続きの記事は「ポールシフト、巨大火山の噴火、そして大彗星の衝突のそれぞれが同時に起きる可能性を考えてみる(2)」です。
▲ ハワイのキラウエア火山のハレマウマウ火口。ここ数ヶ月でどんどん上昇してきて、10月になってから、近年での過去最高レベルまで溶岩が上昇しています。写真はアメリカ地質所(USGS)が撮影。
昨日の記事、
・ドイツの科学研究法人が「急速なポールシフトと気候変動と超巨大火山の噴火が同時に発生していた」ことを証明
2012年10月18日
を書いた後、いろいろと考えるところはありました。
上の記事の内容はドイツの科学機関が、過去10万年程度の地球の歴史の中で最大級の地質イベントだったと考えられる3つの出来事が同じ時(約 4万1000年前の数百年間のあいだ)に起きていたということをつきとめたということでした。その3つは、
・地球の磁場の逆転(ポールシフト)
・超巨大火山の噴火(過去10万年で最も巨大だとされる噴火)
・急激な気候変動
です。
これらは放射性炭素などの解析によって明らかになったということでしたが、これが地球上の1カ所だけの分析でしたら、「地域的な問題」ということも言えたかもしれないのですが、上のドイツの調査では、黒海の堆積物とグリーンランドの氷床からという、地球上で比較的距離のあるふたつの地点、さらには、ハワイなどのかなりの広範囲での「データが一致した」ということは、当時は、地球全体で大きな環境変動が起きていたということが言えるように思います。
今年の9月に『西暦535年の大噴火』というアメリカ人ジャーナリストが書いた本を読んで思うところがあり、そのことについて何度かふれたことがありました。
・ウイルスの流入の繰り返しでDNAの進化をなし得てきた人類をサポートする「宇宙と火山」
2012年09月23日
等の記事ですが、『西暦535年の大噴火』という本の原題は「カタストロフィ(壊滅的な災害)」であり、噴火という前提として書き始めたものではなく、535年に地球全体を巻き込む「何か」大きな出来事が起きたというもので、その前後の歴史のことが書かれています。
著者はこの本の最後で、「起きたことの可能性」として次の3つを上げています。
・小惑星の地球への衝突
・大彗星の地球への衝突
・巨大火山の噴火
このうち、535年に「大噴火」(インドネシアのクラカタウ山)が起きていたこと自体は、ほぼ間違いがなく、著者は火山噴火による気候変動という可能性がもっとも大きいとしています。
しかし、上の In Deep の記事や、あるいはその前に書きました「西暦 541年の東ローマ帝国でのペスト襲来に関してのヨーアンネースの記録」という記事で、私は、「本当に火山噴火だけだったのだろうか」という考えるようになっていきました。
地球全体が壊滅的ともいえる激変を遂げた時期は「億年」という単位で考えても、地球上に何度も何度もあったはずです。
それらに対して様々な説や理由が今でも研究されています。しかし、たとえば、人類登場以前の原始生物や恐竜の大量絶滅などに関しても、隕石の衝突、彗星の衝突から、ガンマ線バーストなど、要因となり得ることは考えられても、今のところ「確定したこと」は何もわかっていません。
その中で、私はふと「複合」という文字が浮かんできたのでした。
西暦 535年のことに関しても、「小惑星の地球への衝突、彗星の地球への衝突、巨大火山の大噴火のどれだったのだろう」と考えるより、
・全部同時に起きた
と考えるのがわかりやすいのではないかと。
もっというと、偶然全部同時に起きたのではなく「全部が関連している」ということなのではないかと。
こちらの過去記事に、フレッド・ホイル博士の著作を引用した部分がありますが、そこでホイル博士は次のように書いています。
『生命はどこから来たか』 エピローグより
彗星や火球の衝突の話は、プラトンの時代には全く普通の話であった。しかし過去の大災害の記憶は忘れられ、哲学者アリストテレスからは地球が彗星には関係なく安全だと考えられるようになった。アリストテレスは彗星や隕石を天体とはせず、大気現象だとした。西洋思想では地球は宇宙から切り離されてしまったのである。
上の中にある、アリストテレスの時代から、
> 西洋思想では地球は宇宙から切り離されてしまったのである。
ということをホイル博士はもっとも懸念としてとらえていたようです。
そして、この「アリストテレスの呪縛」は今でも続いているような気がします。たとえば、「地球は宇宙の中にある」という、ほとんど誰でも学問レベルでは知っていることでも、実際には多くの今の人々は「宇宙と地球は別々のものだ」と考えているような気がするのです。
