2012年11月04日



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火星に何が起きた?: 太陽系の激変が続く中で「火星の大気から検出されなくなったメタン」



(訳者注) 昨日(11月3日)の夜、子どもと奥さんがいる部屋を通ると、テレビを見ていて、そこには下のような風景が映し出されていました。

namib-01.jpg


私はそのなんとも迫力のある「赤い光景」を目にして立ち止まり、


「何?この一面の真っ赤は。・・・ってか、これどこ?」


と聞くと、奥さんは「どこかの砂漠みたい」とのことで、しばし立って、その番組を見ていると、「ナミブ砂漠」とのナレーションが。

そして、なんとこの赤いのはすべて花(ここは砂漠!)なのでした。

「すごいのやってるねえ」と感心していたのですが、それから5分ほど見たところで番組が終わってしまったので、部屋でネットで調べてみると、こちらの NHK の番組だったようで、NHK BSプレミアム「ナミブ 七色に輝く不思議な砂漠」というものだったようです。

上の花はナマクアランドデイジーというデイジーの種類で、近くから見ると下のような花だそう。

namib-02.jpg


ナミブ砂漠というのはアフリカの下の「A」」の場所にある砂漠です。

namap.jpg


まったくの不毛な大地かと思っていたので、この壮大に花が広がる光景にはちょっと驚きました。上の NHK のサイトの番組説明には次のようにありました。


アンゴラとナミビア、そして南アフリカにまたがり南北2000km続くナミブ砂漠。大地に積み上がった膨大な砂は、なんと、1兆立方メートル。“世界最古の砂漠地帯”とも言われている。そして、毎年春、砂漠に一瞬だけ姿を現す“世界最大級の花園”。その全貌にも迫る。



幸運にも番組の「その全貌」のラストの部分だけ私は目撃できたようですが、本当にものすごい「広大な真っ赤」でした。

ところで、どうして「ナミブ砂漠」という単語に反応したかというと、「ナミブ砂漠」なんて場所とその名前を知ったこと自体が今年の夏のことだったからです。そして、それは「火星」と関係して知ったものでした。




ナミブ砂漠と火星をつないだ地衣類

過去記事の、

NASA の火星無人探査計画が無駄な理由: 1976年にバイキングがおこなった火星地表の質量分析から 36年経って進化しない観念
 2012年08月12日


の中で、火星の表面で「緑色に見えるもの」の正体は、砂漠などで見られる「地衣類」と呼ばれるものと似たような感じのものなのではないかと思ったのです。

地衣類というのは植物ではなく、カビなどの仲間の真菌に近いものですが、しかし、生物の構造としては原始的なものではなく、「菌類とソウ類が合体したもので、バクテリアよりもよほど高級な生き物」ということです。

ナミブ砂漠のような不毛な土地でも生きられる強靱な真菌類。
上の記事では、ナミブ砂漠の地衣類の写真を載せました。下の写真です。



ナミブ沙漠の地衣類・多肉植物より。


緑っぽく見えるところや白っぽく見える部分が地衣類ですが、これは「生き物」です。

なので、私は火星に見える「緑の色」も、これらのような地衣類のようなタフな生物たち・・・などと思っていたのです・・・が、ちょっと雲行きが怪しくなってきました

今回はその記事です。


昨日の NHK の番組を目にして、「ナミブ砂漠」を久しぶりに思い出したのも偶然でもないかもしれないと思い、昨日の NASA が発表したことに関しての記事をご紹介しようと思います。


それは、「火星から生命の痕跡が消えた」ことを示唆できるたぐいの発表でした。


現在、 NASA のキュリオシティという無人火星探査機が探査をおこなっていますが、採取した大気のサンプルから「メタンが検出されなかった」という報道です。

これはどういうことかというと、大気からメタンが検出されれば、それは「そこに微生物などの生命の根拠」を示すもののひとつとも言えるかも知れないですが、「そのメタンを検出しなかった」のです。

そして、この問題にはかなり根の深いものがあります。

なぜかというと、「以前は火星の大気にメタンは観測されていた」からです。


どうやら、火星の大気からメタンが「消えた」ようなのです。
これについて、米国の科学系メディアの IIAI は、

What Happened To Mars' Atmosphere? Curiosity Finds No Methane
「火星の大気に何が起きた? キュリオシティがメタンを検出できなかった」

というタイトルの記事をリリースしています。
誰しも、火星の大気から、たとえ微量であってもメタンが検出されると考えていたのです。


この記事を読んで、「火星で何か起きた、あるいは起きている」・・・というようなことを私は思ってしまったのでした。


そんな中で、思い出すのは、今年の春に起きた「火星の異常現象」のこと。
下の過去記事でご紹介したものです。

火星の「超」異常現象: 地表から数百キロ上空まで吹き上がる現象は何か
 2012年03月26日

それは今年の3月に下のような写真が撮影されたという報道でした。火星で「 240キロメートルの高さのモヤ」が立ち上っているのが観測されたのです。




この「 240キロメートルの高さ」というのは、たとえば上の記事にも書きましたが、地球で実際に起きている噴火の規模として最大級に近いフィリピンのピナツボ火山の1991年の噴火での最大の火山灰の高さが約 34キロだったことを考えると、「まさに壮絶な自然現象」だと言えると思います。

