2012年10月13日



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「 DNA は永遠不滅ではなかった」: 研究により DNA の分子は 680万年程度で消滅することが判明



わりとショックな「 DNA には寿命(崩壊)があった」という実験結果


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▲ 映画『ジュラシックパーク』より。琥珀に閉じ込められたジュラ紀の蚊から「恐竜の血」を取り出し、恐竜の血液の中の DNA をカエルの DNA に組み込んで恐竜を復活させるというストーリーでした。
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(訳者注) ここ数日の科学系の報道で、「ジュラシックパークは不可能だった」という見だしをよく目にしました。

何のことかと思いましたら、これはオーストラリアのマードック大学が、実験から、

DNA はその最後の分子が 680 ,000 年(680万年)後に消滅する

という計算をはじき出したというものでした。

スティーブン・スピルバーグ監督の映画「ジュラシックパーク」(マイケル・クライトン原作)は数千万年前の恐竜の DNA を現代のカエルなどの DNA に移植して恐竜を現代に復活させるというようなストーリーだったのですが、今回のマードック大学での実験では、 DNA は680万年で「分子がすべて消滅する」という計算結果となったということで、つまり「ジュラシックパークの実現化は不可能」ということと結びついて上のような見だしにつながったようです。

今回は、マードック大学のプレスリリースそのものを翻訳してご紹介します。


ちなみに「わりとショック」と書いたショックは、ジュラシックパークの方のことではなく、

DNA に寿命があった

というほうです。

In Deep や、あるいは、昔のクレアなひとときなどの記事の中で書いていたことの前提のひとつに「 DNA は永遠不滅の物質である」という仮定がありました。その仮定のもとに多くの記事を書いていました。

しかし、どうも今回の実験では寿命があるようです。

680万年というのは長い年代ではありつつも、「永遠不滅」というものにはほど遠いものです。

あるいは、この「DNA の寿命のサイクル」というものと地球環境の大変動の時期には関係があるのかもしれません。なぜなら、DNA は「その生物の遺伝と歴史を引き継ぐもの」であり、それが完全に消滅する時があるなら、「その生物の歴史は消える」からです。つまり、DNA の物質的崩壊と共にその生命は文字通り消えると。


ところで、上に映画「ジュラシックパーク」が出てきましたが、この映画の監督スティーブン・スピルバーグが、最近、「子どもの頃からずっと学習障害だった」ことを告白して話題となっています。スピルバーグ監督の場合はディスレクシアという読み書きが苦手な(場合によってはまったくできない)ものです。

これは今回の話題とは関係ないのですが、若い時のことや、あるいは自分のことを含めて、思うところもありましたので、ちょっと紹介しておきます。



スピルバーグ監督とアキヤマくんのそれぞれの人生


スピルバーグ監督の報道記事は下のものです。


スピルバーグ氏、学習障害を告白 「映画で救われた」
朝日新聞 2012年10月3日

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▲ スティーブン・スピルバーグ氏。

映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏(65)が自分に学習障害があり、それが原因で子ども時代にはいじめられていたとインタビューで告白し、話題となっている。「学校へ行くのが大嫌いだったが、映画づくりを通して救われた」と語っている。

スピルバーグ氏が公表したのは、読み書きが困難になる「ディスレクシア」と呼ばれる障害。

5年前に初めて診断され、「自分についての大きな謎が解けた」という。

小学生の時は読み書きのレベルが同級生より2年遅れ、「3年生のころは、クラスの前で読むことを求められるのがいやで、とにかく学校へ行きたくなかった」「先生も心配してくれたが、学習障害についての知識もない時代で、十分に勉強していないと思われた」と打ち明けた。今でも、本や脚本を読むのに、多くの人の倍近く時間がかかるという。

また、学習障害がきっかけでからかわれ、いじめられたことも明らかに。「中学時代が一番つらかった。他人の立場から自分を見ることがまだできない子どもは本当にきつく、嫌なことをする。今は理解できるし、恨みもないが、大変だった」と話した。



