2012年09月06日



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「西側の大衆文化は悪魔に牛耳られており、米国はキリスト教を滅ぼそうとしている」: ロシアメディア



最近、ロシアのメディアの、いくつかの記事をご紹介しました。

ひとつは、

フリーメイソンと高知に導かれて Google Earthe 上で北緯 33度の旅をする
 In Deep 2012年08月29日

というもので、「数字の 33と米国の所業」について言及したロシアのプラウダの記事。


もうひとつは、ロシアのプッシーライオットという女性バンドによる騒動に関してのものです。

反プーチンではなく「反キリスト」としてのロシアでの象徴となりつつあるプッシーライオット
 In Deep 2012年09月01日

という記事。






 



今回の記事は上のどちらにも関係していると思われるもので、やはりロシアのプラウダの記事ですが、「西の文化が人々を怪物に仕立て上げる」というタイトルの記事で、西欧のポップカルチャー全般に対しての嫌悪を書き、記事の著者は「そこには国際社会の悪魔主義による陰謀の歴史が刻まれている」としている記事の内容です。

そうとう偏った記事ですが、興味深いのは「キリスト教を徹底的に擁護している」という点です。


上の過去記事のうちの、キリスト教会で逮捕されたプッシーライオットの記事に、私は「反キリストとしての」というタイトルをつけ、その時は自分でも「こんなタイトルつけていいのかな」と疑心暗鬼だったのですが、今回の記事を読んで、上のタイトルはそれほど的外れでもなかったことがわかりました。

つまり、多分、今のロシアでは「キリスト教と、そうでない宗教との大きな確執が政治レベルにまで拡大するほどに存在しているかも」ということです。


さらに興味深いのは、このロシアの記事の著者は以下の意味の主張をしていると思われます。

「ロシアこそがキリスト教の正当な継承国家であり、アメリカとそれに属する西欧諸国は反キリストの悪魔の手先だ」。


とこの記者は言いたいようなのです。

つまり、「アメリカがキリスト教を滅ぼそうとしている」と。


「へえ、そういう論調が存在するんだ」とやや驚くやら興味深いやら。

いずれにしても、最近のロシアのメディアの反米主義はかなりのものですが、今回のあからさまな西欧への敵対心にもやや苦笑してしまいました。

さらに文中には「ソ連時代の賞賛」が書かれていて、「戻ろう」というようなニュアンスさえ書かれています。

ところで、プッシーライオット騒動ですが、本人たちは逮捕されたり、国外逃亡しているわけですが、その後、ロシア国内のプッシーライオットのファンたちが起こしている様々な出来事、というのがあります。

英国のテレグラフに、その写真がまとめて紹介されていましたので、いくつかご紹介します。




記念十字架を切り倒すウクライナのプッシーライオットの女性ファン

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プッシーライオットファンにマスクをされた、モスクワ駅にある第二次大戦のソ連軍英雄像

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モスクワのカザフスタンを代表する民族詩人アバイ・クナンバエフの像にもマスクがかけられ


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今回の記事を書いたような人たちである(多分保守的な)ロシア人の怒りというのも、上のような事態でさらに燃え上がっているのかもしれません。

というわけで、ここから記事の翻訳をご紹介しますが、この記事を書いた人は、いわゆるインテリなんでしょうけれど、私の知らない作家や音楽家などの名前がたくさん出てきます。

それぞれに説明がないので、そのたびに私は調べていたのですが、その数があまりに多く、その説明は文中にカコミで示しました。多くが Wikipedia の説明の冒頭の部分からです。

なお、文の冒頭に出てくる「ニコラ・ボナル」という人は、調べても誰だかわかりません。フランスのサッカー選手としての名前はありましたが、その人かどうかわからないです。

ではここからです。






 


Satanic Western culture turns people into monsters
Pravda (ロシア) 2012.08.31

西の文化が人々を怪物に仕立て上げる


ニコラ・ボナル(Nicolas Bonnal)は、西欧の文化の持つ破壊力について語っている。ボナルによると、西側の文化は人間の思考と感性に対して向けられているという。

