▲ 完全な磁場の逆転(磁極のポールシフト)の際の磁場の移動のイメージ。
今回のタイトルに「重要」という文字を入れたのですが、今回の記事でご紹介する研究論文そのものが「今何かが起きている」ということを示した研究ではないのに、それを読んで私などは、
「最近起きている何もかもが急速なポールシフトと関係した現象なのかもしれない」
と思ったのです。
「何もかもが」というのはオーバーですが、簡単にいうと、
・急速な気候変動
・増加する火山噴火
・実際に加速しているポールシフト
などの、In Deep での環境テーマの主要部分に関して「何もかも」がポールシフトと関係しているのではないかと思ってしまったのです。
今回の研究発表自体は、4万年前のポールシフトに関しての新しい調査結果についてで、その際に「たった250年間で磁場が完全な逆転をし、その時代に急激な環境変動と超巨大火山の噴火が同時に起きていた」ことを証明したというものです。
この「超巨大火山」はイタリアにあったもので、過去 10万年の地球の北半球の火山噴火では最大の噴火だったと考えられているものだそうです。
ところで、少し前に、ポールシフトのことではなく、「地球の大地そのものの移動」ということが進行しているような発表があったことをご紹介したことがありました。
・起きていることは「ポールシフトではなく地球の大陸移動」: 地球の極の物理的な移動が起きていることが地球物理学会で発表される
In Deep 2012年10月03日
という記事です。
上の記事での内容は「真の極移動」というものが起きているというもので、こちらの図が示されていました。
▲ 真の極移動のために変化した地球の表面の位置を現した図。
なんだか、どちらも、仮に急速に起きているのならダブルパンチですが、まあ、この「真の極移動」のことは今回は置いておいて、この時の研究を発表したドイツのヘルムホルツ・センターと同じ研究機関の地質研究の部門が今回の研究発表をしました。ドイツ地球科学研究センター ( GFZ ) という機関で、これはヘルムホルツ・センターの中の機関のひとつのようです。
ヘルムホルツ・センターというものは、あまり私たちには馴染みがないですので、その説明を Wikipedia から抜粋しておきます。
ドイツ研究センターヘルムホルツ協会
ドイツを代表する科学研究組織。公益法人。16の研究センターから構成され、主に大型研究開発施設を利用した研究開発を実施している。
ということで、ドイツ地球科学研究センターは上の記述にある「16の研究センター」の中のひとつです。
その発表に関しての記事をご紹介いたしますが、太陽系全体を含む最近の「環境の急激な変動」は In Deep で重視するものでもありますので、少し長くなるかもしれないですが、過去に書いたものなどを少し振り返ってみたいと思います。
磁極の反転で起きうることは何か?
「ポールシフトが起きている」というような書き方は、何となくショッキングな響きがありますが、磁場の移動や反転に関して簡単に書けば、
・ポールシフトは何百年も前からずっと起きていて、現在も進行している
としか言いようがありません。少なくとも、私たちは生まれてからずっとポールシフトが発生している中で生活しています。
たとえば、下の図は、2年前の記事に掲載したもので、「1831年から2001年までの北極の磁極の移動の距離」の図です。
▲ 加速するポールシフト: この100年間での極の移動の距離はすでに1100キロにより。
1831年から2001年の間に、北極の磁極は 1,100キロメートルもロシア方向に向かって移動しているのです。
特に、1970年以降は加速しており、それまで毎年 10キロ程度のポールシフトの進行だったものが、1970年からは約4倍の毎年 40キロずつの移動が確認されているということでした。
また、地球では、過去3億3千万年の間に(回数の誤差はともかく) 400回ほどのポールシフトが起きたとされていて、「地球の磁場の反転」が発生する間の平均的な期間は約 20万年に一度程度になるようです。