しかし、地球は紛れもない宇宙の一部であり、上に見える空や星とまったく一体のものです。
そう考えると、彗星などの現象と地球の現象は、別々のものではないと考えることに不都合はないのではないかと思うのです。
41000年前は、「ポールシフト+巨大火山の噴火+環境変動」という(ほぼ)証明された地球の環境変動があった上に、宇宙からも「何か」あったのかもしれません。
その「何か」のうち、確定しているのは、「雨あられと地球上に降り注ぐ宇宙線と放射線」でした。これは地質(グリーンランドの氷床)の調査で明らかになっています。
しかし、他にも何かあったかもしれません。
なぜなら、宇宙線と放射線だけでは、生命を衰退させる(あるいは活性化させる)ことはできても、「新しい生命の芽」とはならないからです。新しい生命の芽とは言い換えれば、「新しい遺伝子(DNA)の登場」です。
ちょっと話は違う方向なのかもしれないですが、このことを少しだけふれさせていただきます。
「生命の進化」と関係する彗星の地球への衝突
フレッド・ホイル博士の『 DNA は宇宙を流れる』という著作の中に次のようなくだりがあります。長い部分からの抜粋で、飛び飛びとなっていることを最初に記しておきます。
『 DNA は宇宙を流れる』 進化のメカニズム より
動植物の化石記録には、種の突然の進化、多様化の他に、同じくらい突然の絶滅が記されている。なかでも劇的なのが、6500万年前の恐竜の絶滅だ。地球の上を1億年以上も我が物顔にのし歩いていた巨大な爬虫類たちは、地質学的に見ると驚くほど短期間に滅亡してしまった。
この大破局に彗星が一枚かんでいたことは今や常識となっている。これは、最も新しい(すなわち、絶滅に近づいている)恐竜の化石が見つかった世界中の地層に、異常に高濃度のイリジウムが含まれていることから明らかになった。イリジウムは地球上にはほとんど存在しない元素であるが、彗星や隕石などの地球外天体には比較的多く含まれている。
そして、恐竜が絶滅した時代に形成された世界中の地層からイリジウムが発見されたということは、その天体が非常に巨大なものであったことを示している。
ただし、われわれは、この大破局が純粋に物理的なプロセス ----- 彗星のダストが地球を包み込んで太陽の光が遮断された結果だとか、巨大物体が衝突したこと自体が招く地震や洪水、火災など ----- によって引き起こされたのだとは思わない。物理的な災害では、種がかなりの程度まで衰弱することはあっても、種全体が絶滅するとは考えにくいからだ。
(中略)
▲図4 哺乳類の進化
図表4(上)は、哺乳類の化石記録から進化の道筋を逆に辿ったものだ。ほとんど関係がないように見える哺乳類のもとをたどると、同じ時点で一つに収束してしまうことに気がつかれるだろう。
恐竜の大絶滅も、海の生物相の劇的な変化も、哺乳類の大出現も、6500万年前に大規模な遺伝の嵐が起きたことを示唆している。その原因となったのが、大彗星だったのだ。
という部分があります。
「同じ時点で一つに収束」というのは、上の図の白亜紀(恐竜の時代である約 1億5000万年前から6500万年前の間)と暁新世(哺乳類登場の約 6,500万年前から 5,550万年前)にある、この、
で赤丸で囲んだ部分です。
この時にホイル博士の言葉をお借りすると、「遺伝の嵐が起きた」ようで、そこに彗星が絡んでいるというのがホイル博士の主張でもあります。
この時は、「恐竜が(多分)彗星が運んだウイルスなどで遺伝子を破壊されて全部が絶滅」して、そして、「新しい芽」が生まれた。
この「新しい芽」という事例は、その後も多分、繰り返し起きていたことなのではないのかと思ったのです。
多分、10万年前から20万年前のあいだに、「忽然と地上に姿を現した人類」(ミトコンドリア・イヴと呼ばれる女性のような)も、そのことと関係があるのではないかと思います。
昨日の記事のような「地球自身の大変化」というのは、地球が宇宙のひとつである以上、宇宙の変化ともいえると思います。
そういえば、昨日、「木星でも異変が起きている」ということを書きましたが、昨日、さらに、「木星の衛星イオで何か異常なことがおきている」という記事がありました。
まだ訳していないですが、木星の衛星のひとつである「イオ」という星は「ムチャクチャともいえるほどの火山の噴火が存在する星」のようです。
記事では、木星の衛星イオの火山噴火が「どのくらすさまじいものなのか」ということが示されているのですが、これは本当にすごい。たとえば、下は 2004年の噴火と 2009年の噴火の際に観測された写真です。
下の「白いもの」や「穴のようなもの」が噴火ですが、その大きさ!
