2012年10月29日



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ニューヨーク出身の「アルビノ」スーパーモデルがアフリカに向かった理由



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▲ 米国のスーパーモデルのディアンドラ・フォレストさん。モデル・ドット・コムより。
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(訳者注) ディアンドラ・フォレスト( Diandra Forrest )という米国ニューヨーク出身のスーパーモデルがいます。この人は、いわゆる「アフリカ系黒人」のモデルさんなのですが、上の写真をご覧になってもおわかりのように肌の色は真っ白です。

彼女はアルビノという遺伝子の疾患のひとつを持って生まれた人です。アルビノは、先天的なメラニンの欠乏により体毛や皮膚は白くなり、人間の場合は、先天性白皮症というような名称が存在します。


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▲ ファッション誌を飾るディアンドラ・フォレストさん。最近、ファッションショーなどでのアルビノモデルの起用が増えているのだそう。記事に出てくるデザイナーいわく「まるで別の宇宙の人のような美しさなんだ」とのこと。


米国では絶大な人気のあるスーパーモデルである彼女が、このたび、アフリカ大陸の南アフリカでのショーに赴くことになりました。彼女がアフリカに赴く大きな理由のひとつの中には、「アフリカのアルビノたちを助ける精神的な手助けをしたい」ということがあります。

その「現在のアフリカ諸国の事情」というものに少しふれてから、彼女の南アフリカ行きが報じられているアフリカのメディアの新聞記事をご紹介します。

Wikipedia のアルビノに以下のような記述があります。


アフリカ南東部ではアルビノの体には特別な力が宿るという伝統的な考えから、臓器や体の一部など売却する目的で、アルビノの人々をターゲットにした殺人が後を絶たない。



とあります。

In Deep の過去記事で、AFP の「止まらぬアルビノ殺害、今月だけで被害者3人 アフリカ」をご紹介した以下の記事があります。

7万5000ドルの存在としての悲劇:アルビノ
 2010年05月07日


これは下のようなものでした。


アルビノ(先天性白皮症の人)の殺害事件が相次いでいるタンザニアとブルンジで、今月に入って新たに 3人の被害者が出たとカナダの NGOが 6日、明らかにした。殺害の目的はアルビノの体の一部をお守りの材料として高値で売ることで、国際社会からの圧力にもかかわらずいまだに売買が後を絶たない現状が改めて浮き彫りになった。

2007年から始まった一連のアルビノ殺害事件では、アルビノの体の部位がすべてそろったもの(手足4本と1対の耳、性器と鼻と舌が含まれる)が 7万5000ドル(約 670万円)で取引されているとタンザニア警察は推定している。

タンザニアの人口 3500万人のうちアルビノは約 15万人。アルビノの赤ちゃんが産まれた場合、差別を免れるために、親が故意に殺すこともあるという。



こういう現状がアフリカにはあります。
これは今でも多分ほとんど改善されていないと思います。

こういう中、上記の米国のアルビノのモデルであるディアンドラさんは、

「アフリカ大陸の人々に、アルビノに対しての見方や考え方を変えてほしい」

と述べ、南アフリカでのファッション・フェスティバルのショーに参加しました。


彼女は、ニューヨークの南ブロンクスの黒人コミュニティで育った、いわゆる「スラム出身」で、米国の国内でも成長の中でいろいろなイヤな体験もあったことを語っています。

しかし、一方で、米国は大衆文化の歴史上で、世界で最も傑出したアルビノ・スターを排出している国でもあります。たとえば、中年世代のロックファンで、ジョニー・ウィンターというギタリストを知らない方はいないと思いますが、彼はアルビノです。


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▲ 私たちの若い頃に圧倒的な人気のあったギタリスト、ジョニー・ウィンターもアルビノ。高齢ですが、2011年の東北の震災の後に「初来日」したことがWikipedia にのっていました。日本に来たことのない最後の大物と言われていました。