私が驚いたのは、比較的、このタイプの発達医学の先進国であり、早くからの歴史がある「米国」という国の、しかも著名人であるスピルバーグ監督が、60歳になるまでその病気だということを自分で知らなかったということです。そして、

> 5年前に初めて診断され、「自分についての大きな謎が解けた」という。


と言っているのを読み、改めて学習障害全般に対しての問題の根の深さがわかります。

ディスレクシアは大ざっぱにいうと、下のようなものです。


ディスレクシア

ディスレクシアは、知的な遅れはないが、読んだり書いたりすることが苦手な人たちのことをいい、「文字とその文字が表す音とが一致・対応し難く、勝手読みや飛ばし読みが多い」、「音読作業と意味理解作業が同時にできないため読み書きに時間がかかる」、「読みが出来ないと文字を書くことはより困難になる」などの特性がある。

「読み書きのLD(学習障害)」ともいわれている。


障害保健福祉研究情報システムのページより)


これは、昔は(あるいは今でも)、「単なる怠け者」、さらには「知的な問題」と扱われてしまうことさえあります。

私自身、こんな「学習障害」とか「ディスレクシア」なんていう言葉を知ったのは最近のことですが、人生の中で思い返すことはいくつかあります。

中学2年のとき(今から35年くらい前です)にクラスで席が隣だったアキヤマくんという男の子がいました。

おとなしい子だったけれど、話も面白く、人あたりのいい人だったので、私は彼と話をするのが好きでした。話も面白く、想像力の豊かなアキヤマくんは普通以上にクレバーな中学生なのですが、「なぜか読み書きがうまくできない」のです。判断力の鋭い彼が読み書きだけが、どうしてもできない。

今にして思えば明らかなディスレクシアなんですが、当時そんな概念があるわけでもなく、本人も周囲も「どうしてできないんだろう」と考えていました。


そして、その学期が終わる頃、アキヤマくんが私にこう言いました。

「二学期から特殊学級に行くことになったんだ」

私は「え? なんで?」と聞き返すと、やはり読み書きが極端にできないことが原因だったようです。でも、私から見れば、ともすると私たちより頭のいい彼が特殊学級に行くというのはどうもわからない。


私 「それって、なんか変だよ」
彼 「でも、僕自身はそれでいいと思ってる。だって全然読み書きできないんだもの」


そして、二学期からはアキヤマくんはそちらの学級へと転入しました。

このような事例は、当時はたくさんあったのだろうなあと思います。
あるいは今でもあるのかもしれません。

何しろ上の障害保健福祉研究情報システムページには、

> 英語圏ではディスレクシアの発現率は10%から20%といわれている。


というものだからです。
日本ではディスレクシア単独の調査が存在しないそうです。


もちろん、特殊学級や養護学校に行くこと自体が問題ではないですが、その人の将来の道はかなり狭められてしまうことも事実のように思います。

スピルバーグ監督はその類い希なる映像センスにより、人生を開くことができましたが、他の多くの学習障害の人たちが同じような人生を歩めるわけではないです。というより、最後まで自分がディスレクシアであることがわからないままで、死んでいった人もたくさんいるはずです。


ところで、私がスティーブン・スピルバーグ監督の出世作である「ジョーズ」(1975年)を映画館で見たのは中学1年の時でした。もう面白くて面白くて面白くて、こんな面白い娯楽がこの世にあるのかと感動したものでした。

それはみんな同じだったようで、ジョーズのラストシーンでサメが爆発するシーンでは、北海道の岩見沢という町の小さな映画館の観客が全員立ち上がり拍手喝采したほどでした。

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▲ スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975年)。サメが海から顔を出すたびに子どもたちが「ヒィィ!」と叫び声を上げた当時の映画館。


映画館で観客が全員立って拍手した、なんていう経験はあれが最初で最後の経験だったような気がします。

あれから三十数年。
時代はどう進みましたかね。

アキヤマくんも元気かな。


そのスピルバーグ監督の大ヒット作である「ジュラシック・パーク」の計画は実行不可能であることがわかったということに関してのオーストラリアのマードック大学のニュース記事です。