そして、この文化は人々の「訓練」と関連している。
その先には堕落したゴールと、それに関しての国際的な計画がある。

ロシアは、ソ連時代、実は政治的な理由以上に、西側に嫌われていた。
ソ連はビートルズを生まなかった。
そのかわり、プロコフィエフとショスタコービッチを生み出した。

社会は、「文化」という名のこの武器を理解することはなかった。
静かな戦争のための静かな武器として認識しなかったのだ。


プロコフィエフ
セルゲイ・プロコフィエフ (1891-1953年)はロシアの作曲家、ピアニスト、指揮者。ソヴィエト時代には、ショスタコーヴィッチやハチャトゥリアン、カバレフスキーらと共に、社会主義国ソヴィエトを代表する作曲家とみなされた。
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ショスタコーヴィチ
ミートリイ・ショスタコーヴィチ (1906-1975年)は、ソビエト連邦時代の作曲家。マーラー以降の最大の交響曲作曲家としての評価がほぼ確立され、世界的にも特に交響曲の大家と認知されている。また、弦楽四重奏曲においても秀逸な曲を残し、芸術音楽における20世紀最大の作曲家の一人である。



最近のプッシー・ライオットの事件の裏側は慎重に説明されなければならない。プッシー・ライオット騒動は政治的なものではないにも関わらず、実は極めて政治的なものといえるのだ。

トクヴィルは、いかなる社会構造も、それがこの世から消えなければならない時ほど怒りが燃えさかることはないと言った。

現代の西側では、それは教会と、そしてアメリカ合衆国そのものにあてはまる。金融株式市場の狂気、社会保障に対しての憎しみで燃え上がる暗黒パワー、そして、それらのような暗いものをすべて保護しようとする立法と教会。


トクヴィル
アレクシ・ド・トクヴィル (1805-1859年)は、フランス人の政治思想家。19世紀初頭に当時新興の民主主義国家であったアメリカ合衆国を旅して著した『アメリカの民主政治』は近代民主主義思想の古典であり、今もなおアメリカの歴史及び民主主義の歴史を学ぶ際には欠かせない教科書の一つとなっている。日本では福澤諭吉が紹介している。



エリート集団たちにとって、西側のキリスト教会の影響力の低下はまだ十分ではない。教会はガラガラのこともあれば、時には、お年寄りやスピリチュアルな体験を求める人たちで混み合う。

少数のキリスト教徒だけが残り、彼らキリスト教徒はこの社会での支持をますます得られなくなっている。

ロシアでのプッシー・ライオット騒動は、悪魔崇拝が西側の公式な大衆文化となったことを示している。西側はこの悪魔文化を保護する準備もできている。

私たちはこれを「ハリー・ポッター」や、ゾンビや吸血鬼、エクソシズム、カニバリズムを扱う MTV 、そして、マドンナのアンチフランス挑発の行動などに見ることができる。これらの理由は、ほとんどすべてのロックとポップスのコンサートで見いだすことができる。

悪魔崇拝のメッセージは細心に計算されている。

彼らは、民主主義という隠れ蓑を装いながら、その実体を具現化していく。そして、それは、シリアに爆弾を落とし、あるいは今後、イランを爆撃し、そして、ロシアとウラジミール・プーチンを脅かす準備へとつながる。

彼らは西側のシステムに適合しないものは、何でもターゲットにする。


しかし、主要なターゲットはキリスト教だ。


マドンナのような「おとり捜査官」は実際にはシオニストだ。
プッシーライオットは、イスラム教を尊敬し、遺産として名高いキリスト教会では猫を蹴る。

我々は我がロシアの教会で、決して悪魔に祝福などさせない。
私たちロシアの民主主義は、今回のプッシーライオットの一連の出来事に激怒している。


ソビエト時代は、政治的理由で西側にソ連は軽視されたが、しかし、それだけの理由ではなく、ソ連の文化と芸術にも理由があった。ソ連はポロック派(ニューヨーク抽象表現主義)を生み出さなかったし、ビートルズも作り出さなかったが、素晴らしい多くの芸術家を生み出した。