上の記事で、米国アリゾナ州立大学の火星探査ミッション施設のジョナサン・ヒル博士という人は以下のように言っていました。

「この現象は私たちが予測するものから考えると、かなり大規模です。一体どんなことが火星で起きているのか見てみたいというのが正直な気持ちです」。



他にも、昨年の記事でご紹介した土星のスーパーストームが今年も起きていて、土星の表面の様相が変わってしまいました

下の写真が今年の土星のスーパーストームの様子です。
土星の上部に走っている雲がその嵐です。

saturn-2012.jpg

▲ 米国デイリーギャラクシーの「Saturn's Monster Storm - Bigger than Jupiter's Great Red Spot」 (土星のモンスターストーム。それは木星の大赤斑より巨大だ)より。


ちなみに、地球と土星の大きさの比較は下のようになります。

ed.jpg

▲ 地球と土星の大きさの比較。


いずれにしても、太陽系の数々の惑星で、非常に大きな変動が続いている中(地球もです)、もしかすると、火星でも何か起きていた、あるいは起きているのかもしれません。

生命の痕跡を一掃するような、何かが。


今回は、以前のローバーが火星でメタンを見つけた際のことを記事にしている米国のメッセージ・トゥ・イーグルの記事をご紹介します。

ここからです。




Methane Found In Previous Rover Missions To Mars - Curiosity Finds No Methane Yet
MessageToEagle.com 2012.11.03

以前の火星探査で見つかっていたメタン。しかし、キュリオシティはいまだにメタンを検出していない


現在のキュリオシティの前の火星のローバーでの無人探査ミッションでは、火星の大気にメタンを含んでおり、それは気候変動と関係するものだと報告された。

NASA ジェット推進研究所の火星科学専門家クリス・ウェブスター博士によると、今のところ、キュリオシティに搭載されている探査器ではメタンを検知していないという。しかし、火星は、まだまだ私たち人類に多くの驚きを与えてくれるはずだと博士は言う。


curiocty-2012-10.jpg

▲ キュリオシティは火星の大気からメタンを発見できなかった。


NASA は、メタンの探索を続けると述べている。

しかし、 NASA の科学者たちは確かに火星の大気にメタンが存在することを確信しているが、その量は極めて少量だと考えている。

最近、キュリオシティは、火星の大気成分の最初の完全な分析をおこなった。
そして、分析の結果、火星の大気は地球の大気より 100倍薄いことを示し、それは、炭素とアルゴンの重い同位体を高い比率で含んでいることがわかった。

地球では、大量のメタンは生物によるもので、それは 1,700 ppb のレベルで存在する。

もし、メタンが火星で発見されれば、微生物を示す証拠としても考えられる。もちろん、メタンは彗星の衝突や、地下での化学反応から生産される可能性もあるけれども、生物由来と考えられるひとつの示唆ともなる。

以前、火星の軌道上からの調査と、地上からの望遠鏡での観測で、メタンの証拠を発見していたが、なぜ今回、キュリオシティが火星の大気からメタンを検出できないのかの説明は、今のところ NASA の科学者からの説明はない。





(訳者注) この「無人探査によって生命の証拠を探す方法」ということについての補足として、上にもリンクした過去記事の「NASA の火星無人探査計画が無駄な理由」に、フレッド・ホイル博士が説明した部分を抜粋したことがあります。

それは 1970年代に NASA がおこなった無人探査での実験の方法で、その際には、

・ラベル放出実験(LR)
・GC・MS実験


というものを行いました。
それぞれ、ごく簡単に書きますと、


ラベル放出実験(LR)

殺菌されたフラスコの中で、放射性同位元素14Cを含む栄養液と火星の土のサンプルを混ぜるという操作を行う。土に微生物が含まれている場合、微生物が栄養素を摂取して二酸化炭素のガスが放出されるはずという前提の実験。


GC・MS実験

土を加熱した際に放出される気体をガスクロマトグラフと質量分析計で分析することで、微生物そのものではなく、土壌中の有機物を検出しようとするもの。


です。

長い抜粋ですので、詳細をお知りになりたい方は上のリンクの途中にある「生命 (DNA) は宇宙を流れる」の抜粋部分をお読み下されば幸いです。

いずれにしても、上のふたつの実験の結果、「ラベル放出実験では生命の可能性を示唆」して「GC・MS実験では生命の可能性が否定される」という相反する結果となり、その後もグレーの状態のまま、現在まで続いているように思います。

今回、キュリオシティが、仮にまったくメタンを検出しなかったとすると、生命存在の示唆が否定される可能性がありますが、それはそれで仕方ないとしても、しかし、やはり気になるのは、上の翻訳記事にありますように、「かつては検出(観測)されていた」という事実があります。

たった数年間で火星に何か大きな変化が起きたのか。

それでも、そもそもが火星にはメタンも有機物も存在しないのか(ただし、有機物が存在しないということはあり得ないことは力強く断言できますけれど)。

それは今後わかることかもしれないですが、最近の太陽系全体の激変を見ていますと、火星もいろいろと「大変な時期」なのかもしれません。


それと、「どうして太陽系全体に異変が起きているのか」ということについても、それを示唆するようないくつかの文章を過去に目にしたことがありますので、本当かどうかはともかく、ご紹介できる時にしてみたいと思います。

簡単にいうと、「太陽系全体がどこへ移動しているのか」という銀河系の中の太陽系の位置の問題のようです。