2012年10月14日



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エピローグへと近づく「生命の地球起源説 vs 宇宙起源説」: ロシアでふたたび始まった地球上で生命を作る試み



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▲ 2010年のマックノート(C/2009 R1)彗星。パンスペルミア説では、彗星は重要な位置として見られます。
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(訳者注) 以前から「微生物の話」を書き出すと、すぐ風邪を引く傾向にあるんですが、最近の記事で微生物とかウイルスのことにふれていましたら、見事に風邪を引きました。

今回は、ロシアの科学者たちが「無機物から生命を作りだそうとする実験」を再び試しているというニュースがあり、それをご紹介しようと思うのですが、前提として書くことも多くなりそうで、ただでさえ頭が朦朧としている中、わかりにくくなるかもしれないですが、すみません。



すでに科学の世界の生命の起源の理論は塗り替えられつつある

もともと地球のいわゆる原始スープと呼ばれる古代の海から「偶然、生命が誕生した」という説を最初に唱えたのはロシア人(当時はソ連)科学者でしたので、今回の実験もタイトルに「蘇る」というニュアンスのロシア語が見える通り、ロシア科学界のリバイバル的な意味というような部分もあるのかもしれません。

本来なら取り上げるようなものでもないのですが、私が今回、この記事をご紹介しようと思った理由は、記事の中に下のような一節があったからです。


現在では、多くの科学者たちが生命は宇宙から地球にもたらされたという説を支持している。

地球の生命が宇宙からもたらされたとする説は、ノーベル化学賞を受賞したスウェーデンのスヴァンテ・アレニウス博士や、あるいは、ロシアの生物地球科学の創始者であるウラジーミル・ヴェルナツキー博士も、宇宙起源説を支持していた。



とあり、「すでに科学の世界での生命起源の理論の主流は宇宙起源となりつつある」ということが書かれてあるのでした。

「そうかあ・・・すでに生命は宇宙からもたらされたとするほうが主流なのかあと」と、感慨深く思ったことが、この記事をご紹介しようと思った最大の理由です。

先日の記事、

「良い時代と悪い時代」(3): 2013年の巨大彗星のこと。そして宇宙から地球に降り続ける生命のこと
 In Deep 2012年10月11日

でも、米国プリンストン大学の研究チームがバンスペルミア説の証拠となり得る論文を提出したというようなものをご紹介しました。

徐々にではあるけれど、私たち人類は生命の起源と進化に関しての「中枢」に近づけるような可能性も少しはあるのかもしれません。その「中枢」は見えない中枢のようには思いますけれど。


そして私にとっては、地球の生命が宇宙起源であるということが大事なのではなく、「生命は普遍的なものだ」ということが大事だと思っています。

つまり、「どこにでもある」と。

「どこにでも」ということは、宇宙全体のどこにでもあるということで、私たちのこの地球はそのような宇宙の中のひとつに過ぎない。

しかし、宇宙の中のひとつに過ぎない地球ではあっても、この地球の人間である私たちにとっては、この地球が唯一の地球であるということだとも思います。ちょっとわかりにくい書き方かもしれないですが、「あらゆる地球の住人たちは、その地球以外の地球を持たない」というような意味かもしれません。

そして、エメラルド・タブレットなどでも描かれる概念を拡大させれば、「個々の惑星と全体の宇宙は常に対等である」という概念だと私は思っています。

ところで、ロシアのニュースをご紹介する前に、そもそも、その「地球上で生命が生まれた」という説はどのようなものだったのかを簡単に記しておきます。




20世紀の生命起源説を席巻した「地球の原始スープの中から生命が生まれた」という説について


説明の抜粋等は、基本的に Wikipedia からの抜粋で統一しますが、難しい用語は平易にするか省略しました。

ちなみに、人類が、生命の起源ということを科学において言及しはじめたこと自体の歴史がそれほど長いものでありません。

「地球から生命が発生した」という説は、まず、ロシアのアレクサンドル・オパーリンという科学者が、1922年に『地球上における生命の起源』という本を発表し、そこから1950年代まで、生命の化学進化説という理論を展開させたことによります。

オパーリン博士はケンタッキー・フライドチキンのおじさんにも似た温厚な顔をした人で、私は顔は好きです。顔は好きなんですけど、このオパーリン博士の化学進化説が後の科学界を悩ませることになります。

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▲ アレクサンドル・オパーリン(1894 - 1980年)


オパーリン博士の説を簡単にまとめると下のようになるようです。



1. 原始地球の無機物から低分子の有機物が生じる。

2. 低分子の有機物がお互いに結びついて高分子の有機物を作る。

3. 地球の原始の海は上のような反応での「有機物の液体(スープ)」だった。

4. この「原始スープ」の中で、高分子の集合体(コアセルベート)が誕生した。

5. この集合体がアメーバのように結合と分離を繰り返した。

6. このような中で最初の生命が誕生し、優れた代謝系を有するものが生き残っていった。





というようなもののようです。


今改めて読んでみると、まだ遺伝子や生命の構造の解明が進む前の時代だったから受け入れられたものだったことがわかります。

というのも、地球の年齢は現在の科学ではおよそ 40億年程度とされていますが、その真偽はともかくとしても、この程度の年代だと上の繰り返しで生命が作られるにはあまりにも短いということがあります。