ニューヨーク抽象表現主義
抽象表現主義とは、1940年代後半〜1950年代のアメリカ合衆国の美術界で注目された美術の動向である。



ソ連は、悪魔ルシファーのような自由は賞賛しなかったが、しかし、社会の規律を賞賛した。

アメリカの文化は、人々の価値を下げ、人類を俗悪にするための退行性文化を多く生み出した。それらのゴールは、人類の精神性に大きな影響を与えることだ。

現代の西側の文化は、その源泉は 1960年代に遡るが、しかし、現在の私たちロシアは、現在の西側諸国の文化(たとえば、レディ・ガガ、スウェーデンの「ミレニアム」本、ネオパンク・ファッション、映画「アバター」)などに背を向けている。

これらの文化はもはやキリスト教の文化ではない。

あるいは、特定の国家や土地に根ざした文化でもない。
そして、偶然生まれたものでも、アーティストたちの才能だけの話でもない。

ここには、 堕落した未来のゴールと、国際的な計画がある。

この歴史は実際には、現代文学といわれるものや、あるいは古典以降の映画撮影技術まで遡る。アドルノは、「現代の音楽は人をイライラさせるために作るように仕向けられている」と言った。


アドルノ
テオドール・アドルノ(1903-1969年)は、ドイツの哲学者、社会学者、音楽評論家、作曲家である。ナチスに協力した一般人の心理的傾向を研究し、権威主義的パーソナリティについて解明した。

作曲家としても作品を残し、アルバン・ベルクに師事した。また、一貫してジャズやポピュラー音楽には批判的な態度をとりつづけた。



ソルジェニーツィンは、耐えがたい音楽によって世界が征服されたことにより、人々は生きていることを忘れてしまったと指摘した。

黒魔術は、西側のいたるところで実権を握っている。
これは、西側でテレビをつければすぐにわかる。


ソルジェニーツィン
アレクサンドル・ソルジェニーツィン(1918 - 2008年)は、ソビエト連邦の作家、劇作家、歴史家。1990年代ロシア再生の国外からの提言者である。ソビエト連邦時代の強制収容所・グラグを世界に知らせた『収容所群島』や『イワン・デニーソヴィチの一日』を発表し、1970年にノーベル文学賞を受賞。1974年にソ連を追放されるも、1994年に帰国した。

ソルジェニーツィンの生涯は、彼の人生を左右した二つの価値観、つまり父譲りの愛国心と、母譲りのキリストへの信仰心に彩られている。



ソビエトの作家、ダニエル・エスチューリンは、現代のサブカルチャーの隠されたサイドに存在するオカルトの設計図についてうまく書いている。

ビートニクス(ビート・ジェネレーション)が開始された時に、ビートニクスが政治運動と切り離すように促されたことは知られている。

ドラッグ文化とカウンターカルチャーは、警察と政治プロジェクトに適合し、そして、ハリウッドはそこからインスパイアを得た。平行した世界をコントロールするためには、(文化で人々を導くほうが)政党を作るより簡単なことだった。


ビートニク(ビート・ジェネレーション)
1955年から1964年頃にかけて、アメリカ合衆国の文学界で異彩を放ったグループ、あるいはその活動の総称。

最盛期にはジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグそしてウィリアム・バロウズを初めとする「ビート・ジェネレーション」の作家たちは多くの若者達、特にヒッピーから熱狂的な支持を受け、やがて世界中で広く知られるようになった。またポエトリー・リーディングの活動も有名である。



そして、 SF映画のテーマ、サイエントロジー、性の革命、そして、奇蹟やスビリチュアリテイ・・・。それは多くの人々をコントロールして利用するための政治的な恐ろしい手段となった。


