックし続けていましたが、こんなに短い期間にこんなに大洪水(の報道)が集中するのは見たことがありません。今の8月ってなんか特別な時なんですかね・・・とかさえ思ったりするほどでした。

ここからです






 


ミャンマー大洪水(8月25日報道)

Myanmar flooding forces 85,000 people to flee
AP通信 2012.08.25

ミャンマーの大洪水で住民8万5千人に避難命令が出される

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▲ 市場でボートに乗りお布施を受けるミャンマーの僧侶。


ミャンマー当局によると、ミャンマーでの洪水により、8万5000人が避難しており、また、数万ヘクタールの田んぼが水没した。洪水として過去最悪の被害となるおそれがあるという。

ミャンマーの主に南部では数週間にわたり豪雨が降り続け、これが洪水の原因となったと見られている。現在、約7万人が緊急支援センターに収容されている。

洪水が発生しているデルタ地帯は、2008年に 13万人の死者を出したサイクロン・ナルギスによって荒廃していた。今回の洪水では死傷者は確認されていない。







台湾の洪水(8月24日報道)

Typhoon soaks southern Taiwan, but wind damage and floods spare its most populated areas
National Post 2012.08.24

台湾「テンビン」の影響で、離れた人口密集地が暴風雨の被害を受ける

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▲ 水が引いた後、通りを歩く人々。 台湾屏東県。2012年8月24日。


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▲ 台風の豪雨で水没した台湾屏東県の恒春鎮市。2012年8月24日。


8月24日に台湾南部を通過した台風「テンビン」(天秤/ Tembin/台風14号)により、屏東県の恒春市などで洪水が発生し、その水位は3メートルに達した。軍とレスキューが装甲車などで浸水した家々から数十人の住民を救助した。

高雄県では、時速155キロの強風が測定され、木々がなぎ倒された。

また一方では、非常に勢力の強い台風ボラヴェン(台風15号)が日本の沖縄に接近しており、こちらの台湾への影響も気になるところだ。






ここまでです。

なお、台湾は今現在(8月26日)も、台風14号の渦中にいて、さらに台風15号の影響を受ける可能性もあり、大変な状況はこの時と同じかもしれません。

taiwan-2012-0826.jpg

▲ 現在の台湾の状況。

台湾では、3年前にも壊滅的な台風モーラック(莫拉克)での洪水に見舞われていて、その際には 700名が死亡しています。


2009-morak.jpg

▲ 2009年の台湾大洪水の時の台湾のテレビ報道。上の見出しは「台風モーラック直撃。南台湾で大洪水」。下の見出しは「過去50年で最も大きな惨事」とあります。YouTube に報道の映像が残っています。



北朝鮮で繰り返す洪水(8月23日報道)

北朝鮮は、7月の終わりに、死者行方不明 600名近くという大洪水に見舞われましたが、そのことについては、8月のはじめの「日常にある天体の奇跡」という過去記事でふれていましたが、また北朝鮮で洪水が発生しているという報道がありました。

北朝鮮でまた洪水による深刻な被害 6人死亡
 VOR 2012.08.23

前回の洪水の北朝鮮のメディア朝鮮中央通信の映像は下のものです。








ハイチのハリケーンによる洪水(8月25日報道)

Tropical Storm Isaac hugs Cuba coast, expected to be Cat 2 hurricane in Gulf
NBC 2012.08.25

熱帯低気圧アイザックがキューバ沿岸を襲った。メキシコ湾でカテゴリー2のハリケーンに発達する見込み

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▲ ハイチの首都ポルトープランス。8月24日の街の様子。

熱帯ストームのアイザック(Isaac)により、ハイチで4名が死亡し、現在、イサークはキューバの海岸線に進んでいる。この後、アイザックは、メキシコ湾を米国のフロリダに向かって、カテゴリー1のハリケーンに発達させながら進んでくる可能性が高い。

ハイチの首都ポルトープランスでは、今なお 2010年のハイチ地震で家を失った人々がテントや避難所で生活をしており、避難所で生活する人々の数は 35万人に上る。今回の洪水は、その人たちを再び苦境に陥れた。

カリブ海諸国では、多くの国と地域で、現在、停電と洪水が報告されている。

週明け(8月27日)にはフロリダ全域で暴風雨を伴う悪天候、及び、竜巻の危険性がある。








パキスタンの洪水(8月23日報道)

Heavy torrential rain, landslides, and floods kill 26 in Pakistan
AFP 2012.08.23

パキスタンで極めて激しい豪雨により地滑りと大洪水が発生し、現在まで26名の死亡が確認

pakaistan-flood-thatta-aug10-afp-lg.jpg

豪雨による洪水と鉄砲水、そして地滑りのために、パキスタン北部で少なくとも 26名の方が亡くなり、多数の家屋が破壊された。また、至るところで、道路が流され寸断しているという。

パキスタンでは、2010年に記録的な大洪水が発生しており、その際には、家畜を含む農作物に甚大な被害を与え、建物やインフラにも大きな被害が出た。その際には 580万人が洪水の影響を受けた。








ロシア南部の洪水(8月22日報道)

Fresh flood kills four in southern Russia
AFP 2012.08.22

ロシア南部で洪水と鉄砲水により4名が死亡

ru-floods.JPG


ロシア南部のクラスノダール州の非常事態省は、同地方で発生した洪水と鉄砲水により、 4名の住民が死亡したと発表した。一晩中降り続いた大雨により河川が氾濫し、洪水が発生した。

この地帯の近くでは、先月にも大洪水が発生して、172名が亡くなっている。
そして、3万5千人の住人が洪水の被害を受けた。







(訳者注) 上の報道の中にある「7月のロシア南部での洪水」については、過去記事の、

私たちが経験している現在の気候変動は次の数万年の人類史への扉かもしれない
 In Deep 2012年07月13日

という記事の中で書いたことがあるのですが、このロシア南部というのは、本来は乾燥した地帯で、上の7月の洪水は、「同地の半年分の雨が一昼夜で降った」ということによって発生した洪水でした。

上の記事に書きました、モスクワ国立大学の気象学者であるパーヴェル・コンスタンチノフという人の言葉を抜粋しておきます。


「今回洪水が起きたクバン地方ゲレンジク地域は乾燥した亜熱帯地方に属す。ところが今回ゲレンジクでは1昼夜に300ミリの降雨量を記録した。これは7月としては6ヶ月分の降雨量に相当する。300ミリがどれほど多いものであるかを理解するためには、1平方メートルあたりの面積に10リットルのバケツの水を30回注いでみれば想像がつくだろう。

(中略)

同地方で過去100年にこうした集中豪雨がなかったことから、近い将来に同じ事態が繰り返される危険性が全くないとは言い切れない。これは気候変動に端を発する異常気象が多くなったことと関連する。われわれはいかなる事態が起こってもおかしくないと準備を怠ってはならない」



このコンスタンチノフ博士のいう「将来に同じ事態が繰り返される危険性が全くないとは言い切れない」という杞憂は、まったく杞憂でなかったわけで、また同じような場所で、洪水が発生して死者が出てしまっています。

そして、このコンスタンチノフ博士の言う、


> われわれはいかなる事態が起こってもおかしくないと準備を怠ってはならない


というのは、今では全世界のどんな現象にでも言えることなのかもしれないです。

というか、今日明日もまさにそうなのかもしれません。

最近、妙に全体が長くなってしまいますが、暑さで頭の中が混沌としていて、的確にまとめることができないのが原因です。どうも気づくとダラダラと長くなってしまっていて、すみません。