    
その時間で進化してきたわりには「あまりにも生命は複雑」なのです。

たとえば、下はフレッド・ホイル博士の『生命はどこからきたか』の中からの抜粋ですが、「生命の構造の複雑さ」ということをまず知る必要があります。

これは書かれてある意味自体、私自身もよくわからないので、その意味というより、「たった1種類の酵素を作ろうとしてもこのような膨大な数字となる」ということを知っておいてもいいのかと思うのでした。


『生命はどこからきたか』 第十四章 生命の起源と進化を考えるための基礎知識より

 三〇個の不変なアミノ酸を持ち、一〇〇個の結合部分からなる短いポリペプチド鎖でさえも、二〇の三〇乗、約一〇の三九乗回にもなる試みが行われて初めて機能を持つ酵素となる。三〇〇個の不変部分を持ち、一〇〇〇個の結合部分からなる酵素の場合は要求される試みの回数は二〇の三〇〇〇乗で与えられ、それは一の後に0が三九〇個も並ぶ数である。

 さらに、われわれはただ一種類の酵素だけを取り扱うのではなく、最もシンプルな有機体でさえ二〇〇〇種類、われわれのような複雑な生物では約一〇万もの酵素と関係しているという点でも超天文学的数である。



まあ、全然わからないのですが・・・要するに、簡単な酵素ひとつが「自然」にできるためには、「 1の後に 0が 390個も並ぶ数」の確率の中でアミノ酸が結合する必要があり、さらに、それが生命として機能するには、その奇跡的な確率をクリアした酵素が「数万個以上の単位」で存在しなければならない。

1の後に 0が 390個も並ぶ数の確率というのは、

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という感じです。

上の壮絶な確率で「仮に」酵素や有機物が生まれたとしても、それはまだ単細胞生物などでさえないわけで、地球上でもっとも単純な構造のタイプの生物などでも、上の組合わせでの酵素が 2000個必要だとのこと。人間なら10万以上。

しかも「正しい配列」で。


もはや、確率で論ぜられる世界ではありません。


これでは仮に(あくまで仮に)、地球の上で有機物が発生したとしても、地球の歴史が仮に38億年なら、この年月では「生命どころか酵素ひとつできない」ことになります。というか、38兆年でも「偶然のレベル」では、酵素ひとつ作ることもできないと思います。

たとえば、下のは α-キモトリプシンという酵素の図です。

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▲ 『生命はどこからきたか』 第十四章 生命の起源と進化を考えるための基礎知識 の図より。


この図自体はいくら見ても私には何が何やらわからないですが、こんな酵素ひとつでもこんなに複雑な構造になっていて、少しでも違うと酵素として働かないのが生命というもので、そして、こういう酵素が何万と「正しく」集まってできているのが、人間を含む生命なのだということです。

生命は偶然の繰り返しで作られたというようなものではない、と考えざるを得ません。


科学的に考えるまでもなく、常識的な考え方として、地球上で無機物から有機物が偶然生まれ、それが偶然の連続で生命として進化して、それがさらに高度な生命として進化して現在の地球のあらゆる生物となっているという話は基本的に「無理な話」であることがわかります。


しかし、「生命の地球発生説」を続けます。

オパーリンの化学進化論を検証する実験をおこなったのが、ユーリー-ミラーの実験と呼ばれるもので、下に Wikipedia から抜粋します。


ユーリー-ミラーの実験

ユーリー-ミラーの実験は、 1953年にスタンリー・ミラーが、シカゴ大学の大学院生のときに行ったものである。地球において最初の生命が発生したとされる環境を再現することを目指し、そこで簡単な化学物質の組み合わせから、生物の素材となるような成分ができるかどうかを実験で確かめるものであった。


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▲ ユーリー-ミラーの実験の実験装置の概念図



そして、この実験で「アミノ酸の無生物的合成を確認した」ことにより、生命地球発祥説は、広く科学界に受け入れることになり、以降の科学と「教育」の世界でこの理論が広く取り入れられたのは書くまでもないことかと思います。

私たちも学校で「生命は地球で生まれた」と教えられてきたはずです。

もっとも、Wikiepdia にも、その後に、


現在では、多くの生命起源の研究者たちは、ユーリー-ミラーの実験を過去のものと考えている。



とあり、今では違うようですが、一般の認識としては、今でも「生命は地球で生まれたと考えている人」はわりと多いのではないかと思います。


なお、ホイル博士の著作には、ユーリー-ミラーの実験の「大きな間違い」が指摘されています。


『生命はどこからきたか』 第三章 尿素から有機スープへより

ユーリーとミラーにより用いられたメタンは天然に得られる気体ではあるが、それは生物由来のものなのである。アンモニアもウェーラーの実験においてそうであったように由来は疑わしい。行われたのは生物材料から出発して別の生物材料を作ったのであり、当時思われていたような印象的な結果からはほど遠いのである。