これらの意識の植え付けは、幼児期に、あるいはもっと前より始まる。

たとえば、「テレタビーズ」は、赤ちゃんたちに「主義」を与えるために意識的に作られている。


テレタビーズ

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『テレタビーズ』 (Teletubbies) は、イギリスのBBCで1997年3月31日から放送され、120カ国以上の国で視聴されている幼児向けテレビ番組である。



そして、小さなうちに「ハードディスクからのプログラムのひとつ」として機能するようになった子どもたちは、iPod を与えられ、テレビゲームと MTV により、作られた悪魔崇拝へと突き進んでいく。

悪魔崇拝の最近のものとしては、ブラック・サバス、マリリン・マンソン、デッド・ケネディーズなどのヘビーメタル音楽などは顕著で、児童文学にも見られる。

また、マドンナ、リアーナ、レディ・ガガ、ビヨンセのような人々を通して、悪魔崇拝のメッセージは人々に伝えられ、そのフリーメーソンの象徴に視聴者たちは衝撃を受ける。


(訳者注)たくさんバンド名などが出ていますが、最も大御所のブラック・サバスを紹介しておきます。

ブラック・サバス
ブラック・サバス(Black Sabbath)は、イギリスのロックバンド。1969年にバーミンガムで結成され、幾度ものメンバーチェンジを経ながら40年近くに渡って活動した。

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▲ ブラックサバスのボーカル、オジー・オズボーン。



結局、私たちは西側の文化における催眠性と麻薬性を知っている。それは、ワーグナーとナチズムの関係を見るまでもなく。

今や、アメリカの大学は学生たちを偏ったニーチェ主義に変えている。彼らのコミュニティ、彼らのコード、そして彼らの儀式、悪魔のメッセージはもはや隠されることもない。

悪魔は米国でパワーを得た。そして、悪魔たちは西側のエリート集団と共に、堕天使ルシファー率いる軍隊の大パレードの中を行進している。





ここまでです。

なんだか訳していてものすごく疲れました(苦笑)。テレタビーズまで攻撃の対象とは(あれは確かにややこわいキャラですが)。

まあ、私なんかはこの「悪魔的な西欧文化」に若い時からどっぷりとハマり、そのメジャーコマーシャリズムからあぶれるようなアンダーグラウンドに進んでしまいましたが、そこまで行くと悪魔も近づかない。

人間にも悪魔にも天使にも好かれない音楽や表現の中で何十年も生きてきました。


ところで、上の記事の中の「ソ連への回顧」を読んで、ふと、過去記事の、

極東ロシアで発見された「白いシャチ」から浮かび上がるエスキモーの予言
 In Deep 2012年04月24日

の中に書いた「エスキモー女性の予言」を思い出しました。

1877年11月5日に生まれたという彼女のことはよくわからないですが、彼女は、(多分、ソ連崩壊後に)、夢でシャチから下のように言われたそうです。


ロシアは共産主義に戻ります。

民主主義は一掃されて、2000万人以上が強制収容所で亡くなります。

スターリンの像がロシアの国にもう一度建てられることでしょう。


とのことでした。


ちなみに、上のプラウダの記者の年齢を知らないですが、キリスト教のことはともかく、「文化」に関しては現在よりソ連時代のほうがはるかにロシアは多様化していました。パンクもテクノもあったし、映画なんかはもう、欧米がどれだけ頑張っても作れないようなスゴイ映画の数々を「ソ連」の名の下で制作していました。

私が若い頃好きだった「キンザザ」というソ連映画(1986年頃)があるんですが、もう地球上ではあんな映画撮られる可能性はないですぜ。すごすぎ。



▲ キンザザの予告。ロシア語ですが、これは昔は日本でも『不思議惑星キンザザ』だったかの邦題でビデオになっていたので、 DVD とかでもあるのかも。映画の内容は書きようがないのですが、Wikipediaに説明がありました。