なので、ポールシフト自体が特別な現象ということではないですが、では、何が問題なのかというと、上に書いた「加速している」という点なのです。
以前から、急速なポールシフトが「地球の地磁気と磁場のシールドを破壊する」ということを懸念する説はあり、今回の論文にも 41,000年前のポールシフトの際にその現象が起きていたことが証明されたという部分ありますが、地球は自身の磁場によって、宇宙からの様々な放射線や宇宙線などから守られているとされるのが一般論ですが、その防御が失われてしまうのではないかという懸念です。
つまり、「磁場が崩壊すると、地表に有害な宇宙線が降り注ぐのではないか」というような説のことです。
この「ポールシフトの際の磁場シールドと地球の影響」については、過去記事「米国フロリダのタンパ国際空港が磁極の移動(ポールシフト)の影響で滑走路の閉鎖へ」の中で参考資料とし掲載させていただいた、秋田大学の地球資源学科のウェブサイトにあった図がとてもわかりやすいです。
その秋田大学の該当ページはなくなったか移動してしまって見当たらないですので、図を掲載しておきます。
1880年から2000年までの地球の地磁気の強度変化
▲ これは上の1800年代からのポールシフトの移動と比較するとわかりやすいと思います。磁場が移動するほど、地磁気が弱くなってきているように見えます。
西暦3525年には地球の磁場の強度がゼロになる予測
▲ これは「2004年までの曲線」をもとにしていますので、仮にポールシフトが「加速」していた場合は、もっと早い時期に磁場がゼロになると思います。
上の図が示された秋田大学の地球資源学科のページの最後には、以下の文章が記されていました。
磁極が入れかわるときに地磁気の強度はゼロになるとの予想があります。地磁気の減少は磁場逆転の前触れかもしれません。
地磁気がなくなると、影響を受けるのは鳥だけではありません。私たち人間にも大きな影響があります。今まで地球磁場が食い止めていた宇宙線が直接降り注いで人類は危機に直面することになります。目には見えない地磁気ですが、私たち、そして鳥たちにはなくてはならない存在なのです。
ただ、これに関しては「ポールシフトによる完全な磁場の逆転が発生してみないとわからない」としか言いようがないようにも思います。なぜなら、「地球の磁場がどんな種類のフィルターとして作用しているかよくわかっていない」と思われるからです。
宇宙からの「未知の光線」というようなものも含めて、地球には、宇宙線に総称される様々な光線が降り注いでいるわけですが、「どれが人間に対して有害でどれが無害か」という基準も今のところわからない。
なので、「有害な」ものだけではなく、「有益なもの」だって、そこ(宇宙から降り注ぐ光線)にはあるようにも思うのです。
その理由としては過去の報道などにあった「宇宙帰りの植物の成長」の報道などがあります。これは引用すると、長くなりますので、過去記事の、
・放射線の中で生き返った植物
2011年04月22日
と
・私たち人類も他のあらゆる生命たちも「宇宙線にコントロールされている可能性」を感じて
2012年06月13日
などをご覧下されば幸いです。
ともに、スペースシャトルなど「宇宙船に乗って帰ってきた植物の種」の話です。
▲ 読売新聞 2011年02月21日の「宇宙帰りのサクラ異変…なぜか発芽・急成長」より。
リンクの上の記事は、「発芽するはずのないサクラの種が宇宙から帰ってきた後に発芽して、さらに異常に早い成長をしている」という読売新聞の記事を抜粋したもので、下の記事は、「宇宙から帰ってきたアサガオの成長が通常より早い」ことが書かれた京都新聞の記事です。
太陽系のあちこちで始まっている磁場と環境の激変
また、「もし地球が太陽にならうのなら」という前提ですが、「地球の磁場も4極化するのでは」というような推測さえあり得ると私個人は考えたりすることもありました。
下の図は、過去記事の「奇妙な太陽のポールシフトは太陽系全体に影響を与えるか?」に載せたもので、今年4月に、日本の国立天文台が発表したイラストに私が注釈などをくわえたものです。
▲ 過去記事「奇妙な太陽のポールシフトは太陽系全体に影響を与えるか?: 国立天文台が発表した「4極化する太陽磁場」」より。