▲ 衛星イオの噴火の様子。
これを地球での火山の噴火の光の大きさと(天体の大きさとの比率として)比較すると、本当にこの地球では見たことのないような「超巨大噴火」が頻繁に起きていることがわかります。上の衛星イオの他の写真などは、
» Why Is SETI Monitoring Io? Something Insane Is Going On
にあるオリジナルの記事の中にあります。
この地球で、上のイオのような無軌道な規模の噴火が起こることはないと思うのですが、「絶対にないのか?」というと、それはわからないわけで、それは、「絶対に巨大彗星など衝突しないのか?」ときかれても、「それはわからない」としか言いようがないのと同じで、いろいろなことはわかりません。
しかし、いわゆる大災害というのは、上でふれた 6500万年前の進化の嵐ということを考えても、「何らかの進化」と結びついていることは明白で、言ってはいけないことかもしれないですが、敢えて断言させてもらえば、
「地球にとって、彗星の衝突も超巨大火山の噴火も必要なこと」
だと思うようになりました。
しかも、これらは過去に実際に起きていることで、さらに、これらは紛れもない「自然現象」であり、仮にその徴候があっても、私たちに食い止められるというようなものでもありません。
自然現象と書きましたが「宇宙の自然現象」という意味です。
そんなわけで、まだ書きたいことはあるのですが、無駄に長くなるのも何だかご迷惑だと思いますので、2回くらいにわけます。
次回は、著作『西暦535年の大噴火』の中の「彗星説」という部分を抜粋して、著者がどうして「彗星ではない」と考えたのか、検討してみようと思っています。反対から考えれば、「535年の災害は巨大彗星の爆発だったかもしれない」からです。
場合によっては、西暦535年に私たち人類は、6500万年前の恐竜のように「絶滅していた可能性」があったのかもしれません。しかし、今、現に私たちはこのようにいます。
人類は絶滅しませんでした。
この意味は「非常に」大きいと思います。
ところで、冒頭にキラウエア火山の写真を載せましたが、これは今、ハワイのニュースで大きく報じられているものです。長いものではないですので、翻訳してご紹介しておきます。
ハワイといえば、今年の2月に「ハワイのプナ地区で震動が続いている」ということがあり、記事にしたことがありますが、今回の火口はこのプナ地区にあります。ここには「ペレ」という神様の伝説があり、その神話のことと共に、過去記事の、
・「火の女神と龍の女神が戦った地」ハワイ島での謎の振動を巡る騒動
2012年02月25日
でご紹介したことがあります。
そのハワイのキラウエア火山の溶岩湖が最高レベルまで上昇しているというニュースを、ハワイのビッグアイランドというメディアからご紹介します。
ここからです。
Kilauea Volcano lava lake reaches highest level
Big Island 2012.10.17
キラウエア火山の溶岩湖が過去最高のレベルにまで上昇
現在のハレマウマウ火口。
キラウエア火山は最近、かなりの活動の様相をみせていたが、キラウエアの火口のひとつであるハレマウマウ火口の中の溶岩湖が 2008年の噴火以来、最高レベルに達した。
キラウエアの山頂の溶岩湖は、9月14日には、火口の下わずか 45メートルの高さにまで上昇した。アメリカ地質調査所( USGS )のハワイ島火山観測所の科学者によれば、これは最高レベルの高さだという。
過去数ヶ月で、キラウエアの火口の溶岩湖は少しずつ上昇していたが、10月5日現在では、溶岩は、火口の周辺を覆う「バスタブ」をさえ覆うレベルにまで上昇している。
そして、最近は、ハワイ火山国立公園にあるジャガー・ミュージアム(博物館)ほどの遠くまで震動と爆発音が日夜聞こえるようになっていた。
この火口内の溶岩レベルの上昇は、キラウエアの火山地域の面積の膨張と関係しているとハワイ島火山観測所は述べた。
なぜ、キラウエア火山の膨張が起きているのかの根本的な理由はわかっていないが、科学者たちは、マグマの増加が原因だとは考えていないという。
様々な推測はあるが、何が起きているのかは時間の経過でのみわかることなのかもしれない。
ともあれ、今も震動と爆発音がかもしだす「ショー」は続いている。