Mystery of DNA decay unravelled
マードック大学 (オーストラリア) 2012.10.10

DNA の崩壊の謎が解明される


恐竜が生きていた時代から現代までその DNA が生き残り続けていたのかどうかということに関しての議論についに結論が出そうだ。

オーストラリア・マードック大学の科学者たちは、 DNA の保存には理想的なマイナス5度の環境の中で、DNA 分解の割合とその計算を行った結果、結合組織の DNA の数は時間と共に減少することが分かり、骨の最後の分子は 680万年後に完全に消滅すると計算されるという研究を発表した。

スティーブン・スピルバーグ監督の映画『ジュラシック・パーク』は、 8000万年経過した無傷の DNA を発見し、そこから恐竜を復活させるというアイディアのものだった。しかし、現在までに発見されている最も古代の DNA は 45万年〜 80万年前のグリーンランドの氷床の芯から発見された DNA だ。


研究グループは、かつてニュージーランドに棲息していて絶滅した恐鳥「モア」の 158本の骨の化石の結合組織を調べた。その結果、マードック大学「古代 DNA 研究所」のマイク・バンス博士( Dr Mike Bunce )モルテン・アレントフト博士( Dr Morten Allentoft )らの研究グループは上記の結論に達した。

バンス博士は以下のように言う。

「比較することのできる DNA を含む大きな化石が見つかることは希で、今回の DNA の崩壊の率を計算することは大変難しい作業でした。また、気温や微生物の含有率、酸化の程度なども DNA の崩壊プロセスに影響を与えますので、崩壊の基準を見いだすのは難しいことでした」。

「しかし、モアは彼らがほぼ全員、同じ地域で同じ環境を経験していた生物で、その時代も同じということもあり、モアの骨の DNA の崩壊の比較ができたのです。化石の骨の標本は、炭素データでは 600年〜8000の経過を示し、それぞれの標本の異なる DNA 崩壊から、 DNA の半減期を計算することができたのです」。

その結果、前もって研究所で行われたシミュレーション結果から予測されるより、その崩壊率は、約 400倍遅いことがわかった。これらの計算と他の調査に基づき、研究チームは、生き残っている DNA の崩壊年月の予測を立てることができた。


バンス博士はこのよう述べた。

「今回計算された崩壊率が正しければ、十分な長さを持つ DNA の断片は、凍った化石の中ならば、およそ 100万年単位で保存されると予測します」。

「生物が死んだ後、その DNA の維持に影響を与える要因としては、発掘、土の化学的組成、そして時間の経過などがあります。世界の他の地域での DNA の崩壊についての正しい計算がおこなわれることにより、より正しい DNA の寿命をのマッピングを作っていけるようになることを私たちは望んでいます」


この研究は、英国王立協会ジャーナルで発表された。






(訳者注) それにしても、今回のことで改めわかったのは、

「宇宙空間というのは DNA の保存場所としても最適」

ということのような気がします。

地球上の場合、上の記事にありますように、土の化学的組成や気温、あるいは時間の経過などで DNA は他の物質同様に崩壊(分子の消滅)するわけですが、そのような外部的な刺激がほとんどなく、気温も氷点下二百度などのごく低温に保たれている宇宙空間というのは、微生物の保存に適していると同様に DNA の保管場所としても最適なように思います。

そのあたりと関連した過去記事をリンクしておきます。


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[宇宙を旅する微生物]に関連した過去記事:

大気圏の生き物(参考記事:1980年代のチャンドラ博士によるシミュレーション実験等)
2010年10月05日

DNA が宇宙で生産されている証拠を発見: NASA が発表
2011年08月21日

宇宙塵自身が生命であることに言及した 100年前のノーベル賞学者の実験
2011年05月07日

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[1年前の In Deep ]
2011年10月13日の記事

「バンコクを死守せよ」: 全土の3分の1が災害地域となったタイで首都に迫る未曾有の大洪水

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[2年前の In Deep ]
2010年10月06日の記事

10.13 ニューヨーク UFO 騒動: 予告通り? マンハッタン上空に続々と UFO が登場