その記事で、「上の太陽の状態が地球も真似た場合」として、私が作ったのが下の図です。
まあ、ふざけた図といえばふざけた図ですが、「太陽系はみな兄弟」だと考えると、あながちないことでもないかなあと真面目に思います。
そういえば、昨日のニュースなんですが、「木星に大激変が起きている」という科学報道がありました。今日ふたつの報道をご紹介するのは無理ですので、木星のニュースのほうは明日にでもご紹介したいと思います。
木星のニュースソースは下にありますので、興味のある方はお読み下さると幸いです。
» Jupiter Undergoing Cataclysmic Changes (Daily Galaxy)
(木星で大変動が進行している)
というわけで、ポールシフト関係の記事は何だか興奮してしまって前振りが長くなりましたが、ここからドイツの地球科学研究センターの発表の記事です。
An extremely brief reversal of the geomagnetic field, climate variability and a super volcano
Science Codex 2012.10.16
極めて急速な磁場の反転と、気候変動・巨大火山との関係
41,000年前の地球で、磁場の完全で急速な逆転が発生した。
最後の氷河期の間であったこの期間中、黒海ではコンパスの針の位置は「現在の北方向は南方向を示していたであろう」ことを、ドイツ地球科学研究センター (GFZ)のチームが、黒海の堆積物のコアから分析した磁気に関しての研究論文は示す。
ドイツ地球科学研究センターの、ノルベルト・ノワクズィク博士と研究チームは、黒海の他、北大西洋、南太平洋、ハワイなど他の研究からのデータを加え、当時の両磁場の逆転が全世界的なイベントであったことを証明した。
この研究成果は、「アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ ( Earth and Planetary Science Letters ) 」の最新号に掲載される。
今回の研究で注目に値するのは、地球の磁場の逆転のスピードだ。
研究者のノワクズィク博士は次のように言う。
「磁場の完全な反転はわずか 440年間の移動でなされましたが、そのうちの多くはわずかな移動であり、実際には、両磁場の極の変化はたった 250年でなされたことを示します。この 250年というのは地質学的な変化からみると非常に早いスピードです」。
結果として、地球は磁場を失い、また磁場による宇宙線からの防御を完全に失ったために地球上がほぼ完全な被爆状態に至ったことが、グリーンランドの氷床から回収されたその時代の放射性ベリリウム(10Be)の解析によって明らかになっている。
放射性炭素(14C)と同様に、 10Be は大気中の原子と宇宙からの高エネルギーの陽子の衝突によって引き起こされる。
突然の気候変動と巨大火山の噴火
41,000年前の地球磁場の逆転の証拠を示したと同時に、研究チームは黒海の堆積物の分析から、その当時、突然の気候変動が発生していたことを発見した。グリーンランドの氷芯でもこのことはすでに判明している。
グリーンランドの氷芯のデータと黒海のデータは時代が合致しており。この時代の気候変動に関しての記録として正確性が高い。
また、火山噴火との同時代性も発見した。
過去 10万年の地球の北半球で発生した最大の火山噴火は、イタリアのナポリの近くにあるフレグレイ平野( Phlegraean )の古代火山の噴火で、これは 39,400年前に噴火したとされる。この北半球最大の超巨大火山噴火も黒海の堆積物から判明した。
ここから見ると、この際の巨大噴火での火山灰は、すべての地中海東部と、そしてロシア中部にまで達したことがわかる。
地球の磁場の急速な逆転、そして、氷河期時代に終わりを告げた急激な気候変動、そして、イタリアの超巨大火山の噴火。この3つの地球環境上の大きな出来事の研究が今回初めてひとつの地質的調査の中でおこなわれ、そして、その正確な年代が示された。