現在の米国にはアルビノの男性モデルもいます。ショーン・ロス( Shaun Ross )という人。

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▲ 2010年のルイ・ヴィトン・コレクションに登場したショーン・ロス。


アルビノには古来から様々な逸話が存在して、日本でも、5世紀頃の天皇だった清寧天皇(せいねいてんのう)は、「白髪皇子」という御名を持ち、アルビノだったと考えられています。

こちらによれば、


御名の「白髪皇子」の通り、生来白髪であったため、父帝の雄略天皇は霊異を感じて皇太子としたという。


とのこと。

古来から現代までアルビノは確かに特別視されてきたわけですが、それは「畏怖」、「奇異」、「神聖」など様々な特別感情があることは事実です。しかし、少なくとも今のアフリカの「殺して部位を持ち去る」という方向は是正されたほうがいいとは思います。

そんなわけで、ディアンドラさんを紹介したケニアのメディアをご紹介させていただきます。




Albino models setting the trend for Africa
Africa Review (ケニア) 2012.10.28

アフリカにトレンドを作りだそうとしているアルビノのモデルたち


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▲ 最近、国際的なデザイナーたちはアルビノのモデルを起用する機会が増えている。


南アフリカのヨハネスブルグで開催されているアフリカ・ファッション・ウィークのバックステージで1人の女性が静かに座っている。このショーには、アフリカ中からモデルやデザイナーたちが結集し、それぞれが会場の中をせわしなく動き回り、会場は混沌としている。この喧噪はモデルやデザイナーたちの隠された競争というものも関係しているのかもしれない。

しかし、その中で最も目立つ存在は、その喧噪とは別にひっそりと静かに座るその女性、ディアンドラ・フォレストさんだった。

彼女は、米国ブロンクスの黒人コミュニティで育ったニューヨーカーで、髪の色と皮膚の色を失ったアルビノだ。そして、彼女は、アルビノとして初のスーパーモデルとなった人物でもある。

アルビノは遺伝的なもので、約 17,000人にひとりの割合で生まれる。
視力に問題を持つ場合も多い。

しかし、今回のアフリカ・ファッション・ウィークの彼女の存在がどれだけ挑戦的なことで、また、どれだけ重大な意味を持つことかを彼女は知っている。

アフリカのいくつかの国、特に東アフリカでは、アルビノの人々に対しての間違った観念が浸透しており、その体の一部を持つことで力が得られると信じている人々がいる。それらの地域では、現在でもアルビノの人たちは常に誘拐や殺害、切断といった危険に晒されているのだ。

ディアンドラさんは本紙に以下のように述べた。

「私がここに来たことには大きな意味があります。私は、アフリカでのアルビノの女性に対しての見方を変えたいと思っています。私自身、ニューヨークでは子ども時代にずっと周囲の子どもたちからからかわれ続けてきました。子どもの時は毎日、泣きながら家に帰っていたんです。そして、私はその環境の中でタフになっていきました」。



彼女が知ったアフリカの衝撃

ディアンドラさんは続ける。

「しかし、私は後にアフリカでのアルビノたちのことを知りました。それは、ニューヨークで私が受けたような体験など何でもないほどのものだということを知ったのです。タンザニアなどの国では、私と同じようなアルビノの人々が手足を切断されて、それが高値で取引されている・・・。そのような事実を知った時に、私は言い様の知れないショックを受けました」。

「私と同じ人々が、毎日毎日、命の危険を感じながら生きている・・・。それは、あまりにもひどい現実です。何かしたいと思いました」。


ディアンドラさんがそのことを知った時には、彼女はすでに国際的なスーパーモデルだった。

彼女の姿を見て「雷に打たれるような衝撃」を受けるファッションデザイナーは多いが、英国に住む南アフリカ出身のデザイナー、ヤコブ・キンミー氏もそうだった。

ヤコブ氏は言う。

「彼女の姿は、まるで他の世界の人、他の宇宙の人のようだった。私は南アフリカでおこなうショーに何が何でも彼女を出したいと思った。いや、彼女でなければいけないと思った」。

