2012年10月16日



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最も遠い距離の天体にある人工物が着陸したタイタンの地表は「湿ってフワフワの大地」だった



Titan-10.jpg

▲ 土星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星タイタン。輪郭がボヤけているのは、タイタンには「大気の層」が存在するため。タイタンに多くの人が惹かれるのは、そこに生命がいるかもしれないというようなことよりも、単純に「美しい衛星だから」ということもありそうな気がします。
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「現在、地球から最も遠い場所にある人工物」というと、それは NASA の無人宇宙探査機「ボイジャー1号」になると思われます。Wikipedia によれば、2012年6月18日の時点で、太陽から約 180億キロメートルの距離を飛行中だそう。

180億キロとかになると想像できる距離の範囲を越えますが、いずれにしても、ボイジャーは淡々と「太陽圏からの脱出」に向けて今も前進しているようです。

voyager1-eartht.jpg

▲ 1990年にボイジャー1号が撮影した「地球」。青い丸の中の点が地球です。この頃のボイジャーは太陽からおよそ60億キロメートルの距離だったそう。Voyager 1…Leaving The Solar Systemより。

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さて、「地球から最も遠い場所にある人工物」は上のようにボイジャーなのですが、ボイジャーは宇宙空間を飛行しているので「とどまっている」ものではありません。では、地球から最も遠くで「とどまっているもの」は何かというと、それは土星の衛星の上にあるのだそう。

その「地球から最も遠い天体(惑星)の上にある人工物」こそが、欧州宇宙機関( ESA )が、 2005年に土星の衛星タイタンに着陸を成功させた無人の小型惑星探査機「ホイヘンス・プローブ / Huygens probe 」というものです。

欧州宇宙機関では「ホイヘンス」とも呼んでいるようですので、以下、ホイヘンスと記します。

下の図は、欧州宇宙機関のシミュレーション動画からのスクリーンショットです。

huygens-01.jpg

▲ 2005年に土星の衛星タイタンに着陸したホイヘンス。先頃、欧州宇宙機関が発表したコンピュータシミュレーション図より。

このホイヘンスの説明をWikipediaから引用しておきます。


ホイヘンス・プローブ

欧州宇宙機関(ESA)の小型惑星探査機。2004年12月25日、土星の周回軌道を回っていた土星探査機カッシーニ本体から分離され、2005年1月14日、衛星タイタンへ突入して着陸に成功した。これは最も遠い距離の天体にある人工物である。

三段式のパラシュートで減速しながら降下し、内蔵されたさまざまな観測機器でタイタンの大気や地表の様子を観測した。

取得した観測データは、カッシーニを介して地球へ送信され、鮮明な地表の写真やタイタンに吹く風の音が公開された。



数日前、欧州宇宙機関から、「ホイヘンスがどのようにタイタンに着陸したか」という詳細なデータ分析が終わったという発表がありました。

今回はその記事をご紹介しようと思います。

欧州宇宙機関ではシミュレーション動画も公開していて、上のイラストもその動画からです。その動画は、ESA のページで見られますが、個人的に「なんだか赤すぎる」というような気がしまして、臨場感を出すためにこちらでちょっと色とかを編集したものを貼っておきます。

この「色」は、2005年にホイヘンスがタイタンから地球に送ってきた「タイタンの地表の写真」を参考にしています。

Huygens_surface_color.jpg

▲ 2005年にホイヘンスから送信されてきたタイタンの地表のカラー写真。


上の写真の色を参考に、ちょっと実写風に。
下の動画です。

2005年のホイヘンスのタイタン着陸の様子




ところで、上の Wikipedia の説明に


> タイタンに吹く風の音が公開された。


とありますが、その音は下のふたつです。
地表での風の音と、下は着陸の前に地表を調査するために発信するエコーを再受信した音だと思われます。
それぞれ30秒程度で切っています。

画像はあまり内容と関係ないです。説明そのものは、欧州宇宙機関の該当ページをそのまま訳したものです。



タイタンの音


タイタンの大気を通しての音

ホイヘンスのマイクで録音されたタイタンの地表の大気の音。




タイタンの地表からのレーダーエコー

ホイヘンスがタイタンに着陸する間の数キロメートルの間で、タイタンの地表へと放ち、受信したエコー音。惑星調査では、表面の性質を推測するために、エコーを使用する。







上の音も2005年に録音されたものでて。
私が知ったのは今回が初めてでしたので、今回の記事でご紹介してみました。

そういえば、「衛星タイタンの大きさ」なんですが、数字であらわすより、下の比較図がわかりやすいすと思います。

Titan_Earth_Moon_Comparison.png

▲地球と月とタイタンの大きさの比較。

タイタンはかなり大きな衛星なんです。

それと、見方にもよるでしょうけれど、最近の衛星カッシーニの写真を見ていますと、「地球よりも青い感じ」がします。

それでは、ここから、欧州宇宙機関の記事です。



Bouncing on Titan
欧州宇宙機関( ESA ) ニュースリリース 2012.10.11


タイタンの上で跳ねたホイヘンス


欧州宇宙機関( ESA )のホイヘンス・プローブは、2005年 1月、土星の衛星であるタイタンにタッチダウンした後、約10秒間、機体を揺らせていたことが最近の分析でわかった。

この調査結果は、タイタンの地表の性質に関して新しい洞察を提供するものだ。

ESA の科学者たちは、ホイヘンスの着陸の際に作動していた様々ツールのデータを再分析することにより、ホイヘンスの「着陸イベント」の連続したシミュレーションを構築するにいたった。

コンピュータシミュレーションにより着陸の様子を再現したものが上の動画だ(※記事の上に載せたものです)

ホイヘンスは、その着陸の過程で、平らな地表に着陸する前に地中に 12センチメートルの穴を掘ったことが分析でわかった。それがホイヘンスのタイタンとの最初の接触だった。

それから、ホイヘンスは機体を約 10度傾けたまま、30センチから40センチ、タイタンの地表を滑ったと思われる。そして、最終的に安定した場所に位置するまで、5度ほど前後にぐらついた。

このぐらつきは、約10秒後に収まったが、ホイヘンスのセンサーはその後、さらに約2秒間、振動を検出していた。

マックス・プランク太陽系研究所 (MPS) のステファン・シュローダー博士( Stefan Schröder )は、次のように述べた。

「最初のぐらつきの間に、多分、タイタンの地表に2センチメートルほど突き出ている小さな石などと接触したものと思われます。ホイヘンスはその石を地中に押し込んだかもしれないことをデータは示唆します。着陸した地表は、湿っぽい砂の連続した地帯であることも示します」。

ホイヘンスは、着陸の際、機体に何か跳ねたような「ぴちゃっという音」を録音しており、湿った泥のような柔らかい地表だったと思われる。前後に揺れたホイヘンスが機体を支えるのは難しいことだったかもしれない。

シュローダー博士も、「ホイヘンスの着陸データから、地表がフワフワした塵のような材質、たとえば、それはタイタンの大気の霧雨としての可能性の高い有機エアロゾルであることを示唆しているものかもしれません」と言う。