メタンそのものが生物由来だとすると、この実験そのもののテーマであった「無機物から有機物を作り出す」ということにおいて、根本から違ったものだったようです。

いずれにしても、いろいろな理論や実験の中で、地球の生命の起源を探る試みや思考は続けられていて、ともすると、それは「迷宮」に入り込むような世界なのかもしれないですが、きっと今後も興味深い方向に進むのだろうと思います。

というわけで、今回は、上に挙げた「生命の地球起源説(化学進化説)」が生まれた国でもあるロシアで、その理論をふたたび実験によって示してみようという試みの話です。

ニュースメディア「ロシアの声」ロシア語版からです。

ではここからです。




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VOR (ロシア) 2012.10.13

ロシアの科学者たちは「無機物を蘇らせたい」と希望している

無機物に命を吹き込もうとしているロシアの地球化学者のグループは、研究室にカムチャツカ半島の熱水泉を持ち込み、地球の生命の起源の時代と同じ状態を作り出し、無機物から生命を生み出す「生命のゆりかご」の再現している。

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▲ カムチャッカの熱水泉。


この実験をおこなっているのは、ロシア科学アカデミーの「極東支部地域問題総合分析研究所」の科学者たちで、研究室で、温度を上げて圧力を高めた液体を用いて実験を行っている。今回の実験プログラムを作成したウラジーミル・コムパニチェンコ博士は、化学進化は一定の刺激なくしては生物進化へ移行することはできないと指摘している。

言い方を換えれば、非生命的な物質の中で、温度と圧力が一定の調和を達成した場合には、生命が誕生する可能性があるということだ。科学者たちは、カムチャツカの好熱性細菌を研究した後にこのような結論に達した。

しかし一方で、多くの科学者たちは、この結論に懐疑的な態度を見せている。

ロシア科学アカデミーの正会員で、生物物理学者であるヴァレンティン・サプノフ博士は、「おそらく非生命的な物質に生命を与えることはできないだろう」との見方を示し、以下のように語っている。

「まず、私たちはいまだに生命とは何かということを定義づけていない。生命のあるものとないもの。この違いに対しての明確な定義を持っておらず、生命のあるものから生命のないものへの急変がどのように起こるかについても、いまだに理解していないのだ。理論的な理解が不足している状態で、(そのような)実験を行っても、いかなる結果も出ないと思われる。偶然の調和や、ランダムな選択によって遺伝子やDNAのような構造をつくりだすのは、事実上不可能だとしか言いようがない」。


サプノフ氏は、現在、多くの科学者たちは、生命は宇宙から地球に到来したという説を支持していると語っている。これに関しては、ノーベル化学賞を受賞したスウェーデンのスヴァンテ・アレニウス氏や、また、ロシアの生物地球科学の創始者であるウラジーミル・ヴェルナツキー氏も、生命は宇宙から地球に到来したという説を支持した。


とはいえ、生命の起源に関しては、様々な説や主張が存在している。その中のひとつが「火山」と関係するというものだ。生命の誕生を火山活動と関連付ける説を支持する科学者も多い。

この説は今から約 40年前にロシアの火山学者エヴゲーニー・マルヒニン博士が提唱し、アメリカ国立衛生研究所のエヴゲニー・クニニィン氏が率いる米国の研究グループが理論を発展させた。彼らは、火山の熱水泉によって熱と微量の元素が与えられた湖の水の中で地球最初の生命が誕生したと考えている。

ウラジーミル・コムパニチェンコ氏の研究チームは、ソ連の生物学者アレクサンドル・オパーリン博士の仮説(化学進化論)に立脚していると思われる。

オパーリン博士が 1924年に発表した説によると、生命は地球の「原始スープ」の中で誕生した。

「原始スープ」は電荷、高温度、宇宙線などの作用を受けて形成され、今からおよそ 40億年前に存在していたとみられている。当時の実験では、地球の大気に存在していたと考えられているメタンやその他のガスを通して、電気エネルギーが放出された。実験開始から数ヵ月後、いくつかの有機分子が誕生した。だが、細胞は一つも得られなかった。





(訳者注) ここまでです。記事の前にもふれましたが、当時使われた「メタン」そのものが生物由来である可能性があるようで(つまり、生物の登場以前には存在していない可能性)、実験の土台に問題もあったように思います。

生命の起源に関しての過去記事をいくつかリンクしておきます。

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[生命の起源]に関連した過去記事:

生命の種子: 分析により隕石の原子の地球起源が否定される
2011年03月02日

宇宙で生命が作られる方法と「その場所」の特定に乗り出した NASA の研究機関
2011年11月05日

[彗星が地球に生命の素材を持ってきた]米国ローレンス・リバモア国立研究所でも地球の生命が宇宙から来たアミノ酸だという研究発表
2010年09月16日

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[1年前の In Deep ]
2011年10月14日の記事

現実化したレプリカント: 実際の DNA を使用した「自己複製する人工素材」が開発される

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[2年前の In Deep ]
2010年10月14日の記事

10.13 ニューヨーク UFO 騒動: 予告通り? マンハッタン上空に続々と UFO が登場



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