そしてまた、アルビノのモデルをショーで使うことにより、長期的にアフリカの人々のアルビノに対しての見方を変えていくという心理的影響もあるかもしれないと考えるという。


ディアンドラさんは 13歳の時にモデルとなったが、彼女が言うには、アルビノに対しての視線はかつては否定的な側面ばかりだったが、最近はファッションの世界では、「メインストリーム」になってきていると語る。



魔術とも関連するアルビノ

しかし、悲劇は続いている。

昨年の南アフリカのアフリカ・ファッション・ウィークに車で向かったアルビノの男子学生、クワズール・ナタルさんは誘拐されてから1年経つが、未だに行方がわかっていない。彼の家族は、これが魔術と関係していることを怖れている。

ごく最近、タンザニアのメル市で、三十代の男性と思われるアルビノの人物の遺体が見つかったが、体の部位のいくつかが切断されて持ち去られていた。

一般的に、このように持ち去られたアルビノの体の部分は、魔術信仰の中で自分の力と繁栄をもたらすとされ、また、ビジネス繁盛を願って、切断した部位を会社の建物の土の下に埋めるという行為も存在する。

米国のスーパーモデルはこのような現状を本当に変えられるのだろうか?

国連が 2012年に報告したアフリカのアルビノに関しての報告書の中で、国連の担当官ピーター・アッシュ氏は以下のように書いている。

「アフリカでのアルビノの人たちに対しての感情は以前より良くなっている。私たちが見る大きな問題は、アルビノの人たちに対しての様々な蛮行の行為の根底にあるのは、悪魔の概念であり、アルビノの人たちに悪魔の肖像を見るという点にあるということだ。アフリカ社会がそのような考え方を変えて、アルビノに対して肯定的になっていくきっかけを作ることが重要だ」。

その国連の報告では、 2006年から 2012年までにタンザニアで少なくとも 71人のアルビノが殺害された。そして、31人がナタなどでの切断に見舞われたが、一命は取り留めた。

ブルンジでは、17人のアルビノが殺害された。

「南アフリカ・アルビノ・ソサイエティ( Society for Albinism in South Africa )」の代表であるノマソント・マジブクさんは、アフリカの多くの国や地域ではこのことについての正確な報告はおこなわれておらず、調査も存在しないと考えていると言う。

一方で、マジブクさんは、「変化は外からもたらされるのではなく、アフリカ自身で変わっていかなければいけません」とも述べる。

そして、以下のように述べた。

「アフリカからアルビノからの偏見を取り去るのは、アフリカの私たち自身の問題ですが、しかし、私たちはいつまでも隠れているわけにはいきません。そんな中で、国際的なファッションショーを渡り歩く彼女がやってくるのです」。

マジブクさんは今回のファッションショーが変化のきっかけの促進剤になることを望んでいる。


スーパーモデルのディアンドラさんは最後に次のように言った。

「私は人種がひとつになるシンボルなんです。私は黒人。でも、白い肌を持つ白い人間。そして、私はそのような人間の代表として、体現しなければならない。そして、アルビノだから、ではなく、モデルとして人々に広く知られるようになりたいです」。





(訳者注) 最後の彼女の言葉、「アルビノだから、ではなく、モデルとして人々に広く知られるようになりたい」というのを読んで、自分で「ハッ」としました。

というのも、私もこの記事をご紹介しようと思ったのは、確かに「彼女がアルビノだから」です。

自分の中にこんなに強く存在する区別の観念、あるいは差別の観念というものの「複雑な根」に考え込みます。

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[1年前の In Deep ]
2011年10月29日の記事

『人間の尿は最大の発電燃料』: 英国王立化学会の研究発表

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